ファミリービジネスにおける幸せなM&A

目次 [ ]

ファミリービジネスにおける幸せなM&A

ファミリービジネスとは、日本でいうと「オーナー企業」「同族会社」「同族経営」を意味しますが、時代の流れとともに事業承継っモデルも変化しました。

今回は、ファミリービジネスとM&Aをテーマに、ファミリービジネスがどうM&Aに向き合うべきかについて解説します。

 

オーナーの悩みの種。事業承継の相談急増

欧米ではオーナー・同族会社はファミリービジネスと呼ばれ、研究も進んでいます。

弊社、(株)日本FBMコンサルティングはそのような研究成果を活用して、ファミリービジネスに特化したコンサルティングを提供しています。

そのなかで、多くのオーナーから様々な相談を受けています。

相談の範囲は、業績が芳しくなく経営改善に関する事項や、株式にまつわること、時には家族問題に関する事項まで大変多岐に亘ります。

最近、増えてきた相談内容としては、事業承継にまつわることです。

 

ファミリービジネスとは?

ファミリービジネスとは、日本でいうと「オーナー企業」「同族会社」「同族経営」などと呼ばれますが、創業者一族が企業経営を担っている、もしくは、株式を保有している会社のことです。

日本企業の約97%はファミリービジネスであり、また、雇用者の約70%はファミリービジネスで働いており、国内における経済活動において多くの人々が、ファミリービジネスと密接に関係しています。

「オーナー企業」「同族会社」「同族経営」等と聞くと、一見、遅れた会社のように聞こえるかもしれませんが、最近の研究結果では、非ファミリービジネスと比較すると、ファミリービジネスのほうが業績面で優れているということがわかっていきています。

ファミリービジネスの3つの特徴

業績が良い要因として、ファミリービジネスには3つの特徴があります。

一方、これらの特徴によるファミリービジネスの強みとは裏腹に弱みも存在します。

例えば、所有と経営が一体化、かつ同族の場合、公私混同による会社の私物化などです。

ファミリービジネスの本来の強みを発揮していくには、ファミリービジネス特有の弱みを補い、強みを発揮できるマネジメントの実現が重要です。

このように注目されているファミリービジネスですが、それを脅かす事業承継問題とは何か解説していきます。

ファミリービジネスを脅かす事業承継問題

経済産業省から、2025年に6割以上の経営者が70歳を超え、中小企業127万社で、ご子息が家業を継がない後継者不足となり、このまま問題を放置すれば、ファミリービジネスの「大廃業時代」を迎え、約650万人の雇用と約22兆円に上るGDPが失われる恐れがあると発表されました。

このようにファミリービジネスは、待ったなしで事業承継に関する問題に直面しているのです。

 

また、企業を取り巻く環境も大きく変化しています。

現在(2020年5月時点)、中国から端を発した新型コロナウイルスは欧米、日本で猛威をふるっており、今後、リーマンショック以上の不況に陥り、かつ、これまで大切にしてきた人々の価値観なども大きく変わるでしょう。

そのような経営環境のなかでの経営のかじ取りは大変難しい状況となっています。

なぜご子息は会社を継がなくなったのか

近年、日本では「子供が会社を継がない」という声が良く聞かれます。

この背景を遡ると戦前の家制度と戦後の戸籍制度によると考えられます。

戸主(今で言う筆頭者)の絶対権力によって、婚姻から除籍なども全て決められていました。

また、家業の跡継ぎがいない場合は、番頭さんを養子縁組することもしており。家業と家(家族)が密接な関係にありました。

あと、財産もすべて戸主が引き継ぐ、いわゆる家父長制でした。

そのため戦後、このような家制度を廃止し、個人の権利を尊重すべきだという風潮もあり、家業を継ぐのではなく、好きなことを選択できる社会になりました。

よって現在の戸籍制度は、2世代原則で核家族の範囲であり、筆頭者には何の権力もありませんので、家業を継がすこともできません。

筆者の経験からいうと、現経営者とご子息との間で、家業をテーマに話し合う機会を逸しているのが問題の1つです。

具体的には、現経営者とご子息と、家業について話し合うテーブルミーティングの機会を設けて、結果、大企業に勤めていたご子息が家業に戻ったケースもございます。

現経営者とご子息が話し合いの場をサポートすることも可能ですので、事業承継をテーマに話し合いをすすめていきましょう。

 

ファミリービジネスのM&Aとは?

