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PMIとは?M&Aとの関係や手法、重要性、事例について徹底解説

監修

経営承継支援編集部

この記事は、株式会社経営承継支援の編集部が監修しました。M&Aに関してわかりやすく役に立つ記事を目指しています。

目次 [ ]

M&Aでは「PMI」をいかに適切に進めるかが、成功のカギを握っています。PMIとは、M&Aの成立後の統合プロセスを指す用語です。PMIでは、買い手(譲受企業)と売り手(譲渡企業)の双方が、意識すべきポイントがあります。本記事では、M&AにおけるPMIの重要性や手法について解説した上で、PMIの成功事例を紹介します。PMIについて詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

M&AにおけるPMIとは?PMIの意味や重要

M&Aにおける「PMI(Post Merger Integration)」とは、M&Aが成立したあとの「統合プロセス」を指します。
M&Aは企業合併・企業買収を意味しますが、M&Aの規模などによっては、相手企業と合意・手続きが完了することだけがゴールではなく、「PMIがスムーズかつ効率的に行われるか」という観点が重要なケースもあります。まずは、M&AのPMIについて、重要なポイントを見ていきましょう。

PMIの意味について

M&AのPMIは、合併・買収後の統合プロセスを指し、具体的には「経営統合」「業務統合」「意識統合」の3段階からなります。例えば、以下のような一連の取り組みが、PMIの代表的な内容です。
● 新しい経営体制の構築
● 経営ビジョンと計画の策定
● 両社協業に向けた体制の構築
● 業務オペレーションの刷新
● 両社のITシステムの統合

以上のような施策を実行することで、M&Aによる「リスクの最小化」と「成果の最大化」を目指します。PMIはM&Aの成約後、当初の目的や成果を達成するために必要不可欠なプロセスです。

PMIの重要性について

M&Aで本質的に大切なことは「成約」そのものではなく、成約後に双方が期待した成果を実現することです。たとえ成約に進んだとしても、その後の統合がうまくいかなければ、M&Aの効果が十分に得られないことや契約破談につながることがあります。例えば、ITシステムの統合に失敗すれば、大規模なシステム障害が発生して信用力や業績が低下するかもしれません。両社の従業員同士の意識統合に失敗すれば、従業員間での対立が起きたり、優秀な人材の離職につながったりしてしまうでしょう。こうした事態を防ぐために欠かせないのがPMIです。適切なPMI施策を実行することで、両社の統合をスムーズに進めることができ、双方が成長していく未来を実現できます。M&AのPMIにおいて、特に重要な以下の3つのポイントについて解説します。
● シナジー効果を想定する
● 買収先の従業員の軋轢を解消する
● 内部統制の構築やグループ統合を行う

想定シナジーを作る

M&Aの実行前に「シナジー効果」を想定しておくことが重要です。シナジーとは、2つの企業が統合することで得られる「相乗効果」です。例えば、企業理念や企業文化の融合、取引先の共有、コスト削減などが考えられるでしょう。こうしたシナジー効果を実現するためには、経営統合のプロセスを効率化して短期間で完了させる必要があります。プロセスが長引くほど、シナジー効果は薄れてしまうので、経営統合後すぐに動ける体制を整えておくことが大切です。

買収先の従業員の軋轢の解消

M&Aでは、企業理念や風土などが異なる企業同士が統合することがほとんどです。そのため、買収先の企業の従業員が不満を感じるケースも少なくありません。
このような従業員が残留すると、従業員同士の軋轢が表面化するリスクがあります。一方、従業員が去った場合は日常的な業務に支障が出る恐れもあります。キーマン条項(ロックアップ)などで、重要人材を一定期間は引き留めておくことは可能です。しかし、根本的な問題を解消するためには、従業員に丁寧な説明を行って理解を促すことです。このプロセスを省くと、買収先の企業がもともと生み出していた利益が得られず、損失を被ってしまうリスクもあります。そのため、従業員の不満は事前に緩和しておくようにしましょう。

