M&A BUZZ

M&Aのメリット・デメリットとは?買い手、売り手それぞれの目線で徹底解説

監修

経営承継支援編集部

この記事は、株式会社経営承継支援の編集部が監修しました。M&Aに関してわかりやすく役に立つ記事を目指しています。

目次 [ ]

目次

近年、事業継承の手法としてM&Aに注目が集まっています。M&Aは、買い手側と売り手側の双方にさまざまなメリットをもたらす一方で、デメリットも存在します。
M&Aを成功させるには、メリットだけでなくデメリットも十分理解し、事前に対策を取ることが大切です。本記事では、M&Aのメリット・デメリットについて分かりやすく解説します。

M&Aの買い手のメリット

はじめに、M&Aの買い手のメリットについて詳しく解説していきます。
M&Aの買い手の主なメリットは以下の通りです。
● M&Aは事業成長にかかる時間を買って短縮できる
● ビジネス規模の拡大ができる
● 競合他社を吸収でき、自社が有利になる
● 新規事業に参入できる
● 自社に不足している技術力を強化できる

M&Aは事業成長にかかる時間を買って短縮できる

新規事業を立ち上げたり、既存事業を拡大させようとしたりする場合、土地や建物、設備、人材などを準備するための相応のコストや時間がかかります。事業が軌道に乗ってからも、事業運営のためのノウハウの蓄積や人材育成、取引先の新規開拓などさまざまな点で時間が必要です。しかし、M&Aでその事業に関する十分なリソースを持った会社を買収することで、事業を運営するために必要なものをまとめて入手できます。

ビジネス規模の拡大ができる

M&Aを行うことで得られるのは、不動産や設備などの有形資産だけではありません。事業運営に必要な人材や技術、ノウハウや流通網などの無形資産も同時に得られるので、短期間でビジネス規模を拡大することが可能です。買収先によっては、これまで未知だった販路を取り扱うことになります。新たな可能性を発掘でき、ビジネス規模の拡大が期待できるのも大きなメリットといえるでしょう。

競合他社を吸収でき、自社が有利になる

同業他社を買収することにより短期間で事業拡大ができるのも魅力ですが、競合他社の吸収はマーケットシェアの拡大にもつながります。
例えば、いすゞ自動車は2021年に当時ボルボ・グループの傘下だったUDを買収し、2022年の新車販売シェアにおいて日野自動車に代わって首位に立ちました。また、競合他社の買収では、マーケットシェアを拡大できるだけでなく、競合が減ることによって利益が増大する効果も期待できます。

新規事業に参入できる

新規事業への参入には、さまざまなリスクが生じます。多額の費用を投資して土地や建物、設備や資材などを調達しても、事業が軌道に乗らなければ大きな損害となるでしょう。事業を成功させるには有形資産も必要ですが、知識やノウハウ、流通網などの無形資産も重要です。M&Aによってその分野で実績のある会社を買収すれば、新規事業参入のリスクを軽減できるでしょう。M&Aでは競合他社を買収するケースだけでなく、無関係に見える異業種企業が会社の買収や子会社化を行い、新しい分野に進出するケースも少なくありません。

自社に不足している技術力を強化できる

M&Aは新規事業に参入するためだけでなく、既存事業の強化を目的に行われるケースもあります。自社が抱える課題や弱みを補う力を持つ会社を買収することで、不足している技術力を向上することができます。例えば、大正製薬は2017年に通販顧客の取り込みやスキンケア領域の強化を図るために、ドクタープログラムを買収しました。M&Aを行うことで新しい販路や顧客を獲得するだけでなく、これまで自社になかった知識や技術、ノウハウを得ることで利益の増大を実現することもできるでしょう。

<大見出し>
M&Aの買い手のデメリット

M&Aによって得られるメリットがある一方、デメリットも存在します。ここでは、M&Aの買い手のデメリットについて詳しく解説していきます。

M&Aの買い手の主なデメリットは以下の通りです。

● M&Aのみに絞ると買収先が見つからない場合もある
● 優秀な人材を逃す場合もある
● 取引先との関係が悪化する可能性もある
● 買収後に問題が見つかることも考えられる
● 許認可がうまくいかずに事業継続できない懸念
● 期待したシナジー効果が生まれない
● 買収金額とリターンが見合わないこともある
● 買収企業の従業員から不満が出る場合もある

M&Aのみに絞ると買収先が見つからない場合もある

新規事業を立ち上げる際は、必ずしもM&Aを行うことが得策とは限りません。販路の分野によってはM&A市場にまだ出ていない事業もあり、M&Aのみに絞って検討すると買収先が見つからない場合もあります。

優秀な人材を逃す場合もある

M&A後は、売り手側の労働条件や業務内容、働き方などに変更が生じる可能性があります。場合によっては売り手側の従業員と買い手側の従業員とで待遇や評価に差が出てしまい、不満を抱いた優秀な人材が外部に流出してしまう恐れもあります。優秀な人材の流出を防ぐには、買収後の待遇やキャリアプランについてあらかじめ話し合いを行うことが大切です。

