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中小M&Aガイドライン第3版
M&Aガイドラインは、後継者不在の中小企業のM&Aを促進するため、中小企業オーナーにM&Aのプロセスや注意点を示すとともに、M&A支援機関に対して適切な行動指針を示すものとして中小企業庁が発表したものです。
M&Aガイドラインには法的な強制力はありませんが、2021年8月に中小企業庁が創設したM&A支援機関登録制度の登録支援機関は、M&Aガイドラインの遵守が求められています。また、同登録制度に登録している支援機関を利用することが、M&Aに関する補助金の受給要件であり、M&Aガイドラインの実効性を担保しています。
M&Aガイドラインは、2020年3月に初版、2023年9月に第2版、2024年8月に第3版と改定を重ねています。M&Aガイドライン第3版では、仲介/FA契約締結前の重要事項説明の追加説明事項として、譲受側(買い手)への調査の対応、実施体制の構築が新たに追加されました。
一般社団法人M&A支援機関協会の自主規制との関係
ガイドラインとは別に、M&A支援機関協会(旧M&A仲介協会)が2023年12月に自主規制ルールを発表しました。
自主規制ルールはM&Aガイドライン第2版より厳しい内容であり、第3版の改定の一部はこの自主規制ルールの内容と重複しています。
自主規制ルールはガイドライン第3版の内容を先取りしていたといえます。
第3版において対応が必要となる主な事項
仲介/FA契約締結前の重要事項説明の追加説明事項
M&Aプロセスごとの詳細な業務内容
担当者の保有資格
経験年数・成約実績
仲介の場合は、相手方の手数料に関する事項
譲受側(買い手)への調査の概要
業界内での情報共有の仕組みへの参加の有無等
M&Aプロセスごとの詳細な業務内容
譲受側(買い手)への調査
・財務状況に関する調査
・財務諸表(決算書)の確認
・コンプライアンスに関する調査
・買い手(法人)のみならず買い手の経営陣、主要株主、関連会社等
・Web検索、社内や業界共有情報の確認、その他外部DBや調査会社の活用
・事業実態の調査
・商業登記簿の確認、web地図閲覧、事務所の訪問
・最終契約の実行可能性の調査
・財務諸表、預金通帳、融資証明書等の確認
・その他M&Aに取り組む背景、過去のM&Aでのトラブルの有無
(参考)一般社団法人M&A支援機関協会の特定事業者リスト
共有会員は、顧客との契約内容を改定したうえで協会に申請して参加リストに載った特定事業者と取引を行うかは各会員の判断に委ねられています。
広告・営業
広告・営業に関する禁止事項の組織内への周知・徹底
・M&Aの勧誘である目的を告げずに広告・営業しない
・必要な時間を与えず即時判断を迫らない
・虚偽の買い手や実現不能な売却価格、実態よりも買い手を良く見せる
などM&Aの意思決定に影響を及ぼす事項に関して虚偽や誤認を与えない
・広告・営業先からの停止意思の組織的な記録・共有体制の構築
・M&Aの意向がないから営業しないでほしいという相手の情報は組織的に共有し、再開するときも慎重に行う
※M&A支援機関協会の自主規制とほぼ同じ内容
利益相反
利益相反に関する禁止事項の組織内への周知徹底
・買い手から追加報酬を得て優先的にマッチングしたり、買い手に有利な価格誘導
・正規手数料とは別に、希望価格より高く売れればその超過額の何割かを売り手に請求(売FA)
・希望価格より安く買えれば、その超過額の何割かを買い手に請求 (買FA)
・一方から伝えられた情報を相手に伝えず握りつぶしたり、偽の情報を渡す
・リピーターを優遇し、他社を不利に扱う
※M&A支援機関協会の自主規制とほぼ同じ内容
ネームクリア
マッチングに際して、買い手候補に対して売り手企業の具体的社名の開示を行い、企業概要書等の詳細資料の提示を行います。
M&A仲介者に求められる規律
・開示する前に買い手と秘密保持契約を締結
・その買い手にネームクリアを行って良いかを売り手から同意を取る
個別同意を取らずにM&A仲介者に一任する場合、以下の対応が必要です。
・売り手の希望を踏まえて、具体的な一定の基準を設定
・売り手に秘密保持の観点から個別同意が通常であること、一定の基準を設定しても売り手が希望しない候補先に開示されるリスクがあることの説明
・売り手からの指示があれば速やかにネームクリアを中止する旨を明示的に確約
テール条項
M&A仲介者が紹介した買い手候補と、アドバイザー抜きで成約した場合、成功報酬を請求できるとする条項
・ノンネーム提案のみで具体的な提案をしていない買い手候補
・単にロングリストに載せただけで、具体的な提案をしていない買い手候補
・提案した買い手候補であるが、非選任で他の仲介者の提案によって成約した場合に成功報酬を請求するケースがあり、問題になっている
上記の場合は、M&A仲介者はテール条項に基づく成功報酬を請求することは出来ません。
最終契約後のリスク事項に関する説明等
認識の有無に関わらず対応するリスク
・譲り渡し側(売り手)の経営者保証の扱い
・DDの非実施
・表明保証の内容
認識した段階で対応するリスク
・クロージング後の支払・手続
・最終契約後の支払いの調整・修正
・譲り渡し側の資産・貸付金の最終契約
・最終契約からクロージングまでの期間
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