M&A BUZZ

保険代理店業界の動向およびM&Aについて【2024年版】

監修

経営承継支援編集部

この記事は、株式会社経営承継支援の編集部が監修しました。M&Aに関してわかりやすく役に立つ記事を目指しています。

目次 [ ]

Ⅰ保険代理店業界の市場動向

【1】保険代理店の業務内容

主に以下のとおりです。

・利用者に対する保険商品の紹介:利用者のニーズに応じて、最適な生命保険や損害保険を提案する業務
・保険契約に関する手続きの代行:保険契約の締結や解除、契約内容の変更などを保険会社に代わって行う業務
・保険金や給付金の請求サポート:契約者に代わって、保険金を適切に受けられるようにサポートする業務

保険代理店は、商品開発を行う保険会社と代理店契約や業務委託契約を結び保険商品を販売しています。したがって、保険会社からの販売手数料が代理店の収入になります。代理店は個人名義、法人名義での営業活動が可能であり、保険販売を専業とする代理店である「専業(プロ)代理店」、小売や自動車整備業などその他の業務と兼営する代理店である「副業代理店」の2つに大別することができます。
「専業(プロ)代理店」には、1社のみの取り扱いをする「専属代理店」と複数の保険商品を取り扱う「乗合代理店」があります。保険代理店のタイプには、損保系に強い代理店と生保系に強い代理店がありますが、人手不足や経営者の高齢化、統廃合などで代理店の数自体は減少しています(一般社団法人 生命保険協会)。

生命保険代理店の数は2015年度〜2019年度にかけて減少傾向にあり、特に個人の保険代理店は、57,786店(2015年)から49,631店(2019年)へ約14%減少しています。
また、損害保険を取り扱う保険代理店の数も、2010年度から2019年度にかけて202,098店(2010年)から172,191店(2019年)へ15%弱減少しています。

【2】乗合代理店(保険ショップ)の増加

2007年12月に保険商品の窓口販売が全面解禁されて以降、様々な保険会社の商品を扱う乗合代理店(保険ショップ)が増加しています。大手のほけんの窓口グループ(伊藤忠商事の連結子会社)や「保険クリニック」を運営するアイリックコーポレーション(7325)などは、駅前や大型ショッピングセンターに店舗を設けて、複数の保険を比較販売する手法を用いています。

【3】保険代理業の倒産件数、2023年上半期は16件

2023年上半期(1月から6月まで)の保険代理業の倒産は16件(前年同期比166.6%増)であり、前年同期と比べると2.6倍に急増しました。上半期としては2004年、2006年と同水準となり、リーマン・ショック時をしのぐ過去最悪ペースとなっています(出所:東京商工リサーチ)。すでに前年(2022年、11件)を半年間で5件上回っています。このペースで倒産件数が推移した場合、保険代理業の倒産集計を開始した1989年以降、最多であった2001年(25件)を上回る可能性があります。
一方、保険代理業の休廃業・解散は、2021年に過去最多の507件を記録しましたが、2022年は一転して446社(前年比12.0%減)と減少しました。しかし、2019年以来、4年連続で400社を上回って推移しており、倒産に加えて休廃業・解散も増加しています。

【4】販売不振による倒産

倒産原因のうち、最多は「販売不振」の14件(前年同期比250.0%増、構成比87.5%)であり、全体の約90%でした。コロナ禍前よりネット販売や同業大手との競合で売上高が減少したことに加えて、コロナ禍による来客数の減少によって業績不振となりました。

【5】負債総額から見た倒産件数

負債総額から見ると、負債1千万円以上5千万円未満が13件(前年同期比333.3%増)であり、全体の約81%を占めました。次に、5千万円以上1億円未満が3件(約19%)であり、負債総額1億円以上の倒産はありませんでした(前年1件)。
2023年上半期における最大の倒産は、1月に破産開始決定を受けた会社であり、その負債総額は約8,000万円でした。この倒産した会社は、生命保険会社、損害保険会社の代理店を展開し、タクシー会社や一般個人などを顧客にしていましたが、契約数の低迷によって減収が続いていました。

