目次
Ⅰ太陽光発電業界の市場動向
2022年度単年度の太陽光発電導入量は、5,438MWと予測されています。契約種別(事業形態別)毎の内訳をみると、FIT事業用が最も大きく3,650MW(構成比67.1%)、次いでFIT住宅用が981MW(同18.0%)とFITによる導入量が全体の85.1%を占め、PPA(注)が347MW(同6.4%)、自家消費307MW(同5.6%)、その他相対・自由契約153MW(同2.8%)と予測されています。
これまでは日本国内のいては、FIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)を中心として、太陽光発電の電源開発を進めてきました。しかし、太陽光発電の電力市場への統合を図る目的のために、2022年度からFITに加えて、市場連動型のFIP(Feed-in Premium)制度が導入され、設備容量1,000kW以上の新規の事業用太陽光発電による電力は2022年度よりFIT入札ができず、すべてFIP入札の対象となりました。さらに2023年度からは、同500kW以上、2024年度からは同250kW以上の事業用太陽光発電がFIP入札の対象となります。
(注) PPA(Power Purchase Agreement)は、PPA事業者が自己資金等によって再生可能エネルギー発電所を開設して所有・運営・維持し、発電所で発電した電気を需要家に対して長期・固定価格によって供給する仕組みです。電力需要家以外の第三者が発電設備を保有することから第三者保有モデルと呼ばれています。
国内の太陽光発電導入容量(契約種別)推移・予測
出所:太陽光発電システム・太陽電池の市場を調査(富士経済)
太陽光発電の導入拡大に向けた課題
太陽光発電は、発電の過程でCO2の排出が無く、かつ日照があれば発電できるため、各種の再生可能エネルギーの中でも運用しやすい電源とみなされ、国内各地で導入が進んできました。第6次エネルギー基本計画が決定され、2030年度に向けて太陽光発電導入量を一層拡大していくために、主に2つの課題を解決していく必要があります。
1つ目は、系統混雑の解消です。系統混雑により、太陽光発電事業者では足元で系統接続の際の工事費負担金の負担額が大きく、また系統接続工事期間が長くなっており、新規の事業用太陽光発電導入の支障となっています。
2つ目は、適地設置の促進です。新規の野立て太陽光発電の設置に適した土地が減っている中で、屋根設置と耕作放棄地への設置が期待されています。しかし、屋根設置では特に既築住宅や中小企業施設への設置の点で家屋の耐荷重等の課題を抱えています。また、耕作放棄地への太陽光発電の導入は農地転用が難しい点などの課題もあります。
出所:矢野経済研究所「太陽光発電市場に関する調査(2023年)」
Ⅱ太陽光発電装置とは
太陽光発電装置は、太陽の光エネルギーを電気に変換する発電装置です。
化石燃料による火力発電とは異なり、エネルギー源が枯渇する心配がない再生可能エネルギーであり、発電時に温室効果ガスを排出しないクリーンな発電を行うことができます。
また、火力、水力、原子力、風力などの発電装置が、タービンなどの回転により発電機を動かして発電するのに対して、太陽光発電装置は太陽電池で太陽光を直接電気へ変換するのが特徴です。
太陽光発電装置のタイプには、系統連系型と独立型があり、利用形態によってシステム構成がそれぞれ異なります。
太陽光発電装置は、温室効果ガスを排出しない低炭素発電装置として、また資源の乏しい日本でエネルギー自給率を改善する次世代の発電装置として、様々な使用使途で普及しています。
太陽光発電装置の主なメーカー(一部)は、以下のとおりです。
ソーラーフロンティア株式会社(出光興産グループ)
明電舎(6508)
シャープ(6753)
株式会社日立産機システム(日立製作所グループ)
日本エネルギー開発株式会社、フジプレアム株式会社
ハンファQセルズジャパン株式会社
リープトンエナジー株式会社
Ⅲ太陽光発電業界のM&A
太陽光発電業界のM&A(一部)
出所:各種開示資料より作成 |
Ⅳ太陽光発電業界の今後について
日本国内の導入
日本国内における2014年から2019年までの住宅用太陽光発電導入件数は、13万件から20万件で推移しています(太陽光発電協会)。
