人材派遣業界の動向およびM&Aについて【2025年版】

目次 [ ]

 

 

新型コロナウィルス感染拡大の人材派遣業界への影響

飲食業、小売業、イベント業の求人が大幅に減少

飲食業や宿泊業、小売業、イベント業などコロナ禍の外出自粛の影響が顕著に現れた業種は、求人が減少しました。特に、宿泊業、飲食サービス業の休業者数は79万人(2020年5月)となり、2019年12月と比較して7倍超となりました。リーマンショック時には製造業の派遣切りが増加し、雇用の受け皿となった業種が飲食業や宿泊業でした。コロナ禍ではリーマンショック時に雇用の受け皿となった業種が打撃を受けることになりました。

医療や物流は採用ニーズが大きい

一方、医療や物流分野では、人材の需要が増加しています。看護師など医療従事者は慢性的な人手不足が続いるのに加え、コロナ禍において各医療機関が病床の確保や患者のケアに追われていることが要因として挙げられます。また、緊急事態宣言の発令による外出自粛の影響で、通信販売の需要が増加し、物流分野の求人が増加しました。

人手不足により需要は増加傾向

一般に、人材派遣業界の業績は、求職者1人あたり何件の求人があるかを示す「有効求人倍率」に比例します。人材派遣会社は、企業と求職者のマッチングを主な仕事としているので、企業の求人数(有効求人倍率)が増えるほど業績は良くなる傾向にあります。


出所:厚生労働省、グラフは業界動向サーチ

2024年8月の有効求人倍率は、1.23(季節調整値)と前月から0.01ポイント減少しました(厚生労働省の調査)。

これは求職者1人に対して約1.23倍の求人があることを意味しています。直近では緩やかな減少傾向ですが、長期的に見ると2009年から増加傾向しており、2014年以降は求人倍率が1倍を超えて推移しています。

2023年8月公表の「労働派遣事業報告書の集計結果」によると、2021年の労働派遣事業の売上高は前年比7.6%増の82,336億円でした。人材派遣市場の規模は、リーマンショック前にピークとなった77千億円から1兆円を上回っており、業界の規模が拡大しています。

近年の人材派遣業界の動向を振り返えると、主要人材派遣会社の業績は揃って増収を記録しました。国内では多くの業種で人手不足が問題となっており、人材派遣業界にとっては強い追い風が吹いています。

2022年の人材派遣業界は、経済活動の正常化に向けた動きが進んだ結果、引き続き国内での人材派遣需要が高まり、派遣稼動者数は前年の水準を上回りました。

今後、日本の労働人口は長期的な減少が予想されます。特に、ITをはじめとした技術者人口の減少が予想されており、人材派遣業界へのニーズはさらに高まると思われます。

(参考)

人材派遣業とは、派遣元の事業主が雇用している労働者を他社へ派遣し、派遣先の指揮命令を受けて労働者が従事する事業のことを言います。法律上の正式名称は「労働者派遣事業」です。労働者派遣事業を行うためには厚生労働大臣の許可が必要になります。
人材紹介業とは、求職者と企業(求人側)の間に入って両者が雇用契約を結ぶサポートや仲介を行う事業のこと言います。正式名称は、有料職業紹介事業であり、有料職業紹介事業を行うためには厚生労働大臣の許可を得る必要があります。
人材紹介業のビジネスモデルは、自社のデータベースに登録した求職者を求人側のニーズに合わせて紹介する方法、スカウティングを行って企業に斡旋する方法の2つがあります。

人材派遣、人材紹介、業務請負の相違点は、以下のとおりです。
人材派遣と業務請負は、人材会社のスタッフを企業に提供するタイプの人材サービスです。
人材派遣は、スタッフがクライアントから指揮命令を受けて業務を行いますが、業務請負は人材会社の指揮命令を受けて業務を遂行する点が異なります。
人材紹介は、求職者と企業をマッチングするサービスで、法律上の正式名称は「有料職業紹介」です。人材紹介を事業として行うためには、厚生労働大臣による営業許可が必要になります。
 

 

