ホームセンター業界の動向およびM&Aについて【2023年版】

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ホームセンター業界の市場動向

2022年のホームセンターの販売額は、前年比1.4%減の3兆3,420億円でした(経済産業省:商業動態統計(2023年2月)。

 

出所:経済産業省、業界動向サーチ

ホームセンターの過去9年の販売額の推移は、2019年までは横ばいで推移し、2020年に増加に転じました。2021年と2022年は2年連続で減少となりましたが、中長期的には横ばいで推移しています。
2021年は、前年のコロナ禍の特需の反動によって、販売額は減少しました。コロナ禍が再拡大した時期においても、衛生用品の需要は堅調であり、ペット用品やアウトドア用品、園芸、などの需要は比較的好調でした。
2022年の販売額は、アウトドア用品や園芸関連の商品は引き続いて好調に推移しましたが、洗剤やインテリア用品などは低調でした。
2022年は行動制限が緩和され、ロシアによるウクライナ侵攻や急激な為替円安によって、原材料費やエネルギー価格が高騰し物価が上昇しました。そのため、消費者の節約意識が高まり、買い控えが見られました。

近年、ホームセンター業界は新規出店で事業を拡大してきましたが、ここ数年はオーバーストア化や異業種との競合により飽和状態にあります。そのため、各社は新規出店のスピードを抑え、再編や新規事業の展開、プロ向け事業の強化などにシフトしています。

以下のグラフはホームセンター大手4社の月次売上高の推移です(数値は前年比の割合)。

出所:各社公表資料、業界動向サーチ

ホームセンター大手4社の月次売上高は、2021から2022年、および2023年の前半にかけては、前年比100%を下回る水準で推移しています。2023年9月までのホームセンター各社の業績を見ると、コロナ禍による「巣ごもり特需」は、消失したことが分かります。

また、2022年には為替円安の進行、エネルギー価格、原材料費などの高騰により、商品価格が上昇しました。消費者の節約志向の高まりによる買い控えも見られ、このような状況から先行きに対する不透明感が増大しました。

ホームセンター業界の売上高ランキング(2021‐2022年)

売上高ランキング (億円)
順位 会社名 売上高
1位 株式会社カインズ
(ベイシアグループ)
4,826
2位 DCMホールディングス(3050) 4,447
3位 コーナン商事(7516) 4,412
4位 コメリ(8218) 3,760
5位 アークランズ(9842) 3,571
6位 ナフコ(2790) 2,065
7位 アレンザホールディングス(3546) 1,559
8位 ニトリホールディングス(9843) 1,370
9位 ジョイフル本田(3191) 1,235
10位 バローホールディングス(9956) 1,229

出所:各種資料より作成
2021年のホームセンター業界の売上高ランキングを見ると、5社中4社が前年比マイナスを記録、プラスはビバホームの連結子会社化で大幅増収となったアークランズ1社のみでした。

ホームセンター業界のM&A

ホームセンター業界のM&A(一部)

年度 買い手 対象企業・事業
2020 綿半ホールディング(3199) 株式会社ほしまん(長野県:ドラッグストア・調剤薬局の運営)を孫会社化
2021 オートバックスセブン(9832) ジョイフル本田(3191)の子会社、株式会社ジョイフル車検・タイヤセンターを完全子会社化
2021 綿半ホールディング(3199) 株式会社夢ハウス(新潟県:戸建て木材住宅の設計・施工・販売)を完全子会社化
2021 DCM株式会社
DCMホールディングス(3050)の子会社
テーオーホールディングス(9812)の子会社、株式会社テーオーリテイリングと資本業務提携
2022 DCMホールディングス(3050) エクスプライス株式会社(東京都:専門店EC事業)を完全子会社化
2022 DCMホールディングス(3050) カンセキ(9903)の第三者割当増資による自己株式(6.3%)を取得して資本業務提携
2022 綿半ホールディング(3199) 有限会社中村ファーム(長野県:養豚事業)を孫会社化
2022 DCMホールディングス(3050) ケーヨー(8168)の株式9.22%(議決権ベース)を買い増し(主要株主より)
                                       出所:各種開示資料より作成

