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M&Aのクロージングとは
最終契約書の手続きが済んだら、クロージング手続きに入ります。株式譲渡の場合は、最終契約書の締結日からクロージング日までに取締役会や株主総会で株式譲渡の承認を得て、議事録や株式譲渡承認書を準備します。
最終契約書の締結日の段階でクロージング準備が終わっている場合は、即日クロージングとする場合もあります。クロージングが終了すると、M&A実務は全て完了します。
クロージングとは、英語の「closing(締結・完了)」に由来し、M&Aにおいては最終契約書(DA:Definitive Agreement)に基づいて取引を実際に完了させる手続き全体を指します。交渉・契約締結が「合意」であるとすれば、クロージングはその合意を「現実の権利移転」として確定させる最終局面です。
M&A全体のプロセスは、秘密保持契約の締結→意向表明→基本合意→デューデリジェンス→最終契約→クロージングという流れで進みますが、クロージングはその最終ステップに位置します。
クロージングを実行するためには、あらかじめ最終契約書に定められた「クロージング前提条件(コンディション)」を満たす必要があります。代表的な前提条件としては、①必要な許認可・行政承認の取得、②重要な表明保証事項に虚偽がないこと、③重大な悪影響(MAC条項)が発生していないこと、などが挙げられます。これらの条件が整わない場合、クロージングは延期または中止となる可能性があります。
クロージング当日は、売手・買手双方の代理人が一堂に会し(または書類郵送・電磁的方法により)、書類の授受と代金決済を同時に行うのが一般的です。この「書類の引き渡し」と「対価の支払い」を同時履行することで、一方的なリスクを回避する点が重要です。
クロージング完了後は、PMI(Post Merger Integration:統合後マネジメント)フェーズへ移行します。クロージングはM&A実務の完了を意味しますが、事業の真の統合はその後に始まります。クロージングを円滑に進めることが、その後のPMIの成否にも影響するため、事前の準備と確認が不可欠です。
以下の表では、代表的なM&Aスキームごとにクロージング手続きの特徴を比較しています。自社の状況に合ったスキームを検討する際の参考にしてください。
| 比較項目 | 株式譲渡 | 事業譲渡 | 合併・会社分割 | 第三者割当増資 |
|---|---|---|---|---|
| クロージング手続きの複雑さ | 低い | 中程度 | 高い | 中程度 |
| 当日完結の可否 | 即日完結が可能 | 許認可取得により複数日かかる場合あり | 登記完了まで数週間要する | 新株発行登記が必要 |
| 株主総会決議 | 譲渡制限株式会社のみ必要 | 重要な事業譲渡は必要 | 特別決議が必要 | 条件により特別決議が必要 |
| 債権者保護手続き | 不要 | 不要 | 原則必要 | 不要 |
| 契約からクロージングまでの期間 | 短期(数日〜数週間) | 中期(数週間〜数ヶ月) | 長期(1〜3ヶ月程度) | 中期(数週間〜数ヶ月) |
スキームによってクロージングまでの期間や必要な手続きは大きく異なるため、スケジュールや事務負担を考慮したうえでM&Aの手法を選択することが重要です。
クロージング手続きの内容
クロージングの手続きは、M&Aのスキームによってその内容が異なります。
・株式譲渡
・事業譲渡
・合併、会社分割
・第三者割当増資
・株式譲渡
株式譲渡
株式譲渡とは、株式の売買取引によって経営権を移転させるスキームです。資産の引き渡しは、株式名簿を書き換えるだけで完了します。中小企業のM&Aにおいて、株式譲渡は最も多く利用されるスキームです。
M&Aに必要な交渉は、最終契約書締結の段階で完了しています。クロージング手続きは、株式譲渡実行のための必要書類が準備されていること、その有効性の確認、各書類の署名押印の確認などになります。
これらの手続きの後、株式の引き渡しと取得対価の支払いが行われます。必要な書類が欠如している場合、正しい手続きが取られていない場合、M&Aの正当性や有効性が充足されないので注意が必要です。
譲渡対象が非公開会社(注)の場合、上記の手順に加えて株式の譲渡承認が必要です。売手はクロージングまでに、取締役会もしくは株主総会を開催して株式の譲渡承認を得ることになります。
(注)株式を証券取引所に上場していない会社(非上場会社)。 また、日本の会社法では上場しているか否かにかかわらず、定款で株式譲渡制限が設けている株式会社のことを言います。
非公開会社と公開会社の比較
