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第三者割当増資とは?手続き方法、株価の算定方法、株式譲渡との違い

監修

経営承継支援編集部

この記事は、株式会社経営承継支援の編集部が監修しました。M&Aに関してわかりやすく役に立つ記事を目指しています。

目次 [ ]

第三者割当増資とは?

特定の第三者に株式を有償で引き受けてもらうことによって、資金を調達する手法です。上場企業だけでなく、未上場企業の資金調達手法としても用いられています。なお、上場企業が実施する場合は、既存株主の利益保護に配慮することが重要です。
第三者割当増資は、新たに株式を発行することを通じて資金を調達する新株発行増資呼ばれる手法の1つです。特定の第三者を対象に有償で新株を発行することを指し、公募増資や株主割当と区別されます。上場企業の場合、経営再建や割当先との関係強化などを目的として行われ、通常、取締役会の議決によって実施できます。
企業側は、必要な資金を調達できる、返済義務がないなどのメリットがありますが、既存株主にとっては持ち株比率が低下するなどの影響が生じます。
そのため、第三者割当増資を行う場合は、目的や条件、影響を検討して、必要な場合は株主総会の承認を得るなど、慎重な手続きが必要です。

第三者割当増資の目的

第三者割当増資を行う目的としては、新規事業や設備投資などのための資金調達、特定の企業との資本提携・業務提携、経営再建のための資金調達などがあります。また、上場企業の場合は、敵対的買収の対象となった会社が、友好関係にある会社に対して買収防衛策として第三者割当増資を用いることもあります。第三者割当増資は、株式数が増加し、株主構成の変化を伴うため、支配権を持つ既存株主には、持ち株比率の低下というデメリットが生じます。
また、発行価格が時価を大きく下回って第三者に有利に設定されると、増資後の1株当たり時価総額が目減りします(株主価値の希薄化)。この場合、既存株主の利益が損なわれるため、直近の株価に対して90%以上の価格設定を目安としています(日本証券業界)。また、新株を特に有利な価格で発行する場合(有利発行)は、株主総会の特別決議を必要とするなど、発行手続きは会社法による制限を受けます。

第三者割当増資のメリットとデメリット

第三者割当増資の手続き方法

募集事項の決定

第三者割当増資を実施する場合、有利発行を除けば、最初に取締役会で募集要項を決める必要があります。なお、有利発行を実施する場合は、既存株主の保護を目的として株主総会の特別決議が必要です。

募集事項は、会社法により以下のように定められています。

・募集株式の数(種類株式発行会社では募集株式の種類および数)
・募集株式の払込金額、またはその算定方法

・金銭以外の財産を出資の目的とするときは、その旨ならびに当該財産の内容および価額
・募集株式と引換えにする金銭の払込み、または上記の財産(金銭以外の財産)の給付の期日、またはその期間
・増加する資本金および資本準備金に関する事項(株式を発行する際)

株主に対する通知・公告

取締役会で決定した上記の募集事項を株主に対して、払込期日の2週間前(あるいは払込期間の初日)までに通知、あるいは公告を実施します(会社法第201条第3項および第4項)。

引受け申込み希望者に対する通知

募集する株式の引受け申込みを希望している者に、下記の項目を通知する必要があります

(会社法第203条第1項)。
・株式会社の商号
・募集事項
・金銭の払込みをすべきときは、払込みの取扱いの場所
・前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項

引受け書面の交付

募集株式の引受けを申し込む者は、以下の内容を記載した書面を交付する必要があります

(会社法第203条第2項)。
・申込みをする者の氏名または名称および住所
・引き受けようとする募集株式の数

割当先の決定と申込者への通知

割当株式の割当先を決めて、割当募集株式の株式数を決定します。また取締役会設置会社の場合は、取締役会決議で決定することも可能です(会社法第204条第1項、会社法204条第2項)。

出資の履行

募集株式の引受者は、払込日あるいは払込期間内に、募集株式のすべての払込金額を会社が定めた銀行などの金融機関の払込取扱場所へ払い込みます(会社法第208条)。

第三者割当増資を行う際の株価算定方法

第三者割当増資を行う際の株価の算定方法は、一般的な株価の算定方法と同じです。
具体的には、コスト・アプローチ、マーケット・アプローチ、インカム・アプローチ」の3つの手法です。

コスト・アプローチ

コスト・アプローチは、対象企業の貸借対照表における純資産に着目して、それを元に評価する手法です。対象企業の純資産を元に評価するため、株価を容易かつ客観的に評価することができます。

以下の2つの手法がよく用いられます。
簿価純資産法:対象企業とその企業が持つ事業の資産・負債の簿価に基づいて算定します。
時価純資産法:対象企業の資産・負債を時価修正し、時価総資産額から時価負債額を差し引いた金額を算定します。

マーケット・アプローチ

マーケット・アプローチは、上場企業のうち、対象会社の同業他社や類似する企業の市場での株価をもとに企業価値を評価する手法です。市場株価を元に算定するため客観性は高いものの、中堅・中小企業の株価算定においては、売上規模や事業内容の観点から、類似企業の選定が難しいという欠点があります。

インカム・アプローチ

インカム・アプローチは、対象会社の将来的なキャッシュフローに基づいて評価する手法です。
対象会社の将来的な収益性・成長性を反映することが可能です。そのためには、対象会社が客観的な事業計画を作成する必要があります。中堅・中小企業では事業計画を作成していないことが多いため、インカム・アプローチを用いることは難しいです。

第三者割当増資と株式譲渡との違い

第三者割当増資後の持株比率が半数を超える場合、第三者が対象会社の経営権(支配権)を持つことを意味します。過半数の株式を取得し、対象会社の経営権を得る第三者割当増資は、MAの一手法です。
株式譲渡の違いとして、発行済株式を売買取引するので、譲渡対価は株主に支払われますが、第三者割当増資では出資対価が対象会社に支払われます。

第三者割当増資を検討する中小企業は、資金の需要はあるものの金融機関から既に融資を受けており、利息の支払い、返済義務を負いたくないという場合もあります。

株式譲渡に比べると、第三者割当増資では第三者が取得する持㈱比率が低い場合もあり、既存株主が議決権割合に応じて、M&A後も引き続き経営に参画できることを理由として、M&Aの手法として選択することがあります。

株式会社経営承継支援は、一社でも多くの企業を廃業危機から救うため、全ての企業様のご相談をお受け致しております。
M&A(株式譲渡、事業譲渡等)に関して着手金無料でご相談可能ですので、お気軽にお問合せくださいませ。

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