業界売上高ランキング

人材派遣会社の売上高ランキング(1位~10位)は、以下の通りです。

会社名 会社名 売上高(億円)
1位 リクルートホールディングス(6098 15,852
2位 パーソルホールディングス(2181 12,239
3位 アウトソーシング(2427 6,897
4位 パソナグループ(2168 3,725
5位 テクノプロ・ホールディングス(6028 1,998
6位 ワールドホールディングス(2429 1,836
7位 UTグループ(2146 1,706
8位 株式会社マイナビ(未上場) 1,634
9位 オープンアップグループ(2154 1,616
10位 ウィルグループ(6089 1,439

※直近決算より(出所:会社四季報より作成)
 

 

人材派遣業界のM&A

2021年:人材サービス業の主なM&A

2022年:人材サービス業の主なM&A

2023年:人材サービス業の主なM&A

出所:各種開示資料より作成

2021年(買い手企業)株式会社グローバルトラストネットワークス(売り手企業)アイ・ピー・エス(4390)
株式会社グローバルトラストネットワークス(GTN)は、外国人専門の生活総合支援事業を展開しています。
株式会社グローバルトラストネットワークス(GTN)は、アイ・ピー・エス(4390)の在留フィリピン人向け人材紹介・派遣事業を譲り受けました。
本M&Aの目的は、アイ・ピー・エスのノウハウとGTNの外国人専門のインフラ活用によるシナジーにより更なる事業の拡大と顧客への円滑な人材紹介を図る狙いがあります。

2021年(買い手企業) 株式会社サツキャリ(売り手企業)有限会社ウィズ
株式会社サツキャリ(北海道札幌市)は、インパクトホールディングス(6067)の連結子会社であり、人材サービス業を展開しています。
有限会社ウィズ(北海道旭川市)は、試食宣伝販売促進員の人材紹介業を手掛けています。
株式会社サツキャリは、有限会社ウィズを子会社化しました。
本M&Aの目的は、人材サービス業の業拡大および営業エリアの拡大です。

2021年(買い手企業)パソナグループ(2168)(売り手企業)株式会社More-Selections
パソナグループは、人材関連サービス事業を手掛けています。
株式会社More-Selectionsは、企業法務分野の人材派遣・紹介事業を行っています。
パソナグループは、株式会社More-Selectionsを子会社化しました。
本M&Aの理由は、今後、企業のコンプライアンス順守が求められるため、法務部門への人材派遣需要が高まると予測したためです。

2021年(買い手企業)UTグループ(2146)(売り手企業)株式会社プログレスグループ
UTグループ、製造業向けの技術者派遣やアウトソーシング(業務請負サービス)事業などを行っています。
株式会社プログレスグループは、製造業の人材紹介・派遣業を行っています。
UTグループは、株式会社プログレスグループの全株式を取得して子会社化しました。
本M&Aの目的は、製造業の人材派遣事業の市場シェアを広げるのが狙いです。

2021年(買い手企業) ベネッセホールディングス(9783)(売り手企業)株式会社プロトメデイカルケア
ベネッセホールディングスは、進研ゼミなど教育大手であり、介護・保育・出版事業へ多角化しています。
株式会社プロトメデイカルケア(東京都:売上高38億4,000万円)は、プロトコーポレーション(4298)の子会社であり、介護・福祉・医療分野の広告関連事業を手掛けています。
ベネッセホールディングスは、プロトコーポレーションの全株式を取得して子会社化しました。
本M&Aの理由は、プロトコーポレーショングループが中核事業である自動車関連情報セグメントと生活関連情報セグメントに集中するためです。

2021年(買い手企業)サービス&セキュリティ株式会社(売り手企業)株式会社ドライブ
サービス&セキュリティ株式会社は、システム開発及び運用管理、技術者の派遣、ソフトウェアの提供を行うシステムインテグレーション企業です。
株式会社ドライブ(東京都)は、ゲーム・メディア業の人材派遣を行っています。
サービス&セキュリティ株式会社は、株式会社ドライブの全株式を取得して完全子会社化しました。
本M&Aの目的は、株式会社トライブのゲーム事業・メディア事業に精通する人材を獲得することです。