取引先との関係が悪化する可能性もある

M&Aでは販路を拡大できるメリットがある一方で、取引条件の変更や事業の一部廃止によって既存の商品やサービスを提供できなくなることで、取引先との関係が悪化する可能性もあります。M&A後も取引先との円満な関係を継続させるには、M&Aの検討段階で取引内容を確認することが重要です。

買収後に問題が見つかることも考えられる

買収後に簿外債務や偶発債務などの問題が見つかる場合もあります。M&Aでは買収企業の資産を引き継ぐだけでなく、このような債務も引き継がなければならないのです。事前に把握した上でM&Aを行う場合は問題ありませんが、契約後に発覚するケースもあるので注意が必要です。買収後の問題発覚を防ぐには、デューデリジェンス(DD)において可能な範囲で買収先を精査することが大切でしょう。

許認可がうまくいかずに事業継続できない懸念

M&Aにおいて、売り手側の事業運営に必要な許認可の継承が課題になることがあります。許認可などの継承準備が適切でないと事業継続が困難になり、場合によっては取引先を失う可能性も考えられます。M&Aを行う際は、許認可などの継承に必要な知識や手順を理解しておくことが重要です。

期待したシナジー効果が生まれない

M&Aではノウハウや技術を共有することで、さまざまなシナジー効果が期待できるとされています。しかし、必ずしもM&Aを実施したからといって期待したシナジー効果を得られるわけではありません。M&Aによって管理コストが増えたり、優秀な人材が外部に流出したりすることで、結果的に事業にマイナスな影響が出てしまうこともあります。M&Aを行う際は事前調査をして、過大評価し過ぎないよう冷静に分析することが大切です。

買収金額とリターンが見合わないこともある

競争相手がいる場合、どうしても売り手企業を買収したいために価格が高騰することがあります。買収することだけにとらわれると、買収後に事業が成功しても投資対効果がなかなか得られずにマイナスな影響を及ぼしかねません。M&Aを行う際は、求める会社を買収できるかどうかだけでなく、買収金額に対するリターンにも注目する必要があります。

買収企業の従業員から不満が出る場合もある

M&A後は買い手側の雇用条件が引き継がれることが多く、売り手側の従業員は少なからず変更を強いられる立場となります。M&A以前よりも待遇が改善されたり、仕事にやりがいを感じられたりできれば良いですが、場合によっては待遇や仕事内容の変更に不満を抱く可能性もあります。従業員の不満を防ぐには、早い段階で待遇面や仕事内容の変更についてしっかりと説明したり、売り手企業のキーパーソンと信頼関係を築いたりすることが大切です。

M&Aの売り手のメリット

ここからは、M&Aの売り手のメリットについて詳しく解説していきます。
M&Aの売り手の主なメリットは以下の通りです。
● 事業承継問題を解決できる
● 取引先との取引維持にも役立つ
● 売却により金銭的な収入となる
● 事業を成長できるほか売却資金で発展もできる
● 従業員の雇用を確保できる
● 廃業コストが少なくなる
● 創業者の利益を確定できる
● オーナー一族の個人保証からの解放
● 相続税対策

事業承継問題を解決できる

近年、経営者の高齢化による事業承継問題が増えています。少子高齢化により後継者が見つからないだけでなく、国内市場の縮小やマーケットの競合激化によって事業がうまくいかなくなり、子どもや親族、従業員に継がせたくないという経営者も少なくありません。しかし、M&Aによって事業を第三者に譲渡・売却することで、事業を継続させることができます。働く従業員を守るためにも、M&Aは事業承継問題を解決する有効な手法といえるでしょう。

取引先との取引維持に役立つ

廃業をしたくても取引先への影響を考えると、廃業できないというケースもあります。良好で安定した信頼関係を築いてきた取引先は、ビジネスパートナーとしてかけがえのない財産ともいえるでしょう。M&Aでは多くの場合、急激な変化によって企業価値が下がるような事態は避けたいと考えるため、これまでの事業継続に必要な取引先に不安を抱かせる対応はとりません。そのため、合理的な理由や実績があれば、従来の取引先との取引維持をM&Aの条件に交渉することも可能です。

売却により金銭的な収入となる

経営者は会社を売却することにより、金銭的な収入が得られます。高齢の経営者の中には、事業を現金化し、引退後の生活資金にあてる人もいます。売却によって得られる金額は企業価値によって大きく異なり、企業価値が高く評価されればそれだけ高く売却することが可能です。

事業を成長できるほか売却資金で発展もできる

M&Aを経営戦略的に活用し、将来性のある優良企業に自社の事業を託すことで、自社だけでは成し得なかった成長と進化を遂げる可能性もあります。
また、この先も安定するか分からない事業の場合は、売却のタイミングで利益確定できるため、リスクを回避できます。売却資金を成長中の事業に投資することでさらなる発展が期待できるなど、M&Aを利用してさまざまな戦略をとることも可能です。