ファミリービジネスにおける事業承継は、大きく親族内承継か、親族外承継に分かれます。(図2)

ファミリービジネスにおいては、まず、親族内承継を目指されるわけですが、最近では後継者がいない、もしくは、いても他の会社に勤務しておりファミリービジネスへの就業意思がないということも多くなっています。

 

そのような場合において、MBOやMEBOと呼ばれる役員や従業員の社内承継が検討されますが、経営者(社長)の地位を譲れても、株主(オーナー)の地位については、譲渡価格や個人保証の問題などもあり、なかなか譲れません。

従業員本人が銀行から借入を行い、オーナーより株式を購入し、個人保証についても引き継ぐと言っても、その従業員の奥様や関係者から反対されることも多く、なかなか社内承継は進みません。

 

そこで、ファミリービジネスにおいても、社外承継、つまり、企業譲渡(M&A)という選択肢も多くなっています。

筆者のケースの場合、ご子息はいるものの、ご子息自身が他の会社を経営しており、第三者に株式を譲渡しました。

その他、年商100億円規模の会社では、ご子息が自社に就業していないことあり、事業承継計画を策定する中で、第三者にスムーズに承継できるように、ホールディングスを設立したうで、所有と経営を分けるスキームを実施したケースもありました。

M&Aもどのように譲渡するかを考えることをM&Aスキームを構築するといいますが、どのような方法がベストかは専門家に相談することをおすすめします。

オーナーがM&Aで考えるべきこととは?

オーナーが企業譲渡(M&A)に際して、考えておくべき事項は、M&Aにおいてオーナーが大切にしたい価値観(事項)です。

M&Aにおいて、譲れないことは何かを明確にすべきです。

そのために、なぜ、M&Aをするのか、M&Aによってオーナーご自身、会社と共にどのような状態になりたいのかを考えておくことが必要です。

意外かと思われるかもしれませんが、企業譲渡(M&A)を行った、もしくは検討しているオーナーとお話しているなかで、譲渡価格を一番に考えられる方は少ないです。

多いのは、社名を残して欲しい、従業員を継続雇用して欲しい、あと、オーナーご自身も継続雇用してもらいたいなどといったことです。

特に、社名を残して欲しいというは、創業オーナーよりも二代目、三代目に多いことで、所有権は第三者に譲るものの、ファミリービジネスの象徴としての社名は残したいというのはファミリービジネスならではの想いだと思います。

 

当然ながら譲渡価格については、第一優先事項ではなくとも、大切な事項であることは間違いありません。

基本的には、譲渡価格は非上場会社、特に中小企業の場合は、時価ベースで、ある程度、合理的な価格が設定されますが、その幅は大きいです。

そのため、老後などを考えて、必要な資金を念頭においておき、少なくともその価格を獲得できれば良いというぐらいに考えた方が良いと思います。

むしろ、多くのオーナーが頭を悩めているのは個人保証の問題で、M&Aによって、個人保証から解放されることで、気が晴れる方も多いです。

また、珍しい事例ではありますが、株式100%譲渡ではなく、いくらか株式を持っておきたいというオーナーもいらっしゃいます。

所有権の観点から10%ほどの株式を保有していても、議決権は確保できないためにあまりメリットはないのですが、これもファミリービジネスのオーナーの気持ちなんだと思います。