2021年(買い手企業)株式会社碧海スタッフ(売り手企業)株式会社マルコビジネスサポート
株式会社碧海スタッフ(愛知県)は、製造業や物流業界などへの人材派遣・人材紹介業を手がけています。
株式会社マルコビジネスサポート(静岡県)は、サービス業などへの人材派遣・人材紹介を手がけています。
株式会社碧海スタッフは、株式会社マルコビジネスサポートを子会社化しました。
本M&Aの目的は、製造業とサービス業に特化した人材サービス業同士が、M&Aで事業拡大を目指す狙いがあります。

2021年(買い手企業)日総工産(6569)(売り手企業)株式会社ベクトル伸和
日総工産製造系の人材派遣・請負事業を中心に、事務系人材派遣・請負事業、請負コンサルティング、労務管理支援などを行っています。
株式会社ベクトル伸和(愛知県)は、製造業の人材派遣業を行っています。
日総工産株式会社ベクトル伸和の全部株式を取得して完全子会社化しました。
本M&Aの目的は、ベクトル伸和の子会社化によって、事業基盤強化と事業拡大を図るのが狙いです。

2021年(買い手企業)クラウドワークス(3900)(売り手企業)コデアル株式会社
クラウドワークスは、同名の総合型クラウドソーシングサイトを運営しています。
オンライン上で、在宅ワーカーと仕事発注者のマッチング・業務の遂行・報酬の支払いまでを一括で行うサービスを提供しています。
コデアル株式会社(東京都)は、エンジニアを中心とした、業務委託の即戦力IT人材を繋ぐダイレクトマッチングサービスを提供しています。
クラウドワークスは、コデアル株式会社の全株式を取得して完全子会社化しました。
本M&Aの目的は、コデアルの有するエンジニア人材・顧客基盤を獲得し、新たな月額課金型サービスモデルを拡大することで、マッチング事業の中長期的な収益性の確保・成長力の強化を図るのが狙いです。

2021年(買い手企業)UTグループ(2146)(売り手企業)富士通エフサス・クリエ株式会社
UTグループ、製造業向けの技術者派遣やアウトソーシング(業務請負サービス)事業などを行っています。
富士通エフサス・クリエ株式会社は、富士通グループの富士通エフサスの完全子会社であり、ICT(情報通信技術)関連の人材派遣・紹介、システムの運用サービス、ヘルプデスク請負などの事業を行っています。
UTグループは、富士通エフサス・クリエ株式会社の株式51%を取得して子会社化しました。
本M&Aの目的は、富士通エフサス・クリエを子会社化することによって、富士通グループとの関係をより強固にして業績を拡大するのが狙いです。

2021年(買い手企業)株式会社iDA(売り手企業)株式会社リンクスタッフィング
株式会社iDAは、ファッション業界に特化したビジネスコンサルタント事業、人材紹介・派遣事業などを展開しています。
株式会社リンクスタッフィング(東京都)は、リンクアンドモチベーション(2170)の子会社であり、人材派遣業を行っています。
株式会社iDAは、リンクスタッフィングを子会社化しました。
本M&Aの目的は、リンクアンドモチベーショングループ内の人材を人材紹介事業部門へ集中し、収益体制を確立するのが狙いです。

2022年(買い手企業)ワールドホールディングス(2429)(売り手企業)株式会社ディンプル
ワールドホールディングスは、人材・教育ビジネスなどを展開しています。
株式会社ディンプル(大阪府)は、人材派遣・人材紹介事業、教育研修事業を展開しています。
ワールドホールディングスは、株式会社ディンプルを子会社化しました。
本M&Aの目的は、サービス系人材事業ノウハウの獲得、ネットワークを活用したシナジーを見込んでおり、サービス分野の拡大を図る狙いがあります。

2022年(買い手企業)フルキャストホールディングス(4848)(売り手企業)株式会社ヘイフィールド
フルキャストホールディングスは、人材総合サービスを提供しています。主力の「軽作業・ブルーカラー領域の人材サービス」に加え、専門的な付加価値を持つ職種への領域拡大及び事業ポートフォリオの拡充のために、M&Aを積極的に行っています。
株式会社ヘイフィールド(東京都)は、不動産業界に特化した人材紹介事業を展開しています。
同社が提供する「宅建 Job エージェント」は、不動産業界専門の転職支援・人材紹介サービスとして高い知名度を持っています。
フルキャストホールディングスは、株式会社ヘイフィールドの全株式を取得して完全子会社化しました。
本M&Aの目的は、事業ポートフォリオの拡充です。