2014年以降は、それ以前に比べて新規導入が少なくなっています。日本で太陽光発電の導入が広まった理由は、2012年に固定価格買取制度(FIT)がスタートしたことによります。今後の導入見込量は、最大で2030年に住宅用と非住宅用等の合計で9,700万kW、2050年に2億4,780万kWと予想されています。発電電力量の見込みは、2030年に1,058億kWh、2050年に2,605億kWhとなっています。現在、地球環境保護の観点から再生可能エネルギーへの注目が高まっており、今後も太陽光発電の導入が進むと予想されます。
ZEH支援事業の推進
ZEH(注)とは、省エネ化と再生可能エネルギーの導入を行って1次エネルギー消費量の収支をゼロにする住宅です。経済産業省・国土交通省・環境省が連携してZEH支援事業を実施していることが、太陽光発電の普及を後押ししています。(注)net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略語
FIT制度からFIP制度への移行
2020年に電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(再エネ特措法)が改正され、2022年4月以降、FIT制度はFIP制度に移行することになりました。FIP制度による買取価格は、市場価格にプレミアムを上乗せして買取価格を設定しています。買取価格が市場価格に連動するため、価格が高いときに売電すれば収益を拡大できるのがメリットです。
蓄電池との併用の必要性
太陽光発電は夜間や悪天候時に発電できないため、蓄電池との併用が必要です。蓄電池の併設により発電した電気を蓄電し、停電時や災害時に継続的に電気を供給することができます。蓄電池は、太陽光発電の不足点を補う有効な設備です。
Ⅴ太陽光発電事業をM&Aするメリットとデメリット
【1】主な2つのM&Aの手法
M&Aを検討している経営者の皆様が覚えておくべき主な手法は、株式譲渡と事業譲渡の2つです。
売り手企業の株主が買い手企業に株式を譲渡する手法が株式譲渡です。売り手企業が買い手企業に事業を譲渡する手法が事業譲渡です。
どちらを選択するかは、売り手企業の意向、買い手企業の考えによって、両者の交渉によって決まります。
会社の借入金、従業員、資産、権利義務関係などの全てを買い手企業へ譲る場合、株式譲渡の手法を選択します。
一方、売り手企業の事業が、製造部門と販売部門のように複数事業に分かれており、製造部門のみを譲渡するような場合、事業譲渡を選択します。
以下の設例により、株式譲渡と事業譲渡の2つの方法を比較することにします。
<設例>
X社は、自社ビルの不動産賃貸業とレストラン事業(25店舗:全店舗は賃借)の運営を行っています。株主はオーナー社長のみです。 コロナ禍の影響を受けて、レストラン事業の業績が悪化したため、X社はレストラン事業を第三者へ譲渡することにしました。
レストラン事業を事業譲渡する場合、買い手企業のメリットは、レストラン事業のみを引継ぐ点になります。ただし、従業員の再雇用、権利義務関係の引継ぎなどの手続が煩雑になるデメリットがあります。一方、売り手企業の簿外債務を引き継ぐリスクはありません。売り手企業のメリットは、レストラン事業のみ譲渡できる点、譲渡代金は売り手企業(X社)が受領する点になります。
【2】M&Aの手順・流れ
①プロセス開始当初にご依頼する資料やお伺いする情報がスムーズにご提供戴けると、その後のプロセスが円滑に進行します。
②予備的企業価値評価は、当社専門家(会計士/税理士)監修のもと実施。この段階で、譲渡価格や条件等の内容を概ね決定します。
③買手候補企業との間で大枠の条件が固まったら基本合意書(法的拘束力無し)を締結します。この段階より1対1の交渉(独占交渉)が始まります。
④基本合意と買収監査結果で差異があった項目を中心に調整し、詳細事項を決定。M&A実施後の体制等も、この段階ですり合わせます。
【3】M&Aにより会社を売却するメリット
オーナーのメリット(株式譲渡の場合)
①オーナー・その他株主のキャピタルゲイン(資本利得)の実現
オーナー一族はリタイアに際して現金収入が発生し、ハッピーリタイアすることができますその他株主も、同様に未上場株式を現金に換金できます
