M&Aの競業避止義務とは?

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競業避止義務とは?

競業避止義務は、一定の者が自己(自社)または第三者の利益を損なうような取引をしてはならないこと定義されます。
例えば、従業員に対する競業避止義務の場合、従業員が会社に対して損害をもたらすような競業行為を実施しない、退職後に同業他社に就職しないなど、会社から従業員に課す義務になります。
競業避止義務は法律で規定する内容もあり、実務上、有効期間や具体的な禁止行為などを契約書または就業規則等に規定することもできます、M&Aの場合、最終契約の条項の一つとして設定します。
M&A
の競業避止義務は、M売手(会社、オーナー社長など)は、M&A後に一定期間において同じ事業あるいは競合事業を行うことに制限を設けることを意味します。その目的は、買手(会社、個人など)の不利益が生じることを防ぐためです。

事業譲渡における会社法の規定

企業間で競業避止義務に関して確実な取り決めをしない場合でも、同一市町村と隣接する市町村の区域内では20年間同業種の事業を行ってはならないと規定されています(会社法21条)。
すなわち、M&Aの事業譲渡の場合、売り手と買い手の間で競業避止義務について取り決めていなくとも、売手は20年間は同業種の事業を行うことができません。
競業避止義務は売手と買手の取り決めによって期間や区域を定めることができます。期間については最長30年まで延ばすことも可能です。
インターネットが普及しているので、、インターネットによって同一市町村と隣接する市町村でなくても損害を与える可能性もあり、区域においての競業避止義務の有効性については売手と買手の間で取り決めを行うことが必要です。

競業避止条項のサンプル

第〇〇条 (競業避止義務)
甲(売手)は、クロージング日以後年間は、乙(買手)が承継する承継対象事業と競合する事業を自ら行わず、また他人をして行わせないものとする。

競業避止義務に該当する場合

M&Aで事業譲渡した後、仮に売手がすぐに譲渡した事業と同じ事業を始めた場合は、競業避止義務違反に該当します。
また、競業避止義務は、取締役や従業員に対して課される場合もあります。

<取締役への競業避止義務>

取締役への競業避止義務は、取締役が自己又は第三者のために会社が行っている事業の競業取引を行ってはならないというものです。
取締役はその立場から会社の営業上の秘密や顧客情報などを知っているため、会社とは別に同じ事業を行う場合、それらの情報を利用する可能性があります。
取締役が会社の情報を利用して取引をすると、会社は不利益を被る可能性があります(会社法356条および365条)

競業に該当する場合

例えば、菓子製造業をしている会社の取締役が同じ販売地域で菓子製造を開始する場合、これは現実的に重複取引であるため競業に該当します。また、現在の事業や取引だけではなく、将来的に重複する可能性のある事業も競業に該当します。

<従業員への競業避止義務>

従業員への競業避止義務は、現在の会社に在籍中に競合他社に就職、または競合他社を起業して、現在の会社の利益を不当に損なってはならないというものです。
会社と従業員との間で労働契約を締結して、現在の会社に在職中は秘密保持義務と競業避止義務を従業員に課します。

競業に該当する場合

従業員が現在の会社に在職中に自社の顧客に競合他社を紹介することは、競業避止義務の違反に該当します。

現在の会社に在籍中の従業員が競業避止義務に違反した場合、懲戒処分や損害賠償請求の対象になります。
元従業員に対して退職後に競業避止義務を課すためには、就業規則又は個別の誓約書に規定することが必要です。そして、会社の利益を不当に損なうことになるのか、その関係性や元従業員の具体的な業務内容の重要性などを勘案して競業であるか否かの判断を行うことになります。

M&Aの競業避止義務の期間

M&Aの競業避止義務の期間は、契約書の中で双方の合意があれば自由に定めることができます。
事業譲渡の場合、契約書に競業避止義務の条文がない場合も、売手(会社)は競業避止義務を課されることになり、その期間は原則20年です。一方、20年は競業避止義務の期間としては長すぎると言うこともあり、一般的に事業譲渡契約書の中で、別途競業避止義務の期間を設定することが多いです。
事業譲渡、その他のスキームに関わらず、M&Aの競業避止義務の期間は、2年間~5年間程度の場合が多いです。

競業避止義務に関する会社法の規定

 M&A時の競業避止義務に関する注意点

競業避止義務の期間や範囲

競業避止義務は会社法21条で定められていますが、実際にM&Aを行う場合は売手と買手が具体的な期間と範囲を決めることが重要です。
売手と買手が合意した場合、競業避止義務の期間を短縮したり、事業範囲を拡大することが可能です。また、競業避止義務が不要であれば、規定しないこともできます。

競業避止義務の違反

M&Aの競業避止義務が認められた場合は、事業差止めや損害賠償請求がなされる可能性があります。
ただし、競業避止義務でその有効性に該当するか否かを判断するのは難しく、具体的に被った被害額の算出、競業避止義務の違反によって買手が被害を被った因果関係を明確にできるか否かが裁判の争点になります。

従業員との競業避止義務契約

従業員との競業避止義務契約は、退職後についても規定することができます。この場合、就業規則や誓約書など労働契約とは別契約を締結することによって、競業避止義務を従業員に課すことができます。
しかし、従業員は職業選択の自由があるため、その内容には合理性が必要です。職業選択の自由を制限して会社が守る必要がある利益はありますが、従業員の職業選択の自由という権利もあります。
退職後の競業避止義務を規定する場合は、社内における従業員の具体的な業務内容の重要性、従業員が被り得る不利益を考慮する必要があります。

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