ホームセンター業界の課題と今後について

「市場が飽和状態」

この数年のホームセンター業界の市場規模は3兆円台前半を横ばいで推移しており、市場は飽和状態にある(経済産業省の調査)。
ホームセンター各社は積極的に新規出店を行ったため、市場はオーバーストア化が進行した。
市場の成長率が鈍化する中で店舗数は増え続けたため、一店舗当たりの売上は減少傾向にある。

「同業他社および他の小売企業との競争激化」

ホームセンター業界では、同業他社との競合に加えて、ドラッグストアやディスカウントストア、ネット通販など、多くの小売企業とも競合関係にある。
また、ホームセンターの顧客はプロから一般向けと客層が幅広く、取り扱う商品も多種多様である。
生活必需品はドラッグストア、ディスカウントストアおよびネット通販、インテリア用品は家具・インテリア用品の小売業、プロ向けは事業者向け工具・消耗品・事務用品の通販会社などが競合相手である。

「人口減少による市場の縮小」

小売業にとっては、少子高齢化や労働人口の減少、消費の減退による市場の縮小は大きな課題である今後、ホームセンター各社にとっては、人口減少に対応した新しいビジネスモデルの構築が必要である。

「上位企業による寡占化」

ホームセンター業界では、市場の飽和状態や他社との競合、人口減少といった、様々な課題の解決策の一つとして、ホームセンター業界ではM&Aが活発である。
特に大手企業による買収や提携などが相次いでおり、上位企業による寡占化が進んでいる。

M&Aするメリットとデメリット

【1】主な2つのM&Aの手法

M&Aを検討している経営者の皆様が覚えておくべき主な手法は、株式譲渡と事業譲渡の2つです。
売り手企業の株主が買い手企業に株式を譲渡する手法が株式譲渡です。売り手企業が買い手企業に事業を譲渡する手法が事業譲渡です。
どちらを選択するかは、売り手企業の意向、買い手企業の考えによって、両者の交渉によって決まります。
会社の借入金、従業員、資産、権利義務関係などの全てを買い手企業へ譲る場合、株式譲渡の手法を選択します。
一方、売り手企業の事業が、製造部門と販売部門のように複数事業に分かれており、製造部門のみを譲渡するような場合、事業譲渡を選択します。
以下の設例により、株式譲渡と事業譲渡の2つの方法を比較することにします。
<設例>

X社は、自社ビルの不動産賃貸業とレストラン事業(25店舗:全店舗は賃借)の運営を行っています。株主はオーナー社長のみです。 コロナ禍の影響を受けて、レストラン事業の業績が悪化したため、X社はレストラン事業を第三者へ譲渡することにしました。
レストラン事業を事業譲渡する場合、買い手企業のメリットは、レストラン事業のみを引継ぐ点になります。ただし、従業員の再雇用、権利義務関係の引継ぎなどの手続が煩雑になるデメリットがあります。一方、売り手企業の簿外債務を引き継ぐリスクはありません。売り手企業のメリットは、レストラン事業のみ譲渡できる点、譲渡代金は売り手企業(X社)が受領する点になります。

【2】M&Aの手順・流れ


①プロセス開始当初にご依頼する資料やお伺いする情報がスムーズにご提供戴けると、その後のプロセスが円滑に進行します。
②予備的企業価値評価は、当社専門家(会計士/税理士)監修のもと実施。この段階で、譲渡価格や条件等の内容を概ね決定します。
③買手候補企業との間で大枠の条件が固まったら基本合意書(法的拘束力無し)を締結します。この段階より1対1の交渉(独占交渉)が始まります。
④基本合意と買収監査結果で差異があった項目を中心に調整し、詳細事項を決定。M&A実施後の体制等も、この段階ですり合わせます。