出所:東京商工リサーチ

【6】主な保険代理店の売上高

2020‐2021年の主な保険代理店(上場企業など)の売上高は、以下の通りである。


(注1) 伊藤忠商事は2019年、ほけんの窓口グループの発行済み株式57.7%を取得し、連結子会社化した。
(注2)NFCホールディングス(7169)の傘下に、株式会社ニュートン・フィナンシャル・コンサルティングと株式会社保険見直し本舗がある。

Ⅱ保険代理店業界のM&A

【1】過去の保険代理店業界のM&A

少子化による市場縮小に加えて、インターネットによる保険商品の販売拡大や来店型保険ショップの増加により、保険代理店業界の経営環境は厳しさを増しています。
そのため、中小規模の保険代理店は十分な収益を確保することが困難となり、経営の安定化のため、資本力のある同業に会社売却するケースが増えています。

【2】保険代理店業界の今後について

保険代理店の数・市場の成長率は、共に減少傾向であり、最大の要因は少子化による市場規模の縮小と言われています。そのため、市場競争が激しい保険代理店業界で中小規模の保険代理店が生き残るために、M&Aを検討する経営者が増えています。

【3】ダイレクト販売型の保険会社の増加

ダイレクト販売型の保険会社、保険ショップは、今後も増え続けると予測されます。
ダイレクト販売型の保険会社とは、インターネットによって保険商品を販売する業者です。
とりわけ自動車保険業界では、その傾向が顕著に見られます。2005年から2012年までの8年間で、ダイレクト販売の売上高が約2倍弱増加しています。
また、生命保険業界においても、ダイレクト販売のニーズが高まっています。ライフネット生命など、多数のダイレクト販売型の保険会社が市場参入しています。

【4】保険ショップの増加

保険ショップとは、店舗を保有して保険商品を取り扱う乗合型の業者のことであり、顧客自ら店舗に出向くスタイルの代理店です。このスタイルの代理店は、テレビCMなどの広告宣伝、多数の店舗出店によって、短期間で保険市場において消費者の認知度を獲得しました。例えば、有名なCMにより急成長した「ほけんの窓口」があり、現在多くの業者が保険ショップの形で市場に新規参入しています。

Ⅲ保険代理店事業をM&Aするメリットとデメリット

【1】M&Aの手順・流れ

①プロセス開始当初にご依頼する資料やお伺いする情報がスムーズにご提供戴けると、その後のプロセスが円滑に進行します。
②予備的企業価値評価は、当社専門家(会計士/税理士)監修のもと実施。この段階で、譲渡価格や条件等の内容を概ね決定します。
③買手候補企業との間で大枠の条件が固まったら基本合意書(法的拘束力無し)を締結します。この段階より1対1の交渉(独占交渉)が始まります。
④基本合意と買収監査結果で差異があった項目を中心に調整し、詳細事項を決定。M&A実施後の体制等も、この段階ですり合わせます。

【2】M&Aにより会社を売却するメリット

オーナーのメリット(株式譲渡の場合)

①オーナー・その他株主のキャピタルゲイン(資本利得)の実現
オーナー一族はリタイアに際して現金収入が発生し、ハッピーリタイアすることができますその他株主も、同様に未上場株式を現金に換金できます

②相続税対策
流動性のない未上場株式を現金化することにより、遺産分割が容易になります

③オーナー一族の個人保証からの解放
買い手企業が保証(債務保証、不動産等の担保提供)を肩代わりするため、オーナー一族の経済的負担が解消されます
※親族内承継または従業員承継の場合、オーナー一族の個人保証を継続せざるを得ない
場合があります

会社のメリット

①事業の継続を確保、会社成長の可能性があります
②買い手企業の傘下に入ることにより、事業継続と安定性を確保できます
③買い手企業とのシナジー、将来の会社成長の可能性に期待できます
④従業員雇用の継続、安定を図ることができます

【3】M&Aにより会社を売却するデメリット

・買い手企業が見つからないリスク
会社を売却すると決断してもすぐに買手企業が見つかるとは限りません。
M&Aにはそれなりのコストがかかるので、買い手企業にとっては、それなりのメリットがなければM&Aを実行しません。コロナ禍においては、M&Aを検討する企業数が減っており、かつ投資目線も厳しくなっています。つまり、「コストをかけてもM&Aを行う」と買い手企業が思うような魅力がある会社(売り手企業)でない限り、なかなか買手企業が現れないと考えるのが良いでしょう。
M&A市場においては、一般に「将来的に売り手企業がどの程度の収益を上げる力があるか」で売り手企業は評価されます。したがって、収益面では黒字にすること、過度な借入金(例えば、売上高を超える、あるいは同じ金額の借入金)は避けるべきです。

