LPガス業界の動向およびM&Aについて

こんにちは。経営承継支援のブログ担当チームです。

このブログではM&Aに関する最新の動向や業界情報、専門的なノウハウなどをわかりやすく解説します。皆様の課題解決の一助となれば幸いです。

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目次

LPガスについて

【1】 LPガスとは

LPガスとは、液化石油ガスのことです。液化石油ガスを意味する英語「Liquefied Petroleum Gas」の頭文字をとってLPG(LPガス)と呼ばれています。

【2】 LPガスの成分と呼称について

LPガスは、主にプロパンとブタンの2種類あります。プロパンは、都市ガス供給区域外の一般家庭や飲食店などで使用されているLPガスの主成分です。一方、ブタンの使用例としては、カセットコンロのガスボンベがあります。また、ブタンは工業用LPガスやガスライターのガスとしても使われています。LPガスは両者の総称ですが、家庭用のLPガスの主成分がプロパンであるため、一般にプロパンガスという言葉はLPガスと同じ意味で使われています。実際に使われるときには気体であるLPガスも、タンクやガスボンベの中では液体です。
液体のLPガスは気体と比べ約250分の1の体積なので、効率のよい貯蔵や輸送が可能です。
(注)LPガスは冷却や圧力を加えると液体になります。

【3】 LPガスと都市ガスとの比較

LPガスという言葉と併せて、よく聞かれるのが都市ガスです。
LPガスと都市ガスを、供給形態、供給エリア、需要家数、災害時の復旧の項目ごとに比較すると、以下の表のようになります。

項目 LP ガス 都市ガス
供給形態 1 戸ごとにボンベで個別供給 配管による集団供給
供給エリア 全国(国土の 100%) 都市部のみ(国土の 5%)
需要家数 約 2,400 万件 約 2,760 万件
災害時の復旧 比較的復旧が早い(1 戸単位で安全確認後に復旧可能) 復旧まで時間がかかることがある(数百〜数千戸単位で配管の安全確認が必要)

出所:【資源エネルギー庁】ガス事業生産動態統計の概況(令和3年5月分の概況)
出所:【資源エネルギー庁】ガス種別生産・購入量、ガス販売量及び需要家数の推移

【4】 LPガスの用途

次に、LPガスがどのような用途で利用されているかについて、家庭用、産業用、自動車用ごとに説明します。

家庭用
一般家庭ではさまざまなLPガス専用機器が利用されています。キッチンのガスコンロや、鍋料理に使うカセットコンロなどのほか、ガス給湯器・ガス衣類乾燥機・ファンヒーター・温水式床暖房などは私たちの生活で最も身近な利用例です。アウトドアで使うバーベキューグリルも、LPガス式のものが多く使われています。

業務用LPガス
業務用LPガスの場合、飲食店での利用があります。LPガスは熱効率が高く大量調理が可能であるため、ガス炊飯器、フライヤー、オーブンなどで利用されます。したがって都市ガスエリアでもLPガスを使用する飲食店が多いです。
また、飲食店のみならず、コインランドリーの業務用大型衣類乾燥機、学校や自治体の庁舎、オフィスビルで利用される空調設備「GHP(ガスヒートポンプ)」にLPガスが選ばれることがあります。

産業用LPガス
産業用LPガスは、工業、農業、水産業などの分野において利用されています。工業分野では、非鉄金属や鉄鋼の熱処理工程や、食料品の製造工程、窯業、化学工業の分野などLPガスの用途は多種多様です。
農業分野では、温室の暖房、光合成促進のための炭酸ガス供給などのほか、茶葉や穀物の乾燥、家畜舎の暖房などにLPガスが利用されます。また、水産業分野では昆布やわかめのような海藻類の乾燥工程でLPガスが利用されています。

自動車用LPガス
LPガスは、ガソリンに代わる自動車の燃料としての用途があります。現在、日本国内のタクシー車両の約95%はLPガス車です。その理由は、ガソリンに比べて燃料費が安いためです。また、その他の業務用車両では、送迎用のバスや産業用のフォークリフトなどにもLPガスが燃料として使用されています。排気ガスのCO2排出が少ない点、走行できる距離が長い点、ガソリンよりも燃費が良い点などが、LPガス車のメリットです。
 

 

LPガス業界の動向

【1】 市場規模の縮小

日本LPガス協会の調査によると、2016年(平成28年)のLPガスの総供給量は約1,396万tであり、2006年(平成18年)の1,814万tと比べると約23%減少しています。また、総需要量も同様に減少しており、2006年には約1,817万tであった総需要量が、2016年には約1,430万tに減少しました。
この理由としては、エネルギー市場の競合である都市ガス市場やオール電化市場の拡大を挙げることができます。2017年(平成29年)の都市ガス販売量は、2007年(平成19年)と比較して約10%増加し、オール電化住宅も毎年増加しており、2025年には1,000万戸超になると予測されています。
また、2016年の電力の小売自由化、2017年の都市ガスの小売自由化により、消費者が自由にエネルギーを選択できるようになりました。その結果、新たな顧客獲得のためエネルギー業者間での競争が激化しています。

