工務店・内装工事業界におけるM&A成功ポイント大公開!

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工務店・内装工事業界におけるM&A成功ポイント大公開!

近年、工務店・内装工事業界のM&Aが増えています。ここでは、工務店・内装工事業界の市場動向やビジネスモデル、M&Aの買い手側によるデュー・ディリジェンスにおける注意点、企業価値評価(株価算定)で使う数値(マルチプルなど)について説明します。これらから、工務店・内装工事業界においてM&Aを成功させるためのポイントについて考えてみましょう。

 

I     M&Aを考える工務店・内装工事業界の概要

【1】 工務店・内装工事業界の市場環境

工務店は、主として戸建住宅の施工を請け負って、住宅を完成させる事業者のことをいいます。事業規模は様々であり、地域密着型の工務店から、全国展開するパワービルダーまであります。内装工事業は、床工事、塗装工事、天井工事を行う事業者をいいます。

人口減少という構造的問題のなか、今後の新設住宅着工戸数は減少することが見込まれます。しかし、高齢化のなかで、バリアフリー、省エネ、耐震設計、環境配慮などのための増改築やリフォームを含めた高付加価値化の工事の需要が増加することが見込まれます。

国土交通省「平成30年度建設投資見通し」によれば、建設投資額は、禁煙は震災復興やオリンピック特需で増加しているものの、長期的には緩やかに減少が続いていました。国内の建設投資額は、1990年の81兆円から2018年の57兆円に減少しています。

しかし、国内の住宅着工戸数は、2014年の88万戸から2017年の94万戸へ増加傾向にあります。これはパワービルダーの売上増加が大きく寄与しているものと考えられます。個別受注生産の業態であるため、スケールメリットによる低コスト化は難しいものの、原材料仕入れ、職人の採用、営業活動の面で大規模なパワービルダーが有利な状況にあると考えられます。

この結果、経営基盤の強固なパワービルダーとの価格競争が激化し、地場の小規模工務店は受注量を確保することができず、パワービルダーの下請けとなるケースが出てきているようです。また、新築住宅の受注が伸びない状況のなか、増改築やリフォーム工事にシフトする工務店が増えてきています。中古住宅を安価で買い取ってリフォームし、それを再分譲するリノベーション事業も登場しました。

 

【2】 工務店・内装工事業界のビジネスモデル

工務店・内装工事業のビジネスモデルは、大工の棟梁の役割です。工事を元請けして、工事の種類ごとに下請けの職人(とび、大工、左官、板金、塗装、電気、衛生、空調など)へ外注するというものです。完全な個別受注生産です。よって、工務店の主たる業務は、工事全体のマネジメント(施工管理)となります。

 

【3】 工務店・内装工事業界M&Aで買い手候補となる企業

工務店・内装工事業の事業承継を目的としたM&Aであっても、買い手候補は上場企業や大企業が中心になると考えられます。この業界では、以下のような上場企業が中心となって業界再編を進めていくことが想定されます。

飯田グループホールディングス、ヤマダ電機(ヤマダホームズ)、前田建設工業、ヒノキヤグループ、日本ハウスホールディングス、フジ住宅、アキュラホーム、フジ住宅、工藤建設、北野建設、三栄建築設計、サンヨーホームズ、ケイアイスター不動産、グランディハウス、穴吹興産、サンヨーハウジング名古屋、ファースト不動産、細田工務店、ニットー、アズマハウス、ウッドフレンズ、シード平和、サンユー建設、ハウスフリーダム、安江工務店、ウィル、名古屋木材、フォーライフ、KHC、土屋ホールディングス、誠建設です。

 

II  工務店・内装工事業界M&Aで売却する売り手のメリット

 

安定している大手企業にM&Aで工務店・内装工事業を承継することで、従業員の雇用を維持し、事業のさらなる成長を実現することができます。また、お客様は、身近な工務店を継続して利用することもできることに加え、下請け工事業者との関係を継続することができます。

また、小規模事業者が単独では難しかった新規開拓営業の推進よって、工務店・内装工事業の経営効率化を実現することができます。結果として生産性が向上すれば、従業員の給与水準をアップさせることができるでしょう。

さらに、買い手企業が大企業であれば、事業規模の拡大による生産性向上、大量仕入れによる原材料費の引下げや、人材採用コスト、広告宣伝費、本社経費を削減し、M&Aによるシナジー効果を得ることができます。

