建設コンサルティング業界の動向およびM&Aについて【2024年版】

目次 [ ]

建設コンサルティング業界の動向

建設コンサルタント業界の市場規模は0.5兆円であり、建設業の市場規模などと比べるあまり大きくありません。2020年から2021年にかけて、新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、多くの業界や企業が減収・減益を記録しましたが、建設コンサルタント業界は好調に推移しました。

出所:各種資料より

同業界が好調な理由としては、インフラの老朽化と防災需要の2点を挙げることができます。

日本においては、建設・土木インフラの老朽化が課題となっており、日本全土でインフラ整備の需要が高まっています。2018年から2033年における社会インフラの老朽化率(築50年超の割合)は、道路橋は25%から63%、トンネルは20%から42%、河川管理施設は32%から62%へと増加すると予測されています(国土交通省)。

また、近年、自然災害が頻繁に発生しており、洪水や土砂崩れ、津波や地盤沈下などの防災需要が高まっています。国も自然災害に対処するために、「国土強靭化計画」を立ち上げて、防災や減災の取り組みを強化しています。

この様なインフラの老朽化対策、自然災害の防災・減災への対処は、今後、さらに重要度を増していくと予想されるため、建設コンサルタント業界の売上高は堅調に推移すると予測されます。

建設コンサルティング業界の売上高ランキング

建設コンサルティング業界の売上高ランキング(2021-2022年)は、以下の通りである。

売上高ランキング (億円)
順位 会社名 売上高
1位 日本工営(1954) 1,306
2位 建設技術研究所(9621) 744
3位 オリエンタルコンサルタンツホールディングス(2498) 773
4位 パシフィックコンサルタンツ株式会社 548
5位 応用地質(9755) 516
6位 人・夢・技術グループ(9248)(注1) 376
7位 E・Jホールディングス(2153) 366
8位 DNホールディングス(7377)(注2) 321
9位 株式会社オリエンタルコンサルタンツグローバル
(パシフィックコンサルタンツグループ)
288
10位 株式会社日水コン 217

出所:各種資料より作成

(注1)株式会社長大からの単独株式移転により、純粋持株会社「人・夢・技術グループ株式会社」を設立。
(注2)2021年7月、大日本コンサルタントは、ダイヤコンサルタントと共同株式移転により、DNホールディングスの完全子会社となった。

建設コンサルティング業界のM&A

最近の建設コンサルティング業界のM&A(一部)

年度 買い手 対象企業・事業
2019 E・Jホールディングス(2153) 株式会社シグマホールディングス(福岡県)を完全子会社化
2021 日本工営(1954) Pattern Design社(英国:建築設計会社)を完全子会社化
2021 メイホーホールディングス(7369) 株式会社ノーズ技研を子会社化
2022 土木管理総合試験所(6171) 株式会社環境と開発を子会社化
2022 応用地質(9755) 株式会社XO(東京都:画像認識AI事業)を子会社化
2022 メイホーホールディングス(7369) 株式会社安芸建設コンサルタントを子会社化

                                                                                                                                                   出所:各種開示資料より作成

建設コンサルティング業界の課題と今後について

異業種分野への進出

建設コンサルタント業界においては、建設業界以外の分野への進出を積極的に行われている。具体的な業種は、農業や観光、情報通信、発電などさまざまであり、今後建設業界が縮小することを見込んで、各企業が新領域を開拓する動きは今後も続くと思われる。

建設コンサルタント業界にとっては、地方自治体との繋がりを強めることは、公共の調査・設計、維持管理などの本業に直結する。そのため、建設分野のみならず多くの業界に進出することによって、地方自治体との関係を強めて建設コンサルタントの本業の受注を獲得するとともに、新規事業を軌道に乗せるという狙いもある。

新技術への投資

建設コンサルタント業界は、AI、3Dデータの活用など独自技術の開発に取り組んでいる。
また、本業や異業種分野で得た利益を研究、開発に回し、新技術を使って新たな仕事を取るという流れが業界全体のトレンドになりつつある。

海外事業への取り組み

海外事業に関しては、コロナによって国内事業へシフトする企業があるが、今後も国内市場の縮小が予想されるため、新たな収益基盤として期待される点は変わらない。
各企業ごとに、現地法人や新事務所の開設、現地企業のM&Aなど海外進出の取り組みは異なるが、海外事業拡大への取り組みを展開するものと予測される。

M&Aするメリットとデメリット

【1】主な2つのM&Aの手法

M&Aを検討している経営者の皆様が覚えておくべき主な手法は、株式譲渡と事業譲渡の2つです。
売り手企業の株主が買い手企業に株式を譲渡する手法が株式譲渡です。売り手企業が買い手企業に事業を譲渡する手法が事業譲渡です。
どちらを選択するかは、売り手企業の意向、買い手企業の考えによって、両者の交渉によって決まります。
会社の借入金、従業員、資産、権利義務関係などの全てを買い手企業へ譲る場合、株式譲渡の手法を選択します。
一方、売り手企業の事業が、製造部門と販売部門のように複数事業に分かれており、製造部門のみを譲渡するような場合、事業譲渡を選択します。
以下の設例により、株式譲渡と事業譲渡の2つの方法を比較することにします。
<設例>

