【2021年】どうなる!?自動車販売店(ディーラー)業界M&A

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【2021年】どうなる!?自動車販売店(ディーラー)業界M&A

近年、自動車販売店(ディーラー)業界のM&Aが増えています。

ここでは、自動車販売店(ディーラー)業界の市場動向やビジネスモデル、M&Aの買い手側によるデュー・ディリジェンスにおける注意点、企業価値評価(株価算定)で使う数値(マルチプルなど)について説明します。

これらから、自動車販売店(ディーラー)業界においてM&Aを成功させるためのポイントについて考えてみましょう。

 

I M&Aの多い自動車販売店(ディーラー)業界の現状

自動車販売店(ディーラー)業界の全体像を理解するために、市場動向や経営環境、ビジネスモデル、M&Aの買い手候補となる同業他社について説明します。

 

【1】自動車販売店(ディーラー)業界の市場動向・経営環境

自動車販売店(ディーラー)業は、自動車の新車を小売りする事業者のことをいいます。中古自動車の販売や自動車整備業と兼業します販売店が多くなっています。

「平成28年経済センサス・活動調査」によれば、国内の新車販売台数は、2008年の508万台から、2013年の537万台へ増加したものの、2017年には523万台まで減少しています。

わが国の人口減少という構造的要因に加えて、レンタカーやカーシェアリングの普及、若者の車離れ、平均使用年数の長期化によって新車の需要は減少しており、長期的には400万台になると予想されています。

そのため、自動車メーカー主導で販売店の経営統合が進められています。

 

【2】 自動車販売店(ディーラー)業界のビジネスモデル

自動車販売店(ディーラー)業のビジネスモデルは、自動車メーカーから新車を仕入れ、それを顧客である一般ユーザーへ販売するというものです。

車検を中心とする自動車整備業を兼業する販売店が多くなっています。

以前は訪問販売が中心でしたが、現在は店舗販売が中心となっています。新車の市場規模は長期的に縮小しているため、経営環境は厳しくなっています。

新車の市場規模は長期的に縮小していますため、経営環境は厳しくなっています。

自動車販売にとどまらず、自動車保険の販売、クレジット・割賦販売などの金融商品販売、保守やメンテナンスまで対応することが必要となります。

 

【3】 自動車販売店(ディーラー)業界M&Aで買い手候補となる企業

自動車販売店(ディーラー)業の事業承継を目的としたM&Aであっても、買い手候補は上場企業や大企業が中心になると考えられます。

この業界では、各都道府県を商圏として営業を行う非上場の老舗ディーラーが中心となって、エリア毎に業界再編を進めていくことが想定されます。

一方、上場企業としては、ネクステージ、ATグループ、オートウェーブ、日産東京販売ホールディングス、VTホールディングス、ICDAホールディングスがありますが、自動車メーカーがエリア別に業界再編を主導することから、地域を超えたM&Aが行われる可能性はほとんど無いでしょう。

 

II 自動車販売店(ディーラー)業界M&Aで売却する売り手のメリット

安定している大手企業にM&Aで自動車販売店(ディーラー)業を承継することで、従業員の雇用を維持し、事業のさらなる成長を実現することができます。

また、得意先である既存顧客は、馴染みの販売店で自動車を買い替えできますことに加え、自動車メーカーとの取引関係を継続することができます。

また、小規模事業者が単独では難しかったIT投資によるデジタル化の推進よって、自動車販売店(ディーラー)業の経営効率化を実現することができます。

結果として生産性が向上すれば、従業員の給与水準をアップさせることができるでしょう。

さらに、買い手企業が大企業であれば、店舗規模の拡大による生産性向上、大量仕入れによる原材料費の引下げや、人材採用コスト、広告宣伝費、本社経費を削減し、M&Aによるシナジー効果を得ることができます。

以上のようなシナジー効果が期待され、買い手候補にとって魅力的な事業であれば、売り手側の経営者は、高い売却価格を実現することができ、引退した後のライフプランを充実したものとすることができます。

 

III 自動車販売店(ディーラー)業界M&Aで買収する買い手の注意点

自動車販売店(ディーラー)業界で買収を行う際、デュー・ディリジェンスにて調査すべき経営資源や注意点を説明します。

 