②相続税対策
流動性のない未上場株式を現金化することにより、遺産分割が容易になります
③オーナー一族の個人保証からの解放
買い手企業が保証(債務保証、不動産等の担保提供)を肩代わりするため、オーナー一族の経済的負担が解消されます※親族内承継または従業員承継の場合、オーナー一族の個人保証を継続せざるを得ない場合があります
会社のメリット
①事業の継続を確保、会社成長の可能性があります
②買い手企業の傘下に入ることにより、事業継続と安定性を確保できます
③買い手企業とのシナジー、将来の会社成長の可能性に期待できます
④従業員雇用の継続、安定を図ることができます
【4】会社を売却するデメリット
・買い手企業が見つからないリスク
会社を売却すると決断してもすぐに買手企業が見つかるとは限りません。
M&Aにはそれなりのコストがかかるので、買い手企業にとっては、それなりのメリットがなければM&Aを実行しません。コロナ禍においては、M&Aを検討する企業数が減っており、かつ投資目線も厳しくなっています。つまり、「コストをかけてもM&Aを行う」と買い手企業が思うような魅力がある会社(売り手企業)でない限り、なかなか買手企業が現れないと考えるのが良いでしょう。M&A市場においては、一般に「将来的に売り手企業がどの程度の収益を上げる力があるか」で売り手企業は評価されます。したがって、収益面では黒字にすること、過度な借入金(例えば、売上高を超える、あるいは同じ金額の借入金)は避けるべきです。
・M&A後における従業員の待遇面の不安
M&A後における従業員の労働条件や解雇の規則については、買い手企業によって変更をされないように最終契約書に記載しておく必要があります。最終契約書での取り決めがない場合、M&A前より悪い労働条件で働かされたり、簡単に解雇されたりする可能性があるためです。M&Aを実行する場合、確認する事項は個別案件ごとに異なり、また多岐にわたります。この確認をおろそかにせず、売り手企業と買い手企業のお互いがM&Aのメリットを享受できるように交渉を進めることが重要です。
Ⅵ会社を売却する際の株価の考え方
株価(株式価値)の算定方法として一般的に用いられる手法は、修正純資産法、類似会社比較法(マルチプル法)、DCF法です。
【1】修正純資産法
評価対象会社(売手)の貸借対照表に計上されている全ての資産・負債を時価評価した後の純資産額に営業権を加算して企業価値を算定する方法です。この方法は、企業の静的な価値を判定するのに適しています。未上場会社のM&Aで利用されることが多い方法です。
(注)黒字の場合、営業権として修正後営業利益の3年分程度の金額を加算します。一方、赤字(営業損失)の場合、営業権はつきません。社歴〇〇年の老舗企業、あるいは△△△ブランドで有名などの要素は、営業権として評価されません。
【2】類似会社比較法(マルチプル法)
業種、企業規模等の類似する上場会社の一定の財務数値に対する企業価値の倍率を測定し、評価対象会社(売手)の財務数値に当該倍率を乗じることで企業価値を算定する方法です。
上場会社、未上場会社のM&Aにおいて利用されている方法です。
なお、未上場の中小企業・小規模企業のM&Aの株価算定においては、会社規模(売上)が小さい、ニッチ業種であるなどの理由により、上場会社の中から類似会社を選定することが難しい場合があります。
【3】DCF法
事業活動から得られると予測される将来キャッシュ・フローの総額を現在価値に割り引いた金額を企業価値として評価する方法です。将来キャッシュ・フローの予測に企業価値が大きく左右される方法です。上場会社のM&Aにおいては、一般的に利用されることが多いです。
なお、DCF法を用いる場合、将来キャッシュ・フロー算出の基礎となる評価対象会社(売手)の事業計画が必要となります。また、当該事業計画の客観性、妥当性、実現性等が重要になります。
【4】考慮すべき事項
評価対象会社(売手)が、企業のライフサイクル(イメージ図)において、創業期、成長期、成熟期、衰退期のいずれの段階に該当するかを判断します。
併せて、評価対象会社の継続性の疑義の有無、知的財産等に基づく超過収益力に依存する収益構造であるか、類似上場会社のない新規ビジネス、或いはニッチ業種に該当するかなどを判断する必要があります。
