中小M&Aガイドライン~業務別対応ポイント①~

目次 [ ]

中小M&Aの業務プロセスのうち受託以降クロージングまでを対象とし、今回はバリュエーション、マッチング、基本合意、DDの各プロセスにおける、中小M&Aガイドラインの対応ポイントを紹介します。

<M&Aの業務プロセス>
• 広告・営業(対象外)
• 受託(対象外)
• バリュエーション
• マッチング
• 基本合意
• DD
• 最終契約
• クロージング

業務別プロセス

▶「中小M&Aガイドラン(第3版)遵守の宣言について」はこちら

 

 

ガイドライン対応していない場合はどうなる?

■ガイドライン自体は法令ではないため、法的拘束力はない

■中小企業庁へのM&A支援機関登録している仲介会社等はガイドラインの遵守が登録要件となっている

■ガイドライン対応していない場合、支援機関登録が認められない可能性がある

■支援機関登録している支援機関を使う場合のみ利用者は補助金制度を利用できる


出所:中小企業庁「M&A支援機関に係る登録制度の概要」
 

 

バリュエーションにおける当社遵守宣言

【バリュエーション(企業価値評価・事業評価)】

14.バリュエーションの実施に当たっては、評価の手法や前提条件等を依頼者に事前に説明し、評価の手法や価格帯についても依頼者の納得を得ます。

38.確定的なバリュエーションを実施せず、依頼者に対し、必要に応じて士業等専門家等の意見を求めるよう伝えます。

39.参考資料として自ら簡易に算定(簡易評価)した概算額・暫定額としてのバリュエーションの結果を両当事者に示す場合には、以下の点を両当事者に対して明示します。

・あくまで確定的なバリュエーションを実施したものではなく、参考資料として簡易に算定したものであるということ
・当該簡易評価の際に一方当事者の意向・意見等を考慮した場合、当該意向・意見等の内容
・必要に応じて士業等専門家等の意見を求めることができること

ガイドラインが求める対応

• 評価の手法や前提条件等を依頼者に事前に説明し、評価手法や価格帯についても依頼者の納得を得る。その際、当該評価手法や価格帯が唯一のものでないことを明示

• 仲介者の場合は、確定的なバリュエーションの実施はできない。必要に応じて士業等の専門家等の意見を求めることができる旨等も明示

• 仲介者が参考資料として自らが簡易に算定した概算額・暫定額としてのバリュエーションを示す場合には、以下の点を明示する。

• 確定的なバリュエーションでなく、参考資料として簡易的に算定したものであること

• 当該簡易評価の際に、売り手もしくは買い手の意向・意見等を考慮した場合、当該意向・意見の内容

• 必要に応じて士業等の専門家等の意見を求めることができること

M&Aプロセスごとの詳細な業務内容

 

 

マッチングに関する当社遵守宣言

【譲り受け側の選定(マッチング)】

15.ネームクリア(譲り渡し側の名称を含む企業概要書等の詳細資料の開示)は、ノンネーム・シート(ティーザー)等の提示により、興味を示した候補先に対して、譲り渡し側からの同意を取得し、候補先との秘密保持契約を締結した上で、実施します。

16.譲り渡し側からの同意については、開示先となる候補先ごとに個別に同意を取得します。

17.秘密保持契約締結前の段階で、譲り渡し側に関する詳細な情報が外部に流出・漏えいしないように注意します。

ガイドラインが求める対応

• 開示する前に買い手と秘密保持契約を締結

• その買い手にネームクリアを行ってよいかを売り手の同意を取る。

• 個別同意を取らずにアドバイザーに一任する場合でも以下の対応が必要

• 売り手の希望を踏まえて、具体的な一定の基準を設定

• 売り手に秘密保持の観点から個別同意が通常であること、一定の基準を設定しても売り手が希望しない候補先に開示されるリスクがあることの説明

• 売り手からの指示があれば速やかにネームクリアを中止する旨を明示的に確約

• 秘密保持契約締結前の段階で、譲渡側に関する詳細な情報が外部に流出・漏洩しないように注意する必要

• 依頼者にはマッチングの進捗等を遅滞なく報告することが望まれる。

 
<背景となったトラブル事例>

• 売り手のライバル会社に提案して情報漏洩

• 売り手の取引先に提案して情報漏洩

• 売り手が過去に勤務していた先に提案して売り手激怒

• メールによるIM(企業概要書)のばらまき

 