【2】 販売事業者数の減少

他のエネルギー業者との競争激化による収益性の悪化、後継者不足などを要因として、LPガス販売事業者数自体も減少傾向が続いています。2017年の販売事業者数は約1万9,000事業所であり、ピーク時(1968年)から約60%も減少しています。人口減少によるLPガスの需要低下や人手不足、更に電力自由化でガス・電気をセットで販売できるようになり、同業他社に加えて電力会社のような異業種他社も競争相手となっています。今後はより市場が縮小すると共に、事業所数もさらに減少すると見込まれます。

出所:一般社団法人 全国LPガス協会

【3】 LPガスの需要の推移と今後の見通し

LPガスの国内需要のうち、電力用以外の家庭業務用、工業用、自動車用などの需要は、1996年度をピークに近年は減少傾向にあります。1996年度から2016年度までの20年間を10年間隔でみた実績値と、2017年度から2019年度の1年ごとの実績値の推移は以下のとおりです。
※1996~2017年度実績:日本LPガス協会統計資料より
※2018~2019年度実績:経済産業省総合資源エネルギー調査会資料より

(単位:千トン)
実績
年度 1996 2006 2016 2017 2018 2019
国内需要合計
※電力用以外
19,174 17,647 13,857 14,505 13,969 13,850

また、2021年4月の経済産業省総合資源エネルギー調査会の発表による2020年度の実績見込みと、2021~2025年度の需要見通しを以下の表のとおりです。

(単位:千トン)
実績見込み 見通し
年度 2020 2021 2022 2023 2024 2025
国内需要合計
※電力用以外
12,528 13,618 13,742 13,930 13,924 13,962

2006年からの10年間で大きく減っていますが、2016年からの10年間ではほぼ横ばいとなる見通しとなっています。

【4】 LPガスの供給

日本LPガス協会の公表によると、国内のLPガスは海外からの輸入が約75%、国内生産分が25%です。輸入供給は安定しており、シェール由来のLPガス調達が増加しているアメリカからの輸入が約67%です(2020年度)。カナダやオーストラリアでも天然ガスプロジェクトによるLPガス増産体制が進められているため、中東地域からの輸入量が占める割合は少なくなっています。天然ガスと言えばインドネシア、というイメージを持つ人も多いかもしれませんが、それはLPガス(液化石油ガス)ではなくLNG(液化天然ガス)。また、国内消費増加などの理由でインドネシアからのLNG輸入は現在大幅に減少しています。

【5】 LPガス販売事業者の特長

エルピーガス振興センターが2020年に実施したアンケート調査をもとにLPガス販売事業者の特徴をまとめると、以下のようになります。

調査項目 アンケート調査回答企業に占める割合
組織形態
個人経営22.5%
法人経営(会社)71.6%
法人経営(組合)5.7%
流通段階
卸売専業1.0%
卸売・小売兼業14.8%
小売専業84.2%
専業・兼業
LP ガス販売専業17.8%
その他の事業と兼業82.2%
LP ガス事業の従業員数
0 名11.6%
1~2 名31.6%
3~5 名25.5%
6~10 名12.5%
11~15 名5.1%
16~20 名2.8%
21 名以上10.9%

出所:LPガス振興センター資料より
LPガス販売業界では主に中小中堅規模の事業者が各地域に分散して事業を展開しており、都市ガス供給エリアに比べてLPガスの供給エリアは少子高齢化、過疎化の度合いが高くなっています。LPガス販売事業者はLPガス販売については小売専業が大半であり、LPガス販売以外の事業を兼業している企業が多くあります。
兼業の内容で多いのは、以下のような業種です(数字は兼業企業に占める割合)。
・灯油などの石油製品販売(58.5%)
・設備工事(46.1%)
・住宅リフォーム(31.0%)
・ガソリンスタンド経営(26.0%)
・給排水工事(25.6%)
・家電・電器製品販売(21.8%)

 

 

