M&A(会社売却)できる会社とは?

目次 [ ]

1.会社の定量情報と定性情報

会社売却の相談を受けた場合、売り手企業の社長様と面談し、会社の業績(定量情報)や事業内容(定性情報)をヒアリングします。
そして、この定量情報と定性情報に基づいて、株価の算定、企業概要書の作成、買い手候補企業とのマッチングを行います。

今回は、X社(運送業)からの相談内容を定量情報、訂正情報ごとに整理し、買い手候補企業とのマッチングについて考察することにします。

【X社:運送業(首都圏)】
売上高:約5億円
経常利益:赤字(2期連続)
譲渡理由:創業者の娘婿である社長は高齢(70歳代)であり、経営意欲が希薄である。親族内および社内に次期社長候補はいない。
特長:上場機械メーカーの物流子会社が荷主である。財務内容は、過去の内部留保があり(資産超過)、銀行借入はない。
希望取引形態:100%株式譲渡

まず、X社の定量情報を見ると、X社は赤字であるためM&A(会社売却)の可能性が低いと思われました。

次に、実際にX社社長にお話をお伺いすると、以下の定性情報が分かりました。

 

X社(運送業)の社長
創業者の娘婿ですが高齢のため経営意欲が希薄であり、本社事務所には昼頃に顔を出すだけであり、昼食の後は帰宅していました。
配車は社員に任せ、積極的に営業活動をせずに、空のトラックを走らせることもよくある状況でした。

<X社の顛末>
X社(運送業)は、最初に提案した同業が買い手企業となり、約6ヶ月で最終契約締結、クロージングを迎えることができました。
買い手企業(売上高5億円)の社長は二代目であり、経営意欲が高く、A社を提案した時点で、「私が経営すれば、荷主に営業を掛けて仕事を増やして黒字にできる(収益の改善)。」と判断しました。
また、過去の内部留保が残っており(資産超過)、銀行借入がない点もプラス材料になりました。

2.買い手企業の「買いたい理由」

「許認可事業」の取得

例えば、建設業の公共工事、酒類製造免許があります。
建設業の公共工事への入札は、他の地域の建設会社は参加することができません。そのため、他の地域へ進出する場合、対象地域の建設会社を買収するしか方法がありません。

日本酒製造免許は、国税庁(税金の課税および徴収を執行する財務省の外局)から付与されます。新たに日本国内で日本酒製造免許を取得することは不可能(例外として、日本酒輸出目的の場合は除く)です。よって、日本酒製造に参入するためには、既存の日本酒製造会社を買収することになります。

 

公官公庁、大手企業等との「取引口座」

「取引口座を開く」とは、 「取引きしても大丈夫な相手であるかを審査する。」ことです。
一般に、取引を申し込む側が、相手(顧客)に対して「開いてください。」と依頼します。

例えば、百貨店の取引口座の場合、百貨店側が口座を開く側になる。

現在、大手企業等との「取引口座」の数は減少傾向にあります。この「取引口座」を獲得するために、「取引口座」を持つ会社を買収する場合があります。

 

「新しい技術」の獲得

建設業界では、BIM技術者が不足しています。
スーパーゼネコンの一角である大手ゼネコンが、BIM事業を拡大する目的で、BIM技術者を有する、小さな未上場会社を買収した例があります。

このM&Aの目的は、建築生産部門のBIM(Building Information Modeling)(注)の普及展開と高度化を図るM&Aにより、多数のBIM技術者を獲得することでした。

(注)コンピューター上に作成した3次元の建物のデジタルモデルに、コストや仕上げ、管理情報などの属性データを追加した建築物のデータベースを、建築の設計、施工から維持管理までの全工程で情報活用を行うためのソリューション手法。

 

3.M&A(会社売却)が難しい、あるいはM&A(会社売却)できない会社・・・

「赤字、債務超過、借入過多の会社」

仮に買い手がその事業を黒字化できると判断した場合でも、株式譲渡によって会社をそのまま引き継ぐのは現実的ではありません。
その場合、会社分割、事業譲渡などのスキームを選択することになります。事業譲渡を選択した場合、事業譲渡後の会社に借入金が残ったままなので、その返済が可能であるかなどを検討する必要があります。

 

「不正会計や粉飾決算、税金滞納あるいは無申告(法人税申告書が未提出)の会社」

会社の財務諸表を会計基準に従って適正に作成することは、会社経営者(社長)の責任です。
また、税法に従って税務申告を行って納税することは、会社(納税者)の義務です。

したがって、このような会社は、M&Aの相談前にその責任、義務を果たしておく必要があります。

このような会社を買収した場合、決算書上は黒字でも実際は大赤字であり、簿外債務を引き継ぐことになり、最悪、買い手自身も共倒れになる(倒産する)可能性があります。また、この様な会社を提案したM&A仲介者にも責任が生じます。

ごくまれにこのような状況の会社からM&Aの相談を受けることがありますが、お断りせざるを得ません。

 

最後に

中小企業のM&Aは、個々の案件ごとに手作り、言わばオーダーメイドであり、これが公式というものはありません。
この記事を読まれた会社経営者の方でM&Aをお考えになる場合は、中小企業のM&A専門会社である弊社に是非ご相談ください。

株式会社経営承継支援は、一社でも多くの企業を廃業危機から救うため、全ての企業様のご相談をお受け致しております。
M&A(株式譲渡、事業譲渡等)に関して着手金無料でご相談可能ですので、お気軽にお問合せくださいませ。

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