【1】 自動車販売店(ディーラー)業の買収デュー・ディリジェンスにおける注意点

自動車販売店(ディーラー)業には、自社で高額な在庫を抱えるという特徴があります。

新車が陳腐化するケースはほとんどありませんが、中古車販売も併せて多なっている場合は、在庫が陳腐化していないか確かめる必要があります。

また、自社クレジットや割賦販売を行っている場合は、売掛債権の回収可能性を評価しますことは不可欠でしょう。

また、自動車販売店(ディーラー)業の事業性評価として、新車販売以外の用品販売、整備・メンテナンス業務の売上比率を調査することが重要です。

自動車メーカーの価格支配力が高く、新車販売の利益率が低いことから、販売後のサービス提供で利益を計上できているかどうか確かめることが不可欠です。

 

【2】 自動車販売店(ディーラー)業の買収で承継すべき経営資源

自動車販売店(ディーラー)業では、店舗とその立地条件に加えて、既存顧客リストが基本となる経営資源です。

新規顧客の獲得が難しい時代となっていることから、既存顧客による買換え需要を確実に捉えることが不可欠です。

CRMなどのIT技術を活用して顧客リストを整備し、車検やメンテナンスによって築いた長期的な人間関係が重要な経営資源となります。

顧客関係などの無形資源は、事業承継によって喪失されることが多いため、自動車販売店(ディーラー)業のM&Aを行う場合は、顧客関係の引継ぎに時間と労力をかけるなど、無形資産の承継を丁寧に行うことが重要でしょう。

 

IV 自動車販売店(ディーラー)業を買収するときの企業価値評価(株価算定)

自動車販売店(ディーラー)業のM&Aにおける企業価値評価(株価算定)を行う際に活用することができる財務数値は、以下の通りとなっています。

 

【1】 自動車販売店(ディーラー)業の評価で使う資本コストとマルチプル

まず、TKC経営指標(2018年度)によれば、自動車販売店(ディーラー)業の収益性について、売上高成長率は約10.6%です。

また、粗利率は21.5%、営業利益率は0.8%となっています。

生産性について、1人当たり売上高は3,825万円、1人当たり人件費は458万円となっています。

次に、2020年8月現在の開示情報および市場株価によれば、自動車販売店(ディーラー)業のマルチプル(倍率)について、PBR倍率は0.5~1.5倍、PER倍率は10~15倍、EBITDA/企業価値倍率は5~10倍となっています。

さらに、筆者が推計します自動車販売店(ディーラー)業の株主資本コストは10%が妥当であると考えます。

これは、この類似上場企業のROICが4~7%であることを考慮しつつ、類似上場企業のベータ値が0.7~1.0であること、ヒストリカル・マーケット・リスク・プレミアム(1950年代~2020年)が7%~9%であることを前提にして、小規模リスク・プレミアムを加算して推計しています。

 

【2】 自動車販売店(ディーラー)業の類似上場企業比較法で採用すべき企業の例

自動車販売店(ディーラー)業を評価します類似上場企業比較法で採用すべき上場企業として、ネクステージ(3186)、ATグループ(8293)、オートウェーブ(2666)、日産東京販売ホールディングス(8291)、VTホールディングス(7593)、ICDAホールディングス(3184)が挙げられます。

 

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村上 章

事業承継コンサルティング株式会社/中小企業診断士 [ web ] https://jigyohikitsugi.com/ 事業承継コンサルティング株式会社は、中小企業診断士・公認会計士が事業承継・M&Aを支援する経営コンサルティング会社です。日本を代表する大企業からのご依頼を受け、サプライチェーンにある取引先(販売店・代理店)の事業承継・M&Aを支援しております。 M&Aで事業を売却されたお客様の資産運用(金融商品仲介)や相続税対策(宅地建物取引)まで直接サポートいたしますので、引退後に必要となるサービスをワンストップで提供させていただきます。 また、毎月1回、事業承継支援者向けに「事業承継支援コンサルティング研究会」(https://jigyohikitsugi.com/kenkyu/)を開催しています。M&Aアドバイザーの方々に役立つ講義と事例研究を提供しておりますので、ぜひご参加ください。

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