吸収合併とは?意味や種類、流れについて

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吸収合併とは

合併は、吸収合併と新設合併の2種類に分類されます。
吸収合併とは、会社が他の会社とする合併であり、合併によって消滅する会社の権利義務のすべてを合併後存続する会社が承継します(会社法第2条27号)。

吸収合併では、存続会社の法人格のみが残り、吸収される消滅会社の法人格はなくなります。
吸収合併の場合は、消滅会社に与えられた許認可や免許を、存続会社がそのまま引き継ぐことが可能です。よって、許認可や免許が必要な事業への新規参入できることになります。
また、全ての法人を消滅させる新設合併に比べて、手続きの負担が抑えられます。
なお、吸収合併には、簡易合併や略式合併のように、株主総会において合併の承認を得る必要がない場合も存在します。

合併のメリット

「早期の統合効果」

吸収合併の場合、存続会社によって消滅会社の債権や債務、権利義務のすべてを引き継ぐため、早期に統合効果が期待できます。
また、買収側(親会社)と譲渡側(子会社)が別々に経営を継続する株式譲渡の場合と比べると、合併は1つの会社(法人格)になるため、経営方針やビジョンなどを共有してM&A後の統合を進めることにより、シナジーが期待できる傾向にあります。

「大きな資金調達は不要」

合併の場合、消滅会社の株主への対価として、金銭のみならず株式や持分の交付が認められています(会社法第749条1項2号)
自社株式を対価とするため、買収(株式譲渡、事業譲渡)の場合と比べると資金調達などの必要がありません。

「対等な立場のM&Aという訴求」

買収側(買手)が経営権や事業を取得する株式譲渡や事業譲渡と比べると、合併は対等な立場でのM&Aというイメージを買手、売手が共有することができます。
また、M&Aによって対外的にポジティブなメッセージを発信することによって、自社のイメージアップや取引先への安心と信頼の付与を期待することができます。

合併のデメリット

「手続きの負担が大きい」

合併は、他のM&Aスキームに比べて手続きが多い点が特徴です。一般的に、事前・事後開示事項の備置き、債権者保護手続き、株主総会の特別決議など様々な手続きがあります。
そのため、M&Aが成立するまでに時間や労力、費用が必要です。
なお、例外として、一定の要件に当てはまる場合は、手続きの負担を軽減できる簡易合併や略式合併という方法もあります。

「株価に対するリスク」

合併の対価を株式で支払われるため、存続会社は消滅会社の株主に対して新株を発行します。そのため、発行する株式数によっては既存の株式の価値(=存続会社の株価)が薄まり、その結果株価が下落する場合があります。

「PMIの負担が大きい」

PMI(Post Merger Integration)は、M&Aによるシナジーの最大化を実現するために、協業体制の構築・業務オペレーションなど経営統合プロセスのこと言います。
合併では異なる会社が1つの会社に集約されるため、システム統合のみならず、経営戦略や将来ビジョンを共有する必要があります。そのため、他のM&Aスキーム(株式譲渡、事業譲渡など)とkラベルと、合併の統合作業の負担は大きくなる傾向にあります。

合併手続きの流れ

① 合併契約書の締結

合併を行う会社(通常は2社)で交渉を行い、合併の条件が決まった時点で基本合意契約を締結します。その後、各会社の取締役会の承認を得て、合併契約書の締結をします(会社法748条、749条)。

合併契約書の締結は、合併手続きのプロセスにおける最初のステップです。なお、会社法で定めている合併契約書に記載事項は、以下の通りです。
・存続会社および消滅会社の本店・商号など
・消滅会社の株主や社員に対する対価の割当てに関する事
・ (消滅会社が新株予約権を発行している場合)当該新株予約権者に交付する存続会社の
新株予約権または金銭に関する事項
・消滅会社の新株予約権者に対する対価の割当てに関する事項
・吸収合併が効力を生じる日

