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デュー・デリジェンス(DD)の分野別ポイント
デューデリジェンス(略して「DD」)は、買収の対象である企業が抱えているリスクを洗い出し、M&A後の経営において大きな成果を挙げられるようにリスク対策のために行われる調査です。
買収金額が低い企業とM&Aを行う場合であっても、実は将来的に経営に重大な影響を与える問題を抱えている場合があるため、デューデリジェンス(DD)は慎重に行わなければなりません。
そこで今回は、デューデリジェンス(DD)を行う際に注意したい分野ごとのポイントについてご紹介します。
デューデリジェンス(Due Diligence/DD)とは、M&Aにおいて買い手企業が売り手企業の実態を多角的に調査・分析するプロセスのことです。「相当な注意義務」を意味する法律用語に由来し、投資判断の精度を高め、M&A後のリスクを最小化することを目的としています。
DDは通常、基本合意書の締結後からクロージング(最終契約の実行)までの間に実施されます。調査期間は案件の規模や複雑さによって異なりますが、中小企業のM&Aでは概ね2〜4週間程度が一般的です。
DDには複数の種類があり、それぞれ専門家が担当します。主なものとして、①財務DD(公認会計士・税理士が財務諸表の正確性や簿外債務の有無を調査)、②法務DD(弁護士が契約関係・訴訟リスク・コンプライアンスを調査)、③ビジネスDD(市場環境・競合優位性・事業計画の妥当性を検証)、④人事・労務DD(雇用契約・未払い残業代・労使関係を確認)、⑤ITDD(情報システムの構成・セキュリティ体制を調査)が挙げられます。
中小M&Aでは、大企業と比べてDDの範囲を絞り込んで実施するケースが多く、費用・時間・リソースを考慮した現実的な対応が求められます。特に財務DDと法務DDは最低限実施すべきとされており、案件の特性に応じてビジネスDDやITDDを追加するのが一般的です。DDを省略・簡略化しすぎると、M&A後に簿外債務や法的トラブルが発覚するリスクが高まるため、専門家の適切な関与が不可欠です。
以下の表では、DDの種類ごとに主な調査内容・担当専門家・中小M&Aにおける重要度をまとめています。
| DDの種類 | 主な調査内容 | 担当専門家 | 中小M&Aでの重要度 |
|---|---|---|---|
| 財務DD | 財務諸表の正確性・簿外債務・税務リスク | 公認会計士・税理士 | ◎ 必須 |
| 法務DD | 契約関係・訴訟リスク・コンプライアンス | 弁護士 | ◎ 必須 |
| ビジネスDD | 市場環境・競合分析・事業計画の妥当性 | コンサルタント等 | ○ 案件による |
| 人事・労務DD | 雇用契約・未払い賃金・労使トラブル | 社会保険労務士・弁護士 | ○ 案件による |
| ITDD | 情報システム構成・セキュリティ・ライセンス | ITコンサルタント等 | △ IT依存度が高い場合 |
財務DDと法務DDはほぼすべての案件で必須となりますが、その他のDDについては対象企業の業種や規模・特性に応じて実施の要否を判断することが重要です。
どのようなことを調査するの?
会社や事業を譲り受ける場合、どのようなことを調査したいでしょうか?
・ 決算書を粉飾していないか?
・ 譲渡対象企業の社長は嘘をついていないか?
・ 法的に違反や問題を起こしていないか?
・ 従業員の残業代は正しく支払われているだろうか?
・ 取引先との契約は正しく更新されているのだろうか?