従業員の雇用を確保できる

会社を廃業をすれば従業員は職を失うことになり、従業員の生活に大きな影響を与える可能性もあるでしょう。M&Aであれば、従業員も買い手企業に引き継がれるため、雇用を確保できます。また、従業員のこれまでの経験や習得したスキル・知識を活かしながら働ける可能性も残せます。

廃業コストが少なくなる

会社を廃業するには、さまざまなコストがかかります。例えば、事務所や店舗などの処分や原状回復、在庫処分、税務処理の依頼などの費用が必要です。さらに、廃業後の生活費や金融機関への返済金なども確保しなければなりません。しかし、M&Aが成立すれば、廃業コストがかからず事業を引き継ぐことができます。

創業者の利益を確定できる

売主がオーナー株主の場合、会社を売却することで創業者利益を確定できます。簡単に言えば、M&Aによる売却額から、会社を立ち上げて投下した資金や株式資本を差し引いた差額が、創業者利益となります。

オーナー一族の個人保証からの解放

買い手が保証(債務保証、不動産等担保提供)を肩代わりするので、経営の責任や苦悩から解放されます。一方で、親族内承継・従業員承継の際は、オーナー一族の個人保証を継続せざるを得ない場合があることも覚えておきましょう。

相続税対策

流動性のない非公開株が現金化され、遺産分割が容易になります。このため相続がスムーズに進むのもM&Aの魅力でしょう。

M&Aの売り手のデメリット

ここでは、M&Aの売り手のデメリットについて詳しく解説していきます。
M&Aの売り手の主なデメリットは以下の通りです。
● 買い手が現れない、想定価格で事業売却できない場合もある
● 企業文化を浸透させるのに時間を要する
● 取引先との仲違いが生じることもある
● 希望金額で売却できないこともある

買い手が現れない、想定価格で事業売却できない場合もある

M&A市場において、会社の価値は主に「将来的にどれほどの収益を見込めるか」で評価されます。高い収益を出している事業や企業であっても、将来的な可能性が低いと判断されれば、売却金額が想定よりも低くなる可能性もあります。また、M&Aではお互いの条件がマッチする会社との出会いも大切です。自力では選択肢が限られることが多いため、幅広く買い手を見つけることができる外部ネットワークを活用するのがおすすめでしょう。

企業文化を浸透させるのに時間を要する

異なる企業文化を持つ会社に買収された場合、企業文化を浸透させるのに時間がかかることもあります。
うまく企業文化に馴染めず、売り手側と買い手側の従業員間に派閥が生まれ、社内が混乱してしまう可能性も考えられます。また、実務においても社内システムの変更や統合に時間がかかり、担当者の負担が大きくなってしまうことも少なくありません。

取引先との仲違いが生じることもある

M&Aによって契約内容が変更されたり、担当者が変わったりすることで、取引先と仲違いが生じる可能性もあります。
特に長年付き合いのある取引先の中には「あなたの会社だから取引をしていた」というケースもあるでしょう。場合によっては契約を打ち切られることもあり、会社に不利益につながることもあります。良い関係を続けるためには、丁寧に説明して引き継ぐことが大切です。

希望金額で売却できないこともある

M&Aでは希望金額で売却できないこともあります。売却額は会社の将来性に大きく左右されるため、高い収益を出していても将来性が低いと評価されて低い金額を提示されることも少なくありません。M&Aは多額の利益を得られる方法ではありますが、必ずしも希望金額で売却できるわけではないことを事前に理解しておきましょう。

買い手の経営手腕により従業員が離職する可能性もある

M&Aにより従業員の雇用が守れる一方で、買い手の経営手腕によっては従業員が離職する可能性もあります。例えば、待遇や仕事内容に対する不満、買い手側と売り手側の従業員間に不公平さは、優秀な人材が外部に流出してしまう要因になるでしょう。買収後の従業員の待遇や仕事内容について、買い手と綿密に確認・契約交渉をするのはもちろん、M&A検討中に余計な不安を従業員に抱かせないことも大切です。安易に交渉中の話題を従業員に共有しないよう心がけ、情報管理の徹底と適切なタイミングでM&Aについて理解を得るようにしましょう。

M&Aならではのメリットとデメリットをよく理解して検討を!

M&Aのメリットとデメリットについて、買い手側と売り手側の双方の視点から解説してきました。M&Aには、買い手側と売り手側の双方にそれぞれメリットとデメリットがあります。M&Aを成功させるにはメリットだけでなく、デメリットも十分理解して適切な対策を取ることが大切です。M&Aを検討されている方は、ぜひ参考にしてください。

株式会社経営承継支援は、一社でも多くの企業を廃業危機から救うため、全ての企業様のご相談をお受け致しております。
M&A(株式譲渡、事業譲渡等)に関して着手金無料でご相談可能ですので、お気軽にお問合せくださいませ。

無料お問い合せ【秘密厳守】
この記事をシェアする

新着記事