LPガス業界の販売量ランキング

LPガス業界の販売量ランキング(1位~10位)は、以下の通りです。

販売量ランキング (t) LP ガス主要仕入先
順位 会社名 販売量 会社名
1位 岩谷産業(8088) 1,376,000 中東・ENEOS グローブ・コスモ
2位 株式会社エネサンスホールディングス 635,000 昭和シェル・ENEOS グローブ・アストモス・EMG
3位 日本瓦斯(8174) 620,000
4位 伊藤忠エネクス(8133) 569,000 JGE・ENEOS グローブ・昭和シェル
5位 東邦液化ガス株式会社
(東邦ガス(9533)の子会社)
423,101 コスモ・アストモス・ENEOS グローブ
6位 全国農業協同組合連合会 410,000 アストモス・ENEOS グローブ・岩谷・EMG
7位 大陽日酸株式会社
(日本酸素ホールディングス(4091)の子会社)
400,000 アストモス・エネサンス
8位 ミツウロコグループホールディングス(8131) 382,000 EMG・ENEOS グローブ
9位 シナネンホールディングス(8132) 343,773 コスモス・アストモス
10 位 株式会社サイサン
(未上場)
335,000 JGE・ENEOS グローブ・EMG
11 位 兼松ペトロ株式会社
兼松(80201)グループ
335,000 ENEOS グローブ・アストモス・昭和シェル
12 位 株式会社エネライフ(旧東京ガスエネルギー株式会社) 329,460 東京ガス
13 位 TOKAI ホールディングス(3167) 316,890 アストモス・ENEOS グローブ・昭和シェル
14 位 伊丹産業株式会社(未上場) 307,529 アストモス・EMG・ENEOS グローブ・コスモ・全農
15 位 トーヨーエナジー株式会社
阪和興業(8078)グループ
282,300 ENEOS グローブ・EMG・エネサンス・JGE・岩谷・コスモ

出所:各種資料より作成
 

 

LPガス業界のM&A

【1】LPガス業界同士のM&A

LPガス需要が縮小し、各地域のLPガス事業者が淘汰される経営環境下、同業者とのM&Aによって生き残り戦略、あるいは中長期的な事業成長を図ろうとする動きが活発化しています。
LPガス販売量・兼業規模ともに大きく、数県をまたいで事業を展開している企業が買い手となることが多く、同地域や隣接エリアの比較的小規模な企業を買収して事業拡大することになります。
売り手としても、より安定した事業基盤を有する買い手グループに参加することにより事業の継続・発展を図ることが容易になります。
また、中堅企業のなかには、経済成長とともにLPガス需要が拡大しているアジア地域への進出を図るため、現地のLPガス販売業者に対する買収・出資を進めているところもあります。

【2】LPガス販売事業者と都市ガス会社のM&A

大手都市ガス事業者は、主として再生可能エネルギー・スマートエネルギー方面や海外でのエネルギー事業に関連したM&Aを盛んに進めていますが、国内LPガス事業関連のM&Aを行う場合もあります。
国内でのLPガス事業については、シェア拡大戦略をとる会社と同事業の切り離しを図る会社があり、前者の場合、地方の中堅LPガス販売会社などが買収対象となっています。
後者の場合は、LPガス関連子会社を大手LPガス販売会社などに譲渡し、グループの経営資源を他の事業に集中するという戦略になります。

【3】LPガス販売事業者と異業種企業のM&A

LPガス事業者のなかには、M&Aを利用して兼業強化・事業多角化を推進したり、電力会社との協業を通してガス・電力を含む総合的なエネルギー事業の推進を図るところもあります。LPガス業者が、顧客からの問合せなどサービスの均質化、顧客情報の管理などを目的として、テレマーケティング会社をM&Aした事例もあります。

【4】過去のLPガス業界のM&A(一部)

年度 買い手 対象企業・事業
2019 西部ガス株式会社
(未上場)
吉川工務店(福岡県:マンション、福祉施設、事務所の施工)を子会社化
2019 東邦ガス(9533) ヤマサホールディングス傘下の LP ガス事業子会社の経営統括を行っている株式会社ヤマサの全株式を取得
2019 カメイ(8037) 最上ガス株式会社(山形県:LP ガス小売業)の全株式を取得
2019 東海ガス
(TOKAI ホールディングス(3167)の子会社)
秋田県にかほ市のガス事業譲受、にかほガス株式会社を設立
2020 TOKAI
(TOKAI ホールディングス(3167)の子会社)
中央電機工事(愛知県:電気工事事業)を子会社化(建設事業の拡大)
2021 大丸エナウィン(9818) 株式会社太陽プロパン(福井県、LPG 販売)を子会社化
2022 Misumi(7441) 株式会社石井商店(宮崎県:LPG 販売)を子会社化

出所:各種開示資料より作成

2019年 (買い手企業) 西部ガス株式会社 (売り手企業) 株式会社吉川工務店
西部ガスグループは、連結子会社のエストラストや九州八重洲の住宅建築業や西部ガス興商の不動産賃貸業など、不動産事業に取り組んでいます。
吉川工務店(福岡県、売上高27億円)は、福岡市を中心にマンションや事務所、教育・福祉施設の施工を行っています。
西部ガスは、吉川工務店及びその関連会社である吉祥開発株式会社の全株式を取得して完全子会社化しました。本M&Aの目的は、不動産事業の業容拡大です。