・M&A後における従業員の待遇面の不安
M&A後における従業員の労働条件や解雇の規則については、買い手企業によって変更をされないように最終契約書に記載しておく必要があります。最終契約書での取り決めがない場合、M&A前より悪い労働条件で働かされたり、簡単に解雇されたりする可能性があるためです。M&Aを実行する場合、確認する事項は個別案件ごとに異なり、また多岐にわたります。この確認をおろそかにせず、売り手企業と買い手企業のお互いがM&Aのメリットを享受できるように交渉を進めることが重要です。

Ⅳ会社を売却する際の株価の考え方

株価(株式価値)の算定方法として一般的に用いられる手法は、修正純資産法、類似会社比較法(マルチプル法)、DCF法です。

【1】修正純資産法

評価対象会社(売手)の貸借対照表に計上されている全ての資産・負債を時価評価した後の純資産額に営業権を加算して企業価値を算定する方法です。この方法は、企業の静的な価値を判定するのに適しています。未上場会社のM&Aで利用されることが多い方法です。
(注)黒字の場合、営業権として修正後営業利益の3年分程度の金額を加算します。一方、赤字(営業損失)の場合、営業権はつきません。社歴〇〇年の老舗企業、あるいは△△△ブランドで有名などの要素は、営業権として評価されません。

【2】類似会社比較法(マルチプル法)

業種、企業規模等の類似する上場会社の一定の財務数値に対する企業価値の倍率を測定し、評価対象会社(売手)の財務数値に当該倍率を乗じることで企業価値を算定する方法です。
上場会社、未上場会社のM&Aにおいて利用されている方法です。

なお、未上場の中小企業・小規模企業のM&Aの株価算定においては、会社規模(売上)が小さい、ニッチ業種であるなどの理由により、上場会社の中から類似会社を選定することが難しい場合があります。

【3】DCF法

事業活動から得られると予測される将来キャッシュ・フローの総額を現在価値に割り引いた金額を企業価値として評価する方法です。将来キャッシュ・フローの予測に企業価値が大きく左右される方法です。上場会社のM&Aにおいては、一般的に利用されることが多いです。
なお、DCF法を用いる場合、将来キャッシュ・フロー算出の基礎となる評価対象会社(売手)の事業計画が必要となります。また、当該事業計画の客観性、妥当性、実現性等が重要になります。

【4】考慮すべき事項

評価対象会社(売手)が、企業のライフサイクル(イメージ図)において、創業期、成長期、成熟期、衰退期のいずれの段階に該当するかを判断します。
併せて、評価対象会社の継続性の疑義の有無、知的財産等に基づく超過収益力に依存する収益構造であるか、類似上場会社のない新規ビジネス、或いはニッチ業種に該当するかなどを判断する必要があります。

企業のライフサイクル(イメージ図)

以上の考慮すべき事項を確認した後、評価対象会社(売手)に適切な株価(株式価値)の算定方法を選択します。複数の算定方法を選択できる場合は、それぞれの算定方法の結果を比較検討するのがよいでしょう。

【5】株価(株式価値)の算定方法の選択

〇:採用が適していると考えられる   △:場合によっては採用することが想定される

【6】保険代理店を高い価格で売却する方法

保険代理店を高い価格で売却するためには、買い手から自社の保険代理店事業を高く評価してもらうことが必要です。具体的には、下記の①~⑤の要件を満たしている場合は、買い手からの高評価につながります。
① 保険の加入者が多い(換言すると、ストック収入の割合が高い)
② 保険代理店の店舗の立地が良い
③ 優秀な従業員、対顧客対応のノウハウを有しており、顧客満足度が高い
④ 買い手が進出していないエリアに商圏を有している
⑤ 独自性が高い販売方法を確立している
なお、すでに①~⑤の要件を満たしているならば、それを買い手に説明する必要があります。

