事業承継における相続税負担と節税方法

監修

経営承継支援編集部

この記事は、株式会社経営承継支援の編集部が監修しました。M&Aに関してわかりやすく役に立つ記事を目指しています。

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事業承継にあたっては、経営権がスムーズに引き継がれることが重要なポイントとなりますが、相続税の負担についても考えておく必要があります。たとえば、オーナーである父親の死亡で相続が発生したことにより、相続人である子供が会社の株式を相続した場合は、原則として、株式の経済的価値に対して相続税がかかることになっています。そこで、評価額の負担や上場していない株式の相続税計算上の評価方法、そして相続税負担軽減につながる事業承継税制の活用についてご紹介します。

事業承継時の相続税負担額の計算方法

オーナー社長の死亡など、非上場株式を保有していた親などが死亡し、その株を相続人である子供などが相続した場合、株式は相続税の課税対象となり、原則として相続税が課税されることになっています。そのため、事業承継について検討する場合は、事業の継続や経営権の移譲だけでなく、相続税の負担についても考慮して事業承継プランを作成することが大切です。非上場株式に対してどの程度の相続税が課税されるかはケースバイケースで、正確な税額を知りたいという場合は税理士に相談することをおすすめします。しかし、税理士に相談する前に、おおよその相続税負担を自分である程度把握できたほうがよいでしょう。そこで、相続税の基本的な計算方法をお伝えします。
まず、各相続人が承継した財産の評価額をそれぞれ計算し、全財産の評価額合計をさらに合計します。そこから基礎控除を引いて課税対象額を算出します。基礎控除額は3,000万円と法定相続人の数に600万円を乗じた金額を加算した合計額です。課税対象額がゼロ以下の場合は相続税の負担は生じません。課税対象額が計算できたら、実際の相続とは関係なく法定相続分通りに分割したと仮定して各相続人の課税対象額を計算し、税率表に当てはめて各相続人の相続税額を計算します。最後に、各相続人の相続税額の合計金額を実際に承継した財産の評価額の割合で按分して税負担を確定させます。税額控除があればここから引くことになります。税率は最低税率が10%で課税対象額が1,000万円以下の部分に適用され、最高税率は55%で6億円超の部分について適用されます。

非上場株式の評価額の計算方法

相続税の計算における財産の評価額は、原則として時価とされています。しかし、実務上客観的な時価を算定することが困難な場合も多いため、相続税の計算上における財産評価額算出方法は基本通達で細かく規定されています。非上場株式は、上場株式のように市場価格がなく客観的な時価を算定することが難しいため、特別な計算方法が適用されることになっています。そのため、事業承継における相続税負担について検討する場合は、非上場株式の財産評価方法についても理解しておく必要があります。
財産評価方法は3種類あり、財産評価額が大きめに出る傾向が強いものから、純資産価額方式、類似業種比準方式、そして配当還元方式です。そして大会社、中会社、小会社といった会社規模や持ち株比率などによってどの財産評価方式を適用するかが変わってきます。大会社の場合は、原則として類似業種比準方式で評価します。類似業種比準方式とは、国税庁が業種別に把握している株価を、利益や配当そして純資産価額の3項目について平均的な会社と評価会社の違いを考慮して株価を算出する方法です。小会社の場合は、原則として純資産価額方式を使って計算します。純資産価額方式とは、時価ベースの貸借対照表の純資産額に一定の調整を加えて株価を算出する方法です。個人課税に近い考え方に基づいて株価が算定される特徴があり、株価は類似業種比準方式より高めになるのが一般的です。中会社については、類似業種比準方式と純資産価額方式をミックスして株価算定を行います。なお、配当還元方式は、株式を相続した結果、支配力がない一定の人に対して適用される方式です。

事業承継税制で税負担を軽減

非上場株式の評価額が大きい場合は、相続によって多額の相続税負担が発生する可能性があります。最高税率は55%と50%を超える税率ですので、非上場株式を持っている経営者は、事業承継に関する節税についても検討しておく必要があるでしょう。事業承継に関する節税としては「非上場株式等についての相続税の納税猶予の特例」の活用をおすすめします。この特例は、相続があった場合の非上場株式に関する相続税について税額の80%が納税猶予されるというものです。また、非上場株式を引き継いだ相続人が死亡するなど一定の場合は、猶予されていた相続税が免除されることにもなっています。そのため、この規定の適用を受けることができれば、大幅な税負担の軽減を実現できるでしょう。

この特例の適用を受けるためには、一定の要件を満たしたうえで、原則として相続開始後8ヶ月以内に申請を行う必要があります。一定の要件は、会社に関する要件と被相続人の要件、そして経営を承継する相続人の要件に分かれています。会社に関する要件は、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律に基づいて認定を受けた中小企業であること、非上場株式であることなどが定められています。先代経営者である被相続人の主な要件は相続開始直前に代表権があることで、経営承継相続人の主な要件は相続開始直前に役員だったこと、相続開始翌日から5ヶ月経過日までに代表権を持つことなどがあります。どうすれば適用要件を満たせるか、申請はどうすればよいかなど、詳細については税理士に相談したうえで対応することをおすすめします。

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