コンビニエンスストア業界の動向およびM&Aについて【2024年版】

目次 [ ]

Ⅰコンビニエンスストア業界の市場動向

2022年のコンビニエンスストア(コンビニ)の販売額は、前年比3.7%増の12兆1,996億円、店舗数は同0.2%減の5万6,232万店舗でした(経済産業省:商業動態統計(2023年2月))。

 出所:経済産業省、業界動向サーチ

2011年から2019年までは、コンビニエの販売額と店舗数は、上昇傾向でしたが、2020年に過去10年で初めて減少しました。一方、2021年以降、販売額は小幅の増加、店舗数は微減でした。2022年の販売額は4,396億円の増加、店舗数は120店舗の減少となり、2021年とほぼ同水準で推移し、売上高、店舗数ともに成長率が鈍化しました。

2021-2022年のコンビニ業界は、2020年の新型コロナウィルスの感染拡大による行動制限の反動のため、需要は回復傾向にあります。コロナ禍の影響により客足は鈍化しましたが、既存店売上高は増加しました。また大手コンビニの客単価は前年から約2.0%上昇しました。

これまでコンビニ業界の好調を牽引してきたのは、「店舗数の増加」です。セブンイレブン、ローソン、ファミリーマートのコンビニ大手3社は店舗数を増やし、市場を拡大しました。
しかし、近年、3社とも今後は不採算店舗の整理と既存店の売上アップへ戦略シフトする方針です。

2020年以降はコロナ禍の影響により、在宅ワークが増加しました。そのためオフィス街の店舗売上は減少し、住宅街のコンビニの利用は増え、利用者の行動が大きく変化しました。
これを受けて、各社は収益確保のために新たな取り組みを始めています。
具体的には、セブンイレブンは、単価の維持・上昇、新たな顧客獲得のため100円ショップのダイソー商品を導入、各店舗のニーズに合う商品構成およびレイアウト変更を行っています。また、最短30分で届けるデリバリーサービス「7NOW(ネットコンビニ)」の展開を加速し、2024年度には全店で展開する予定です。

ファミリーマートは、無人決済店舗やデジタルサイネージ、ファミペイなど、金融やデジタル広告などの新ビジネスで収益化を加速させています。
ローソンは、冷凍食品の品揃えと認知度の拡大、店内厨房の導入店舗を推進しています。その他、調剤併設や日用品を取り扱うヘルスケア強化型店舗も展開しています。
2021年1月から2023年9月までのコンビニ大手3社の月次売上高の推移は、以下のグラフのとおりです(数値は前年同月比の比較)。

出所:各社公表資料、業界動向サーチ
2021年から2023年にかけては、緩やかな増加傾向になります。また、2022年後半から2023年にかけては基準の100を上回る状態が続いています。
コロナ禍の小売業では、スーパーやドラッグストアの業績が好調に推移し、コンビニは出遅れていましたが、直近の動向から経済再開の動きに合わせて回復基調にあることが分かります。

Ⅱコンビニエンスストア業界の売上高ランキング(2021-2022年)

コンビニエンスストア業界の売上高ランキング(1位~10位)は、以下の通りである。

(注1)国内コンビニと海外コンビニ事業の売上高
(注2)流通事業の売上高
出所:各種資料より作成

Ⅲコンビニエンスストア業界のM&A

過去のコンビニエンスストア業界のM&A(一部)

                                         出所:各種開示資料より作成

Ⅳコンビニエンスストア業界の今後について

今後の国内の店舗展開
国内のコンビニ店舗数は、2019年から2020年にかけて減少し、今後も新規出店による成長は見込めない状況です。国内のコンビニ店舗数も既に相当の数になっており、将来の人口減少傾向を考えますと、新規店舗を増やす戦略は合致していないと思われます。そのため既存店舗の売上げを底上げしていく必要があります。

海外市場の将来性
日本は少子高齢社会であり、人口が減少傾向にあるため、コンビニ各社は海外事業を強化しています。セブン&アイ・HDは北米を中心に海外でコンビニ事業を展開し、ローソンは中国事業を強化しています。米国やアジアは今後も人口や所得の増加が期待できるため、市場の将来性に期待されています。

