目次
【会社終活】私的整理で残せる財産とは?(前編)
破産手続きとは
世間の破産のイメージは、すべてを失ってしまうというイメージですが、破産しても残せる財産もあります。
(1) よくある誤解
□ 選挙権は制限されません。
□ 住民票に載りません。
□ 職場に通知は行きません。官報には氏名・住所が掲載されます。
(2) 残せる財産
自由財産といい、例えば99万円までの現金は破産しても残せますし、破産手続が開始した後に取得した財産は、自分のものになります。
そのため、破産手続の開始を申請する申立てのタイミングや受任通知を発送するタイミングは重要となります。
(3) 破産のメリット
□ 会社が負っていたこれまでの債務が、免責手続きを経てすべて帳消しになります。
□ 破産手続を依頼した弁護士から債権者への通知などで、債権者からの取立ては留まり、精神的なストレスから解放されます。
□ 人生の再スタートを切ることができます。
(4) 破産のデメリット
□ 会社そのものが消滅します。
□ 会社の債務を連帯保証している経営者個人も、会社と同時に自己破産します。
□ 経営者以外の連帯保証人がいる場合、その方との信頼関係は崩壊し、その方も自己破産する可能性があります。
□ 信用情報機関に登録され、一定期間はローンやクレジットカードが使えません。
□ 一定の職業および資格は制限されます。
(5) 手続きの流れ
ⅰ.破産手続を代理してくれる弁護士に委任
ⅱ.Xデーの決定
ⅲ.Xデー当日(弁護士から受任通知の発送、従業員への解雇通知、事業所の閉鎖)
ⅳ.売掛金の回収など
ⅴ.裁判所へ破産申し立て
ⅵ.破産開始決定、破産管財人が選任
ⅶ.債権者集会に出席
ⅷ.破産手続終了
(6) 破産申立て後
代理人の弁護士とともに、破産申立ての書類作成が終わると、破産申立てを行います。
中小企業の場合、会社の債務について社長も連帯保証している場合が多のため、会社の破産申立てと同じとき、社長個人の破産申立てを行うことが多いです。
(出所:大阪地裁第6民事部(倒産部)HP)
Q5 破産手続の申立てのために必要な手続費用はどの程度ですか?
A5 破産手続の費用は、手数料として収入印紙1,000円(同時に免責の申立てをする場合には1,500円)、郵便切手、官報に破産や免責に関する情報を掲載するための費用として、合計約2万円が必要となります。
さらに、管財型の事件として手続を進める場合には、破産管財人が業務を遂行するための費用(予納金といいます)が必要となります。
破産管財人が業務を遂行するために必要となる費用(予納金)をいくらにするかは、事件ごとに裁判官が決めることになっています。
大阪地方裁判所(本庁)では、弁護士に依頼して破産申立てをする場合は、最低でも20万円以上の予納金が必要となり、弁護士に依頼しないで破産申立てをする場合は、最低でも50万円以上の予納金が必要となります。
これは、破産管財人の仕事量を考えて設けられた基準ですが、債権者の人数や、予想される破産管財人の業務の内容などによっては、この最低額よりも多い金額の予納金が決められる場合があります。
なお、弁護士に破産申立てを依頼する場合は、その弁護士に対して、別途申立て費用(弁護士報酬)を支払う必要がありますが、その具体的な金額等については、弁護士に相談した際にお尋ねください。
破産手続きの申立てを行うと、債務者審尋期日が指定されます。
これは、債務者である社長を裁判所に呼び出し、破産に至った経緯について説明を求める期日です。
特に問題がない限りは審尋を経ない例が多いです。
破産の申立てが認められると、破産手続開始の決定が裁判所によってなされ、これにより会社の債務についての強制執行・仮差押え、仮処分等の手続きがすべて失効します。
それと同時に、破産者たる会社は、会社に残った財産・債務についての管理処分権を失います。
裁判所は、破産手続き開始決定とともに破産管財人を選任します。
破産管財人は、破産手続き中に会社の財産をすべて債権者のために管理、処分します。
会社の実印や銀行印、通帳などもすべて破産管財人に引き継がれます。
破産管財人は、すべての債権者の利益を代表し、会社の財産を調査し、換価されていないものがあれば、可能な限り換価し、管財人の報酬や従業員の給与、租税公課などに優先的に支払われます。
その後余剰がある場合、債権者に平等に配当します。