内部統制の構築やグループ統合をする

買収先の企業が中小企業である場合は「内部統制」を構築することが大切です。中小企業では、意思決定が曖昧なルートで行われているなど、内部統制が不十分なケースが少なくありません。内部統制が構築されていなければ、業務効率の低下やミスの発生などのリスクがあります。業務への悪影響を最小限に抑えるために、グループの方針に合わせた適切な内部統制の構築が必要です。

PMIで買い手(譲受企業)が意識すべきポイント

M&AのPMIにおいて、買い手(譲受企業)は以下の3つのポイントを意識することが重要です。
● 自社の常識を根本から崩す
● 投資回収を焦らない
● 買収先の従業員にも率先して意見を聞く

自社の常識を根本から崩す

M&Aでは、買い手(譲受企業)は売り手(譲渡企業)と比べて、企業規模が大きく組織体制も成熟している傾向があります。そのため、規模の小さな相手企業の現状を把握したときに、未熟な組織だと感じてしまうこともあるでしょう。例えば、属人的な業務が多かったり、適切な会計管理制度が導入されていなかったりするなどです。しかし、相手企業に対して「このやり方ではダメです」「当社の基準に合わせてください」など、いわゆる上から目線の対応をしてしまうと、相手企業からの印象が悪化してしまいます。
前述したように、PMIをスムーズに行うためには、相手企業の従業員と良好な関係を築く必要があります。そのため、相手側に改革を求める際は、「なぜ行うべきか」「実施することでどんなメリットが得られるか」を丁寧に説明する必要があるでしょう。

投資回収を焦らない

M&Aは、事業規模や収益などの「成長」のために行うので、投資回収を重視するのは当然のことです。株主への説明責任や銀行への返済など、各方面からのプレッシャーもあるでしょう。しかし、お互いの信頼関係が浅い初期段階で、急進的な変革やマネジメントを行おうとすると、相手企業からの反発を招きます。
PMIでは、業績や収益などの定量的な成果を出すことは重要です。しかし、相手企業との関係は長期にわたって続くため、信頼に基づいた協力関係を築けなければ、継続的な成長は期待できません。遠回りに感じられるかもしれませんが、丁寧なPMIこそ投資回収の近道となるでしょう。

買収先の従業員にも率先して意見を聞く

継続的な成長のためには、相手企業の改革を行うことが重要です。しかし、一方的に自社の要求を押し付けるのは、信頼醸成の点で問題があります。そのため、両社で緊密なコミュニケーションをとりながら、「何が課題でどう改善していくべきか」を検討していくことが重要です。相手企業の従業員にヒアリングを行うことで、お互いに満足できる改善策が見つかるでしょう。

PMIで売り手(譲渡企業)が意識すべきポイント

M&AのPMIにおいて、売り手(譲渡企業)は以下の3つのポイントを意識することが重要です。
● 自社の従業員にM&Aの理由を説明する
● 買い手(譲受企業)にも臆することなく意見する
● 買収先の変更要望に前向きに反応する

自社の従業員にM&Aの理由を説明する

M&Aを実行した理由・受け入れた理由について、社長や経営陣が自社の従業員に丁寧に説明することが大切です。ほとんどの従業員はM&Aについてよく理解していないため、M&Aを実行すると聞くと「会社が乗っ取られる」「社長が従業員を見捨てた」など、根拠無くネガティブな印象を抱くことがあります。そのような状態では、相手企業の従業員と連携してPMIを進めていくことは難しいでしょう。
そのため、社長や経営陣が率先して情報を発信することが欠かせません。例えば、M&Aによって企業の成長などの大きなメリットがあることや、先方との関係性が良好で安心して協力関係を結べること、従業員の待遇が保障されているなどです。従業員にとってもメリットがあることを説明すれば、より納得感が高まりやすくなるでしょう。

買い手(譲受企業)にも臆することなく意見する

M&Aに関する不安や相手企業への要望などは、臆することなく伝えることが重要です。「買収される立場なので波風を立てないようにすべきでは?」と感じるかもしれませんが、コミュニケーションは信頼関係を醸成するために欠かせません。買い手(譲受企業)側としても、売り手(譲渡企業)側とは良好な関係を築きたいと考えています。不安やリクエストを発信するほうがお互いを理解しやすくなり、PMIをスムーズに進めやすくなります。発信したアイデアなどは、両社の成長につながることや、従業員の待遇改善などにつながることもあるでしょう。