2019年 (買い手企業) 東邦ガス(9533)(売り手企業) 株式会社ヤマサ
東邦ガスは、都市ガスとLPガス、電気の3つのエネルギーの最適提案と新たなサービスによる付加価値の提供、リフォーム等の暮らし関連事業の拡充に取り組んでいます。
ヤマサグループは、LPガスなどのエネルギー事業やくらしサポートに係わる事業を展開しています。
東邦ガスは、ヤマサホールディングス傘下のLPガス事業子会社の経営統括を行っている株式会社ヤマサの全株式を取得しました。
本M&Aの目的は、LPガス事業の業容拡大です。

2019年 (買い手企業) カメイ(8037)(売り手企業) 最上ガス株式会社
カメイは、東北最大の石油・LPガス卸会社です。
最上ガス株式会社(山形県)は、山形県内でLPガス及び灯油の小売業、配管工事業を行っています。
カメイは、最上ガス株式会社(山形県:LPガス小売業)の全株式を取得して完全子会社化しました。
本M&Aの目的は、カメイグループのホーム事業の強化を図るためです。

2019年 (買い手企業) 東海ガスTOKAIホールディングス(3167)の子会社 (売り手企業) 秋田県にかほ市のガス事業
TOKAIホールディングスは、100%子会社の東海ガス(静岡県焼津市)を通じて、秋田県にかほ市のガス事業を譲り受けし、にかほガス株式会社を設立しました。
本M&Aの目的は、都市ガス事業の広域エリア展開として、静岡県外での都市ガス事業の運営開始です。

2020年 (買い手企業) TOKAITOKAIホールディングス(3167)の子会社 (売り手企業) 中央電機工事株式会社
TOKAIは、建築と給排水・空調を中心とした設備工事業であり、主に静岡県で事業を展開しています。
中央電機工事(愛知県)は、愛知県や名古屋市など官公庁工事のほか、民間工事で豊富な受注実績を持つ電気設備工事会社です
TOKAIは、中央電機工事の全株式を取得して完全子会社化しました。
本M&Aの目的は、中京圏での受注拡大です。

2021年 (買い手企業) 大丸エナウィン(9818) (売り手企業) 株式会社太陽プロパン
大丸エナウィンは、近畿圏を地盤にLPガス、住宅設備機器の販売を主力とし、ミネラルウォーターの製造・宅配や在宅医療機器のレンタルなどを行っています。
株式会社太陽プロパン(福井県、売上高1億7,000万円)は、福井市内に強固な営業基盤を持つLPG販売会社です。
大丸エナウィンは、株式会社太陽プロパンの全株式を取得して子会社化しました。
本M&Aの目的は、北陸地域での事業エリアの拡大です。

2022年 (買い手企業) Misumi(7441) (売り手企業) 株式会社石井商店
Misumi(7441)は、エネルギー、ライフスタイル、フード&ビバレッジの3事業領域を中心に顧客の暮らしに必要なサービス、商品を提供しています。
石井商店(宮崎県、売上高4億円)は、宮崎県を中心にLPガス及び器具の販売等を行っています。
Misumiは、株式会社石井商店(宮崎県:LPG販売)を子会社化しました。
本M&Aの目的は、石井商店が持つ販売網と情報を共有し、宮崎県内におけるエネルギー事業の拡大を図ることです。
 

 

LPガス業界の課題および今後について

LPガス業界の抱える課題として、「後継者不足」、「配送や点検などの人材不足」、「市場規模の縮小や競争の激化」の3点を挙げることができます。

【1】後継者不足

地方都市でのLPガス業者は中小企業が多く、経営者の高齢化にともない、後継者不足による廃業も増えています。全国LPガス協会の調査によれば、LPガス事業者数は2007年の24,622から2016年には19,514となり、10年間に約2割減少しています。また、2020年12月末時点の事業者数では17,170(経済産業省)となっており、引き続き減少傾向となっています。このような状況下、各地域の需要に対応するため、地元の都市ガス事業者がLPガス事業を継承する事例も増えています。今後、地域のインフラを守っていくためには、エネルギー事業を展開する大企業の役割が大きくなると思われます。

【2】配送や点検などの人手不足

LPガスの需要が増加する冬場は、とりわけガスボンベの配送ドライバーが不足します。約90kgの容器を運ぶ作業は重労働であり、かつLPガス設備保安点検に関する資格、LPガス配送・バルク供給に関する資格などが必要であることも人材不足の要因となっています。
これらの問題解決策のひとつとして、ガスボンベに代わるFRP容器(繊維強化プラスチック複合型容器) の普及促進があります。FRP容器は軽くて扱いやすいため配送車両の燃料費改善や配送員の労力軽減につながり、業界の人手不足解消の一助となることが期待されています。