以上のようなシナジー効果が期待され、買い手候補にとって魅力的な事業であれば、売り手側の経営者は、高い売却価格を実現することができ、引退した後のライフプランを充実したものとすることができます。

 

III    工務店・内装工事業界M&Aで買収する買い手の注意点

【1】 工務店・内装工事業の買収デュー・ディリジェンスにおける注意点

工務店・内装工事業は、会計上、工事進行基準で収益と費用を計上しますが、売上債権の回収可能性を確かめることが必要です。小規模事業者であれば、工事完成基準で計上しているかもしれません。

工務店の事業性を評価する場合の注意点として、営業面での差別化が行われているかを確かめたいところです。大量生産できない業態ですので、高い品質の確保、消費者への細かく丁寧な提案によって、付加価値の高い工事を提供することが強みとなります。内装工事業では、工事だけでなく、家具や什器などのインテリア、内外装の修繕やアフターサービスなど、周辺サービスも抱き合わせ販売することが重要です。

 

【2】 工務店・内装工事業の買収で承継すべき経営資源

施工管理を行う職人の技術力が、基本となる経営資源です。現状、職人の高齢化が進んでいるため、技能伝承が深刻な問題です。

無形資産は、事業承継によって喪失されることが多いため、工務店・内装工事業のM&Aを行う場合は、職人の引継ぎに時間と労力をかけるなど、無形資産の承継を丁寧に行うことが重要でしょう。

 

【3】 工務店・内装工事業のM&Aで買収するときの企業価値評価(株価算定)

工務店・内装工事業のM&Aにおける企業価値評価(株価算定)を行う際に活用することができる数値は、以下の通りとなっています。

まず、TKC経営指標(2018年度)によれば、木造建築工事業の収益性について、売上高成長率は約2.3%です。また、粗利率は20.7%、営業利益率は1.6%となっています。生産性について、1人当たり売上高は3,156万円、1人当たり人件費は477万円となっています。

一方、リフォーム業の収益性について、売上高成長率は約2.5%です。また、粗利率は25.8%、営業利益率は1.2%となっています。生産性について、1人当たり売上高は2,674万円、1人当たり人件費は484万円となっています。

さらに、内装工事業の収益性について、売上高成長率は約▲0.6%です。また、粗利率は22.8%、営業利益率は2.7%となっています。生産性について、1人当たり売上高は2,763万円、1人当たり人件費は502万円となっています。

次に、2020年8月現在の開示情報および市場株価によれば、工務店・内装工事業のマルチプル(倍率)について、PBR倍率は0.5~1.0倍、PER倍率は10~15倍、EBITDA/企業価値倍率は10~15倍となっています。

さらに、筆者が推計する株主資本コストは、安定した老舗企業であれば7%、急成長の新興企業であれば10%が妥当であると考えます。これは、この類似上場企業のROICが5%前後であることを考慮しつつ、類似上場企業のベータ値が0.6~0.8であること、ヒストリカル・マーケット・リスク・プレミアム(1950年代~2020年)が7%~9%であることを前提にして、小規模リスク・プレミアムを加算して推計しています。

なお、類似上場企業比較法で採用すべき上場企業として、インターライフホールディングス(1418)、MTジェネックス(9820)、ウエストホールディングス(1407)、誠建設工業(8995)、FUJIジャパン(1449)、KHC(1451)、ヒノキヤグループ(1413)、ソネック(1768)、ヤマウラ(1780)、常磐開発(1782)、エプコ(2311)、三栄建築設計(3228)、グランディーズ(3261)、アグレ都市デザイン(3467)、フォーライフ(3477)、フェイスネットワーク(3489)、ダイサン(4750)、ハウスフリーダム(8996)、ファースト住建(8917)、ウッドフレンズ(8886)、安江工務店(1439)、土屋ホールディングス(1840)が挙げられます。

飯田グループホールディングス(3292)、大東建託(1878)、オープンハウス(3288)、積水ハウス(1928)、タマホーム(1419)、東建コーポレーション(1766)は、規模が大きすぎるため、非上場企業の価値評価に使用することは適切ではありません。

株式会社経営承継支援は、一社でも多くの企業を廃業危機から救うため、全ての企業様のご相談をお受け致しております。
M&A(株式譲渡、事業譲渡等)に関して着手金無料でご相談可能ですので、お気軽にお問合せくださいませ。

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村上 章

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