M&A BUZZ

警備業界の動向およびM&Aについて【2024年版】

監修

経営承継支援編集部

この記事は、株式会社経営承継支援の編集部が監修しました。M&Aに関してわかりやすく役に立つ記事を目指しています。

目次 [ ]

Ⅰ警備業界とは

警備業法第2条では、警備業を「他人の需要に応じて、人の身体に対する危害や事故、財産の盗難を警戒・防止する業務を行う営業」と定義されています。

警備業の業務内容
同法第2条1項の1〜4号では、警備業の業務を以下のとおり定めています。
1号警備業務(施設巡回警備):事務所や住宅、興行場、遊園地等における盗難等の事故発生を警戒、防止する業務

2号警備業務(交通・雑踏警備):人や車両の雑踏する場所、通行に危険のある場所における負傷等の事故発生を警戒、防止する業務

3号警備業務(貴重品警備):運搬中の現金や貴金属、美術品等における盗難等の事故発生を警戒、防止する業務

4号警備業務(身辺警備):人の身体に対する危害の発生を身辺で警戒、防止する業務

Ⅱ警備業界の現状・市場規模

 警備業者、警備員数

警察庁が公開している「令和2年における警備業の概況」によると、2020年における警備業者数は10,113業者です。
前年度より205業者(2.1%)増であり、2016年(9,434業者)から4年連続での増加となっています。

出所:「令和2年における警備業の概況」(警察庁)    

 

区分ごとの警備業者の状況

区分ごとの警備業者の状況は、1号警備(施設警備業務等)は6988業者、2号警備(交通誘導、雑踏警備業務)は7322業者と、1号警備と2号警備が大半を占めています。

出所:ALSOKのHPより

警備業の市場規模

 全国警備業協会が実施した調査によると、回答した8,339業者の売上高合計は3兆4,734億2,931万円でした。
2016年(約3兆4,236億円)から2019年(約3兆5,534億円)にかけて市場規模が拡大したものの、2020年は若干縮小しました。以上より、警備業界は約3.5兆円の市場規模を誇る巨大産業であると言うことができます。

堅調な推移を続ける警備業界 家庭向け警備の需要高まる

 警備業界の過去の推移を見ると、2014年から2020年にかけて緩やかな増加傾向にあるります。世界的な金融危機の影響で多くの業界が業績を悪化させる中、警備業界はほぼ横ばいと堅調に推移しています。事業所向け警備、家庭向け警備ともに堅調な推移を見せています。2020年初から新型コロナウイルスの影響で大型イベントの警備需要が落ち込みましたが、オフィスや家庭の経緯契約件数は増加しており、安全・安心への需要は底堅い状況です。

2021年の警備業の売上高は、前年比0.6%減の3兆4,537億円でした。前年からほぼ横ばいで推移しました(警察庁:「警備業の概況」)。

出所:警察庁資料、業界動向サーチ

過去5年間の警備業者の売上高を見ると、ほぼ横ばいで推移していることが分かります。
コロナ禍の2020、2021年においても売上高はさほど減少していません。
新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、多くの業界が業績を悪化させましたが、警備者の売上高はほぼ横ばいに推移しました。事業所向け警備、家庭向け警備ともに堅調に推移しました。

2021から2022年にかけての警備業界は、前年から引き続いて各種イベントの開催が減少したため、雑踏警備の需要は減少しましたが、オフィスや家庭向けの契約数は増加し、機械警備も堅調に推移しました。雑踏警備を行うのは中小の警備会社が多いため、中小企業にとっては業績が厳しい年になりました。

 

警備業界の売上高ランキング(1位~10位)は、以下の通りです。

※直近決算より(出所:会社四季報等より作成)

売上高ランキング1位のセコム(9735)は、2021年11月にセコム上信越(4342)を完全子会社化。
2位のALSOK(2331)は、金融機関に強み。現金警備輸送はコンビニ等へ展開。
3位は、人手による常駐警備が中心、鉄道向けに強みがあるCSP(9740)。
セコムとALSOKが業界2強であり、業界全体の約80%は中小規模の会社が占めています。