X社は、自社ビルの不動産賃貸業とレストラン事業(25店舗:全店舗は賃借)の運営を行っています。株主はオーナー社長のみです。 コロナ禍の影響を受けて、レストラン事業の業績が悪化したため、X社はレストラン事業を第三者へ譲渡することにしました。
レストラン事業を事業譲渡する場合、買い手企業のメリットは、レストラン事業のみを引継ぐ点になります。ただし、従業員の再雇用、権利義務関係の引継ぎなどの手続が煩雑になるデメリットがあります。一方、売り手企業の簿外債務を引き継ぐリスクはありません。売り手企業のメリットは、レストラン事業のみ譲渡できる点、譲渡代金は売り手企業(X社)が受領する点になります。

【2】M&Aの手順・流れ


①プロセス開始当初にご依頼する資料やお伺いする情報がスムーズにご提供戴けると、その後のプロセスが円滑に進行します。
②予備的企業価値評価は、当社専門家(会計士/税理士)監修のもと実施。この段階で、譲渡価格や条件等の内容を概ね決定します。
③買手候補企業との間で大枠の条件が固まったら基本合意書(法的拘束力無し)を締結します。この段階より1対1の交渉(独占交渉)が始まります。
④基本合意と買収監査結果で差異があった項目を中心に調整し、詳細事項を決定。M&A実施後の体制等も、この段階ですり合わせます。

【3】M&Aにより会社を売却するメリット

オーナーのメリット(株式譲渡の場合)
①オーナー・その他株主のキャピタルゲイン(資本利得)の実現
オーナー一族はリタイアに際して現金収入が発生し、ハッピーリタイアすることができますその他株主も、同様に未上場株式を現金に換金できます

②相続税対策
流動性のない未上場株式を現金化することにより、遺産分割が容易になります

③オーナー一族の個人保証からの解放
買い手企業が保証(債務保証、不動産等の担保提供)を肩代わりするため、オーナー一族の経済的負担が解消されます※親族内承継または従業員承継の場合、オーナー一族の個人保証を継続せざるを得ない場合があります

会社のメリット
①事業の継続を確保、会社成長の可能性があります
②買い手企業の傘下に入ることにより、事業継続と安定性を確保できます
③買い手企業とのシナジー、将来の会社成長の可能性に期待できます
④従業員雇用の継続、安定を図ることができます

【4】会社を売却するデメリット

・買い手企業が見つからないリスク

会社を売却すると決断してもすぐに買手企業が見つかるとは限りません。
M&Aにはそれなりのコストがかかるので、買い手企業にとっては、それなりのメリットがなければM&Aを実行しません。コロナ禍においては、M&Aを検討する企業数が減っており、かつ投資目線も厳しくなっています。つまり、「コストをかけてもM&Aを行う」と買い手企業が思うような魅力がある会社(売り手企業)でない限り、なかなか買手企業が現れないと考えるのが良いでしょう。M&A市場においては、一般に「将来的に売り手企業がどの程度の収益を上げる力があるか」で売り手企業は評価されます。したがって、収益面では黒字にすること、過度な借入金(例えば、売上高を超える、あるいは同じ金額の借入金)は避けるべきです。

・M&A後における従業員の待遇面の不安
M&A後における従業員の労働条件や解雇の規則については、買い手企業によって変更をされないように最終契約書に記載しておく必要があります。最終契約書での取り決めがない場合、M&A前より悪い労働条件で働かされたり、簡単に解雇されたりする可能性があるためです。M&Aを実行する場合、確認する事項は個別案件ごとに異なり、また多岐にわたります。この確認をおろそかにせず、売り手企業と買い手企業のお互いがM&Aのメリットを享受できるように交渉を進めることが重要です。

Ⅴ会社を売却する際の株価の考え方

株価(株式価値)の算定方法として一般的に用いられる手法は、修正純資産法、類似会社比較法(マルチプル法)、DCF法です。

【1】修正純資産法

評価対象会社(売手)の貸借対照表に計上されている全ての資産・負債を時価評価した後の純資産額に営業権を加算して企業価値を算定する方法です。この方法は、企業の静的な価値を判定するのに適しています。未上場会社のM&Aで利用されることが多い方法です。
(注)黒字の場合、営業権として修正後営業利益の3年分程度の金額を加算します。一方、赤字(営業損失)の場合、営業権はつきません。社歴〇〇年の老舗企業、あるいは△△△ブランドで有名などの要素は、営業権として評価されません。

【2】類似会社比較法(マルチプル法)