2022年(買い手企業)じげん(3679)(売り手企業)株式会社ビヨンドボーダーズ
じげん(3679)は、求人および不動産情報を一括検索できる集約サイトを展開しています。
株式会社ビヨンドボーダーズ(東京都)は、人材紹介事業と越境不動産取引事業を展開しています。
じげんは、株式会社ビヨンドボーダーズの全株式を取得して完全子会社化しました。
本M&Aの目的は、不動産業界において人材紹介業を展開するためです。

2023年(買い手企業)SHIFT(3697)(売り手企業)EQIQ株式会社WAHL+CASE事業
SHIFT(3697)は、ソフトウェアテスト事業、ソフトウェアの品質保証などを行っています。
EQIQ株式会社は、バイリンガル人材紹介事業(WAHL+CASE事業)を展開してあす。
SHIFTは、EQIQ株式愛車のWAHL+CASE事業を、連結子会社である株式会社SHIFTグロース・キャピタルに簡易吸収分割によって譲り受けました。
本M&Aの目的は、顧客に優秀なバイリンガルエンジニアを紹介し、、顧客の事業成長のために新たな提案を行うことにより、顧客単価の向上を図るためです。
出所:各種開示資料より作成
 

 

人材派遣業界の課題と今後について

人余りの業界から人手不足の業界への労働力の移動

コロナ禍においても、医療や物流、またITエンジニアや幹部候補などのハイクラスな人材など求人企業の採用ニーズが高い職種・業種は存在します。ただし、医療であれば看護の実務経験、ITエンジニアであればプログラミングスキルなど、いずれも専門性が高い実務経験が重視されます。そのため、飲食業や宿泊業、小売業など大幅に人員削減される業界の労働力を人手不足の業界に移動させることは難しい状況です。このように派遣労働者に求められる業務スキルや実務経験のハードルなどの理由により、「人余りの業界は人余りのまま、人手不足の業界は人手不足のまま」という二極化が進む可能性があります。業種間の労働力の移動を如何にして実現させていくかは、人材派遣業界にとって中長期的な課題であると思われます。

低い利益率、その改善策

一般社団法人 日本人材派遣業界のデータでは、人材派遣会社のマージン(手数料)は、営業利益のわずか1.2%です。


出所:一般社団法人 日本人材派遣業界

人材派遣会社のマージンの料率は、派遣社員の給与に対して約30%が目安です。
この30%のマージンの中から、派遣元企業は派遣社員の社会保険料と有給取得費用(約15%)や諸経費の支払いを行います。よって、受領したマージンから社会保険料や諸経費を差し引くと、派遣元企業の利益は約1.2%となります。人材派遣会社の利益率は、他業種と比較して極めて低いと言えます。
さらに、2020年4月からは大企業で「同一労働同一賃金」制が導入されました。同制度は正規雇用社員と非正規雇用社員の間で、同じ労働内容にも関わらず不合理な待遇差を設けることを禁じるものです。これによって、派遣社員の労働環境が改善され、賃金水準および有給取得率の上昇が見込まれ、派遣会社の経営面においては新たな負担になると予想されます。人材派遣会社にとっては、今後、事業の多角化などを通じ、事業の収益性を高めていくことが重要です。事業の多角化の一例としては、人材紹介業への参入を挙げることができます。
 

 

M&Aするメリットとデメリット

【1】主な2つのM&Aの手法

M&Aを検討している経営者の皆様が覚えておくべき主な手法は、株式譲渡と事業譲渡の2つです。
売り手企業の株主が買い手企業に株式を譲渡する手法が株式譲渡です。売り手企業が買い手企業に事業を譲渡する手法が事業譲渡です。
どちらを選択するかは、売り手企業の意向、買い手企業の考えによって、両者の交渉によって決まります。
会社の借入金、従業員、資産、権利義務関係などの全てを買い手企業へ譲る場合、株式譲渡の手法を選択します。
一方、売り手企業の事業が、製造部門と販売部門のように複数事業に分かれており、製造部門のみを譲渡するような場合、事業譲渡を選択します。
以下の設例により、株式譲渡と事業譲渡の2つの方法を比較することにします。