企業のライフサイクル(イメージ図)
以上の考慮すべき事項を確認した後、評価対象会社(売手)に適切な株価(株式価値)の算定方法を選択します。複数の算定方法を選択できる場合は、それぞれの算定方法の結果を比較検討するのがよいでしょう。
【5】株価(株式価値)の算定方法の選択
〇:採用が適していると考えられる △:場合によっては採用することが想定される
【6】会社を売却する場合に係る税金
中小M&Aの方法のうち、最も多く用いられる株式譲渡の場合において、会社売却に係る税金をどのように考えるかを一緒に見てみることにします。会社の株主が個人である場合、所得税・住民税あわせて20.315% の固定税率で分離課税が適用されます。以下の設例を用いて、会社を売却した場合、株主の税金をどのように計算するかを説明します。
<設例>
会社株主は、社長のみの一人株主とします。
株式の出資額10,000千円、株式譲渡代金100,000千円、売り手(個人株主)のM&A手数料5,500千円 (消費税込み)とします。
株式の売却益(注)は、株式譲渡代金から株式の出資額を差し引いた、90,000千円(=100,000千円−10,000千円)となります。
(注)キャピタル・ゲイン(資本利得)
個人株主の場合、株式の売却益は分離課税の対象となり、税率は20.315%(注)が適用されます。
また、M&A手数料(消費税込み)は、売却益から費用として差し引くことができます。
よって、個人株主が負担する税金は、以下のように計算することができます。
(90,000千円−5,500千円)×20.315%(注)=17,166千円
(注)所得税及び復興特別所得税(15.315%)+住民税(5%)
【7】会社を売却するタイミングを考える場合のポイント
会社を売却するためのポイントは3つあります。
ポイント① 引退の時期を決める。
「この事業が上手くいったあとで」といった条件付きの不明確な時期の決め方ではなく、できれば年月を確定することをおすすめします。時期を決めることで、実現するための強い決意が生まれます。
経営状態がよいタイミングで売却すると高い株価で売却でき有利ですが「企業価値が上がったら売却してリタイアしよう」という決め方だとなかなか踏ん切りがつかず、ハッピーリタイアの実現は難しくなるでしょう。
ポイント② 売却前に次の経営者がやりやすいように経営環境を整えておくことです。
後顧の憂いなくリタイアするためには、経営者の頭の中にある重要な項目を整理しておくことが重要です。
特に、従業員の対するケアがポイントであり、各従業員の性格等を、事業引継ぎの際に伝えておかなければ、その後の組織運営に支障が出ます。
ポイント③良いフィナンシャル・アドバイザーを見つける。
会社を売却する際には、専門的知識が必要となり、M&Aの専門家のサポートが必要となります。
中小M&Aの実績が十分にあり、業界での評判の良いM&A仲介会社を選ぶとよいでしょう。
どのM&A仲介会社も初期相談は、無料で対応しています。複数社と面談して、相性の良さそうな会社を選択するのも一つの方法です。
(注)フィナンシャル・アドバイザーの役割は、クライアント(売り手、買い手)が目指す戦略実現のために、最適なM&A手法を企画 立案し、その執行を全面的にサポートすることです。アドバイザリー会社のタイプとしては、金融機関系、会計会社系、ブティッ系の3つに大別することができます。
Ⅶ弊社M&Aコンサルティングサービスのご案内
弊社のM&Aコンサルティングのご案内です。特徴は3点あります。
①プロフェッショナルによるM&Aサポート
M&Aの専門性を持つ、経験豊かなコンサルタントが、皆様にきめ細かなサービスを提供させていただきます。実際に成約したお客様、皆様からご満足いただいております。
②完全成功報酬の手数料体系
当社は、1社でも多くの中小企業のM&A支援を行うために、リーズナブルな手数料体系を採用しています。着手金、月額費用などはいただかず、成功報酬のみの完全成功報酬制を採用しています。
③多くの成約実績
業種、規模、エリアを問わず、多くの成約実績がございます。
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