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初歩からわかるコピー複合機リース業界M&A
近年、コピー複合機リース業界のM&Aが増えています。ここでは、コピー複合機リース業界の市場動向やビジネスモデル、M&Aの買い手側によるデュー・ディリジェンスにおける注意点、企業価値評価(株価算定)で使う数値(マルチプルなど)について説明します。これらから、コピー複合機リース業界においてM&Aを成功させるためのポイントについて考えてみましょう。
I M&Aの多いコピー複合機リース業界の現状
コピー複合機リース業界の全体像を理解するために、市場動向や経営環境、ビジネスモデル、M&Aの買い手候補となる同業他社について説明します。
【1】 コピー複合機リース業界の市場動向・経営環境
コピー複合機リース業は、コピー複合機、会計システムなど事務用機械器具を賃貸する事業者のことをいいます。このような賃貸業を正確に分類しますと、物件をリースする方式(1年以上の賃貸で解約不能なもの)と、レンタルする方式(1年未満の賃貸)の2種類があります。
わが国の事務用機械器具リース売上高は、経済産業省「特定サービス産業動向統計調査(平成29年)」によれば、1995年の7,900億円から2017年の3,700億円へと半減しています。リース契約額自体についても、2007年の6兆3千億円から、2017年の5兆円へと減少しています。これは、コピー機を中心に機器のダウンサイジングが進んでいること、性能向上と低価格化が進んでいることが原因です。
【2】 コピー複合機リース業界のビジネスモデル
コピー複合機リース業のビジネスモデルは、メーカーから機械を購入またはリースし、それを顧客である利用者へ長期間リースするというものです。その料金は、輸送・設置料金、月額基本料金、コピーの枚数に応じたカウンター料金として請求されます。それゆえ、収益の安全性と高い収益率が確保されています。
コピー機のメンテナンスや消耗品の交換作業を行うことから、機械に関する専門知識と技術が求められます。それゆえ、営業管理と情報共有の仕組みが重要です。
【3】 コピー複合機リース業界M&Aで買い手候補となる企業
コピー複合機リース業の事業承継を目的としたM&Aであっても、買い手候補は上場企業や大企業が中心になると考えられます。この業界では、以下のような上場企業が中心となって業界再編を進めていくことが想定されます。
芙蓉総合リース、レカム、スターティアホールディングス、大塚商会、フォーバル、京セラドキュメントソリューションズジャパン、東北インフォメーション・システムズ、三共リース、日本オフィス・オートメーション、オフィスコーポレーション、千葉測機、ジャパンギャランティサービス、ジービーエス、トータルオフィスネットワーク、です。
II コピー複合機リース業界M&Aで売却する売り手のメリット
安定している大手企業にM&Aでコピー複合機リース業を承継することで、従業員の雇用を維持し、事業のさらなる成長を実現することができます。また、得意先であるコピー複合機のユーザーは、リースまたはレンタルを継続することもできることに加え、メーカーとの関係を継続することができます。
また、小規模事業者が単独では難しかったIT投資によるデジタル化の推進よって、コピー複合機リース業の物件管理の効率化を実現することができます。結果として生産性が向上すれば、従業員の給与水準をアップさせることができるでしょう。
さらに、買い手企業が大企業であれば、取引規模の拡大による生産性向上、大量仕入れによる原価の引下げや、人材採用コスト、広告宣伝費、本社経費を削減し、M&Aによるシナジー効果を得ることができます。
以上のようなシナジー効果が期待され、買い手候補にとって魅力的な事業であれば、売り手側の経営者は、高い売却価格を実現することができ、引退した後のライフプランを充実したものとすることができます。
III コピー複合機リース業界M&Aで買収する買い手の注意点
コピー複合機リース業界で買収を行う際、デュー・ディリジェンスにて調査すべき経営資源や注意点を説明します。
【1】 コピー複合機リース業の買収デュー・ディリジェンスにおける注意点
コピー複合機リース業は、手元に保有する経営資源が少ないという特徴があります。物件はユーザー側で使用されているからです。
コピー複合機リース業の事業性を評価する場合の注意点として、顧客管理体制、サービス提供体制、運営組織などの管理体制が整備されていることを確かめる必要性があります。
また、顧客関係を継続するための営業マンを抱え、わかりやすい提案営業などの販売促進活動を行っているかどうか確かめることも必要でしょう。
【2】 コピー複合機リース業の買収で承継すべき経営資源
コピー複合機リース業では、ユーザーとのリース契約が基本となる経営資源です。顧客関係が継続することによって、安定的に利益を確保することができます。
逆に、メーカーとの良好な関係性が不可欠の経営資源となります。賃貸物件を調達することのみならず、事業運営上の指導を受け、最新の技術トレンドに係る情報提供を受けることで、ユーザーに対する営業活動を続けることができます。
コピー複合機リース業のM&Aを行う場合は、顧客関係の引継ぎに時間と労力をかけるなど、リース契約の承継を丁寧に行うことが重要でしょう。
IV コピー複合機リース業を買収するときの企業価値評価(株価算定)
コピー複合機リース業のM&Aにおける企業価値評価(株価算定)を行う際に活用することができる財務数値は、以下の通りとなっています。
【1】 コピー複合機リース業の評価で使う資本コストとマルチプル
まず、TKC経営指標(2018年度)によれば、コピー複合機リース業の収益性について、売上高成長率は約18.2%です。また、粗利率は57.8%、営業利益率は6.5%となっています。生産性について、1人当たり売上高は1,246万円、1人当たり人件費は398万円となっています。
次に、2020年8月現在の開示情報および市場株価によれば、コピー複合機リース業のマルチプル(倍率)について、PBR倍率は2.0~2.5倍、PER倍率は25~30倍、EBITDA/企業価値倍率は8~12倍となっています。
さらに、筆者が推計するコピー複合機リース業の株主資本コストは、安定した老舗企業であれば10%、急成長の新興企業であれば15%が妥当であると考えます。これは、この類似上場企業のROICが5~10%であることを考慮しつつ、類似上場企業のベータ値が0.8~1.2であること、ヒストリカル・マーケット・リスク・プレミアム(1950年代~2020年)が7%~9%であることを前提にして、小規模リスク・プレミアムを加算して推計しています。
【2】 コピー複合機リース業の類似上場企業比較法で採用すべき企業の例
コピー複合機リース業を評価する類似上場企業比較法で採用すべき上場企業として、レカム、スターティアホールディングス、大塚商会が挙げられます。
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