<設例>
X社は、自社ビルの不動産賃貸業とレストラン事業(25店舗:全店舗は賃借)の運営を行っています。株主はオーナー社長のみです。 コロナ禍の影響を受けて、レストラン事業の業績が悪化したため、X社はレストラン事業を第三者へ譲渡することにしました。
レストラン事業を事業譲渡する場合、買い手企業のメリットは、レストラン事業のみを引継ぐ点になります。ただし、従業員の再雇用、権利義務関係の引継ぎなどの手続が煩雑になるデメリットがあります。一方、売り手企業の簿外債務を引き継ぐリスクはありません。売り手企業のメリットは、レストラン事業のみ譲渡できる点、譲渡代金は売り手企業(X社)が受領する点になります。

株式譲渡のメリット・デメリット

事業譲渡のメリット・デメリット

【2】M&Aの手順・流れ

①プロセス開始当初にご依頼する資料やお伺いする情報がスムーズにご提供戴けると、その後のプロセスが円滑に進行します。
②予備的企業価値評価は、当社専門家(会計士/税理士)監修のもと実施。この段階で、譲渡価格や条件等の内容を概ね決定します。
③買手候補企業との間で大枠の条件が固まったら基本合意書(法的拘束力無し)を締結します。この段階より1対1の交渉(独占交渉)が始まります。
④基本合意と買収監査結果で差異があった項目を中心に調整し、詳細事項を決定。M&A実施後の体制等も、この段階ですり合わせます。

【3】会社を売却する理由・目的

M&Aとは、「Mergers and Acquisitions」の略語であり、日本語にすると「合併と買収」になります。

一般的なM&Aの目的は、売り手としては、事業承継(第三者への)、選択と集中(事業再編、ノンコア事業の売却)、Exit(投資ファンド)などの目的があります。

一方、買い手としては、規模の拡大(売上増加)、上流、下流への事業領域拡大(例えば、食品卸が食品メーカーを買収)、新規事業への進出(時間を買う)などがあります。

買い手は、M&Aによる相乗効果(=シナジー)を享受することにより、競合他社に対する優位性を確保することができます。

後継者不在に悩む中小企業は、一般に60万社以上あると言われており、弊社にご相談をいただく売り手の売却理由の多くは、上記の事業承継ニーズになります。

【4】M&Aにより会社を売却するメリット

オーナーのメリット(株式譲渡の場合)
①オーナー・その他株主のキャピタルゲイン(資本利得)の実現
オーナー一族はリタイアに際して現金収入が発生し、ハッピーリタイアすることができますその他株主も、同様に未上場株式を現金に換金できます

②相続税対策
流動性のない未上場株式を現金化することにより、遺産分割が容易になります

③オーナー一族の個人保証からの解放
買い手企業が保証(債務保証、不動産等の担保提供)を肩代わりするため、オーナー一族の経済的負担が解消されます※親族内承継または従業員承継の場合、オーナー一族の個人保証を継続せざるを得ない場合があります

会社のメリット
①事業の継続を確保、会社成長の可能性があります
②買い手企業の傘下に入ることにより、事業継続と安定性を確保できます
③買い手企業とのシナジー、将来の会社成長の可能性に期待できます
④従業員雇用の継続、安定を図ることができます

【5】会社を売却するデメリット

・買い手企業が見つからないリスク
会社を売却すると決断してもすぐに買手企業が見つかるとは限りません。
M&Aにはそれなりのコストがかかるので、買い手企業にとっては、それなりのメリットがなければM&Aを実行しません。コロナ禍においては、M&Aを検討する企業数が減っており、かつ投資目線も厳しくなっています。つまり、「コストをかけてもM&Aを行う」と買い手企業が思うような魅力がある会社(売り手企業)でない限り、なかなか買手企業が現れないと考えるのが良いでしょう。M&A市場においては、一般に「将来的に売り手企業がどの程度の収益を上げる力があるか」で売り手企業は評価されます。したがって、収益面では黒字にすること、過度な借入金(例えば、売上高を超える、あるいは同じ金額の借入金)は避けるべきです。