新たな事業戦略の必要性
国内市場においては、新規出店による成長が見込めなくなり、かつ人口が減少しているため、顧客1人当たりの購買単価や来店頻度を上げる戦略や、今までコンビニを頻繁に利用していない顧客層の取り込む施策が必要となっています。具体的には、ライベートブランド商品を開発して競合他社かとの差別化を図ったり(セブンイレブン)、健康をサポートする食品に力を入れたり(ローソン)、独自の電子決済サービスを導入し、ポイントやクーポンによって顧客のロイヤリティを高めることにより集客を図る(ファミリーマート)などの施策がとられています。

Ⅴコンビニ事業をM&Aするメリットとデメリット

【1】主な2つのM&Aの手法

M&Aを検討している経営者の皆様が覚えておくべき主な手法は、株式譲渡と事業譲渡の2つです。
売り手企業の株主が買い手企業に株式を譲渡する手法が株式譲渡です。売り手企業が買い手企業に事業を譲渡する手法が事業譲渡です。
どちらを選択するかは、売り手企業の意向、買い手企業の考えによって、両者の交渉によって決まります。
会社の借入金、従業員、資産、権利義務関係などの全てを買い手企業へ譲る場合、株式譲渡の手法を選択します。
一方、売り手企業の事業が、製造部門と販売部門のように複数事業に分かれており、製造部門のみを譲渡するような場合、事業譲渡を選択します。
以下の設例により、株式譲渡と事業譲渡の2つの方法を比較することにします。
<設例>

X社は、自社ビルの不動産賃貸業とレストラン事業(25店舗:全店舗は賃借)の運営を行っています。株主はオーナー社長のみです。 コロナ禍の影響を受けて、レストラン事業の業績が悪化したため、X社はレストラン事業を第三者へ譲渡することにしました。
レストラン事業を事業譲渡する場合、買い手企業のメリットは、レストラン事業のみを引継ぐ点になります。ただし、従業員の再雇用、権利義務関係の引継ぎなどの手続が煩雑になるデメリットがあります。一方、売り手企業の簿外債務を引き継ぐリスクはありません。売り手企業のメリットは、レストラン事業のみ譲渡できる点、譲渡代金は売り手企業(X社)が受領する点になります。

【2】M&Aの手順・流れ


①プロセス開始当初にご依頼する資料やお伺いする情報がスムーズにご提供戴けると、その後のプロセスが円滑に進行します。
②予備的企業価値評価は、当社専門家(会計士/税理士)監修のもと実施。この段階で、譲渡価格や条件等の内容を概ね決定します。
③買手候補企業との間で大枠の条件が固まったら基本合意書(法的拘束力無し)を締結します。この段階より1対1の交渉(独占交渉)が始まります。
④基本合意と買収監査結果で差異があった項目を中心に調整し、詳細事項を決定。M&A実施後の体制等も、この段階ですり合わせます。

【3】M&Aにより会社を売却するメリット

オーナーのメリット(株式譲渡の場合)
①オーナー・その他株主のキャピタルゲイン(資本利得)の実現
オーナー一族はリタイアに際して現金収入が発生し、ハッピーリタイアすることができますその他株主も、同様に未上場株式を現金に換金できます

②相続税対策
流動性のない未上場株式を現金化することにより、遺産分割が容易になります

③オーナー一族の個人保証からの解放
買い手企業が保証(債務保証、不動産等の担保提供)を肩代わりするため、オーナー一族の経済的負担が解消されます※親族内承継または従業員承継の場合、オーナー一族の個人保証を継続せざるを得ない場合があります

会社のメリット
①事業の継続を確保、会社成長の可能性があります
②買い手企業の傘下に入ることにより、事業継続と安定性を確保できます
③買い手企業とのシナジー、将来の会社成長の可能性に期待できます
④従業員雇用の継続、安定を図ることができます