| 非公開会社 | 公開会社 | |
|---|---|---|
| 株式の譲渡制限 | あり (会社法第2条17号) |
なし (会社法第2条5号) |
| 取締役会 | 設置は任意 (取締役1名で可) |
設置が必要 (取締役は3名以上必要) |
| 監査役 | 取締役会を設置する場合、 会計参与か監査役が必要 |
設置が必要 |
| 監査役の権限 | 会計監査 | 業務監査、会計監査 |
| 取締役・監査役の任期 | 10年まで伸長可能 | 取締役2年、監査役4年 |
| 株主総会の招集通知 | 原則1週間前 | 原則2週間前 |
事業譲渡
事業譲渡は事業の一部を切り離して譲渡する方法です。特定の事業のみを引き渡すため、会社の経営権は移転しません。売手にとっては、譲渡事業を選択できるメリットがあります。ただし、引き渡す資産・負債は個別に承認を得る必要があるので、株式譲渡の場合と比べると手続きが複雑になります。また、クロージング日に行う手続きが1日で済まない場合があります。買手が新たに許認可を取得するなど、事業譲渡日と一致しないことが多いです。
合併、会社分割
合併は複数の法人格を一つに統合するスキームであるのに対して、会社分割は単一の法人格を複数に分割するスキームです。会社法上、これらのスキームは組織再編と言われ、株式交換や株式移転なども組織再編のスキームになります。組織再編を実行する際には、株主総会の特別決議承認、債権者の利益を保護するための債権者保護手続きが必要です。一定の期間を要するため、契約日からクロージングまで一定期間を要するのが特徴です。なお、株式交換や株式移転の場合、法人格は維持されるので権利義務の承継は発生しません。債権者保護手続きは、一部の例外を除き不要です。
第三者割当増資
第三者割当増資は、第三者に新株を引き受ける権利を付与して株式を発行するスキームです。
第三者割当増資のクロージング手続きは、売手が取締役会の決議を取り、新株発行手続きを実行して完了します。ただし、株価の価格が適正価格よりも乖離している場合、株主総会の特別決議が必要になります。

売手が準備するクロージングの必要書類(株式譲渡の場合)
売手が準備するクロージング書類は、主に以下の5つがあります。
・株式譲渡承認の議事録
・株式譲渡承認書兼承認通知書
・株主名簿記載事項書換請求書
・株主名簿
・株式譲渡代金の領収書
株式譲渡承認の議事録
譲渡制限株式会社の場合、株式譲渡承認の議事録が必要になります。売手の会社定款に株式の譲渡を制限する旨の記載ある場合、譲渡制限株式会社(非公開会社)に該当します。
中小企業のM&AのM&Aの場合、売手は譲渡制限株式会社であることがほとんどです。
株式譲渡承認書兼承認通知書
株式譲渡承認書は、株主総会の特別決議にて株式譲渡の承認を得たことを示す書面です。会社による株式の承認を得て、クロージングすることを証明するために準備します。
株主名簿記載事項書換請求書
株主名簿記載事項書換請求書とは、株主名簿の書き換えを行うための請求書面です。株式譲渡によって株主が変わる際も必要です。
株主名簿
持分比率がわかる株主名簿を提出します。株主名簿は、基本的に会社に保管されるものです。
株式譲渡代金の領収書
買手が準備するクロージングの必要書類(株式譲渡の場合)
譲受側が準備するクロージング書類は、主に以下の4つになります。
・顧問契約書
・クロージング書類受領書
・譲受会社の印鑑証明書
・譲受会社の登記簿謄本
顧問契約書
売手のオーナー社長などと顧問契約を締結する場合は、顧問契約書を準備します。株式譲渡後、円滑な引継ぎが終了するまでの一定期間、会社に残ってもらうように買手から依頼することがあります。
クロージング書類受領書
売手のクロージング関連書類や重要な提出物の受領書です。買手が売手から、重要書類を受領したことを証明するために発行する必要があります。
買手の印鑑証明書
クロージングの際は、会社の印鑑証明書も必要です。印鑑証明書の発行は法務局で手続きすることができます。
譲受会社の登記簿謄本
登記簿謄本(登記事項証明書)も用意しておきましょう。こちらも法務局より発行手続きをします。
参考) 取引形態別の文書に係る印紙税額
| 営業の譲渡(事業譲渡) に関する契約書 |
会社法に規定する 合併契約書 |
会社法に規定する吸収分割契約書 若しくは新設分割計画書 |
|---|---|---|
| 第1号文書 | 第5号文書 | 第5号文書 |
| 記載された契約金額による | 4万円 | 4万円 |
| (最低 200 円、最高 60 万円) |
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