フィットネス業界の動向およびM&Aについて【2024年版】

目次 [ ]

Ⅰフィットネス業界の市場動向

フィットネスクラブの市場規模は2020年度は2,235億1,700万円であった(経済産業省の産業動態統計調査)。2014年度以降、売上高は3,000億円を超えて増加傾向でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響などを受けて、2020年度には大幅に減少しました。

 

出所:経済産業省「特定サービス産業動態統計調査 長期データ」

2022年に発生したフィットネスクラブ運営会社の倒産は、27件発生した。前年の件数(9件)から大幅に増加して、年間で初めて20件台に到達しました。これは、リーマン・ショック直後に需要が大きく後退した2008年の13件を上回り、2000年以降で過去最多でした(帝国データバンクの調査)。
フィットネスクラブは、コロナ禍で感染リスクの高い施設として営業自粛要請などが相次ぎ、平時の営業が困難な状態になりました。それでも、大手各社は環境を活用した非対面型の在宅サービスやアウトドア型事業を提案するなど、利用者のライフスタイルに合わせた新たなニーズを掘り起こすことにより、利用者の早期回復につなげてきました。

2022年のフィットネスクラブの売上高は前年比9.8%増の2,689億円、会員数は同3.1%増の265万人でした(経済産業省:特定サービス産業動態統計調査(2023年2月))。

出所:経済産業省、業界動向サーチ

フィットネスクラブの売上高と会員数の過去の推移は、2020年に売上高と会員数が大幅に減少し、2021年と2022年には売上高は増加し、2022年に入り会員数も増加に転じています。
しかし、コロナ禍前の水準までには回復していません。

スポーツクラブは、大型屋内施設で水泳やテニス、ダンス教室の他、トレーニングマシーンやサウナ等が利用可能な「総合型」、ヨガやピラティス、スポーツ格闘技など、限られたスペースで行える「小型店舗型」があります。

コロナ禍前までのスポーツクラブ業界の市場は、順調に拡大していました。スポーツクラブ業界の底堅さを支えている要因としては、「健康ブーム」を挙げることができます。特にシニア世代を中心に健康への関心が高まっており、スポーツクラブ業界にとってプラス要因となっています。また、2011年4月から中学校でダンスと武道が必修科目になりました。これを受けて、大手スポーツクラブは相次いでダンススクールや武道教室を開講しました。この流れもスポーツクラブ業界にとってプラス要因になりました。

(参考) フィットネス業界の歴史

「1990年代前半 業界大手を中心にフィットネスクラブが増加」

フィットネスクラブが提供するサービスは、主に①スタジオプログラム、②ウェイトエーニング、③スイミングレッスンの3つ(「三種の神器」と呼ばれます)です。
この時期は、エアロビクス全盛時代であり、 ①スタジオプログラムのほぼすべては、エアロビクスのレッスンでした。
しかし、現在、エアロビクスの比率は下がっています。例えば、某ジムのスタジオスケジュール(土曜日)では、土曜日の総レッスン16本のうち、エアロビクスのレッスンは2本のみです。
①スタジオプログラム
インストラクター(イントラ)によるスタジオレッスンです。 イントラは、一部の社員イントラを除いて個人事業主であり、運営会社と業務委託契約を締結します。レッスン料は、イントラの経験や集客率(要は人気があるかないか)によって、1レッスン(45分、60分)当たり3,000円~5,000円が相場と言われています。
因みに、フィットネスクラブ側の主な売上は、会員(個人、法人)の会費です。
その他、フィットネスジム内の物品売上(トレーニングウエア、シューズetc)、飲食代(軽食、ドリンクを提供する店舗)がありますが、売上に占める割合は低いです。
一方、主な経費は、店舗の賃借料、維持費(水道光熱費)、広告宣伝費、業務委託費(イントラへ支払う)、店舗スタッフの人件費(社員、アルバイト)、トレーニングマシーンのリース料(一般に購入よりリースの場合が多い)などです。

②ウェイトトレーニング
店舗の中には、筋力トレーニングを行うエリアがあり、筋力トレーニング用マシーン、ダンベル、マシーンなどが設置されています。会員のメンバーは、このエリアで各自、筋力トレーニングを行います。

③スイミングレッスン
通常のスイミングレッスン、アクアビクス(水中で行うエアロビクス)などのプログラムがあります。また、成人のみならず、子供用のスイミングスクールを行う店舗もあります。
但し、プールの維持コストの問題、都内の駅近エリアは店舗面積が狭いなどの理由により、プールのない店舗もあります。
また、従来の店舗にはお風呂(湯舟あり)が付いていますが、店舗面積が狭い街中の店舗などはシャワーのみの場合もあります。