買収先の変更要望に前向きに反応する

M&Aの大きな目的は、両社の将来的な成長にあります。そのためには、自社の良いところはそのまま残して、課題点は改善することが重要です。その過程で、相手企業から業務フローや組織体制の改革を求められることがあるかもしれません。その際は、できるだけ前向きに対応することが大切です。どうしても変えられない部分や意見がある場合は、前述したように臆せずに伝えるようにしましょう。両社が歩み寄ることで、PMIをスムーズに進めやすくなります。

M&Aの3つの統合形式

M&Aの統合形式には主に以下の3種類があります。どの統合形式を選ぶかによって、PMIに影響を与える可能性があるため、それぞれの特徴を理解して統合方針を策定しましょう。
● (1)連邦型統合
● (2)支配型統合
● (3)吸収型統合

(1)連邦型統合

「連邦型統合」は、売り手(譲渡企業)側の自主性も尊重し、例えば子会社として存続させる統合形式です。企業の成長を支援することを目的としたM&Aで見られます。連邦型統合では、基本的には従来の企業文化・経営方針が維持されるため、売り手企業の従業員の抵抗感は少ない傾向があります。しかし、変化が少ないことからPMIが十分に進まず、M&Aの効果が発揮されにくいこともあるので注意が必要です。

(2)支配型統合

「支配型統合」は、売り手(譲渡企業)を、例えば子会社として存続させながらも、経営に積極的に関与する統合形式です。譲渡企業が経営不振などで不利な状況下にあり、買い手(譲受企業)が有利な場合に見られます。基本的には、譲受企業側の意向が反映されやすいため、経営方針・事業方針・役員構成などが大幅に変更されるケースが多いです。譲受企業が主導するためPMIが進みやすいですが、強引に関与しすぎると、譲渡企業側の従業員の反発が起きやすいので注意が必要です。

(3)吸収型統合

「吸収型統合」は、売り手(譲渡企業)の組織や事業の一部が、買い手(譲受企業)に吸収される統合形式です。吸収の手法には以下の3種類があります。
吸収合併 法人格を消滅させて権利義務のすべてを吸収する
吸収分割 事業の権利義務の一部またはすべて分割して吸収する
事業譲渡 事業の一部またはすべてを売却する

吸収型統合は、譲渡企業そのものや事業が譲受企業に吸収されるため、譲受企業側の意向が強く反映されます。支配型統合と同じく迅速なPMIが行えますが、譲渡企業側の反発が生じやすい傾向があります。

PMIを成功させるポイント

PMIを成功させるためには、以下の4つのようなポイントを意識することが重要です。
● プロジェクトチームを組成して早期に準備を
● コンサルタントに支援を依頼する
● 被買収会社の従業員とのコミュニケーションを徹底する
● 経営陣がリーダーシップを発揮する

プロジェクトチームを組成して早期に準備を

PMIを実行するためのプロジェクトチームを組織しましょう。M&Aを始める前に、PMIのための体制を整えておくことで、契約交渉や手続きなどに集中しているときでも、必要なタイミングでPMIをスムーズに進められるようになります。なお、プロジェクトチームをうまく稼働させるためには、強力なリーダーシップがあるリーダーを選ぶことも大切です。リーダーシップが不足していると、PMIの現場に混乱が生じやすくなるので注意が必要です。

コンサルタントに支援を依頼する

PMIにはさまざまな専門知識やノウハウが必要なので、M&Aに詳しい専門家・コンサルタントに支援を依頼するのが効果的です。自力でPMIを行うよりも、適切かつ効率的にPMIを進めるためのアドバイスが得られるでしょう。