Ⅲ警備業界の課題と今後について

人手不足

警備業界においても他業界と同様に、「人手不足」が大きな課題となっています。
全国警備業協会の調査によると、約93%の警備会社が警備員不足の状況に陥っています警備員の数が不足している背景としては、長時間労働の常態化、給与・処遇の悪さなどの問題があると言われています。人材不足を解消するには、業務量の平準化などによる長時間労働の是正、給与・処遇の向上などの対策が考えられます。
業界2強のセコムとALSOKは、警備ロボットやドローンを導入して現場の省人化を進めています。また、次世代通信規格「5G」を使用したバーチャル警備員、AIを用いた防犯カメラ映像解析などの実用化・普及を急いでいます。

多様化するニーズに合わせ様々なサービスを提案 

家庭向け警備サービスにおいては、自動通報システムや各種センサー、住宅用火災警報器、携帯電話と連携して異常が発生した際にメールで通知するなど、顧客へ提供するサービスが多様化しています。また、業界首位のセコムは医療・介護分野にも力を入れており、医療と警備を連携させたサービスにも注目されています。
企業向け警備サービスでは、コロナ禍の影響によりテレワークが進んだことにより、データセンター事業やサイバーセキュリティ-、防犯カメラを利用した混雑状況配信サービスなど、機械警備の設備を利用した新たな需要を掘り起こす傾向にあります。

海外展開に注目

今後は、中国、アジアを中心とした海外での警備サービス需要も大きなビジネスチャンスになると予想されます。業界首位のセコムはすでに中国、韓国、台湾、タイなどに進出しています。また、業界2位のALSOK(綜合警備保障)もタイ、中国、マレーシア、インドネシアなどに展開しており、東南アジアを中心とした海外展開が加速すると予想されています。

 

Ⅳ警備事業をM&Aするメリットとデメリット

【1】主な2つのM&Aの手法

M&Aを検討している経営者の皆様が覚えておくべき主な手法は、株式譲渡と事業譲渡の2つです。
売り手企業の株主が買い手企業に株式を譲渡する手法が株式譲渡です。売り手企業が買い手企業に事業を譲渡する手法が事業譲渡です。
どちらを選択するかは、売り手企業の意向、買い手企業の考えによって、両者の交渉によって決まります。
会社の借入金、従業員、資産、権利義務関係などの全てを買い手企業へ譲る場合、株式譲渡の手法を選択します。
一方、売り手企業の事業が、製造部門と販売部門のように複数事業に分かれており、製造部門のみを譲渡するような場合、事業譲渡を選択します。
以下の設例により、株式譲渡と事業譲渡の2つの方法を比較することにします。
<設例>

X社は、自社ビルの不動産賃貸業とレストラン事業(25店舗:全店舗は賃借)の運営を行っています。株主はオーナー社長のみです。 コロナ禍の影響を受けて、レストラン事業の業績が悪化したため、X社はレストラン事業を第三者へ譲渡することにしました。
レストラン事業を事業譲渡する場合、買い手企業のメリットは、レストラン事業のみを引継ぐ点になります。ただし、従業員の再雇用、権利義務関係の引継ぎなどの手続が煩雑になるデメリットがあります。一方、売り手企業の簿外債務を引き継ぐリスクはありません。売り手企業のメリットは、レストラン事業のみ譲渡できる点、譲渡代金は売り手企業(X社)が受領する点になります。

 

【2】M&Aの手順・流れ


①プロセス開始当初にご依頼する資料やお伺いする情報がスムーズにご提供戴けると、その後のプロセスが円滑に進行します。
②予備的企業価値評価は、当社専門家(会計士/税理士)監修のもと実施。この段階で、譲渡価格や条件等の内容を概ね決定します。
③買手候補企業との間で大枠の条件が固まったら基本合意書(法的拘束力無し)を締結します。この段階より1対1の交渉(独占交渉)が始まります。
④基本合意と買収監査結果で差異があった項目を中心に調整し、詳細事項を決定。M&A実施後の体制等も、この段階ですり合わせます。