・M&A後における従業員の待遇面の不安
M&A後における従業員の労働条件や解雇の規則については、買い手企業によって変更をされないように最終契約書に記載しておく必要があります。最終契約書での取り決めがない場合、M&A前より悪い労働条件で働かされたり、簡単に解雇されたりする可能性があるためです。M&Aを実行する場合、確認する事項は個別案件ごとに異なり、また多岐にわたります。この確認をおろそかにせず、売り手企業と買い手企業のお互いがM&Aのメリットを享受できるように交渉を進めることが重要です。

 

 

会社を売却する際の株価の考え方

株価(株式価値)の算定方法として一般的に用いられる手法は、修正純資産法、類似会社比較法(マルチプル法)、DCF法です。

【1】修正純資産法

評価対象会社(売手)の貸借対照表に計上されている全ての資産・負債を時価評価した後の純資産額に営業権を加算して企業価値を算定する方法です。この方法は、企業の静的な価値を判定するのに適しています。未上場会社のM&Aで利用されることが多い方法です。
(注)黒字の場合、営業権として修正後営業利益の3年分程度の金額を加算します。一方、赤字(営業損失)の場合、営業権はつきません。社歴〇〇年の老舗企業、あるいは△△△ブランドで有名などの要素は、営業権として評価されません。

【2】類似会社比較法(マルチプル法)

業種、企業規模等の類似する上場会社の一定の財務数値に対する企業価値の倍率を測定し、評価対象会社(売手)の財務数値に当該倍率を乗じることで企業価値を算定する方法です。
上場会社、未上場会社のM&Aにおいて利用されている方法です。

なお、未上場の中小企業・小規模企業のM&Aの株価算定においては、会社規模(売上)が小さい、ニッチ業種であるなどの理由により、上場会社の中から類似会社を選定することが難しい場合があります。

【3】DCF法

事業活動から得られると予測される将来キャッシュ・フローの総額を現在価値に割り引いた金額を企業価値として評価する方法です。将来キャッシュ・フローの予測に企業価値が大きく左右される方法です。上場会社のM&Aにおいては、一般的に利用されることが多いです。
なお、DCF法を用いる場合、将来キャッシュ・フロー算出の基礎となる評価対象会社(売手)の事業計画が必要となります。また、当該事業計画の客観性、妥当性、実現性等が重要になります。

【4】考慮すべき事項

評価対象会社(売手)が、企業のライフサイクル(イメージ図)において、創業期、成長期、成熟期、衰退期のいずれの段階に該当するかを判断します。
併せて、評価対象会社の継続性の疑義の有無、知的財産等に基づく超過収益力に依存する収益構造であるか、類似上場会社のない新規ビジネス、或いはニッチ業種に該当するかなどを判断する必要があります。

企業のライフサイクル(イメージ図)

以上の考慮すべき事項を確認した後、評価対象会社(売手)に適切な株価(株式価値)の算定方法を選択します。複数の算定方法を選択できる場合は、それぞれの算定方法の結果を比較検討するのがよいでしょう。

【5】株価(株式価値)の算定方法の選択

〇:採用が適していると考えられる   △:場合によっては採用することが想定される

以上、中小企業のM&Aにおける株価(株式価値)の算定方法、考慮すべき事項を簡単に紹介しました。
現在、または将来、後継者問題などを理由に会社譲渡を考えている中小企業の社長様、是非、弊社にご相談ください。
会社の株価(譲渡金額)を決めるのは、社長様ご自身です。弊社試算の株価と比較して、納得できる譲渡金額を決める際の参考にして頂ければと思います。

【6】会社を売却する場合に係る税金

中小M&Aの方法のうち、最も多く用いられる株式譲渡の場合において、会社売却に係る税金をどのように考えるかを一緒に見てみることにします。会社の株主が個人である場合、所得税・住民税あわせて20.315% の固定税率で分離課税が適用されます。以下の設例を用いて、会社を売却した場合、株主の税金をどのように計算するかを説明します。