【3】市場規模の縮小や競争の激化

少子高齢化による世帯数の減少、オール電化の導入に加えて、省エネ機器の普及などもLPガスの需要減少の要因となっています。電気や都市ガスの自由化によってエネルギー分野の価格競争が生じてLPガス業界にも影響しているため、LPガスの価格の見直しも必要となっています。また、市場競争で生き残るためには、電気小売事業への参入など柔軟な販売戦略も重要です。売り手にとっては、経営者の高齢化が進み、次の世代への事業承継の問題が顕在化しています。また、従業員も高齢化が進んでおり、ガスの配送ドライバーや点検員等の人手不足も課題です。
買い手にとっては、都市ガスや電力会社との競合激化や縮小する市場の中で、売上を維持、拡大する必要があります。M&Aは、このような売り手と買い手双方の課題を解決する手法として有効です。また、LPガス業界内のM&Aのみならず、異業種の企業を買収することで事業の多角化を目指すM&Aも見られます。
 

 

LPガス業界の将来性を支える強みとは? ~災害時の供給安定性~

【1】分散型エネルギーであるため災害時の復旧が早い

LPガスが個別供給による分散型エネルギーである点は、集団供給である都市ガスや電力との大きな違いです。災害発生時でも1戸ごとに安全点検をして復旧させることが可能であり、他のエネルギーに比べて災害復旧が早いという利点があります。
2011年の3月11日に発生した東日本大震災の際には、震災発生10日後までにLPガスの半数以上が復旧し、その後4月中に全面復旧しました。一方、都市ガスは震災発生2週間後から徐々に復旧しはじめ、全面復旧は5月上旬でした。電力は震災発生10日後までに一旦は大幅に復旧しましたが、4月に数日間の大規模停電が発生し、全面復旧したのは6月中旬でした。この例から見ても、LPガスの復旧が都市ガスや電力よりも早いことがわかります。因みに、家庭用のLPガス、1本50kgのボンベの場合、平均1ヶ月以上の使用をまかなうことができます。通常、軒下在庫として2本のボンベが設置されるため、地震などの災害時に1本使用しても、安全点検が完了すれば2本目でさらに1ヶ月以上は使用できることになります。

【2】避難所や仮設住宅での利用

災害直後に仮設住宅を建てる場合、地域の小中学校や公共施設を避難所にする場合にも、運搬が容易であり設置しやすいLPガスは便利です。食事の準備(炊き出し)、暖房、シャワーなど日常生活と同じように使用できるため、安全点検が完了すれば使えるLPガスの利便性が高いです。

【3】災害対応型のLPガス機器は種類豊富

ガス、電気の供給が止まると命にかかわる患者を抱える医療・福祉施設、災害時に防災拠点となるべき公共施設は、災害時に早期復旧させるための備えが必要です。
万が一の場合に備えて、災害対応型LPガスバルク供給システム(災害対応バルク)が全国約770ヶ所に設置されています。同システムは、バルク貯槽(タンク)、メーター、ホースなどの設備と消費設備(LPガス機器)がセットになっているものです。接続できる消費設備は種類が多く、大量調理用の炊き出しセット、給湯ユニット、空調のためのGHP(ガスヒートポンプ)、発電機や照明器具のユニットなどがあります。

(注)バルク供給
LPガスのバルク供給とは、バルクローリという専用の輸送用タンクローリーから、バルク貯槽というタンクに大量のLPガスを直接充填する方式です。大口消費が見込まれる施設や事業所などでは、一般的なガスボンベの供給とは異なるバルク供給システムが利用されていますが、一般家庭や集合住宅、小口の業務用にも300kgや500kgの容器が使われています。さまざまな問題も抱えるLPガス業界ですが、今後を見据えたビジョンのもとで掲げられている取り組み方針から、将来的な需要回復の可能性を予想することもできます。
 

 

ITを活用した業務効率化

人手不足の解消には、業務の効率化が不可欠です。LPガス業界においては、IoT向け通信技術、LPWA(Low Power Wide Area)の導入が進められています。LPWAは、低消費電力で最大50km程度離れた地点でも可能な無線通信技術であり、LPガスの集中監視システムに最適です。LPWA対応のスマートメーター導入によって、正確な検針情報の自動取得も可能になります。従来、ガスが切れないようガスボンベにガスが残った状態で交換することが慣例であり、非効率的でした。LPWA方式の管理の導入によって、残量の正確な把握が可能になり、無駄を解消することができます。検針業務が自動化することができれば、業務量の削減も可能になります。LPWA方式による集中監視システムは、経費削減や保安の高度化を実現します。
また、消費者に対しては見守りサービスやスマホアプリを活用した便利なサービスを提供することができます。
 

 

