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「ビルメンテナンス業界の動向およびM&Aについて」

ビルメンテナンスの需要動向

 

ビルメンテナンス業界が安定して成長している要因には、以下の点があります。

・マンションやオフィスなどの管理物件の増加

・オフィス賃料の上昇や、空室率の減少

・業界の人手不足、人件費の高騰による、契約単価も上昇

 

マンションやビルが存在する限り、メンテナンスの需要は無くなることはありません。

例えば、新型ウィルス感染拡大により、新築マンションの新規の供給戸数(首都圏、近畿圏)は、2020年に対前年比で約20%減少しましたが、2021年には2019年並みに回復すると見込まれています。

 

2019~2021年・新築マンション供給戸数の実績と予測値

 

さらに、高度経済成長期に建設されたマンションやビルの老朽化が進んでおり、建て替えの需要が見込まれます。また、建て替えが難しい場合は相応のメンテナンスが必要になります。

今後も、国内のビルメンテナンスの需要は、継続して発生すると予測されます。

 

2021年(令和3年)の税制改正

 

本改正では制度の対象となる住宅の床面積が、従来の「50㎡以上」から「40㎡以上」に拡充されました。この面積要件緩和は、消費税10%が適用される住宅が対象のため、新築(未使用)住宅と売主が事業者の中古住宅(個人売主は対象外)等に適用されます。

 

本改正によって、従来は減税の恩恵を受けられなかった40 ㎡台のコンパクトな住宅も減税対象となりました。40 ㎡台の住宅購入者は、12人暮らしの世帯と想定されます。今までこの世帯層は、ファミリー世帯と比べて賃貸住宅を選択する割合が高かったと推測されています。今後、12人暮らしの世帯による、40㎡台の住宅取得が増加すると見込まれます。

 

 令和3年度住宅取得関連税制の主な改正点

 

 

 

ビルメンテナンス業界の動向(2022-2023年)

出所:各社有価証券報告書、業界動向サーチ)

 

ビル管理業界の直近の動向は、売上高は2021年から2022年にかけて上昇しており、2022年は高水準で推移しました。

2022年のビル管理業界は、コロナ対策の緩和に伴ってビジネス機会の回復が見られ、新規受注物件は増加しました。オフィス移転に伴う受注増や物流施設の管理需要も増えており、設備管理、清掃、警備の各分野で増加が見られました。

 

一方、コロナ禍で需要が一服し、清掃業務ではアルコール消毒の需要が前年から減少し、企業の設備投資計画の先送りなども一部で見られました。2021年後半以降、電気代や人件費の増加が目立つようになり、利益を圧迫する懸念が見られました。

 

ビル管理業は、ビルの清掃、電気や空調などの設備の管理や点検、警備のほか、修繕や内装工事など多岐に渡っています。管理物件は、オフィスビルや商業施設、物流施設や公共施設など幅広く扱います。なお、ビル管理業界は不動産を取り扱うため、不動産市場や企業の業績動向に左右されやすい傾向があります。

 

ビルメンテナンス業界の売上高ランキング(2022-2023年)

 

ビルメンテナンス業界の売上高ランキング(1位~10位)は、以下の通りです。

売上高ランキング (億円)
順位 会社名 売上高
1位 イオンディライト(9787 1,826
2位 東急不動産ホールディングス(3289 819
3位 東洋テック(9686 301
4位 ビケンテクノ(9791 290
5位 ハリマビステム(9780 253
6位 大成株式会社(未上場) 223
7位 日本ハウズイング(4781 159
8位 ダイビル(8806 85
9位 共立メンテナンス(9616 77
10位 クロップス(9428 59

出所:開示資料より

 

(注)イオンディライトは設備管理+警備+清掃事業、東急不動産HDはビル管理事業、ビケンテクノはビルメンテナンス事業、日本ハウズイング、ダイビルはビル管理事業、共立メンテナンスは総合ビルマネジメント事業、クロップスはビルメンテナンス事業の売上高である。

 

ビルメンテナンス業界のM&A

 

ビルメンテナンス業は、不足するメンテナンス技術者・清掃スタッフの獲得、周辺業務への参入を目的として、買収ニーズが非常に強い業種です。したがって、他業種と比較すると、売り手主導による、より良い条件での交渉が可能です。

 

最近のビルメンテナンス業界のMA(一部)

 

年度 買い手 対象企業・事業
2020 株式会社ホクタテ 有限会社ふきのとう(富山県:ビル管理および清掃請負)を完全子会社化
2020 東洋テック(9686 株式会社新栄ビルサービス(兵庫県:建物総合管理業)を完全子会社化
2020 ジャパンエレベーターサービスホールディングス(6544 セイコーエレベーター株式会社(東京都:エレベーター等メンテナンス事)を子会社化
2020 ファーストブラザーズ(3454 富士ファシリティサービス株式会社(大阪府:ファシリティマネジメント)を子会社化
2020 TOKAIホールディングス(3167 株式会社イノウエテクニカ(静岡県:ビルメンテナンス業)を完全子会社化
2020 穴吹ハウジングサービス 建衛工業株式会社(北海道:分譲マンション管理、ビルメンテナンス業)を子会社化
2020 日本ハウズイング(4781 株式会社メイセイ(給排水関連事業)を子会社化
2022 ジャパンエレベーターサービスHD6544 株式会社関東エレベーターシステム(群馬県:同業)を子会社化
出所:各種開示資料より作成