 

交渉・基本合意における当社遵守宣言

【交渉】

18.慣れない依頼者にも中小M&Aの全体像や今後の流れを可能な限り分かりやすく説明すること等により、寄り添う形で交渉をサポートします。

40.交渉においては、一方当事者の利益のみを図ることなく、中立性・公平性をもって、両当事者の利益の実現を図ります。

ガイドラインが求める対応

• 慣れない依頼者にもM&A全体像や今後の流れを可能な限りわかりやすく説明すること等により、寄り添う形で交渉をサポート

• 仲介者は一方当事者の利益のみを図ることなく、中立性・公平性をもって、両当事者の利益の実現を図る。

• 特殊事情ない限り基本合意を締結することが望ましい。

 
<背景となったトラブル事例>

• 依頼人がよくわかってないまま、仲介会社がM&Aを強引に進めた。

• ストロングバイヤーに有利なるような交渉を進める仲介会社

• 何も決まっていないような状態でDDに突入しブレイク

【失敗事例】
買い手が200Mの意向表明書を提出して、売り手は応諾した。しかし、この価格は勢いのみで算定根拠は全くなかった。
そのため、DD後に買い手が根拠のない減額を主張し、案件はブレイクした。

 

 

DDに関する当社遵守宣言

【デュー・ディリジェンス(DD)】

19.デュー・ディリジェンス(DD)の実施に当たっては、譲り渡し側に対し譲り受け側が要求する資料の準備を促し、サポートします。

21.(前略)依頼者に対し、デュー・ディリジェンス(DD)は、譲り渡し側・譲り受け側双方にとって重要なプロセスである旨を説明します。依頼者に対し、表明保証の内容はデュー・ディリジェンス(DD)の結果を踏まえて適切に検討されるべきであり、期間や責任上限が設定されていない場合や適用場面が一義的に明確でない規定が存在する場合、譲り渡し側が過大な表明保証責任を負担することとなり、当事者間で争いが生じるリスクがある旨を説明します。(後略)

41.デュー・ディリジェンスを自ら実施せず、デュー・ディリジェンス報告書の内容に係る結論を決定しないこととし、依頼者に対し、必要に応じて士業等専門家等の意見を求めるよう伝えます。

ガイドラインが求める対応

• 譲渡側に早い段階においてDDで想定される必要資料等の整備を促す。

• 譲受側に過大な負担が生じないように調査対象を適切な範囲内とし、結果を譲渡側にも開示して情報共有するように譲受側に働きかけるのが望ましい。

• 仲介者は自らDDを実施すべきでない。

• 仲介者はDD報告書の内容に係る結論を決定すべきでない。

• 必要に応じて士業等専門家等の意見を求めるように伝える。

• 譲受側にDDの実施を推奨し、DD省略した場合のリスクを説明。

 
<このような場合、どうしますか。>

• 買い手はリピーターでこれまで買収した会社は全てうまくいっており、DD実施時も仲介者であるあなたが事前に把握し買い手に説明済みであった論点以外の問題は出てこなかった。

• 買い手はあなたに対して、実質あなたがDDしてくれているみたいなものだから、あなたを信用して追加でDDは実施しないよと言った

【DDを実施しないと…】

買い手の意向でDDを行わなかったが、最終契約の段階で新たな問題が多数発覚して、その度に買い手へ説明するなど手間となった。
買い手がDDを実施しない意向である場合、DDの実施を強く推奨するか、またはDD非実施であれば覚書を締結するなど新たな問題が出てくる場合を想定した対処が必要である。

M&Aプロセスごとの詳細な業務内容

 

 

M&Aの仲介契約とは?

M&Aの仲介契約は、準委任契約です。
準委任契約(注)では、受任者(M&Aの場合、仲介者)は、法律上、善管注意義務を負うことになります。善管注意義務とは、当該職業又は地位にある人として通常要求される注意義務を意味します。中小M&Aガイドラインは、その内容を明らかにしたものです。

(注)業務委託契約の一種であり、特定の業務を行うことを定めた契約。 業務を発注する側を委任者、業務を受ける側を受任者と言います。 受任者は業務遂行が目的となり、結果や成果物ついては責任を求められません。

中小M&Aガイドラインに対応しなかったことを起因して、仲介者が顧客に損害を与えれば、善管注意義務違反として損害賠償責任を負う可能性が大きいです。
 

 

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