市場への対応

LPガス業界の自由化は、都市ガスや電力業界の小売り自由化よりも先行しましたが、一般に周知されていません。しかし、現在のLPガス市場においては、公正・透明な市場の整備や、料金透明化・取引適正化などは必須です。LPガス料金にも、さらなる見える化の動きが求められています。具体的には、標準メニューの公表、新規契約と既存契約との料金体系集約、戸建てと集合住宅との従量料金単価における違いの根拠の明確化などを挙げることができます。
 

 

LPガス販売事業者の売却・M&A手法

LPガス業界では古くからLPガス小売業に関する商権の売買が行われています。
LPガス小売業者が廃業時に仕入先のLPガス卸売業者に得意先の契約を譲渡する、というのが典型的な売買事例です。これはM&A手法としては事業譲渡に該当します。LPガス小売業に限らず、比較的規模の小さな事業の売却では事業譲渡が多く用いられます。
売り手が法人の場合、一般的に株式譲渡の手法が最もよく用いられます(とくに売り手が非上場会社の場合)。LPガス販売業者のM&Aでも、株式譲渡の手法が用いられることがあります。

【1】事業譲渡・商権譲渡

ひとつの事業は様々な権利義務(有形・無形の資産、負債、雇用契約・取引契約など)で成り立っています。
事業譲渡では、これらの権利義務を一つ一つ買い手に移転することによって、事業を買い手に移管します。事業譲渡では、譲渡する権利義務の範囲を契約により取り決めます。
例えば、複数事業のうちの1事業のみ、あるいは1つの事業所・販売所のみを譲渡対象としたり、商売上の契約や顧客情報、取引先とのつながりといった商権のみを譲渡したりします。譲渡される権利義務の件数が多いと手続きが煩雑となり、譲渡完了までに相当の時間・コストがかかります。
そのため、一般に事業譲渡は比較的小規模な事業のM&Aで用いられることが多いです。

【2】株式譲渡

売り手の株式(50%超~100%)を買い手企業が取得し、売り手を子会社化するという手法です。会社全体がM&Aの対象となります。また、売り手は別法人として存続し、買い手グループの一員として経営統合によるシナジー(相乗効果)を追求するストラクチャーです。売り手が非上場会社の場合、売り手株主(オーナー経営者など)と買い手の間の相対取引でM&Aが成立するため、他の手法に比べて手続きが簡便です。
 

 

LPガス事業をM&Aするメリットとデメリット

【1】 買い手のメリット

LPガス業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。

「売り手の既存契約数が増えることで増販できる」
「規模を活かしてLPガス供給者に対しての価格交渉力が強くなる」
「売り手の事業エリアに販売エリアを拡大できる」
「エネルギー事業の多角化を実現できる」

【2】 買い手のデメリット

①顧客離れが増える可能性がある
LPガス業者のデメリットの1つに、買収後の顧客離れによる収益性の低下があります。
家庭用のLPガスは、都市ガスと比べてガス料金が高いため、多くの既存顧客にはLPガスから安価な都市ガスやオール電化に切り替えたいといった潜在的なニーズがあります。そのため、M&Aによる体制の変更・料金の変更・サービス内容の変更などによって、顧客離れが進む可能性があります。

②追加投資が必要になる可能性がある
売り手の中には、設備管理や設備投資に投資できないLPガス業者もあります。設備管理によるガス設備の劣化や設備の老朽化などの問題を抱えている場合、M&A後に設備投資費用が必要となる可能性があります。また、設備を健全化するために相当額の資金が必要となる可能性もあり、設備面をM&A前に調べる必要があります

【3】 売り手のメリット

オーナーのメリット(株式譲渡の場合)
①オーナー・その他株主のキャピタルゲイン(資本利得)の実現
オーナー一族はリタイアに際して現金収入が発生し、ハッピーリタイアすることができます
その他株主も、同様に未上場株式を現金に換金できます

②相続税対策
流動性のない未上場株式を現金化することにより、遺産分割が容易になります

③オーナー一族の個人保証からの解放
買い手企業が保証(債務保証、不動産等の担保提供)を肩代わりするため、オーナー一族の
経済的負担が解消されます
※親族内承継または従業員承継の場合、オーナー一族の個人保証を継続せざるを得ない
場合があります

会社のメリット
①事業の継続を確保、会社成長の可能性があります
②買い手企業の傘下に入ることにより、事業継続と安定性を確保できます
③買い手企業とのシナジー、将来の会社成長の可能性に期待できます
④従業員雇用の継続、安定を図ることができます