破産手続開始決定前においては、本来、債務者は、自由に債務を弁済することができ、また自らの財産を自由に処分することができます。
しかし、このような原則を貫くと、破産手続開始決定がなされる直前に特定の債権者が債権の回収を行ったり、債務者が手元に資金を残すために自己の財産を廉価処分したりして、破産手続開始決定段階で破産財団が形成できないおそれが生じます。
これでは、法の目的である関係者の利害調整や債務者の財産の公平な清算を図ることができません。
そこで、一定の要件の下、破産手続開始前に行われた行為の効力を否定して流出した財産を回復させ、債権者間の平等を実現するために否認権の制度が設けられました。
否認権の対象となりそうな行為を避ける配慮が、破産手続き申立ての前から必要です。
破産手続きの開始決定から2~3ヵ月後、裁判所で債権者集会が開かれます。会社に対する債権者が出席し、破産管財人から破産手続きの進捗状況について説明されます。
債権者集会には社長の出頭が義務付けられます。
債権者に対して配当するだけの現金がない場合、管財人または裁判所の職権により、破産手続きが廃止されます。
また、配当に足る現金や財産がある場合、配当が終了した後の債権者集会にて、裁判所によって破産手続きの廃止が決定されます。
この破産手続きの終了をもって、会社は消滅します。
特別清算手続とは
特別清算とは、破産と同じように裁判所の関与を受けながら会社を清算する手続きです。
破産と比べると手続きが簡単で、費用が安くすむなどのメリットがありますが、特別清算を利用できるのは株式会社だけであり、かつ債権者(正確には総債権額)の3分の2以上の同意が必要です。
また特別清算は、他の承継方法と併用することで、企業の再生に役立つ手段です。
それは、会社のなかで残すべき事業だけを切り取って別会社に承継させ、残った債務については、特別清算で清算処理をするスキームです。
(1) 特別清算手続と破産手続の法律根拠
特別清算手続は会社法という法律に基づく手続であり、破産手続は破産法という法律に基づく手続です。
破産法は、文字どおり破産について定める法律ですが、会社法は、会社の設立からその機関など会社に関する規律全般を定める法律であり、特別清算のみを定める法律ではありません。
(2) 手続開始原因
破産手続の開始原因は,債務者が支払不能または債務超過とされています。
特別清算の開始原因は、清算中の株式会社について、清算の遂行に著しい支障を来すべき事情がある場合または債務超過の疑いがある場合です。
手続の開始原因としては、破産手続よりも特別清算手続きが広くなっています。
(3) 手続の遂行
特別清算手続も破産手続も、裁判所の関与によって手続が進められます。
特別清算手続は、裁判所によって選任された特別清算人が手続を遂行します。
破産手続は、裁判所によって選任された破産管財人が手続を遂行します。ただし、破産管財人は、債務者と利害関係のない第三者が選任され、破産管財人に選任されるのは弁護士に限られています。
一方、特別清算人は裁判所によって選任されますが、清算人がそのまま特別清算人に選任されるのが通常です。清算人は第三者である弁護士ではなく、その株式会社の代表取締役が就任していることが多いため、特別清算人もそのまま株式会社の代表取締役が選任されることがあります。
(4) 特別清算のメリット
□ 倒産のイメージを回避できます。
□ 手続開始要件が広いです。
□ 経営者が清算人となるので、会社が主導権を維持したまま手続きできます。
□ 金融機関よりも取引先への返済に配慮することができます。
□ 破産よりも手続きにかかる費用を低く抑えられます。
(5) 特別清算のデメリット
□ 株式会社以外は利用できません。
□ 株式会社の解散に特別決議の議決要件を満たす必要があります。
□ 債権者の1/2に加え、債権総額の2/3の債権者の同意が必要です。
□ 債権確定制度がありません。
□ 否認権に該当する制度がありません。
(6) 手続きの流れ
ⅰ.解散・清算人の選任(株主総会決議等)
ⅱ.債権届出(官報公告)
ⅲ.裁判所に特別清算の申立て
ⅳ.特別清算開始の命令
ⅴ.第1回債権者集会
ⅵ.裁判所に協定案を提出
ⅶ.第2回債権者集会(協定の採決)
ⅷ.裁判所による協定認可決定
ⅸ.弁済
ⅹ.特別清算終結決定と特別清算終結の登記
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