【3】M&Aにより会社を売却するメリット

オーナーのメリット(株式譲渡の場合)
①オーナー・その他株主のキャピタルゲイン(資本利得)の実現
オーナー一族はリタイアに際して現金収入が発生し、ハッピーリタイアすることができますその他株主も、同様に未上場株式を現金に換金できます

②相続税対策
流動性のない未上場株式を現金化することにより、遺産分割が容易になります

③オーナー一族の個人保証からの解放
買い手企業が保証(債務保証、不動産等の担保提供)を肩代わりするため、オーナー一族の経済的負担が解消されます※親族内承継または従業員承継の場合、オーナー一族の個人保証を継続せざるを得ない場合があります

会社のメリット
①事業の継続を確保、会社成長の可能性があります
②買い手企業の傘下に入ることにより、事業継続と安定性を確保できます
③買い手企業とのシナジー、将来の会社成長の可能性に期待できます
④従業員雇用の継続、安定を図ることができます

【4】会社を売却するデメリット

・買い手企業が見つからないリスク

会社を売却すると決断してもすぐに買手企業が見つかるとは限りません。
M&Aにはそれなりのコストがかかるので、買い手企業にとっては、それなりのメリットがなければM&Aを実行しません。コロナ禍においては、M&Aを検討する企業数が減っており、かつ投資目線も厳しくなっています。つまり、「コストをかけてもM&Aを行う」と買い手企業が思うような魅力がある会社(売り手企業)でない限り、なかなか買手企業が現れないと考えるのが良いでしょう。M&A市場においては、一般に「将来的に売り手企業がどの程度の収益を上げる力があるか」で売り手企業は評価されます。したがって、収益面では黒字にすること、過度な借入金(例えば、売上高を超える、あるいは同じ金額の借入金)は避けるべきです。

・M&A後における従業員の待遇面の不安
M&A後における従業員の労働条件や解雇の規則については、買い手企業によって変更をされないように最終契約書に記載しておく必要があります。最終契約書での取り決めがない場合、M&A前より悪い労働条件で働かされたり、簡単に解雇されたりする可能性があるためです。M&Aを実行する場合、確認する事項は個別案件ごとに異なり、また多岐にわたります。この確認をおろそかにせず、売り手企業と買い手企業のお互いがM&Aのメリットを享受できるように交渉を進めることが重要です。

Ⅴ会社を売却する際の株価の考え方

株価(株式価値)の算定方法として一般的に用いられる手法は、修正純資産法、類似会社比較法(マルチプル法)、DCF法です。

【1】修正純資産法

評価対象会社(売手)の貸借対照表に計上されている全ての資産・負債を時価評価した後の純資産額に営業権を加算して企業価値を算定する方法です。この方法は、企業の静的な価値を判定するのに適しています。未上場会社のM&Aで利用されることが多い方法です。
(注)黒字の場合、営業権として修正後営業利益の3年分程度の金額を加算します。一方、赤字(営業損失)の場合、営業権はつきません。社歴〇〇年の老舗企業、あるいは△△△ブランドで有名などの要素は、営業権として評価されません。

【2】類似会社比較法(マルチプル法)

業種、企業規模等の類似する上場会社の一定の財務数値に対する企業価値の倍率を測定し、評価対象会社(売手)の財務数値に当該倍率を乗じることで企業価値を算定する方法です。
上場会社、未上場会社のM&Aにおいて利用されている方法です。

なお、未上場の中小企業・小規模企業のM&Aの株価算定においては、会社規模(売上)が小さい、ニッチ業種であるなどの理由により、上場会社の中から類似会社を選定することが難しい場合があります。

【3】DCF法

事業活動から得られると予測される将来キャッシュ・フローの総額を現在価値に割り引いた金額を企業価値として評価する方法です。将来キャッシュ・フローの予測に企業価値が大きく左右される方法です。上場会社のM&Aにおいては、一般的に利用されることが多いです。
なお、DCF法を用いる場合、将来キャッシュ・フロー算出の基礎となる評価対象会社(売手)の事業計画が必要となります。また、当該事業計画の客観性、妥当性、実現性等が重要になります。