【4】 売り手のデメリット

買い手企業が見つからないリスク
会社を売却すると決断してもすぐに買手企業が見つかるとは限りません。M&Aにはそれなりのコストがかかるので、買い手企業にとっては、それなりのメリットがなければM&Aを実行しません。コロナ禍においては、M&Aを検討する企業数が減っており、かつ投資目線も厳しくなっています。
つまり、「コストをかけてもM&Aを行う」と買い手企業が思うような魅力がある会社(売り手企業)でない限り、なかなか買手企業が現れないと考えるのが良いでしょう。
M&A市場においては、一般に「将来的に売り手企業がどの程度の収益を上げる力があるか」で売り手企業は評価されます。したがって、収益面では黒字にすること、過度な借入金(例えば、売上高を超える、あるいは同じ金額の借入金)は避けるべきです。

M&A後における従業員の待遇面の不安
M&A後における従業員の労働条件や解雇の規則については、買い手企業によって変更をされないように最終契約書に記載しておく必要があります。
最終契約書での取り決めがない場合、M&A前より悪い労働条件で働かされたり、簡単に解雇されたりする可能性があるためです。
M&Aを実行する場合、確認する事項は個別案件ごとに異なり、また多岐にわたります。この確認をおろそかにせず、売り手企業と買い手企業のお互いがM&Aのメリットを享受できるように交渉を進めることが重要です。
 

 

会社を売却する際の株価の考え方

株価(株式価値)の算定方法として一般的に用いられる手法は、修正純資産法、類似会社比較法(マルチプル法)、DCF法です。

【1】修正純資産法

評価対象会社(売手)の貸借対照表に計上されている全ての資産・負債を時価評価した後の純資産額に営業権を加算して企業価値を算定する方法です。この方法は、企業の静的な価値を判定するのに適しています。未上場会社のM&Aで利用されることが多い方法です。
(注)黒字の場合、営業権として修正後営業利益の3年分程度の金額を加算します。一方、赤字(営業損失)の場合、営業権はつきません。社歴〇〇年の老舗企業、あるいは△△△ブランドで有名などの要素は、営業権として評価されません。

【2】類似会社比較法(マルチプル法)

業種、企業規模等の類似する上場会社の一定の財務数値に対する企業価値の倍率を測定し、評価対象会社(売手)の財務数値に当該倍率を乗じることで企業価値を算定する方法です。
上場会社、未上場会社のM&Aにおいて利用されている方法です。

メリット デメリット
①仕組みがシンプルで計算が容易
②客観性がある
③現在の市場環境が反映される
④将来価値が反映される
①類似会社の選定が難しい場合がある
②客観性が損なわれる場合がある
③反映されない個別要因が存在する場合
④市場環境によっては選択が難しい

なお、未上場の中小企業・小規模企業のM&Aの株価算定においては、会社規模(売上)が小さい、ニッチ業種であるなどの理由により、上場会社の中から類似会社を選定することが難しい場合があります。

【3】DCF法

事業活動から得られると予測される将来キャッシュ・フローの総額を現在価値に割り引いた金額を企業価値として評価する方法です。将来キャッシュ・フローの予測に企業価値が大きく左右される方法です。上場会社のM&Aにおいては、一般的に利用されることが多いです。
なお、DCF法を用いる場合、将来キャッシュ・フロー算出の基礎となる評価対象会社(売手)の事業計画が必要となります。また、当該事業計画の客観性、妥当性、実現性等が重要になります。

【4】考慮すべき事項

評価対象会社(売手)が、企業のライフサイクル(イメージ図)において、創業期、成長期、成熟期、衰退期のいずれの段階に該当するかを判断します。
併せて、評価対象会社の継続性の疑義の有無、知的財産等に基づく超過収益力に依存する収益構造であるか、類似上場会社のない新規ビジネス、或いはニッチ業種に該当するかなどを判断する必要があります。

企業のライフサイクル(イメージ図)

以上の考慮すべき事項を確認した後、評価対象会社(売手)に適切な株価(株式価値)の算定方法を選択します。複数の算定方法を選択できる場合は、それぞれの算定方法の結果を比較検討するのがよいでしょう。

【5】株価(株式価値)の算定方法の選択

考慮すべき事項 想定ケース 企業評価手法
修正
純資産法
マルチ
プル法
DCF 法
評価対象会社の
ライフステージ
創業期
成長期
成熟期
衰退期
会社の継続性 疑義なし
疑義あり
知的財産等に基づく
超過収益力
知的財産等の無形資産
が価値の主たる源泉
類似上場会社のない新
規ビジネス
他に例のない新規ビジ
ネス
ニッチ業種

〇:採用が適していると考えられる   △:場合によっては採用することが想定される

以上、中小企業のM&Aにおける株価(株式価値)の算定方法、考慮すべき事項を簡単に紹介しました。
現在、または将来、後継者問題などを理由に会社譲渡を考えている中小企業の社長様、是非、弊社にご相談ください。
会社の株価(譲渡金額)を決めるのは、社長様ご自身です。弊社試算の株価と比較して、納得できる譲渡金額を決める際の参考にして頂ければと思います。

