会社の定量情報と定性情報

こんにちは。経営承継支援のブログ担当チームです。

M&Aでは売り手企業の評価に「定量情報(財務数値)」と「定性情報(質的特徴)」の両方を活用します。
赤字でも成約したA社と黒字でも見送られたB社の事例が、定性情報の重要性を端的に示します。
用語解説記事として、両情報の定義と活用方法を冒頭で明示することで、記事の完成度はさらに高まります。

目次 [ ]

 

 
■定量情報と定性情報とは何か

M&Aの現場では、売り手企業を評価する際に「定量情報」と「定性情報」という2種類の情報を組み合わせて分析します。それぞれの意味を正確に理解しておくことが、M&Aを正しく進めるうえで重要です。

【定量情報とは】
定量情報とは、数値として客観的に把握・比較できる情報のことです。M&Aにおける代表的な定量情報には、売上高・営業利益・経常利益・純利益といった損益情報、総資産・純資産・借入金残高などの貸借対照表情報、キャッシュフロー、従業員数、設備の簿価などが含まれます。これらは決算書から直接読み取れるため、買い手企業が企業価値を算定する際の基礎データとなります。

【定性情報とは】
定性情報とは、数値では表しにくい「質的な特徴」に関する情報です。経営者の能力・人柄・年齢・後継者の有無、主要顧客との関係性・取引の安定度、技術力・ブランド力・ノウハウ、従業員の定着率や職場風土、地域内の知名度や社会的信用などが該当します。定性情報は財務諸表には現れませんが、M&Aの成否を左右する極めて重要な要素です。

【M&Aにおける活用方法】
株価算定(バリュエーション)は主に定量情報をもとに行われますが、買い手企業が最終的に「買う・買わない」を判断する際には定性情報が大きな影響を持ちます。特に中小企業のM&Aでは、業績が優れていても経営者個人への依存度が高い場合(いわゆる「社長に営業権が付いている」ケース)は、買い手がリスクと捉えて見送るケースも少なくありません。逆に業績が振るわなくても、優良顧客との継続的な取引関係や改善余地のある組織体制が評価されて成約に至るケースもあります。M&A仲介会社はこの両情報を的確に整理・発信することで、最適なマッチングを実現しています。

会社譲渡の相談を受けた場合、売り手企業の社長様と面談し、会社の業績(定量情報)や事業内容(定性情報)をヒアリングします。

そして、この定量情報と定性情報に基づいて、株価の算定、企業概要書の作成、買い手候補企業とのマッチングを行います。

今回は、異なる業種である、A社(運送業)とB社(商業印刷)からの相談内容を定量情報、訂正情報ごとに整理し、買い手候補企業とのマッチングについて考察することにします。

 

会社譲渡の相談-A社、B社

【A社:運送業(首都圏)】

売上高:約5億円

経常利益:赤字(2期連続)

譲渡理由:創業者の娘婿である社長は高齢(70歳代)であり、経営意欲が希薄である。親族内および社内に次期社長候補はいない。

特長:上場機械メーカーの物流子会社が荷主である。財務内容は、過去の内部留保があり(資産超過)、銀行借入はない。

【B社:商業印刷(首都圏)】

売上高:約5億円

経常利益:3,000万円(役員報酬3,000万円)

譲渡理由:後継者不在

特長:創業社長が営業、印刷見積り、印刷工場の管理など全て行っている。

業績は安定しており、銀行借入はない。

希望取引形態:100%株式譲渡(両社ともに)

 

まず、両社の定量情報を比較すると、A社は赤字、B社は黒字であるので、これだけを見るとB社の方がM&A(会社売却)の可能性が高いと思われるかもしれません。

次に、実際に両社長にお話をお伺いすると、以下の定性情報が分かりました。

A社(運送業)の社長

創業者の娘婿ですが高齢のため経営意欲が希薄であり、本社事務所には昼頃に顔を出すだけであり、昼食の後は帰宅していました。配車は社員に任せ、積極的に営業活動をせずに、空のトラックを走らせることもよくある状況でした。

B社社長(商業印刷)

典型的な創業社長であり、営業、印刷見積り、印刷工場の管理など全て行うことによって、好業績を維持していました。所謂、“社長に営業権が付いている会社“でした。

 

<両社の顛末>

A社(運送業)は、最初に提案した同業が買い手企業となり、約6ヶ月で最終契約締結、クロージングを迎えることができました。買い手企業(売上高5億円)の社長は二代目であり、経営意欲が高く、A社を提案した時点で、「私が経営すれば、荷主に営業を掛けて仕事を増やして黒字にできる(収益の改善)。」と判断しました。また、過去の内部留保が残っており(資産超過)、銀行借入がない点もプラス材料になりました。

一方、B社(商業印刷)の場合は、現社長が精一杯経営して好業績を上げており、買い手企業から見ると、これ以上の伸びしろが期待できない、或いは現社長のような経営が出来ないと業績が悪化すると判断されました。B社は、相当数の買い手候補企業に提案しましたが、結果は全て見送りとなりました。

 

<まとめ>

M&Aのマッチングの興味深いところは、売り手企業という素材を買い手企業がどのように捉えるかによって、結果、すなわち、M&A(会社売却)できるか、或いはM&A(会社売却)できないかが決まる点にあると言えます。

そのためには、相談を受けた譲渡希望企業の定量情報と定性情報を十分に把握して、買い手候補企業のマッチングを考える必要があります。

以下の表では、M&Aにおける定量情報と定性情報の違いを主な内容や活用場面などの観点から整理しています。

項目 定量情報 定性情報
定義 数値で客観的に表せる情報 数値では表しにくい質的な情報
主な内容 売上高・利益・純資産・借入金・従業員数など 経営者の資質・顧客関係・技術力・ブランド・後継者の有無など
主な出所 決算書・財務諸表 経営者インタビュー・現地調査・業界情報
M&Aでの活用場面 株価算定・企業価値評価の基礎データ マッチング判断・買い手のリスク評価・交渉材料
特徴 客観的・比較しやすい 主観的要素を含むが実態把握に不可欠
注意点 数値だけでは企業の実態を見誤る可能性あり 定性評価は買い手によって判断が分かれる場合がある

このように、定量情報と定性情報はどちらか一方だけでは企業の実態を正確に把握することが難しく、両方を組み合わせて評価することがM&Aの成否を左右する重要なポイントとなります。

中小企業のM&Aは、個々の案件ごとに手作り、言わばオーダーメイドであり、これが公式というものはありません。この記事を読まれた会社経営者の方でM&Aをお考えになる場合は、中小企業のM&A専門会社である弊社に是非ご相談ください。

 

 

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