【4】考慮すべき事項

評価対象会社(売手)が、企業のライフサイクル(イメージ図)において、創業期、成長期、成熟期、衰退期のいずれの段階に該当するかを判断します。
併せて、評価対象会社の継続性の疑義の有無、知的財産等に基づく超過収益力に依存する収益構造であるか、類似上場会社のない新規ビジネス、或いはニッチ業種に該当するかなどを判断する必要があります。

企業のライフサイクル(イメージ図)

以上の考慮すべき事項を確認した後、評価対象会社(売手)に適切な株価(株式価値)の算定方法を選択します。複数の算定方法を選択できる場合は、それぞれの算定方法の結果を比較検討するのがよいでしょう。

【5】株価(株式価値)の算定方法の選択

〇:採用が適していると考えられる   △:場合によっては採用することが想定される

【6】会社を売却する場合に係る税金

中小M&Aの方法のうち、最も多く用いられる株式譲渡の場合において、会社売却に係る税金をどのように考えるかを一緒に見てみることにします。会社の株主が個人である場合、所得税・住民税あわせて20.315% の固定税率で分離課税が適用されます。以下の設例を用いて、会社を売却した場合、株主の税金をどのように計算するかを説明します。

<設例>
会社株主は、社長のみの一人株主とします。
株式の出資額10,000千円、株式譲渡代金100,000千円、売り手(個人株主)のM&A手数料5,500千円 (消費税込み)とします。

株式の売却益(注)は、株式譲渡代金から株式の出資額を差し引いた、90,000千円(=100,000千円−10,000千円)となります。
(注)キャピタル・ゲイン(資本利得)

個人株主の場合、株式の売却益は分離課税の対象となり、税率は20.315%(注)が適用されます。
また、M&A手数料(消費税込み)は、売却益から費用として差し引くことができます。
よって、個人株主が負担する税金は、以下のように計算することができます。
(90,000千円−5,500千円)×20.315%(注)=17,166千円
(注)所得税及び復興特別所得税(15.315%)+住民税(5%)

【7】会社を売却するタイミングを考える場合のポイント

会社を売却するためのポイントは3つあります。
ポイント① 引退の時期を決める。
「この事業が上手くいったあとで」といった条件付きの不明確な時期の決め方ではなく、できれば年月を確定することをおすすめします。時期を決めることで、実現するための強い決意が生まれます。
経営状態がよいタイミングで売却すると高い株価で売却でき有利ですが「企業価値が上がったら売却してリタイアしよう」という決め方だとなかなか踏ん切りがつかず、ハッピーリタイアの実現は難しくなるでしょう。

ポイント② 売却前に次の経営者がやりやすいように経営環境を整えておくことです。
後顧の憂いなくリタイアするためには、経営者の頭の中にある重要な項目を整理しておくことが重要です。
特に、従業員の対するケアがポイントであり、各従業員の性格等を、事業引継ぎの際に伝えておかなければ、その後の組織運営に支障が出ます。

ポイント③良いフィナンシャル・アドバイザーを見つける。
会社を売却する際には、専門的知識が必要となり、M&Aの専門家のサポートが必要となります。
中小M&Aの実績が十分にあり、業界での評判の良いM&A仲介会社を選ぶとよいでしょう。
どのM&A仲介会社も初期相談は、無料で対応しています。複数社と面談して、相性の良さそうな会社を選択するのも一つの方法です。
(注)フィナンシャル・アドバイザーの役割は、クライアント(売り手、買い手)が目指す戦略実現のために、最適なM&A手法を企画 立案し、その執行を全面的にサポートすることです。アドバイザリー会社のタイプとしては、金融機関系、会計会社系、ブティッ系の3つに大別することができます。

Ⅵ弊社M&Aコンサルティングサービスのご案内

弊社のM&Aコンサルティングのご案内です。特徴は3点あります。
①プロフェッショナルによるM&Aサポート
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当社は、1社でも多くの中小企業のM&A支援を行うために、リーズナブルな手数料体系を採用しています。着手金、月額費用などはいただかず、成功報酬のみの完全成功報酬制を採用しています。

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M&A(株式譲渡、事業譲渡等)に関して着手金無料でご相談可能ですので、お気軽にお問合せくださいませ。

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