ビルメンテナンス業界の動向およびM&Aについて【2023年版】

監修

経営承継支援編集部

この記事は、株式会社経営承継支援の編集部が監修しました。M&Aに関してわかりやすく役に立つ記事を目指しています。

目次 [ ]

 

Ⅰ ビルメンテナンス業界の動向

ビルメンテナンスの需要動向

ビルメンテナンス業界が安定して成長している要因には、以下の点がある。

・マンションやオフィスなどの管理物件の増加

・オフィス賃料の上昇や、空室率の減少

・業界の人手不足、人件費の高騰による、契約単価も上昇

マンションやビルが存在する限り、メンテナンスの需要は無くなることはない。

例えば、新型ウィルス感染拡大により、新築マンションの新規の供給戸数(首都圏、近畿圏)は、2020年に対前年比で約20%減少したが、2021年には2019年並みに回復すると見込まれている。

20192021年・新築マンション供給戸数の実績と予測値

さらに、高度経済成長期に建設されたマンションやビルの老朽化が進んでおり、建て替えの需要が必要である。また、建て替えが難しい場合は相応のメンテナンスが必要です。今後も、国内のビルメンテナンスの需要は、継続して発生すると予測される。

 

2021年(令和3年)の税制改正

本改正では制度の対象となる住宅の床面積が、従来の「50㎡以上」から「40㎡以上」に拡充された。この面積要件緩和は、消費税10%が適用される住宅が対象のため、新築(未使用)住宅と売主が事業者の中古住宅(個人売主は対象外)等に適用される。

本改正によって、従来は減税の恩恵を受けられなかった40 ㎡台のコンパクトな住宅も減税対象となった。40 ㎡台の住宅購入者は、12人暮らしの世帯と想定される。今までこの世帯層は、ファミリー世帯と比べて賃貸住宅を選択する割合が高かったと推測される。今後、12人暮らしの世帯による、40㎡台の住宅取得が増加すると思われる。

令和3年度住宅取得関連税制の主な改正点

Ⅱ ビルメンテナンス業界の売上高ランキング

ビルメンテナンス業界の売上高ランキング(1位~10位)は、以下の通りである。

順位 会社名 売上高(億円)
1位 イオンディライト(9787) 3,000
2位 東急不動産ホールディングス(3289) 1,848
3位 共立メンテナンス(9616) 1,212
4位 日本ハウズイング(4781) 1,149
5位 日本管財(9728) 1,041
6位 ビケンテクノ(9791) 346
7位 東洋テック(9686) 260
8位 大成株式会社(未上場) 247
9位 ハリマビステム(9780) 241
10位 アール・エス・シー(4664) 59

出所:ビル管理業界 売上高ランキング(2020-2021年)-業界動向サーチ

上記10社の売上高合計(2020年-2021年)は、9,403億円である。業界の市場規模は約4兆円なので、上位10社で全体の約25%を占めている。この上位10社の売上高合計(9,893億円)のうち、イオンディライト(9787)が約3割を占めている。

Ⅲビルメンテナンス業界のM&A

ビルメンテナンス業は、不足するメンテナンス技術者・清掃スタッフの獲得、周辺業務への参入を目的として、買収ニーズが非常に強い業種である。他業種と比較すると、売り手主導による、より良い条件での交渉が可能である。

最近のビルメンテナンス業界のM&A(一部)

発表月 買い手 対象企業・事業
2019 三幸(4843) 都市総合サービス(東京都:清掃・設備管理)を子会社化。
2020 株式会社ホクタテ 有限会社ふきのとう(富山県:ビル管理および清掃請負)を完全子会社化。
2020 東洋テック(9686) 新栄ビルサービス(兵庫県:建物総合管理業)を完全子会社化。
2020 ジャパンエレベーターサービスホールディングス(6544) セイコーエレベーター(東京都:エレベーター等メンテナンス事)を子会社化。
2020 ファーストブラザーズ(3454) 富士ファシリティサービス(大阪府:ファシリティマネジメント)を子会社化。
2020 TOKAIホールディングス(3167) イノウエテクニカ(静岡県:ビルメンテナンス業)を完全子会社化。
2020 穴吹ハウジングサービス 建衛工業(北海道:分譲マンション管理、ビルメンテナンス業)を子会社化。

ビルメンテナンス業界の課題と今後の展望について

国内市場における人手不足

国内市場にいては、若年層・マネジメント層の人手不足は、年々深刻化している。また、若年層やマネジメント層のみならず、パートやアルバイトも含め、業界全体で人手不足に陥っている。

ビルメンテナンス業は労働集約型の産業である。機械よりも人間の労働力への依存度が高いため、「いかにして優秀な人を大量に確保するか」が鍵になる。人手不足に陥ると、新規受注も受けることができなくなる。

人手不足を解決するには、外国人の活用、清掃ロボットの活用、警備ロボットの活用の3つの方法がある。

外国人の活用については、外国人技能実習生の受け入れに関心を持つ企業は増加している。「ビルメンテナンス情報年鑑2020)」によると、「受け入れを積極的に拡大していきたい」「今後も受け入れを継続したい」「受け入れを前提に検討している」という3つの回答の合計は、「本社:29%」「支社・営業所:35.6%」である。前年の2019年調査の「本社:24%、支社:34.5%」より増加している。

「清掃ロボット」や「警備ロボット」は実証実験が進められているが、すぐに実用化される状況ではない。

更なる海外展開の加速

中国やASEAN諸国などにおいては、今後も建設需要が見込まれている。一方、これらの国々では、まだビルメンテナンスの技術・ノウハウが不足しているところもある。

また、日本国内では人材不足が深刻であるが、経済成長の段階にある国々では多くの人材を確保することができる。

このようにビルメンテナンスの需要があり、かつ、豊富な労働力がある点を考えると、今後も上位10社を始めとして海外進出は加速すると思われる。

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