以上、中小企業のM&Aにおける株価(株式価値)の算定方法、考慮すべき事項を簡単に紹介しました。
現在、または将来、後継者問題などを理由に会社譲渡を考えている中小企業の社長様、是非、弊社にご相談ください。
会社の株価(譲渡金額)を決めるのは、社長様ご自身です。弊社試算の株価と比較して、納得できる譲渡金額を決める際の参考にして頂ければと思います。

【7】会社を売却する場合に係る税金

中小M&Aの方法のうち、最も多く用いられる株式譲渡の場合において、会社売却に係る税金をどのように考えるかを一緒に見てみることにします。会社の株主が個人である場合、所得税・住民税あわせて20.315% の固定税率で分離課税が適用されます。以下の設例を用いて、会社を売却した場合、株主の税金をどのように計算するかを説明します。

<設例>
会社株主は、社長のみの一人株主とします。
株式の出資額10,000千円、株式譲渡代金100,000千円、売り手(個人株主)のM&A手数料5,500千円 (消費税込み)とします。

株式の売却益(注)は、株式譲渡代金から株式の出資額を差し引いた、90,000千円(=100,000千円−10,000千円)となります。
(注)キャピタル・ゲイン(資本利得)

個人株主の場合、株式の売却益は分離課税の対象となり、税率は20.315%(注)が適用されます。
また、M&A手数料(消費税込み)は、売却益から費用として差し引くことができます。
よって、個人株主が負担する税金は、以下のように計算することができます。

(90,000千円−5,500千円)×20.315%(注)=17,166千円

(注)所得税及び復興特別所得税(15.315%)+住民税(5%)

【8】会社を売却するタイミングを考える場合のポイント

会社を売却するためのポイントは3つあります。

ポイント① 引退の時期を決める。
「この事業が上手くいったあとで」といった条件付きの不明確な時期の決め方ではなく、できれば年月を確定することをおすすめします。時期を決めることで、実現するための強い決意が生まれます。
経営状態がよいタイミングで売却すると高い株価で売却でき有利ですが「企業価値が上がったら売却してリタイアしよう」という決め方だとなかなか踏ん切りがつかず、ハッピーリタイアの実現は難しくなるでしょう。

ポイント② 売却前に次の経営者がやりやすいように経営環境を整えておくことです。
後顧の憂いなくリタイアするためには、経営者の頭の中にある重要な項目を整理しておくことが重要です。
特に、従業員の対するケアがポイントであり、各従業員の性格等を、事業引継ぎの際に伝えておかなければ、その後の組織運営に支障が出ます。

ポイント③良いフィナンシャル・アドバイザーを見つける。
会社を売却する際には、専門的知識が必要となり、M&Aの専門家のサポートが必要となります。
中小M&Aの実績が十分にあり、業界での評判の良いM&A仲介会社を選ぶとよいでしょう。
どのM&A仲介会社も初期相談は、無料で対応しています。複数社と面談して、相性の良さそうな会社を選択するのも一つの方法です。
(注)フィナンシャル・アドバイザーの役割は、クライアント(売り手、買い手)が目指す戦略実現のために、最適なM&A手法を企画 立案し、その執行を全面的にサポートすることです。アドバイザリー会社のタイプとしては、金融機関系、会計会社系、ブティッ系の3つに大別することができます。

Ⅴ弊社M&Aコンサルティングサービスのご案内

弊社のM&Aコンサルティングのご案内です。特徴は3点あります。

①プロフェッショナルによるM&Aサポート
M&Aの専門性を持つ、経験豊かなコンサルタントが、皆様にきめ細かなサービスを提供させていただきます。実際に成約したお客様、皆様からご満足いただいております。

②完全成功報酬の手数料体系
当社は、1社でも多くの中小企業のM&A支援を行うために、リーズナブルな手数料体系を採用しています。着手金、月額費用などはいただかず、成功報酬のみの完全成功報酬制を採用しています。

③多くの成約実績
業種、規模、エリアを問わず、多くの成約実績がございます。
高い専門性を持ったM&Aコンサルタントが、ご満足いただけるサービスを提供させていただきます。

株式会社経営承継支援は、一社でも多くの企業を廃業危機から救うため、全ての企業様のご相談をお受け致しております。
M&A(株式譲渡、事業譲渡等)に関して着手金無料でご相談可能ですので、お気軽にお問合せくださいませ。

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