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事業承継計画を作成する時の注意点
中小企業における65歳以上の経営者数は2017年時点で全体のおよそ4割を占めていると言われ、多くの中小企業で代替わりが行われることが予想されています。取引先との信用関係を維持し安定した経営状態で事業承継を行うためには、中長期的な事業承継計画を作成しておくことが大切です。しかし、これから事業承継を行う多くの経営者にとって、初めて事業承継計画を作成するわけですから、何から手を付けて良いか分からない人もいるかもしれません。事業承継計画を作成するためには、どのような点に気を付ければ良いのでしょうか。
事業承継計画の概要と注意点
スムーズな事業承継を行うためには、後継者の選定からどのような方法で会社を譲渡していくかなど、さまざまな問題を解決する必要があります。しかし、これらの課題解決は一朝一夕にできるものではありません。そのため、後継者問題が表面化する前から中長期的な計画をあらかじめ作成しておくことが、スムーズな経営権の譲渡に必要です。事業承継を行うために作成する中長期的な計画を事業承継計画と呼びます。
事業承継計画を作成する時の注意点は「経営者が一人で作成すべきではない」ということです。従業員数のそれほど多くない、中小企業の中にはいわゆるワンマン社長と呼ばれる経営方針を定める際にとても強い影響力を持っている人物がいることがあります。しかし、事業承継とは本来、後に残される後継者や従業員のために作成されるべきものです。いくらそれまで会社の為に尽くしてきて、その企業に人一倍思い入れがある経営者だからといっても、自分一人だけで作成しては後に残される人たちを困らせてしまうかもしれません。スムーズな事業承継を達成するためにも、事業承継計画は必ず後継者や従業員などと調整しながら作成するようにしましょう。一緒に事業承継計画を作成することで、後継者や従業員に責任感を芽生えさせられるというメリットもあります。
事業承継計画の作成1.しっかりとした現状把握と中長期的な事業計画を作る
実際に事業承継計画を作成するときは、まず会社の現状を把握し、その後中長期目標を設定するようにしてください。会社の現状は経営者でなければ把握できていない部分も少なからずあるでしょう。作成のポイントとしては、そのような部分をできるだけ具体的な数字で第三者の目から見て分かるような資料を作成することです。中小企業の経営者のなかには、いわゆるどんぶり勘定で「何となく」経営をしている人もいますが、そのような体制では後継者が不安になってしまいかねません。しっかりとした売上高や経常利益などの数字を基に資料を作成することで説得力が増しますし、将来の事業予測を作成する際の足掛かりとすることが可能です。
また、事業承継の方法にもよりますが、特にM&Aを利用した第三者への譲渡をするときには、このような資料の作成は重要だと言えます。第三者から見て、その企業がどれぐらいの利益を将来に向かって生み出してくれるかは、今現在の利益ではなくて長期的な視点で判断されるからです。後継者不足問題が起こる危険性がある企業であれば、できるだけ早急に作成しておいたほうがよいでしょう。
事業承継計画の作成2.経営者の行動について
事業承継に向けて経営者が行わなければいけないことは大きく分けて2つあります。それは「人の承継」と「資産の承継」です。人の承継のなかで最も重要なものは、後継者の選定でしょう。中小企業の中には、経営者の子供が複数人雇われているというケースもよくありますが、親族間承継を行うのであれば誰を後継者に指名するか決めなければいけません。スムーズな事業承継を行うためにも「誰に後を継がせれば不平不満が生じにくいか」ということを常日頃から検討しておくと良いでしょう。人の承継には、ほかにも社内の役員への周知や事業承継にあたって問題となる税務関係や、法律関係の専門家への相談なども挙げられます。事業承継計画がある程度まとまったら、取引先など社外の関係者にも知らせなければならないでしょう。
資産の承継には、自社株式や事業用資産の譲渡などが含まれます。特に個人事業主のケースでは、事業用資産と個人資産の切り分けが難しく、問題になることもあるでしょう。後々トラブルにならないためにも、できるだけ早く経営者の意思を示しておいてください。相続や贈与などによる譲渡は高い税金が課されることがありますが「小規模宅地の特例」や「生前贈与」を上手く使うことによってかなり節税できるケースがあります。税理士などの専門家にアドバイスをもらって計画的に進めるようにしましょう。
事業承継計画の作成3.経営権の分散リスクに備えた対策を
事業承継計画作成のポイント3つ目は「経営権の分散リスクに備えた対策」です。同族会社では一族内で自社株を持っているケースが多いでしょうが、相続や事業承継が続くとあまり知らない親族が会社の株を持っている事態になってしまいます。そのようなリスクを避けるために、相続人に対する売り渡し請求をできるように定款を変更しておくと良いでしょう。また、経営者が交代するということは、退職金が支給されます。退職金の原資として、早い時期から小規模企業共済や生命保険の満期金などに早い段階で加入しておくとよいでしょう。
事業承継を作成したら、後継者や従業員といった社内の人間のみならず、時期がくれば社外の人間とも共有しておくことをおすすめします。事業承継を行うときはトラブルが発生することがありますので、事前に周知しておくことで取引先との関係が悪化することを防ぐことが目的です。また、関係者全員に周知しておくことで、将来的な不安を取り除き、事業に集中できるといったメリットもあります。
このように事業承継にはたくさん取り組むことがあります。事業承継計画を作っておくことで後継者へのスムーズなバトンタッチが可能になりますので、できるだけ早く作成しましょう。
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