【4】会社を売却するデメリット

・買い手企業が見つからないリスク

会社を売却すると決断してもすぐに買手企業が見つかるとは限りません。
M&Aにはそれなりのコストがかかるので、買い手企業にとっては、それなりのメリットがなければM&Aを実行しません。コロナ禍においては、M&Aを検討する企業数が減っており、かつ投資目線も厳しくなっています。つまり、「コストをかけてもM&Aを行う」と買い手企業が思うような魅力がある会社(売り手企業)でない限り、なかなか買手企業が現れないと考えるのが良いでしょう。M&A市場においては、一般に「将来的に売り手企業がどの程度の収益を上げる力があるか」で売り手企業は評価されます。したがって、収益面では黒字にすること、過度な借入金(例えば、売上高を超える、あるいは同じ金額の借入金)は避けるべきです。

・M&A後における従業員の待遇面の不安
M&A後における従業員の労働条件や解雇の規則については、買い手企業によって変更をされないように最終契約書に記載しておく必要があります。最終契約書での取り決めがない場合、M&A前より悪い労働条件で働かされたり、簡単に解雇されたりする可能性があるためです。M&Aを実行する場合、確認する事項は個別案件ごとに異なり、また多岐にわたります。この確認をおろそかにせず、売り手企業と買い手企業のお互いがM&Aのメリットを享受できるように交渉を進めることが重要です。

Ⅵ会社を売却する際の株価の考え方

株価(株式価値)の算定方法として一般的に用いられる手法は、修正純資産法、類似会社比較法(マルチプル法)、DCF法です。

【1】修正純資産法

評価対象会社(売手)の貸借対照表に計上されている全ての資産・負債を時価評価した後の純資産額に営業権を加算して企業価値を算定する方法です。この方法は、企業の静的な価値を判定するのに適しています。未上場会社のM&Aで利用されることが多い方法です。
(注)黒字の場合、営業権として修正後営業利益の3年分程度の金額を加算します。一方、赤字(営業損失)の場合、営業権はつきません。社歴〇〇年の老舗企業、あるいは△△△ブランドで有名などの要素は、営業権として評価されません。

【2】類似会社比較法(マルチプル法)

業種、企業規模等の類似する上場会社の一定の財務数値に対する企業価値の倍率を測定し、評価対象会社(売手)の財務数値に当該倍率を乗じることで企業価値を算定する方法です。
上場会社、未上場会社のM&Aにおいて利用されている方法です。

なお、未上場の中小企業・小規模企業のM&Aの株価算定においては、会社規模(売上)が小さい、ニッチ業種であるなどの理由により、上場会社の中から類似会社を選定することが難しい場合があります。

【3】DCF法

事業活動から得られると予測される将来キャッシュ・フローの総額を現在価値に割り引いた金額を企業価値として評価する方法です。将来キャッシュ・フローの予測に企業価値が大きく左右される方法です。上場会社のM&Aにおいては、一般的に利用されることが多いです。
なお、DCF法を用いる場合、将来キャッシュ・フロー算出の基礎となる評価対象会社(売手)の事業計画が必要となります。また、当該事業計画の客観性、妥当性、実現性等が重要になります。

【4】考慮すべき事項

評価対象会社(売手)が、企業のライフサイクル(イメージ図)において、創業期、成長期、成熟期、衰退期のいずれの段階に該当するかを判断します。
併せて、評価対象会社の継続性の疑義の有無、知的財産等に基づく超過収益力に依存する収益構造であるか、類似上場会社のない新規ビジネス、或いはニッチ業種に該当するかなどを判断する必要があります。

企業のライフサイクル(イメージ図)

以上の考慮すべき事項を確認した後、評価対象会社(売手)に適切な株価(株式価値)の算定方法を選択します。複数の算定方法を選択できる場合は、それぞれの算定方法の結果を比較検討するのがよいでしょう。

