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M&Aのプロセスは、最終契約の締結、クロージングによって終了します。
しかし、売り手企業と買い手企業にとっては、アフターM&Aが重要です。買い手企業が売り手企業をスムーズに引き継ぐためには、アフターM&Aの期間にどのような取り組みをするかがポイントになります。
以下のケースを紹介して、買い手企業の社長が、アフターM&Aにおいてどのような施策をとったかを見ることにします。
~買い手企業の社長による“ちょっといい話”~
【売り手企業(A社)】
業種:食品製造業(首都圏)
売上高:約2億円
経常利益:黒字
譲渡理由:創業社長が他界し、奥様(70歳代)が社長を引き継いだが、親族内に後継者がおらずM&Aを決断した。
【買い手企業(B社)】
業種:食品製造業(関西地方)
特長:二代目社長。独自ブランド商品を持ち、業績も拡大している。
M&A目的:首都圏への進出を検討。特に食品製造工場を新たに獲得するのが、M&Aの目的であった。
<A社の社員発表当日>
本件は、最終契約締結、クロージング、および社員発表を同一日に行いました。
社員発表の場所は、A社の本社事務所(工場併設)でした。その本社事務所のフロアの横に社長室があり、お亡くなりなった創業社長の写真が飾ってありました。
社員発表が始まる前に、B社社長は一人で社長室に入り、創業社長の写真に向かって目を瞑り、何かを語りかけておられました。
どのようなことを語りかけていたかは分かりませんが、例えば、「はじめまして、B社の社長、〇〇〇〇でございます。今日からA社を引き継がせていただきます。社長(創業社長)がお創りなった会社、取引先、社員を大切にし、今まで以上に素晴らしい会社にします。」といった感じでしょうか。
この所作から、A社の創業社長に対する、B社社長のリスペクトが感じられます。
<A社の社員発表後の出来事>
社員発表の当日は、朝から天気が良くなく、社員発表が終了する頃から、雨が降り出しました。B社社長は、翌日に地元で仕事があるため、この日は日帰りで関西に戻られる予定でした。A社の本社事務所は、最寄り駅から少し離れており、徒歩で約15分、路線バスはありますが本数が限られていました。
B社社長一行がお帰りになるので、A社の方が「雨が降っていますので、お車で最寄り駅までお送りします。」と申し出ました。すると、B社社長から、「最寄り駅まで歩きますので、すみませんが人数分の傘を貸してください。」という返答がありました。
結局、B社社長一行は、傘をさして雨の中を最寄り駅まで徒歩で移動しました。
<3ヶ月後>
A社の前社長と電話で話をした際に、M&A後の引継ぎの状況をお伺いしました。
「M&A後は、とても順調に引継ぎが進んでいます。特に本社事務所と最寄り駅の間を移動するために、マイクバスを購入していただき、社員は大変感謝しています。」というコメントがありました。
社員発表の当日、買い手社長一行が雨の中を最寄り駅まで徒歩で移動した理由が分かりました。
雨の中を最寄り駅まで徒歩で移動すると、傘を差していても体が濡れてしまいます。また、A社の社員には年配の方も含まれており、雨の日、暑い夏の日、寒い冬の日の徒歩での移動は大変です。
B社社長は、ご自分の一年分の(A社での)役員報酬の受取りを辞退し、その金額で社用マイクロバスを購入されたということでした。
中小企業のM&Aは、個々の案件ごとに手作り、言わばオーダーメイドであり、これが公式というものはありません。この記事を読まれた会社経営者の方でM&Aをお考えになる場合は、中小企業のM&A専門会社である弊社に是非ご相談ください。
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