幸せなM&Aを実現するために誰と交渉すべきか

弊社がM&Aに関わったオーナーはすごく幸せそうにしています。

また、株式譲渡後も経営者としてファミリービジネスに関われている方も、事業承継というこれまではどちらかと言えば重荷になっていたことが、M&Aによってすっきりとされ、今では株式譲渡前よりもイキイキと働かれている方もいらっしゃいます。

そのような幸せなM&Aを迎えるポイントは、

1つ目は先ほど申し上げ通り、M&Aにおいてオーナーが大切にしたい価値観(事項)を事前に明確にしておくことです。

2つ目はその価値観を尊重してくれる買い手に株式譲渡することです。この2点につきます。

さて、オーナーの価値観を尊重してくれる買い手とはどのような方なのでしょうか。

薄々お気づきかと思いますが、これまでの経験で言うと、ファミリービジネスのオーナーが多いです。

つまり、後継者がいないファミリービジネスを、他のファミリービジネスのオーナーに事業承継してもらうのです。

ファミリービジネスのオーナーは、大なり小なり境遇は似ており、社名を残したいという想いも尊重してくれる場合が多いです。

また、前オーナーの処遇に関しても柔軟に対応してくれます。

また、企業買収するというファミリービジネスであっても、管理職クラスは手薄なことが多く、前オーナーに引き続き事業を担ってもらいたいと考えている場合も多いです。

また、何より意思決定が早く、ファミリービジネスのオーナーを買い手とした方がうまく企業買収が進むことが多いです。

他でもファミリービジネスのオーナーの任期は長く、買収交渉時の書面化しづらい条件などについても、反故されにくいことがあります。

当然ながら、ファミリービジネスのオーナーであっても、そのような考え方を持たないオーナーもいらっしゃいますので、買収交渉時にはファミリービジネスに対する正しい理解や共感が持たれているのかを把握すべきです。

オーナーにとっての幸せなM&A

ファミリービジネスのオーナー、特に二代目、三代目の方は、先代からしてもらったように、ご自身もファミリービジネスを次の世代に継承したいという想いは大変強いです。

一方で、経営環境も大きく変化しており、これまでのやり方では通じない状況となっています。

そんななかでも従業員やその家族の生活を守らなければならず、オーナーの心配事は尽きることがありません。

そのような状況下において、ご子息への承継(親族内承継)だけを選択肢としてしまうと、そのご子息とうまくコミュニケーションがとられ、事業承継に向けて前向きに進んでいたら良いと思いますが、多くの場合、必ずしもそうでもなく、悩みが晴れることがありません。

一度、他のファミリービジネスのオーナーの方への承継も選択肢の1つとして考え、幸せなM&Aを検討してみてはいかがでしょうか。

株式会社経営承継支援は、一社でも多くの企業を廃業危機から救うため、全ての企業様のご相談をお受け致しております。
M&A(株式譲渡、事業譲渡等)に関して着手金無料でご相談可能ですので、お気軽にお問合せくださいませ。

無料お問い合せ【秘密厳守】
この記事をシェアする
この記事のタグ:
執筆
NO IMAGE
大井 大輔

(株)日本FBMコンサルティング 代表取締役、ファミリビジネスコンサルタント ファミリービジネス(オーナー・同族会社)に対して、経営観点だけではなく、所有(株式)、家族の観点も含めた総合的なコンサルティングサービスを提供し、100年、200年続く企業体への変革を支援している。現在、ファミリービジネス向けのコンサルティングサービスに加えて、日本では少ない経営、所有、家族の観点からアドバイスできる専門家、ファミリービジネスマネジメントコンサルタント®の育成にも力を入れている。 大阪大学卒業大阪大学大学院工学研究科博士前期課程修了 ファミリービジネスアドバイザー資格認定証保持者(AFBA)、M&Aシニアエキスパート、公認内部監査人(CIA)、基礎心理カウンセラー、税理士などの資格を保有している。 著書・執筆活動として、「『経営』承継はまだか」(中央経済社)、経営者向け月刊誌「先見経済」(清和会)などがある。

新着記事

1分で会社を簡単査定