公認会計士が教える債務超過会社のM&Aと財務DDの重要性

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債務超過会社のM&Aと財務DDの重要性

M&Aを検討している売主の中には、債務超過状態の会社もあるかもしれません。

今回は、債務超過でも会社が売れる条件とは何かについて解説していきます。

M&Aによる事業売却を検討している経営者の方が多くいらっしゃるのではないでしょうか

現代の経済状況のように、環境の変化が著しい中では、M&Aによる事業売却を検討している経営者の方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。

特に中小企業においては、親族・従業員を含め、近親者に、「後継者がいない」という問題があります。

自分が人生を捧げて続けてきた事業を守り、顧客へのサービスを続けつつ、家族や社員の生活を守ることができるなら、自分も気持ちよくではない一線を退けるのにと考えられる経営者の方は少なくありません。

 

また、業績不振を脱するための再生・整理の一環として、

 

・ M&Aによる事業売却は可能なのか?

・ 成長戦略として、どんな時にM&Aで事業売却すればいいのか?

 

経営戦略の一環としてM&Aの実行を検討されている経営者の方もいらっしゃいます。

 

一方で、

 

・ M&Aによる、どんな事業売却はしてはいけないのか?

・ 成長戦略としてM&Aでの事業売却を検討しているが、本当にそれが正しいのか?

・ 成長戦略としてM&Aでの事業売却を検討しているが、何を準備しておけばいいのか?

 

など、M&Aにかかる不安も多く抱えていらっしゃると思います。

債務超過会社もM&Aによる事業売却ができるのでしょうか?

ここでは、M&Aにかかる不安のうち、「債務超過会社のM&A」についてお話したいと思います。

当然みなさんの中には、「債務超過会社でも売却は可能なのか?」といったような疑問をお待ちの方も多いと思います。

 

後継者不在であり、債務超過状態の会社であった場合、

 

・ 第三者への事業・企業の友好的な譲渡はできないのではないか?

・ 株主兼代表者は引退できないのではないか?

 

と考えられる経営者も多いと思いますが、決してそうではありません。

 

結論から申し上げますと、条件が合えば、債務超過であっても、M&A(第三者への友好的譲渡)は可能です。

その条件とは、以下のようなものがあります。

 

・ 市場において、その事業に価値があること

・ 雇用している従業員が多いこと(概ね10名以上)

・ 今後の事業再編によっては、営業利益の改善が見込めること

・ M&A後の設備投資額(計画)が少ないこと

・ 金融機関からの借入金の額が少ないこと

・ その事業にかかる許認可の引継ぎが容易なこと

・ 売却希望額が高すぎないこと

(これは意外かもしれませんが、業績が不振な企業の株主の方が業績が好調な企業よりも希望額が高い傾向にあります。)

 

以上のような条件が合えば、売却の可能性は高くなります。

 

では、 売却金額はどのくらいになるのか?

一概には言えませんが、売却するスキームが株式譲渡の場合、債務超過の場合は、0円となります。

なぜかと言うと、債務超過ということは、負債が総資産より多い状態ですので借入金の返済負担などを買い手側が負うからです。

 

ただし、

 

この借入金が金融機関からの借入の割合が無し、又は僅少で、ほとんどが役員からの借入の場合は除く

 

という点が重要なポイントです。

 

上記のように、役員からの借入の場合、債務超過でも、売却価格をつけて売れる企業はありますが、

一般的に債務超過の場合は、

 

売却金額は0円だが金融機関からの借入や連帯保証を買い手側が引き受けてくれるから良しとする。

 

というような考え方でも良いのではないでしょうか。

 

M&Aにかかる時間はどのくらいかかるのか?

また、そのようなM&Aの場合、あまり時間とコストをかけたくないと考えられると思います。

通常は、売却されることをM&A業者にご相談いただき、成約に至るまでに、通常6か月、長ければ1年程の期間が必要となります。

一方、複雑ではない事案の場合、まれにおおよそ3か月の早い成約などといった事案もあります。

 

 

売主の中には、スピードを重視する方もいらっしゃいます。

確かにスピードも大事ではありますが、こだわりすぎることは、売主側にとってデメリットも多いと考えられます。

 

例えば、

 

・ 価格や時期等の条件を比較できない

・ 買い手企業の信用力の高低が比較できない

 

といったことが、挙げられます。

 

比較検討を行うためにも、一定期間は必要ではないでしょうか。

デューディリジェンスを
行わないデメリット

もう1つ、スピードを重視しデューディリジェンス(以下、DD)を実施ないことのデメリットについてみていきます。

 

買い手による売り手企業或いは事業を、法務、税務、労務、ビジネスなどの視点で、外部専門家(弁護士、公認会計士等)が調査をおこないます。

通常は、当然のようにDDが行われるものとお考えください。

 

外部専門家にてDDを売り手側から資料リクエストをし、質問事項のやりとり、現地確認やインタビューをおこないます。

その後、調査報告書を外部専門家から買い手に提出することになります。

 

この対応にも時間がかかります。

調査報告書は、買い手が、売り手企業のリスクを分析し、買収すべきかの判断に必要なものとなります。

 

ところが、売主の中には、DDされることを嫌がる方が稀にいらっしゃいます。

時間がかかるので、避けたいというのが理由です。

 

DDを実施せずに最終契約に進むことは、リスク分析せずに買収することになりますので、買い手にとってリスクが高い行動です。

売主にとっても、リスクの高い行為です。

 

なぜなら、買い手からの訴訟リスクを抱えることになるからです。

 

外部専門家によるDDにより、買い手にリスクを把握してもらい、その上での経済条件で最終契約を締結することが、買い手からの訴訟リスクを低減することにつながります。

 

しかも、DD費用は基本的に買い手の費用負担になるため、売主は、DD期間も含めてM&Aスケジュールを設定すべきだと思います。

売主が早期の成約を目指すのであれば、DDを実施し、スムーズにDDが完了するように最大限の協力をおこなうべきでしょう。

 

優良な買い手に、極端に短く、DDを省略したスケジュールを案内すると、「検討もされず見送り」となるケースがございます。

売主が、みずから売却可能性を低くしてしまうといった結果になってしまいます。

 

以上から、M&Aにおいては、「検討にはある程度の時間が必要」です。

売主には、非常識と思われないように十分な時間をかけてM&Aをおこなうことをおすすめします。

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執筆
福田 秀幸
福田 秀幸

福田公認会計士事務所(認定経営革新等支援機関)代表 M&A専門家 執筆者 福田 秀幸 監査法人トーマツ・デロイトトーマツFAS株式会社にて、財務デューデリジェンス業務・株価算定業務・企業再生業務に従事。 2009年7月に地元群馬県で福田公認会計士事務所を開業後、群馬県再生支援協議会登録専門家として、財務デューデリジェンスや企業再生業務に従事。 M&A業務に従事する傍ら、2012年に「グループ経営と会計・税務(清文社)」を共著にて出版。 http://www.skattsei.co.jp/search/056912.html

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