【3】M&Aにより会社を売却するメリット

オーナーのメリット(株式譲渡の場合)
①オーナー・その他株主のキャピタルゲイン(資本利得)の実現
オーナー一族はリタイアに際して現金収入が発生し、ハッピーリタイアすることができますその他株主も、同様に未上場株式を現金に換金できます

②相続税対策
流動性のない未上場株式を現金化することにより、遺産分割が容易になります

③オーナー一族の個人保証からの解放
買い手企業が保証(債務保証、不動産等の担保提供)を肩代わりするため、オーナー一族の経済的負担が解消されます※親族内承継または従業員承継の場合、オーナー一族の個人保証を継続せざるを得ない場合があります

会社のメリット
①事業の継続を確保、会社成長の可能性があります
②買い手企業の傘下に入ることにより、事業継続と安定性を確保できます
③買い手企業とのシナジー、将来の会社成長の可能性に期待できます
④従業員雇用の継続、安定を図ることができます

【4】会社を売却するデメリット

・買い手企業が見つからないリスク

会社を売却すると決断してもすぐに買手企業が見つかるとは限りません。
M&Aにはそれなりのコストがかかるので、買い手企業にとっては、それなりのメリットがなければM&Aを実行しません。コロナ禍においては、M&Aを検討する企業数が減っており、かつ投資目線も厳しくなっています。つまり、「コストをかけてもM&Aを行う」と買い手企業が思うような魅力がある会社(売り手企業)でない限り、なかなか買手企業が現れないと考えるのが良いでしょう。M&A市場においては、一般に「将来的に売り手企業がどの程度の収益を上げる力があるか」で売り手企業は評価されます。したがって、収益面では黒字にすること、過度な借入金(例えば、売上高を超える、あるいは同じ金額の借入金)は避けるべきです。

・M&A後における従業員の待遇面の不安
M&A後における従業員の労働条件や解雇の規則については、買い手企業によって変更をされないように最終契約書に記載しておく必要があります。最終契約書での取り決めがない場合、M&A前より悪い労働条件で働かされたり、簡単に解雇されたりする可能性があるためです。M&Aを実行する場合、確認する事項は個別案件ごとに異なり、また多岐にわたります。この確認をおろそかにせず、売り手企業と買い手企業のお互いがM&Aのメリットを享受できるように交渉を進めることが重要です。

Ⅴ会社を売却する際の株価の考え方

株価(株式価値)の算定方法として一般的に用いられる手法は、修正純資産法、類似会社比較法(マルチプル法)、DCF法です。

【1】修正純資産法

評価対象会社(売手)の貸借対照表に計上されている全ての資産・負債を時価評価した後の純資産額に営業権を加算して企業価値を算定する方法です。この方法は、企業の静的な価値を判定するのに適しています。未上場会社のM&Aで利用されることが多い方法です。
(注)黒字の場合、営業権として修正後営業利益の3年分程度の金額を加算します。一方、赤字(営業損失)の場合、営業権はつきません。社歴〇〇年の老舗企業、あるいは△△△ブランドで有名などの要素は、営業権として評価されません。

【2】類似会社比較法(マルチプル法)

業種、企業規模等の類似する上場会社の一定の財務数値に対する企業価値の倍率を測定し、評価対象会社(売手)の財務数値に当該倍率を乗じることで企業価値を算定する方法です。
上場会社、未上場会社のM&Aにおいて利用されている方法です。


なお、未上場の中小企業・小規模企業のM&Aの株価算定においては、会社規模(売上)が小さい、ニッチ業種であるなどの理由により、上場会社の中から類似会社を選定することが難しい場合があります。

【3】DCF法

事業活動から得られると予測される将来キャッシュ・フローの総額を現在価値に割り引いた金額を企業価値として評価する方法です。将来キャッシュ・フローの予測に企業価値が大きく左右される方法です。上場会社のM&Aにおいては、一般的に利用されることが多いです。
なお、DCF法を用いる場合、将来キャッシュ・フロー算出の基礎となる評価対象会社(売手)の事業計画が必要となります。また、当該事業計画の客観性、妥当性、実現性等が重要になります。