「1990年代後半 ダンスプログラムの本格的導入」

所謂、プロのダンサーをインストラクターとして雇い始めたのが、この時期です。当初、ダンスの種類は今のHIPHOPが主流でした。
それ以前は、エアロビクスのイントラが「ダンスエアロ」と呼ばれる、エアロビクスとダンスをミックスしたレッスン(ダンスエアロ)を行っていました。

「2000年以降 ダンススタジオの増加」

フィットネスクラブとは別に、ダンスを習いたい人向けに、ダンス専門スタジオが増加しました。ダンスのジャンルも、下記のように多岐に渡っています。
ヒップホップ、ジャッズ、ロックダンス、ブレイキング、ハウス、レゲエなど。
そのスタジオのインストラクター、プログラムスケジュールを見ると、どのジャンルに特化しているスタジオであるかが分かります。

Ⅱフィットネス業界の売上高ランキング(20212022年)

フィットネス業界の売上高ランキング(1位~10位)は、以下の通りです。


出所:各種資料より作成

(注)RIZAPグループはヘルスケア・美容事業、コナミグループはスポーツ事業、東急不動産HDはヘルスケア事業、日本テレビHDは生活・健康関連事業、野村不動産HDはフィットネス事業、東祥はスポーツクラブ事業、バローHDはスポーツクラブ事業の売上高です。

Ⅲフィットネス業界のM&A

フィットネス業界のM&A(一部)

                                                                                                                                                          出所:各種開示資料より作成

Ⅳフィットネス業界の今後について

フィットネスクラブの今後は、引き続き外出自粛などの動きから来店頻度の低下、店舗の集客力低迷が続くとみられ、当面の間は各社にとって厳しい経営環境が続くと予想されます。
現状、国内のフィットネス会員総数は500万人前後と全人口の5%にとどまり、全人口の約3割がフィットネスクラブ会員の米国といった海外市場に比べると、人口当たりの会員数はまだまだ少ない状況です。
某調査会社が実施した顧客満足度調査によると、調査対象者のフィットネスクラブの利用者の約5200名のうち、ほぼ全員が継続を考えており、またコロナ禍で利用を中止した元会員のうち7割以上が再度利用したいという回答結果となっています。コロナ禍の中、改めて運動や健康への見直しがされ、国内市場が持つ潜在ニーズは高いと言えます。
そのため、各社とも客足が伸び悩む屋内店舗型サービスから、オンラインを活用した在宅フィットネスの拡充、アウトドア型のフィットネス事業など新たな需要を掘り起こすことで、利用者の早期回復や経営の立て直しを模索しています。 コロナ禍による店舗型サービスの転換を余儀なくされるなか、各社の「脱店舗」に向けた各社の次の施策が業績回復につながるか注目されえています。

Ⅴ健康食品事業をM&Aするメリットとデメリット

【1】主な2つのM&Aの手法

M&Aを検討している経営者の皆様が覚えておくべき主な手法は、株式譲渡と事業譲渡の2つです。
売り手企業の株主が買い手企業に株式を譲渡する手法が株式譲渡です。売り手企業が買い手企業に事業を譲渡する手法が事業譲渡です。
どちらを選択するかは、売り手企業の意向、買い手企業の考えによって、両者の交渉によって決まります。
会社の借入金、従業員、資産、権利義務関係などの全てを買い手企業へ譲る場合、株式譲渡の手法を選択します。
一方、売り手企業の事業が、製造部門と販売部門のように複数事業に分かれており、製造部門のみを譲渡するような場合、事業譲渡を選択します。
以下の設例により、株式譲渡と事業譲渡の2つの方法を比較することにします。
<設例>

X社は、自社ビルの不動産賃貸業とレストラン事業(25店舗:全店舗は賃借)の運営を行っています。株主はオーナー社長のみです。 コロナ禍の影響を受けて、レストラン事業の業績が悪化したため、X社はレストラン事業を第三者へ譲渡することにしました。
レストラン事業を事業譲渡する場合、買い手企業のメリットは、レストラン事業のみを引継ぐ点になります。ただし、従業員の再雇用、権利義務関係の引継ぎなどの手続が煩雑になるデメリットがあります。一方、売り手企業の簿外債務を引き継ぐリスクはありません。売り手企業のメリットは、レストラン事業のみ譲渡できる点、譲渡代金は売り手企業(X社)が受領する点になります。

