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健康食品製造業界におけるM&A成功のポイント大公開!
2020年現在、健康食品製造業界のM&Aが増えています。
ここでは、健康食品製造業界の市場動向やビジネスモデル、M&Aの買い手側によるデュー・ディリジェンスにおける注意点、企業価値評価(株価算定)で使う数値(マルチプルなど)について説明します。
これらから、健康食品製造業界においてM&Aを成功させるためのポイントについて考えてみましょう。
I 健康食品製造業界の概要
【1】健康食品製造業界の市場環境
健康食品とは、栄養成分の補給など保健・健康の増進のために用いる食品のことをいいます。これは、国が安全性や有効性について定めた基準を満たした場合に機能の表示が許されている保健機能食品と、機能の表示ができない一般食品(栄養補助食品、健康補助食品、栄養調整食品)に大別されます。
また、厚生労働省の定義によれば、保健機能食品として、病者用食品や乳児用粉乳などの特別用途食品、特定保健用食品(トクホ)、栄養機能食品、機能性表示食品の3種類があります。
健康食品の市場について、何を健康食品に含めるかによってその範囲が変わってきますが、大手調査機関のレポートによれば、市場規模は約1兆円から2兆円と言われています。
高齢化の進展や医療費負担の増大に伴い、健康への関心が年々高まってきています。それに応じて健康食品の需要が拡大してきました。
機能性表示食品制度の導入によって、市場規模は今後拡大していくだろうと予測されていました。
健康食品に対する支出額は、消費者の年齢が高くなるにつれて多くなる傾向にあるため、高齢化の進展によって、需要の増加を期待することができます。
しかし、特定保健用食品(トクホ)の市場規模について、日本建工・栄養食品協会のプレスリリースによれば、2007年度の約6,800億円をピークにして、2018年度は約6,400億円となっており、その市場規模は減少傾向にあります。
高齢化による需要増加のプラス要因と全国的な人口減少による需要減少のマイナス要因が相殺され、大きな成長を期待することは難しい状況です。
これは消費者の低価格化志向が強まったこと、一部製品の安全性問題が報道されたことによって不安が拡大したことが原因と考えられます。
【2】健康食品製造業界のビジネスモデル
健康食品製造を営む企業には、大別して、①自社製造、②委託製造(ファブレス・メーカー)、③受託製造の3つがあります。
大規模な製造設備や工場を所有して製造から行うことは中小企業には難しいため、①自社製造、③受託製造は、大企業が行うビジネスモデルとなります。
一方、中小企業のほとんどは、自社の工場を持たず、製品企画のみ行っています。
製造をOEMメーカーに委託する②委託製造(ファブレス・メーカー)というビジネスモデルを採用しています。
健康食品製造業の競争力を決める要因は、研究開発費と広告宣伝費にあります。
新製品の開発には時間がかかり、多大な研究開発費が必要です。
それゆえ、受託製造の事業者は、大量販売を前提として製品開発を行わなければいけません。
また、販売チャネルとして通信販売が6~7割、店舗販売が3~4割と言われていますので、Webマーケティングに大きな広告宣伝費を投じることが必要となります。
【3】健康食品製造業界のM&A買い手候補となる主たる上場企業
健康食品製造業の事業承継を目的としたM&Aであっても、買い手候補は上場企業が中心になると考えられます。この業界では、以下の上場企業を挙げることができます。
サントリー食品インターナショナル、ニチレイフーズ、明治、大塚ホールディングス、伊藤園、東洋水産、味の素、ホクト、雪印メグミルク、ディーエイチシー、キューピー、ネスレ日本、日本新薬、参天製薬、江崎グリコ、ロート製薬、日本ハム、ファンケル、NHC、森永製菓、日本水産、アサヒグループ食品、東洋新薬、シーボン、J-オイルミルズ、日本製粉、佐藤製薬、協和発酵バイオ、三生医薬、日本水産、あすか製薬、ダイト、ハウス食品グループ本社、宝ホールディングス、アイケイです。
Ⅱ 健康食品製造業界M&Aで売却する売り手のメリット
安定している大手企業にM&Aで健康食品製造業を承継してもらうことで、従業員の雇用を維持し、事業のさらなる成長を実現することができます。
また、得意先である販売業者や小売店は、長年販売を続けてきた商品の利用を継続することもできることに加え、原材料の仕入先との関係を継続することができます。
また、小規模事業者が単独では難しかったIT投資によるデジタル化の推進よって、健康食品製造業の経営効率化を実現することができます。
結果として生産性が向上すれば、従業員の給与水準をアップさせることができるでしょう。
さらに、買い手企業が大手の受託製造であれば、製造規模の拡大による生産性向上、大量仕入れによる原材料費の引下げや、人材採用コスト、広告宣伝費、本社経費を削減し、M&Aによるシナジー効果を得ることができます。
買い手候補にとって魅力的な事業になれば、高い売却価格を実現することができ、引退した後のライフプランを充実したものとすることができます。
Ⅲ 健康食品製造業界M&Aで買収する買い手の注意点
【1】 健康食品製造業の買収デュー・ディリジェンスの注意点
M&Aの対象となる健康食品製造業の事業性を評価する場合の注意点として、第一に、設備投資とキャッシュ・フローの関係が挙げられます。
多額の研究開発費を要することから、現金支出が先行し、製品化までの時間も長期になることから、強固な財務体質および資金調達が求められます。
第二に、当然ではありますが、許認可事業であるため、特定健康用食品等の許可を得ているか、ISO規格を取得しているかを確認することが不可欠です。
第三に、流行やブームに左右されることから、陳腐化した滞留在庫を抱えていないか確認する必要があります。
【2】 健康食品製造業のM&Aにおける企業価値評価
健康食品製造業のM&Aにおける企業価値評価(株価算定)を行う際に活用していただくことができる数値は、以下の通りとなっています。
まず、TKC経営指標(2018年度)によれば、健康食品製造業の収益性について、売上高成長率は約1.7%です。
また、粗利率は20.7%、営業利益率は1.9%となっています。生産性について、1人当たり売上高は1,685万円、1人当たり人件費は316万円となっています。
次に、2020年8月現在の開示情報および市場株価によれば、健康食品製造業のマルチプル(倍率)について、PBR倍率は2~4倍、PER倍率は20~30倍、EBITDA/企業価値倍率は7~18倍となっています。
さらに、筆者が推計する株主資本コストは、安定した老舗企業であれば12%、急成長の新興企業であれば18%が妥当であると考えます。
なお、類似上場企業比較法で採用すべき上場企業として、ファンケル(4921)、森下仁丹(4524)、AFC-HDアムスライフサイエンス(2927)が挙げられます。
M&Aを検討する前に、何を準備し対応すべきかお悩みの方は一度、ご相談ください。
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