食品卸業界の動向およびM&Aについて【2024年版】

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食品卸業界の動向

2022年の食料・飲料卸売業の販売額は、前年比6.9%増の57.1兆円でした(経済産業省「商業動態統計(2023年2月))。

出所:経済産業省資料より

食料・飲料卸売業の販売額の推移は、2019年は前年に比べて減少しましたが、2020年以降は再び増加傾向になりました。2022年は、本統計の公表期間(43年間)で最高額を記録し、コロナ禍でも底堅く推移しています。

2020年の食品卸業界は、コロナによる巣ごもり需要増の影響によって、スーパーやディスカウントストアなど家庭向け販売額は伸長しましたが、飲食店向けの業務用需要が落ち込み、全体的には横ばい、企業によっては微増となりました。

2021年の食品卸業界は、年前半のコロナ禍による落ち込みと年後半の経済再開の一年となりました。前年に落ち込んだ業務用は一部で回復しましたが、前年好調だった家庭向け食品需要は反動減でした。

食品卸業界の売上高ランキング(20212022年)

食品卸業界の売上高ランキング(1位~10位)は、以下の通りである。

売上高ランキング (億円)
順位 会社名 売上高
1位 日本アクセス(伊藤忠商事の完全子会社) 21,203
2位 三菱食品(7451) 19,556
3位 国分グループ本社(未上場) 18,814
4位 加藤産業(9869) 11,371
5位 三井食品(三井物産グループ) 6,643
6位 伊藤忠食品(2692) 6,126
7位 ヤマエグループホールディングス(7130) 5,036
8位 スターゼン(8043) 3,814
9位 西本Wismettacホールディングス(9260) 2,132
10位 トーホー(8142) 1,885

出所:会社四季報などより作成

三菱食品は三菱商事のグループ会社であり、菱食など4社が統合して誕生した会社である。
なお、ヤマエグループホールディングスは食品関連と糖粉・飼料畜産関連事業、トーホーはディストリビューターとキャッシュアンドキャリー事業の売上高である。

新型コロナウィルスの感染拡大により、食を取り巻く環境は大きく変化しました。大手各社はコロナ対策として以下の施策を行っています。
三菱食品は、冷凍食品の「ミールキット」の販売に注力しています。ミールキットは加工済みの食材と調味料がセットになっており、簡単に調理することができます。コロナ禍による内食需要と共働きによる時短需要の高まりに対応しています。また、三菱食品はコロナ禍で経営が厳しい飲食店と、集客が好調なスーパーのマッチング事業を展開しています。これによって、飲食店はスーパーの空きスペースを借り、小売店側は販売チャネルを持つことができます。

加藤産業は2020年10月にMerison社(マレーシア:卸売業)を買収しました。すでに展開しているマレーシア北部に加えて、シンガポールとのシナジーも期待も見込めます。
伊藤忠食品は2019年7月に「デリッシュキッチン」などを展開するエブリーと資本・業務提携を締結しました。両社は好調なスーパー向けにレシピ動画などを提供するデジタルサイネージの設置拡大に取り組んでいます。

食品卸業界のM&A

最近の食品卸業界のM&A(一部)

年度 買い手 対象企業・事業
2020 泉平(未上場、兵庫県:食品卸) 大森食品(岡山県:食品卸)を子会社化(事業規模の拡大)
2020 旭食品株式会社(未上場) ヤマキ(静岡県:食品卸)を子会社化(事業規模の拡大)
2020 株式会社西原商会 龍屋物産(神奈川県:珍味・嗜好食品の企画及び製造卸)を
子会社化
2020 株式会社西原商会 松山製菓(岐阜県:各種菓子製造)を子会社化
2020 株式会社西原商会 Eatreat(東京都:管理栄養士・栄養士向け応援サイト「Eatreat(イートリート)」運営)を子会社化
2021 国分グループ本社(未上場) ヨシムラフード・ホールディングスの第三者割当増資を引き
受け(4.9%)
2021 株式会社トーカン(未上場) 三給(愛知県:給食市場向けの食品卸)を完全子会社化
2021 加藤産業(9869) Song Ma Retail Joint Stock Company(SMRC)(ベトナム、加工食品卸売業)を子会社化
出所:各種開示資料より作成

食品卸業界の課題および今後について

食品卸売業界の需要動向は、短期的には安定的に推移しているが、中長期的には人口減少によって横ばいあるいは縮小すると思われる。今後の事業戦略として以下が考えられる。
「地域密着型戦略」
「商材の充実化および流通の効率化」
「システム投資およびIT戦略」
「営業エリアの拡大」
「海外進出」

「地域密着型戦略」
中小規模の食品卸会社が、大手食品卸に対抗するため選択する事業戦略である。

「商材の充実化および流通の効率化」
特に中小規模の食品卸会社は、商材の充実化および流通の効率化によって、各取引先との取引量の増加、収益力の向上を図る必要がある。

「システム投資およびIT戦略」
大手食品卸は、大規模なシステム投資によって商品調達から販売に至るまでのプロセスを総合管理するシステムを導入し、売れ残りや欠品などを防ぐために流通の効率化を図る戦略を取っている。また、同業界では消費者ニーズの多様化・成熟化に対応するため、従来の販売手法に加えて、デジタル化によって様々なデータの活用を通じた新たな販売戦略の推進が必要とされている。既に大手総合商社の中には、動画メディア・広告会社とスーパー向けレシピ動画などを提供するデジタルサイネージの設置拡大に取り組んでいるころがある。

「営業エリアの拡大」
営業エリアの拡大は売上増加に直接的に貢献するため、特に大手食卸がM&Aを活用して取り組んでいる。

「海外進出」
食品卸売業界では、将来の人口減少によって国内需要が縮小するため、今後、経済成長が期待され、人口が増加する東南アジアなどに進出する動きがさらに進むと予測される。

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