このように、調査したい項目を挙げるとキリがありません。
さらに専門的知識がない場合、詳細まで調査することも不可能です。
デューデリジェンス(DD)は、公認会計士や税理士、弁護士などの専門家を交えて行うのが通常です。
事前に顧問税理士や顧問弁護士がM&Aに精通しているかを確認することが重要です。
もし、M&Aに精通していない場合は、M&AのDD経験が豊富な専門家をみつけておくことがおすすめします。
IT関連のDDは、情報体制を把握する
分野によっては専門家がいないという場合もあります。
特に、情報システムの構成と活用状況については買収企業側が良し悪しを見極めなくてはなりません。
さらに、デューデリジェンス(DD)によって明らかになったリスクへの対応も検討する必要があります。
リスク対応のひとつの方策として、買収スキームを変更することも視野に入れて検討するべきでしょう。
M&Aを実際に行うための最終契約書を作成する際には、基本合意をベースに、リスク回避対策を盛り込んでいきます。
今回は、「ITDD」「リスク対応」「買収スキームの変更」「最終契約書への反映」について、以下で詳しくご説明します。
「ITDD」とは、情報システムの構成と活用状況を調査することです。
情報システムをM&Aによって統合する際、追加で必要な投資を行ったり、最新のシステムに変更する場合にはコストが大きくなったり、これらのシステム変更に時間がかかってしまったりと、統合がスムーズにいかなくなる原因となってしまいます。
ITDDで注意したいのは、M&A後も引き続き買収企業の情報システム構成を活用できるかどうかです。
売り手企業が現在利用しているハード・ソフトウェアのリース料、ライセンス料を把握しましょう。
買収企業が親会社のシステム構成を利用している場合、M&A後も同システムを利用し続けられる場合には、追加投資などを行わなくてよくなるため、コストダウンにつなげられます。
忘れてはならないのは、セキュリティやアクセス管理などの運用体制です。企業内で情報システムに対する改善要望が出ていないかもチェックしましょう。
DDでリスクが発覚した場合はどうするべきか
デュー・デリジェンスを行うと、今後のリスクを知ることが可能です。
このリスクに対応するためには、M&A自体を中止する、もしくは、買収価格を下げる、クロージングが行われる前に売り手企業にリスクを解消させるという方法が考えられます。
買収価格は、売り手企業の資産に注目する(純資産価額方式)、売り手企業と類似の企業との比較に注目する(類似会社比準方式)、将来的に生み出される価値に注目する(DCF方式)のうちのどれかを選択して決定します。
たとえば、純資産価額方式では、資産の含み損益や簿外債務、価値のない売上債権などが見つかった場合には、時価純資産評価額を減額するよう交渉して価格を決定するのです。
類似会社比準方式では、デュー・デリジェンスによって収益や費用の見直しが行われると、類似の会社と比較することが可能になるため、比較の結果の再評価によって減額交渉をします。
DCF方式では、収益・費用から収益力を割り出し、買収した場合に得られる将来の収益を参考にして価格を決定するのです。
買収価格によってリスクを回避できないような場合には、売り手企業にリスクを解消させる、あるいはリスクを転嫁させるように交渉を行いましょう。
買収スキームを変更してリスクを回避する
もう1つリスクを回避する手段として、取引形態(買収スキーム)を変更すること選択肢があります。
「スキーム」とは、枠組みを意味します。
M&Aにおける買収スキームは、株式譲渡、事業譲渡、合併、会社分割などの取引形態を指します。
たとえば、株式取得によるM&Aを行う予定だった場合で、DDを実施した結果、想定以上に売り手企業が債務超過に陥っていることがわかりました。
この場合は、M&A取引を中止するか、金額を下げるか、買収スキームを変更するか、買手企業は判断を迫られます。
M&A後に、さらなる簿外債務が見つかるかもしれないというリスクがある場合には、事業譲渡にスキームを変更します。
事業譲渡スキームなら、売り手企業の部分のみを統合することができるため、リスクを抱えた財務面を引き継がずに済ませることができるからです。
ただし、キャッシュフローが出ていない場合は、利害関係者との調整が必要となります。
最終契約書へ条件を反映させる
デュー・デリジェンスによって明らかになったリスクとその回避について対策を講じたら、その内容を最終契約書に反映させなければなりません。
この条件を反映させるために注意したいのは以下のとおりです。
M&Aの最終契約書には、通常、表明保証条項があり、売り手企業が買い手企業に対し、正確な情報を開示していることを保証します。
これにより、簿外債務や隠されたリスクが判明した場合に、買い手企業はその損害について売り手企業に賠償させることができるのです。
もし、売り手企業がクロージングまでにリスクを解消すると合意していた場合には、誓約事項のなかに、その旨を記載します。
このとき、買い手企業はそのリスクを負わないということも明記しておくことで、後でトラブルに発展することを回避することが可能です。
M&AプロセスにおいてDDは重要!
いかがだったでしょうか?
M&Aは「会社や事業を買う」という大きな決断ですので、DDというプロセスがあるということ知っておけば、大きなリスクを回避することはできるでしょう。
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