<設例>
会社株主は、社長のみの一人株主とします。
株式の出資額10,000千円、株式譲渡代金100,000千円、売り手(個人株主)のM&A手数料5,500千円 (消費税込み)とします。

株式の売却益(注)は、株式譲渡代金から株式の出資額を差し引いた、90,000千円(=100,000千円−10,000千円)となります。
(注)キャピタル・ゲイン(資本利得)

個人株主の場合、株式の売却益は分離課税の対象となり、税率は20.315%(注)が適用されます。
また、M&A手数料(消費税込み)は、売却益から費用として差し引くことができます。
よって、個人株主が負担する税金は、以下のように計算することができます。
(90,000千円−5,500千円)×20.315%(注)=17,166千円
(注)所得税及び復興特別所得税(15.315%)+住民税(5%)

【7】会社を売却するタイミングを考える場合のポイント

会社を売却するためのポイントは3つあります。
ポイント① 引退の時期を決める
「この事業が上手くいったあとで」といった条件付きの不明確な時期の決め方ではなく、できれば年月を確定することをおすすめします。時期を決めることで、実現するための強い決意が生まれます。
経営状態がよいタイミングで売却すると高い株価で売却でき有利ですが「企業価値が上がったら売却してリタイアしよう」という決め方だとなかなか踏ん切りがつかず、ハッピーリタイアの実現は難しくなるでしょう。

ポイント② 売却前に次の経営者がやりやすいように経営環境を整えておくこと
後顧の憂いなくリタイアするためには、経営者の頭の中にある重要な項目を整理しておくことが重要です。
特に、従業員の対するケアがポイントであり、各従業員の性格等を、事業引継ぎの際に伝えておかなければ、その後の組織運営に支障が出ます。

ポイント③良いフィナンシャル・アドバイザーを見つける
会社を売却する際には、専門的知識が必要となり、M&Aの専門家のサポートが必要となります。
中小M&Aの実績が十分にあり、業界での評判の良いM&A仲介会社を選ぶとよいでしょう。
どのM&A仲介会社も初期相談は、無料で対応しています。複数社と面談して、相性の良さそうな会社を選択するのも一つの方法です。
(注)フィナンシャル・アドバイザーの役割は、クライアント(売り手、買い手)が目指す戦略実現のために、最適なM&A手法を企画 立案し、その執行を全面的にサポートすることです。アドバイザリー会社のタイプとしては、金融機関系、会計会社系、ブティッ系の3つに大別することができます。

【8】会社を売却する際の注意点

経営者の健康問題
事業の内容に関係なく会社売却の理由と考えられるのは、経営者の健康問題です。
持病を抱えている人、年を取って体力に不安を持つ人など、会社の存続に不安を覚えて、弊社にご相談される場合がよくあります。

あるオーナー社長は、弊社にM&Aの相談をされましたがすぐに会社を売却せず、そのまま経営を続けられました。その2年後、オーナー社長が「M&Aを検討したい」と決断されました。

その2年間、オーナー社長は、定期的に通院したり、または入院したりと体調が良くなく、営業活動を十分に行うことができなかったため、売上高が減少しました。
その結果、利益率が下がり、会社の価値自体が棄損したため、株価算定の結果も2年前よりも30%減少となりました。

オーナー社長の場合、健康問題を理由として業績が下がることがありますので、その前にM&Aを決断することが重要です。

業界再編が加速している業種
2020年3月以降、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、各業界において業界再編が加速しています。この業界再編の流れを把握して競合他社よりも先に行動しなければ、M&Aのタイミングを逃すのみならず、M&Aできずに廃業に追い込まれることもあります。

事業再編が進むにはさまざまな理由があります。

例えば、人口の減少があります。
人口が減少すれば、従来のように売上を上げることは難しくなります。
或いは同地域に複数業者が乱立して、市場が供給過多の状態となっている場合も同様のことが言えます。
この様な場合、同業他社と経営統合を図ることで経営の安定を図り、生き残り戦略を選択する方法が考えられます。
 

 

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M&A(株式譲渡、事業譲渡等)に関して着手金無料でご相談可能ですので、お気軽にお問合せくださいませ。

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