親族内承継をスムーズに行うためのポイント

監修

経営承継支援編集部

この記事は、株式会社経営承継支援の編集部が監修しました。M&Aに関してわかりやすく役に立つ記事を目指しています。

目次 [ ]

親族内承継をスムーズに行うためのポイント

親族へ事業を承継させるには、適切な後継者を選ぶこと、後継者としたい親族に「会社を継ぎたい」と思わせること、後継者となる人の教育、会社財産を相続させることが重要なポイントとなります。

これらのポイントは、簡単にできるように見えますが、特に現経営者と後継者候補との意思疎通がうまくいかないと事業承継が失敗しかねません。

そこで今回は、親族内承継が失敗しないように、かつスムーズに行うためのポイントをご紹介します。

後継者に適する人を選ぶ

親族内承継を行う場合、後継者に会社を継ぐ意思があるのかがまず重要となります。

子や孫、甥や姪を後継者とする場合、早いうちから会社経営について心の準備をさせておくことが可能です。タイミングについては動画をご覧ください。

しかし、会社の将来性や安定的な経営を続けて行けるのか不安である、リスクの少ない生活をしたいといった価値観から、親族内承継を拒まれてしまうケースも少なくありません。

このため、早いうちから後継者候補となる親族に会社を引き継ぐ意思があるか、現経営者は確認しておく必要があるのです。

次に、後継者となる親族に後継者となる資質があるかをチェックする必要があります。

親族に会社を引き継ぐ意思があっても、経営手腕がなかったり、重要な決断を誤ったりするようでは、引き継がせる意味がないからです。

後継者となる資質があるかをチェックするポイントとして、財務や会計の知識があるか、引き継ぐ会社が行っている事業や業界に精通しているかが挙げられます。

これらのポイントは、後継者教育を行う際に養うことができますが、実際に後継者教育を始める前にそのセンスがあるかを冷静かつ客観的に判断しておきましょう。

「デュー・デリジェンス」で後継者に会社を理解してもらう

「デュー・デリジェンス」とは、会社の価値やリスクなどを明らかにすることをいいます。より具体的には、会社の組織や財務活動の調査を行うことや、財務内容をチェックしてリスクを明らかにする、定款や会社財産についての登記をチェックして法的な問題はないかを明らかにすることなどを意味します。「DD」と略されることもあります。以上に示したチェック項目は、それぞれ会計士や弁護士といった専門家に調査の委託をする、あるいは事業承継のサポートを行う企業に包括的に委託するという方法もあります。

デュー・デリジェンスを行うのは、後継者に引き継がせる会社のリスクを洗いざらい知ってもらい、経営課題を把握してもらうために行います。経営課題が明らかになれば、その解決について後継者は早い段階から検討することができます。デュー・デリジェンスを行う前には、現経営者は可能な限り経営力や事業の将来性の向上に努めておきましょう。親族内承継を行う場合であっても、後継者にとって魅力的な会社でなければ、継いでもらえないからです。

後継者教育で今後の経営リスクを低減させる

デュー・デリジェンスを行い、後継者候補の親族に引き継ぐ意思を確認したら、後継者教育を行いましょう。後継者教育には、大きく分けて社内教育と社外教育の2つの方法があります。まず、社内での教育においては「各部門で必要な経験と知識を習得させる」「実際の経営を行わせる」「現経営者から直接指導を行うことにより経営理念を理解させる」の3つが主要な内容です。後継者に経験を積ませることを通じて教育しながら、後継者に経営者としての素質があるか、苦手なことは何かをよく観察するようにしましょう。

 

次に、社外での教育においては「他社で働かせることにより人脈や他社での経営手法を学ばせる」「子会社あるいは関連企業の経営を任せることにより責任感や経営者としての資質を身につけさせる」「後継者教育セミナーを受講させることで最新の知識や広い視野を獲得させる」の3つが主要な内容です。

これらの教育は、後継者が既に持っている知識や素養、引き継がせる会社の現状に応じ、その内容や期間を決定します。また、教育をしていくなかで「後継者に向かない」と判断されるケースもありえますが、その場合には別の事業承継の方法も早めに検討するようにしましょう。

適切な財産の分配を行ってトラブルを回避する

親族内承継の場合、社外承継する場合とは異なり、現経営者の所有する財産を親族である後継者に相続させることが可能です。ただし、相続税が多額になる場合もあります。さらに、親族内承継に特有の問題として、後継者以外に相続人となる親族が相続分に関して不満を持ち、結果として紛争に発展してしまうおそれがあります。

後継者に事業用の財産を相続させる場合には、税理士や弁護士といった専門家に相談を行い、後継者の税負担が重くならないための対策を講じておきましょう。また、相続財産のほとんどが事業用資産である場合には、後継者に相続財産が集中することになってしまう場合が多いです。その場合に、後継者以外の相続人には「遺留分」という「民法に基づけばもらえる相続分」を主張する権利があり、この権利を主張されることでトラブルに発展するケースも少なくありません。したがって、事前に親族へ配慮しながら相続の準備をすることが重要となります。

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