【4】考慮すべき事項

評価対象会社(売手)が、企業のライフサイクル(イメージ図)において、創業期、成長期、成熟期、衰退期のいずれの段階に該当するかを判断します。
併せて、評価対象会社の継続性の疑義の有無、知的財産等に基づく超過収益力に依存する収益構造であるか、類似上場会社のない新規ビジネス、或いはニッチ業種に該当するかなどを判断する必要があります。

企業のライフサイクル(イメージ図)

以上の考慮すべき事項を確認した後、評価対象会社(売手)に適切な株価(株式価値)の算定方法を選択します。複数の算定方法を選択できる場合は、それぞれの算定方法の結果を比較検討するのがよいでしょう。

【5】株価(株式価値)の算定方法の選択

〇:採用が適していると考えられる   △:場合によっては採用することが想定される

【6】会社を売却する場合に係る税金

中小M&Aの方法のうち、最も多く用いられる株式譲渡の場合において、会社売却に係る税金をどのように考えるかを一緒に見てみることにします。会社の株主が個人である場合、所得税・住民税あわせて20.315% の固定税率で分離課税が適用されます。以下の設例を用いて、会社を売却した場合、株主の税金をどのように計算するかを説明します。

<設例>
会社株主は、社長のみの一人株主とします。
株式の出資額10,000千円、株式譲渡代金100,000千円、売り手(個人株主)のM&A手数料5,500千円 (消費税込み)とします。

株式の売却益(注)は、株式譲渡代金から株式の出資額を差し引いた、90,000千円(=100,000千円−10,000千円)となります。
(注)キャピタル・ゲイン(資本利得)

個人株主の場合、株式の売却益は分離課税の対象となり、税率は20.315%(注)が適用されます。
また、M&A手数料(消費税込み)は、売却益から費用として差し引くことができます。
よって、個人株主が負担する税金は、以下のように計算することができます。
(90,000千円−5,500千円)×20.315%(注)=17,166千円
(注)所得税及び復興特別所得税(15.315%)+住民税(5%)

【7】会社を売却するタイミングを考える場合のポイント

会社を売却するためのポイントは3つあります。
ポイント① 引退の時期を決める。
「この事業が上手くいったあとで」といった条件付きの不明確な時期の決め方ではなく、できれば年月を確定することをおすすめします。時期を決めることで、実現するための強い決意が生まれます。
経営状態がよいタイミングで売却すると高い株価で売却でき有利ですが「企業価値が上がったら売却してリタイアしよう」という決め方だとなかなか踏ん切りがつかず、ハッピーリタイアの実現は難しくなるでしょう。

ポイント② 売却前に次の経営者がやりやすいように経営環境を整えておくことです。
後顧の憂いなくリタイアするためには、経営者の頭の中にある重要な項目を整理しておくことが重要です。
特に、従業員の対するケアがポイントであり、各従業員の性格等を、事業引継ぎの際に伝えておかなければ、その後の組織運営に支障が出ます。

ポイント③良いフィナンシャル・アドバイザーを見つける。
会社を売却する際には、専門的知識が必要となり、M&Aの専門家のサポートが必要となります。
中小M&Aの実績が十分にあり、業界での評判の良いM&A仲介会社を選ぶとよいでしょう。
どのM&A仲介会社も初期相談は、無料で対応しています。複数社と面談して、相性の良さそうな会社を選択するのも一つの方法です。
(注)フィナンシャル・アドバイザーの役割は、クライアント(売り手、買い手)が目指す戦略実現のために、最適なM&A手法を企画 立案し、その執行を全面的にサポートすることです。アドバイザリー会社のタイプとしては、金融機関系、会計会社系、ブティッ系の3つに大別することができます。

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