業種、企業規模等の類似する上場会社の一定の財務数値に対する企業価値の倍率を測定し、評価対象会社(売手)の財務数値に当該倍率を乗じることで企業価値を算定する方法です。
上場会社、未上場会社のM&Aにおいて利用されている方法です。


なお、未上場の中小企業・小規模企業のM&Aの株価算定においては、会社規模(売上)が小さい、ニッチ業種であるなどの理由により、上場会社の中から類似会社を選定することが難しい場合があります。

【3】DCF法

事業活動から得られると予測される将来キャッシュ・フローの総額を現在価値に割り引いた金額を企業価値として評価する方法です。将来キャッシュ・フローの予測に企業価値が大きく左右される方法です。上場会社のM&Aにおいては、一般的に利用されることが多いです。
なお、DCF法を用いる場合、将来キャッシュ・フロー算出の基礎となる評価対象会社(売手)の事業計画が必要となります。また、当該事業計画の客観性、妥当性、実現性等が重要になります。

【4】考慮すべき事項

評価対象会社(売手)が、企業のライフサイクル(イメージ図)において、創業期、成長期、成熟期、衰退期のいずれの段階に該当するかを判断します。
併せて、評価対象会社の継続性の疑義の有無、知的財産等に基づく超過収益力に依存する収益構造であるか、類似上場会社のない新規ビジネス、或いはニッチ業種に該当するかなどを判断する必要があります。

企業のライフサイクル(イメージ図)

以上の考慮すべき事項を確認した後、評価対象会社(売手)に適切な株価(株式価値)の算定方法を選択します。複数の算定方法を選択できる場合は、それぞれの算定方法の結果を比較検討するのがよいでしょう。

【5】株価(株式価値)の算定方法の選択

〇:採用が適していると考えられる   △:場合によっては採用することが想定される

【6】会社を売却する場合に係る税金

中小M&Aの方法のうち、最も多く用いられる株式譲渡の場合において、会社売却に係る税金をどのように考えるかを一緒に見てみることにします。会社の株主が個人である場合、所得税・住民税あわせて20.315% の固定税率で分離課税が適用されます。以下の設例を用いて、会社を売却した場合、株主の税金をどのように計算するかを説明します。

<設例>
会社株主は、社長のみの一人株主とします。
株式の出資額10,000千円、株式譲渡代金100,000千円、売り手(個人株主)のM&A手数料5,500千円 (消費税込み)とします。

株式の売却益(注)は、株式譲渡代金から株式の出資額を差し引いた、90,000千円(=100,000千円−10,000千円)となります。
(注)キャピタル・ゲイン(資本利得)

個人株主の場合、株式の売却益は分離課税の対象となり、税率は20.315%(注)が適用されます。
また、M&A手数料(消費税込み)は、売却益から費用として差し引くことができます。
よって、個人株主が負担する税金は、以下のように計算することができます。
(90,000千円−5,500千円)×20.315%(注)=17,166千円
(注)所得税及び復興特別所得税(15.315%)+住民税(5%)

【7】会社を売却するタイミングを考える場合のポイント

会社を売却するためのポイントは3つあります。
ポイント① 引退の時期を決める。
「この事業が上手くいったあとで」といった条件付きの不明確な時期の決め方ではなく、できれば年月を確定することをおすすめします。時期を決めることで、実現するための強い決意が生まれます。
経営状態がよいタイミングで売却すると高い株価で売却でき有利ですが「企業価値が上がったら売却してリタイアしよう」という決め方だとなかなか踏ん切りがつかず、ハッピーリタイアの実現は難しくなるでしょう。

ポイント② 売却前に次の経営者がやりやすいように経営環境を整えておくことです。
後顧の憂いなくリタイアするためには、経営者の頭の中にある重要な項目を整理しておくことが重要です。
特に、従業員の対するケアがポイントであり、各従業員の性格等を、事業引継ぎの際に伝えておかなければ、その後の組織運営に支障が出ます。

ポイント③良いフィナンシャル・アドバイザーを見つける。
会社を売却する際には、専門的知識が必要となり、M&Aの専門家のサポートが必要となります。
中小M&Aの実績が十分にあり、業界での評判の良いM&A仲介会社を選ぶとよいでしょう。
どのM&A仲介会社も初期相談は、無料で対応しています。複数社と面談して、相性の良さそうな会社を選択するのも一つの方法です。
(注)フィナンシャル・アドバイザーの役割は、クライアント(売り手、買い手)が目指す戦略実現のために、最適なM&A手法を企画 立案し、その執行を全面的にサポートすることです。アドバイザリー会社のタイプとしては、金融機関系、会計会社系、ブティッ系の3つに大別することができます。

株式会社経営承継支援は、一社でも多くの企業を廃業危機から救うため、全ての企業様のご相談をお受け致しております。
M&A(株式譲渡、事業譲渡等)に関して着手金無料でご相談可能ですので、お気軽にお問合せくださいませ。

無料お問い合せ【秘密厳守】
この記事をシェアする

新着記事

1分で会社を簡単査定