【6】会社を売却する場合に係る税金

中小M&Aの方法のうち、最も多く用いられる株式譲渡の場合において、会社売却に係る税金をどのように考えるかを一緒に見てみることにします。会社の株主が個人である場合、所得税・住民税あわせて20.315% の固定税率で分離課税が適用されます。以下の設例を用いて、会社を売却した場合、株主の税金をどのように計算するかを説明します。

<設例>
会社株主は、社長のみの一人株主とします。
株式の出資額10,000千円、株式譲渡代金100,000千円、売り手(個人株主)のM&A手数料5,500千円 (消費税込み)とします。

株式の売却益(注)は、株式譲渡代金から株式の出資額を差し引いた、90,000千円(=100,000千円−10,000千円)となります。
(注)キャピタル・ゲイン(資本利得)

個人株主の場合、株式の売却益は分離課税の対象となり、税率は20.315%(注)が適用されます。
また、M&A手数料(消費税込み)は、売却益から費用として差し引くことができます。
よって、個人株主が負担する税金は、以下のように計算することができます。
(90,000千円−5,500千円)×20.315%(注)=17,166千円
(注)所得税及び復興特別所得税(15.315%)+住民税(5%)

【7】会社を売却するタイミングを考える場合のポイント

会社を売却するためのポイントは3つあります。
ポイント① 引退の時期を決める
「この事業が上手くいったあとで」といった条件付きの不明確な時期の決め方ではなく、できれば年月を確定することをおすすめします。時期を決めることで、実現するための強い決意が生まれます。
経営状態がよいタイミングで売却すると高い株価で売却でき有利ですが「企業価値が上がったら売却してリタイアしよう」という決め方だとなかなか踏ん切りがつかず、ハッピーリタイアの実現は難しくなるでしょう。

ポイント② 売却前に次の経営者がやりやすいように経営環境を整えておくこと
後顧の憂いなくリタイアするためには、経営者の頭の中にある重要な項目を整理しておくことが重要です。
特に、従業員の対するケアがポイントであり、各従業員の性格等を、事業引継ぎの際に伝えておかなければ、その後の組織運営に支障が出ます。

ポイント③良いフィナンシャル・アドバイザーを見つける
会社を売却する際には、専門的知識が必要となり、M&Aの専門家のサポートが必要となります。
中小M&Aの実績が十分にあり、業界での評判の良いM&A仲介会社を選ぶとよいでしょう。
どのM&A仲介会社も初期相談は、無料で対応しています。複数社と面談して、相性の良さそうな会社を選択するのも一つの方法です。
(注)フィナンシャル・アドバイザーの役割は、クライアント(売り手、買い手)が目指す戦略実現のために、最適なM&A手法を企画 立案し、その執行を全面的にサポートすることです。アドバイザリー会社のタイプとしては、金融機関系、会計会社系、ブティッ系の3つに大別することができます。

【8】会社を売却する際の注意点

経営者の健康問題
事業の内容に関係なく会社売却の理由と考えられるのは、経営者の健康問題です。
持病を抱えている人、年を取って体力に不安を持つ人など、会社の存続に不安を覚えて、弊社にご相談される場合がよくあります。

あるオーナー社長は、弊社にM&Aの相談をされましたがすぐに会社を売却せず、そのまま経営を続けられました。その2年後、オーナー社長が「M&Aを検討したい」と決断されました。

その2年間、オーナー社長は、定期的に通院したり、または入院したりと体調が良くなく、営業活動を十分に行うことができなかったため、売上高が減少しました。
その結果、利益率が下がり、会社の価値自体が棄損したため、株価算定の結果も2年前よりも30%減少となりました。

オーナー社長の場合、健康問題を理由として業績が下がることがありますので、その前にM&Aを決断することが重要です。

業界再編が加速している業種
2020年3月以降、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、各業界において業界再編が加速しています。この業界再編の流れを把握して競合他社よりも先に行動しなければ、M&Aのタイミングを逃すのみならず、M&Aできずに廃業に追い込まれることもあります。

事業再編が進むにはさまざまな理由があります。

例えば、人口の減少があります。
人口が減少すれば、従来のように売上を上げることは難しくなります。
或いは同地域に複数業者が乱立して、市場が供給過多の状態となっている場合も同様のことが言えます。
この様な場合、同業他社と経営統合を図ることで経営の安定を図り、生き残り戦略を選択する方法が考えられます。

株式会社経営承継支援は、一社でも多くの企業を廃業危機から救うため、全ての企業様のご相談をお受け致しております。
M&A(株式譲渡、事業譲渡等)に関して着手金無料でご相談可能ですので、お気軽にお問合せくださいませ。

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