【5】株価(株式価値)の算定方法の選択

〇:採用が適していると考えられる   △:場合によっては採用することが想定される

【6】会社を売却する場合に係る税金

中小M&Aの方法のうち、最も多く用いられる株式譲渡の場合において、会社売却に係る税金をどのように考えるかを一緒に見てみることにします。会社の株主が個人である場合、所得税・住民税あわせて20.315% の固定税率で分離課税が適用されます。以下の設例を用いて、会社を売却した場合、株主の税金をどのように計算するかを説明します。

<設例>
会社株主は、社長のみの一人株主とします。
株式の出資額10,000千円、株式譲渡代金100,000千円、売り手(個人株主)のM&A手数料5,500千円 (消費税込み)とします。

株式の売却益(注)は、株式譲渡代金から株式の出資額を差し引いた、90,000千円(=100,000千円−10,000千円)となります。
(注)キャピタル・ゲイン(資本利得)

個人株主の場合、株式の売却益は分離課税の対象となり、税率は20.315%(注)が適用されます。
また、M&A手数料(消費税込み)は、売却益から費用として差し引くことができます。
よって、個人株主が負担する税金は、以下のように計算することができます。
(90,000千円−5,500千円)×20.315%(注)=17,166千円
(注)所得税及び復興特別所得税(15.315%)+住民税(5%)

【7】会社を売却するタイミングを考える場合のポイント

会社を売却するためのポイントは3つあります。
ポイント① 引退の時期を決める。
「この事業が上手くいったあとで」といった条件付きの不明確な時期の決め方ではなく、できれば年月を確定することをおすすめします。時期を決めることで、実現するための強い決意が生まれます。
経営状態がよいタイミングで売却すると高い株価で売却でき有利ですが「企業価値が上がったら売却してリタイアしよう」という決め方だとなかなか踏ん切りがつかず、ハッピーリタイアの実現は難しくなるでしょう。

ポイント② 売却前に次の経営者がやりやすいように経営環境を整えておくことです。
後顧の憂いなくリタイアするためには、経営者の頭の中にある重要な項目を整理しておくことが重要です。
特に、従業員の対するケアがポイントであり、各従業員の性格等を、事業引継ぎの際に伝えておかなければ、その後の組織運営に支障が出ます。

ポイント③良いフィナンシャル・アドバイザーを見つける。
会社を売却する際には、専門的知識が必要となり、M&Aの専門家のサポートが必要となります。
中小M&Aの実績が十分にあり、業界での評判の良いM&A仲介会社を選ぶとよいでしょう。
どのM&A仲介会社も初期相談は、無料で対応しています。複数社と面談して、相性の良さそうな会社を選択するのも一つの方法です。
(注)フィナンシャル・アドバイザーの役割は、クライアント(売り手、買い手)が目指す戦略実現のために、最適なM&A手法を企画 立案し、その執行を全面的にサポートすることです。アドバイザリー会社のタイプとしては、金融機関系、会計会社系、ブティッ系の3つに大別することができます。

Ⅶ弊社M&Aコンサルティングサービスのご案内

弊社のM&Aコンサルティングのご案内です。特徴は3点あります。
①プロフェッショナルによるM&Aサポート
M&Aの専門性を持つ、経験豊かなコンサルタントが、皆様にきめ細かなサービスを提供させていただきます。実際に成約したお客様、皆様からご満足いただいております。

②完全成功報酬の手数料体系
当社は、1社でも多くの中小企業のM&A支援を行うために、リーズナブルな手数料体系を採用しています。着手金、月額費用などはいただかず、成功報酬のみの完全成功報酬制を採用しています。

③多くの成約実績
業種、規模、エリアを問わず、多くの成約実績がございます。
高い専門性を持ったM&Aコンサルタントが、ご満足いただけるサービスを提供させていただきます。

株式会社経営承継支援は、一社でも多くの企業を廃業危機から救うため、全ての企業様のご相談をお受け致しております。
M&A(株式譲渡、事業譲渡等)に関して着手金無料でご相談可能ですので、お気軽にお問合せくださいませ。

無料お問い合せ【秘密厳守】
この記事をシェアする

新着記事

1分で会社を簡単査定