被買収会社の従業員とのコミュニケーションを徹底する

前述したように、売り手(譲渡企業)の企業には、M&Aについてネガティブにとらえる従業員が一定数いることが想定されます。買い手(譲受企業)単独ではPMIを成功させることは困難なので、相手企業との協力体制を構築することが欠かせません。そのためには、相手企業の従業員に対して丁寧な情報発信を行って、M&Aへの理解を進めることが大切です。信頼関係を醸成することでPMIを成功させやすくなり、両社の長期的な成長につながるでしょう。

経営陣がリーダーシップを発揮する

PMIの遂行には、経営陣側のリーダーシップが欠かせません。特に、改革を求められることが多い売り手(譲渡企業)は、従業員を引っ張っていけるようなリーダーシップが必要です。
多くの人は「変化」を嫌うため、売り手側の企業の従業員からは反発が生じがちです。自社の従業員と丁寧なコミュニケーションをとり、意識改革を促せるような体制を構築することで、PMIを成功させやすくなります。

PMIが成功した企業の事例・エピソード

PMIが成功した事例として、以下の4つの企業のエピソードを紹介します。自社のPMIを成功させるために、ぜひ参考にしてみてください。

● 日本たばこ産業株式会社(JT)
● サントリーホールディングス株式会社
● 楽天グループ株式会社
● 日本電産株式会社

日本たばこ産業株式会社(JT)

「日本たばこ産業株式会社(JT)」は、1999年に「RJRI」を、2007年に「Gallaher」を買収しました。M&Aの大きな目的は、グローバル展開を推進することです。少子高齢化が急速に進む日本では、将来的なたばこ市場での収益が見込めず、国際的な競争力を確保する必要がありました。同社の事例では、PMIをスムーズに進めるために海外のM&Aの事例について学び、事前準備を丁寧に行ったことがポイントです。その結果、PMIを短期間で遂行して、国内・海外のたばこ事業の利益バランスがとれるようになるなど、適切なシナジー効果を得ることができました。

サントリーホールディングス株式会社

「サントリーホールディングス株式会社」は、2014年にビーム社をM&Aで買収しました。M&Aの目的は、両社のブランドを強力に展開することや、販売網や技術の獲得などによるシナジー効果です。同社の事例では、経営陣同士が臆することなくコミュニケーションをとり、現場レベルでの擦り合わせを行いました。相互の理解が深まることで、強力なシナジー効果を得ることができました。ビーム社の独立性を維持しながらも、変革のために適切な距離感で関与したことも成功のポイントです。

楽天グループ株式会社

2000年代は、多くの企業はまだ積極的なM&Aを行っていませんでした。その時代から「楽天グループ株式会社」はM&Aを始めて、「楽天トラベル」や「楽天証券」などの前身となる企業を買収しました。主な目的は、自社のインターネット基盤と証券・旅行・アパレルなどの分野を融合して、企業規模と売上を拡大させることです。同社のPMIでは、各分野におけるシナジー効果を十分に獲得して、楽天市場・楽天ブックス・楽天トラベルなどの日常分野から、楽天証券・楽天銀行のような専門分野まで、幅広く事業範囲を拡大させたことです。結果的に、売上とコストそれぞれの面で大きな成果が出ました。

日本電産株式会社

「日本電産株式会社」は、1984年2月から2023年3月までに70件のM&Aを行いました。主な目的な事業拡大にあり、技術力はあるものの経営状態が悪化した企業を買収しています。
成功のポイントは、PMIに積極的に関与してシナジー効果をスムーズに獲得することです。こうすることで、投資回収が行いやすくなり、減損することなくM&Aを成功できています。しかし、PMIの手法によっては相手企業の反発が生じるため、前述したように適切な関与を意識することが重要です。

M&Aの魅力を最大化するPMIを!

M&Aでは統合後のプロセスが円滑に進むことで、M&Aのシナジー効果を最大化して両社の長期的な成長に結びつけることができます。
今回解説したように、買い手(譲受企業)側は改革に向けた丁寧な説明を行い、売り手(譲渡企業)側は臆することなく意見するなど、PMI視点での緊密なコミュニケーションが欠かせません。最適なM&Aの実行を実現するために、PMIの重要性や手法について改めて理解を深めておきましょう。

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