【2】M&Aの手順・流れ


①プロセス開始当初にご依頼する資料やお伺いする情報がスムーズにご提供戴けると、その後のプロセスが円滑に進行します。
②予備的企業価値評価は、当社専門家(会計士/税理士)監修のもと実施。この段階で、譲渡価格や条件等の内容を概ね決定します。
③買手候補企業との間で大枠の条件が固まったら基本合意書(法的拘束力無し)を締結します。この段階より1対1の交渉(独占交渉)が始まります。
④基本合意と買収監査結果で差異があった項目を中心に調整し、詳細事項を決定。M&A実施後の体制等も、この段階ですり合わせます。

【3】M&Aにより会社を売却するメリット

オーナーのメリット(株式譲渡の場合)
①オーナー・その他株主のキャピタルゲイン(資本利得)の実現
オーナー一族はリタイアに際して現金収入が発生し、ハッピーリタイアすることができますその他株主も、同様に未上場株式を現金に換金できます

②相続税対策
流動性のない未上場株式を現金化することにより、遺産分割が容易になります

③オーナー一族の個人保証からの解放
買い手企業が保証(債務保証、不動産等の担保提供)を肩代わりするため、オーナー一族の経済的負担が解消されます※親族内承継または従業員承継の場合、オーナー一族の個人保証を継続せざるを得ない場合があります

会社のメリット
①事業の継続を確保、会社成長の可能性があります
②買い手企業の傘下に入ることにより、事業継続と安定性を確保できます
③買い手企業とのシナジー、将来の会社成長の可能性に期待できます
④従業員雇用の継続、安定を図ることができます

【4】会社を売却するデメリット

・買い手企業が見つからないリスク

会社を売却すると決断してもすぐに買手企業が見つかるとは限りません。
M&Aにはそれなりのコストがかかるので、買い手企業にとっては、それなりのメリットがなければM&Aを実行しません。コロナ禍においては、M&Aを検討する企業数が減っており、かつ投資目線も厳しくなっています。つまり、「コストをかけてもM&Aを行う」と買い手企業が思うような魅力がある会社(売り手企業)でない限り、なかなか買手企業が現れないと考えるのが良いでしょう。M&A市場においては、一般に「将来的に売り手企業がどの程度の収益を上げる力があるか」で売り手企業は評価されます。したがって、収益面では黒字にすること、過度な借入金(例えば、売上高を超える、あるいは同じ金額の借入金)は避けるべきです。

・M&A後における従業員の待遇面の不安
M&A後における従業員の労働条件や解雇の規則については、買い手企業によって変更をされないように最終契約書に記載しておく必要があります。最終契約書での取り決めがない場合、M&A前より悪い労働条件で働かされたり、簡単に解雇されたりする可能性があるためです。M&Aを実行する場合、確認する事項は個別案件ごとに異なり、また多岐にわたります。この確認をおろそかにせず、売り手企業と買い手企業のお互いがM&Aのメリットを享受できるように交渉を進めることが重要です。

Ⅵ会社を売却する際の株価の考え方

株価(株式価値)の算定方法として一般的に用いられる手法は、修正純資産法、類似会社比較法(マルチプル法)、DCF法です。

【1】修正純資産法

評価対象会社(売手)の貸借対照表に計上されている全ての資産・負債を時価評価した後の純資産額に営業権を加算して企業価値を算定する方法です。この方法は、企業の静的な価値を判定するのに適しています。未上場会社のM&Aで利用されることが多い方法です。
(注)黒字の場合、営業権として修正後営業利益の3年分程度の金額を加算します。一方、赤字(営業損失)の場合、営業権はつきません。社歴〇〇年の老舗企業、あるいは△△△ブランドで有名などの要素は、営業権として評価されません。

【2】類似会社比較法(マルチプル法)

業種、企業規模等の類似する上場会社の一定の財務数値に対する企業価値の倍率を測定し、評価対象会社(売手)の財務数値に当該倍率を乗じることで企業価値を算定する方法です。
上場会社、未上場会社のM&Aにおいて利用されている方法です。

なお、未上場の中小企業・小規模企業のM&Aの株価算定においては、会社規模(売上)が小さい、ニッチ業種であるなどの理由により、上場会社の中から類似会社を選定することが難しい場合があります。

【3】DCF法

事業活動から得られると予測される将来キャッシュ・フローの総額を現在価値に割り引いた金額を企業価値として評価する方法です。将来キャッシュ・フローの予測に企業価値が大きく左右される方法です。上場会社のM&Aにおいては、一般的に利用されることが多いです。
なお、DCF法を用いる場合、将来キャッシュ・フロー算出の基礎となる評価対象会社(売手)の事業計画が必要となります。また、当該事業計画の客観性、妥当性、実現性等が重要になります。

