事業承継時に債務や個人保証はどうなる?

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事業承継の際には、現経営者が負っている債務や個人保証についても配慮する必要があります。

有能な後継者が存在するのに、債務や個人保証を引き継ぐことを敬遠して事業承継を断念してしまうということになると、日本経済にとってもマイナスになることがあります。

その問題を解決するための1つのヒントが「経営者保証に関するガイドライン」にあります。

ここでは、事業承継時に債務や個人保証がある場合の対応について紹介します。

経営者個人の債務・保証も引き継がれる

 

事業承継においては、経営者個人の債務や個人保証が問題になることがあります。

銀行の事業者ローンを利用する場合には、経営者が連帯保証人となっているケースがほとんどなので、事業承継を行う場合には銀行の同意を得たうえで保証を解除する必要があります。

もちろん、保証を解除してしまうと銀行のリスクが上がるので、事業を承継した後継者が新しく保証人となる必要があるでしょう

 

また、中小企業では、経営者が会社に対して貸付を行っているケースも少なくありません。

経営者が会社に対して貸付を行っている場合には、後継者に対してしっかりと説明をしておかないとトラブルになることもあります。

たとえば、経営者Aが会社に対して2,000万円の貸付を行っており、Aが死亡したあとで、その子供BとCが貸付金債権をそれぞれ1,000万円ずつ相続したとします。

BはAの意思を継いで会社に対して貸付金を請求しませんでしたが、Cは会社に対して1,000万円の請求をし、裁判でそれが認められてしまうというトラブルなどが考えられます。

 

事業承継の阻害要因としての個人保証

 

債務や個人保証があると、事業承継の阻害要因となってしまう可能性があります。

事業を承継して引退をする予定の経営者にとっては、事業を譲り渡したあとも個人保証を抱え続けるということが、本人や親族にとって大きな負担・不安定要因となってしまいます。

2013年12月に公表された「経営者保証に関するガイドライン」では、事業承継時における既存の保証契約の適切な見直しについても規定されています。

このガイドラインができたあとは、一定の条件を満たすことで金融機関が保証契約の解除に応じてくれる可能性が上がっています。

社会通念上適切な範囲を超える金額の借入ではないこと、既存債権の保全が乏しい場合には後継者などから前経営者が提供していたものと同程度の保全が提供されることなどが条件として定められています。

 

(出所 中小企業庁ホームページより)

中小企業に求められる経営状況とは?

 

事業承継をスムーズに進めるためには、良好な経営状況を保っているということが1つのポイントとなります。

中小企業に求められる経営状況としては「会社と経営者との関係の明確な区分・分離」があげられます。

会社から経営者に対して貸付が行われ、資金が流出してしまうという不安が金融機関にはあります。

財務状況および経営成績が良好であり、返済能力が十分であると認められることも重要です。

さらに、経営者および承継者は金融機関からの情報開示の要請に適切に対応するべきです。

具体的には、決算報告(貸借対照表、損益計算書等)や試算表・資金繰り表の提出等を定期的にしていることが重要です。

 

経営者の個人保証を解除できた事例

 

経営者保証ガイドラインの公表後は、債務や個人保証がある場合の事業承継において、金融機関が経営者保証の解除に応じる可能性が上がっています。

過去の事例では、経営者保証を解除してもらえたと同時に、新経営者からの個人保証も求められなかったというものがあります。

事業用資産はすべて法人所有であった、法人から役員への貸付がなかった、法人単体の収益力が十分であった、財務諸表などの資料の提出に協力的であったといったことがポイントとなったようです。

経営者保証を解除するかどうかの判断は総合的に行われます。

法人と経営者との関係の区分・分離が不十分であったとしても、それまでの返済状況、不動産担保などによる債権の保全状況、法人の収益力などに問題がない場合には保証の解除が承認されることもあります。

 

債務超過会社の経営者の救済

 

経営者保証に関するガイドラインの内容は、大きく分けると(1)保証契約時などの対応、(2)保証債務の整理の際の対応の2つです。事業承継時における既存の保証契約の適切な見直しについては(1)で規定されています。

債務超過をしている会社の経営者の多くは、自己破産をするしかないと悩んでいることでしょう。

しかし、経営者保証に関するガイドラインでは、経営者自身への救済の道も開かれています。

事業譲渡と特別清算を行った経営者は、残った連帯保証についてもこのガイドラインを利用することで整理することが可能です。

「一定の生活費を残せる」「豪華ではない家に住み続けられる」「返済しきれない債務は原則として免除される」ことなどが定められています。

自己破産をしたときに認められる自由財産は99万円までとなりますが、経営者保証ガイドラインを利用すれば、それに上乗せして一定期間の生計費を認めてもらえる可能性がありますので、前向きに考えてみてはいかがでしょうか。

 

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