また、任意で記載すべき主な事項は以下の通りです。
・存続会社の定款
・存続会社の取締役の選任
・合併の効力発生日までの資産状況の変化
・消滅会社の財産の承継

② 事前開示書面の備え置き

合併を行う場合は、合併の効力発生日より前の一定期間、合併契約等の内容やその他一定の事項を記載した書類、または電磁的記録を本店に備え置く必要があります(会社法第782条、第794条)。

なお、合併前に準備しておく書類を、「事前開示書面」もしくは「事前備置書面」といいます。
事前開示書面は、以下のいずれか早い日から備え置く必要があります。
・株主総会で吸収合併等の承認が必要な場合は、当該株主総会の決議日の2週間前の日
・上記をみなし決議(会社法第319条1項)で行う場合は、株主への提案日
・株主に対する相手会社の商号および住所の通知日、または公告日のいずれか早い日
・新株予約権者に対する相手会社の商号および住所の通知日、または公告日のいずれか早い日
・債権者保護手続きにおける公告日、または催告日のいずれか早い日
・上記以外の場合には、吸収分割契約または株式交換契約の締結の日から2週間を経過した日
また、事前開示書面は効力発生日から6ヵ月間、備え置く必要があります。
ただし、吸収合併の場合は消滅会社は消滅するため、消滅会社については合併の効力発生日までになります。

③ 利害関係者の保護手続き


合併の場合、存続会社や消滅会社の利害関係者(株主や債権者など)に対して、合併の事実を公開します。その権利を保護するため、合併に対する異議申し立ての手続きを行います(会社法第789条、第799条)。

利害関係者の保護手続きの流れ
1 官報公告 合併する旨、相手の商号や住所、財務諸表などを公告し、同時に利害関係者が異議申し立てをできる期間を示します。
2 個別催告 官報公告の他に、利害関係者に対して官報と同様の内容を個別に伝えます。ただし、新聞や電子公告を行う場合、この手続きは不要です。
3 利害関係者の意義手続き 官報公告などの期間内に、合併に対して異議のある利害関係者は、その申し立て手続きを行います。期間内に異議申し立てがなかった場合、異議がなかったものとみなされます。
4 株券の提出手続き 消滅会社が株券を発行している場合、合併の効力発生日の1ヵ月前までに株券などの提出公告を行います。

④ 合併に反対する株主の株式買取請求手続き

合併に反対する株主がいる場合、合併の効力発生日の20日前までに株主に通知、または公告を行います。そして、合併の効力発生日の前日までに、当該株式を公正な価格で買い取らなければなりません(会社法第785条、第797条)。
上場企業の場合は、基本的には市場価格を前提として株式の買い取り価格が決定されます。
一方、非上場企業の場合は市場価格が存在しないため、外部の専門家に株価算定を依頼します。なお、株価の算定費用については、特段の定めがない限りは各自負担です(非訟事件手続法26条1項)。

⑤ 株主総会の承認

存続会社および消滅会社は、合併の効力発生の前日までに、株主総会で合併契約の承認を得る必要があります(会社法第783条、第795条)。合併の承認は、特別決議で行います。株主総会で合併が認められるためには、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の賛成を2/3以上得られなければなりません(会社法309条2項)。

⑥ 効力発生

合併契約書に定められた合併の効力発生日に、消滅会社の資産・負債及の引継ぎが行われます。これによって消滅会社のすべての権利・義務が存続会社に承継され、消滅会社は消滅します。

⑦変更登記と解散登記をする

合併の効力発生日から2週間以内に、合併登記を行います(会社法第921条)。合併会社側では合併に関する変更登記が行われ、消滅会社側では解散登記が行われます。

適格合併

適格合併とは、特定の条件を満たす合併であり、税法上の特別な取り扱いを受けることができる合併を意味します。
合併は、原則、消滅会社から存続会社へ時価で資産等が譲渡されたものとみなされます。したがって、譲渡益が発生すると法人税が課税されます。しかし適格合併が適用される場合は、移転する資産や負債を帳簿価額のまま引き継ぐため、譲渡益は発生しません。
また、適格合併の場合、消滅会社の繰越欠損金は存続会社の欠損金とみなされて、存続会社に引き継がれます。

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