【4】考慮すべき事項

評価対象会社(売手)が、企業のライフサイクル(イメージ図)において、創業期、成長期、成熟期、衰退期のいずれの段階に該当するかを判断します。
併せて、評価対象会社の継続性の疑義の有無、知的財産等に基づく超過収益力に依存する収益構造であるか、類似上場会社のない新規ビジネス、或いはニッチ業種に該当するかなどを判断する必要があります。

企業のライフサイクル(イメージ図)

以上の考慮すべき事項を確認した後、評価対象会社(売手)に適切な株価(株式価値)の算定方法を選択します。複数の算定方法を選択できる場合は、それぞれの算定方法の結果を比較検討するのがよいでしょう。

【5】株価(株式価値)の算定方法の選択

〇:採用が適していると考えられる   △:場合によっては採用することが想定される

【6】会社を売却する場合に係る税金

中小M&Aの方法のうち、最も多く用いられる株式譲渡の場合において、会社売却に係る税金をどのように考えるかを一緒に見てみることにします。会社の株主が個人である場合、所得税・住民税あわせて20.315% の固定税率で分離課税が適用されます。以下の設例を用いて、会社を売却した場合、株主の税金をどのように計算するかを説明します。

<設例>
会社株主は、社長のみの一人株主とします。
株式の出資額10,000千円、株式譲渡代金100,000千円、売り手(個人株主)のM&A手数料5,500千円 (消費税込み)とします。

株式の売却益(注)は、株式譲渡代金から株式の出資額を差し引いた、90,000千円(=100,000千円−10,000千円)となります。
(注)キャピタル・ゲイン(資本利得)

個人株主の場合、株式の売却益は分離課税の対象となり、税率は20.315%(注)が適用されます。
また、M&A手数料(消費税込み)は、売却益から費用として差し引くことができます。
よって、個人株主が負担する税金は、以下のように計算することができます。
(90,000千円−5,500千円)×20.315%(注)=17,166千円
(注)所得税及び復興特別所得税(15.315%)+住民税(5%)

【7】会社を売却するタイミングを考える場合のポイント

会社を売却するためのポイントは3つあります。
ポイント① 引退の時期を決める。
「この事業が上手くいったあとで」といった条件付きの不明確な時期の決め方ではなく、できれば年月を確定することをおすすめします。時期を決めることで、実現するための強い決意が生まれます。
経営状態がよいタイミングで売却すると高い株価で売却でき有利ですが「企業価値が上がったら売却してリタイアしよう」という決め方だとなかなか踏ん切りがつかず、ハッピーリタイアの実現は難しくなるでしょう。

ポイント② 売却前に次の経営者がやりやすいように経営環境を整えておくことです。
後顧の憂いなくリタイアするためには、経営者の頭の中にある重要な項目を整理しておくことが重要です。
特に、従業員の対するケアがポイントであり、各従業員の性格等を、事業引継ぎの際に伝えておかなければ、その後の組織運営に支障が出ます。

ポイント③良いフィナンシャル・アドバイザーを見つける。
会社を売却する際には、専門的知識が必要となり、M&Aの専門家のサポートが必要となります。
中小M&Aの実績が十分にあり、業界での評判の良いM&A仲介会社を選ぶとよいでしょう。
どのM&A仲介会社も初期相談は、無料で対応しています。複数社と面談して、相性の良さそうな会社を選択するのも一つの方法です。
(注)フィナンシャル・アドバイザーの役割は、クライアント(売り手、買い手)が目指す戦略実現のために、最適なM&A手法を企画 立案し、その執行を全面的にサポートすることです。アドバイザリー会社のタイプとしては、金融機関系、会計会社系、ブティッ系の3つに大別することができます。

Ⅶ弊社M&Aコンサルティングサービスのご案内

弊社のM&Aコンサルティングのご案内です。特徴は3点あります。
①プロフェッショナルによるM&Aサポート
M&Aの専門性を持つ、経験豊かなコンサルタントが、皆様にきめ細かなサービスを提供させていただきます。実際に成約したお客様、皆様からご満足いただいております。

②完全成功報酬の手数料体系
当社は、1社でも多くの中小企業のM&A支援を行うために、リーズナブルな手数料体系を採用しています。着手金、月額費用などはいただかず、成功報酬のみの完全成功報酬制を採用しています。

③多くの成約実績
業種、規模、エリアを問わず、多くの成約実績がございます。
高い専門性を持ったM&Aコンサルタントが、ご満足いただけるサービスを提供させていただきます。

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