 

2020年 (買い手企業) 株式会社ホクタテ

(売り手企業) 有限会社ふきのとう

 

株式会社ホクタテ(富山県富山市)は、ビル管理や通信システム施工・販売を行っています。

有限会社ふきのとう(富山県射水市:売上高1億円)は、ビル管理および清掃請負を行っています。

 

株式会社ホクタテ は、有限会社ふきのとうの全出資持分を取得して完全子会社化しました。

M&Aの目的は、ビルの清掃などの人材不足を補うとともに、射水市周辺での顧客基盤を通じて事業拡大を図るためです。

 

2020年 (買い手企業) 東洋テック(9686

(売り手企業) 株式会社新栄ビルサービス

 

東洋テックは、関西地方を地盤として、機械警備およびビル管理を行っています。

株式会社新栄ビルサービス(兵庫県:売上高107,300万円)は、建物総合管理業、マンション・ビルの清掃業を行っています。

 

東洋テックは、新栄ビルサービスの全株式を取得して完全子会社化しました。

M&Aによって、東洋テックが主力とする警備業務、ビル管理業務との一体運営や人的資源の相互活用を通じた相乗効果が期待されます。

 

2020年 (買い手企業) ジャパンエレベーターサービスホールディングス(6544

(売り手企業) セイコーエレベーター株式会社

 

ジャパンエレベーターサービスホールディングスは、エレベーターの保守・保全、リニューアルで独立系首位の会社です。

セイコーエレベーター株式会社(東京都)は、東京・神奈川・埼玉・千葉等の首都圏を中心に、800台以上のエレベーター等保守管理を行っています。

 

ジャパンエレベーターサービスホールディングスは、セイコーエレベーター株式会社の株式68.095を取得して子会社化しました。

M&Aの目的は、M&Aによって保守契約台数を増加させて、首都圏における事業基盤の一層の強化を図る狙いがあります。

 

2020年 (買い手企業) ファーストブラザーズ(3454

(売り手企業) 富士ファシリティサービス株式会社

 

ファーストブラザーズは、商業施設や事務所ビルなどの不動産投資を中心に事業を展開しています。

富士ファシリティサービス株式会社(大阪市:売上高183,000万円)は、大阪を地盤としてビル運営管理や設備点検・清掃などのファシリティマネジメント事業を手掛けています。

 

ファーストブラザーズは、富士ファシリティサービスの全株式を取得して完全子会社化しました。

M&Aの目的は、M&Aによって不動産関連事業に参入し、本業の成長につなげる狙いがあります。

 

2020年 (買い手企業) TOKAIホールディングス(3167

(売り手企業) 株式会社イノウエテクニカ

 

TOKAIホールディングスは、静岡県内で、警備事業の一環で消防設備点検や空調設備など機械設備の保守点検、清掃などのビル管財事業を手がけています。

 

株式会社イノウエテクニカ(静岡県:売上高5億円)は、静岡県東部の公共施設や病院、企業の工場の維持・管理などを行っています。

 

TOKAIホールディングスは、イノウエテクニカの全株式を取得して完全子会社化しました。

M&Aの目的は、イノウエテクニカの子会社化によって、静岡県内の管財事業を拡大する狙いがあります。

 

2020年 (買い手企業) 株式会社穴吹ハウジングサービス

(売り手企業) 建衛工業株式会社

 

株式会社穴吹ハウジングサービス(香川県)は、西日本を中心にマンション管理業を展開しています。

建衛株式会社(北海道:売上高27,700万円)は、55棟、約4300戸の分譲マンションを管理しています(20009月時点)。

 

株式会社穴吹ハウジングサービスは、建衛株式会社の発行済み株式の91%を取得して子会社化しました。

M&Aの目的は、北海道でのマンション管理事業を拡大するためです。

 

2020年 (買い手企業) 日本ハウズイング(4781

(売り手企業) 株式会社メイセイ

 

日本ハウズイングは、マンション管理事業、ビル管理事業、不動産管理事業、営繕工事業を展開しています。

株式会社メイセイ(埼玉県:売上高8億円)は、給排水関連の設備および制御機器の保守・点検、修理・工事業務などを行っています。

 

日本ハウズイングは、株式会社メイセイの全株式を取得して完全子会社化しました。

M&Aの目的は、給排水設備工事および保守点検における技術者の確保、技術力の向上が狙いです。

 

2022年 (買い手企業) ジャパンエレベーターサービスホールディングス(6544

(売り手企業) 株式会社関東エレベーターシステム

 

ジャパンエレベーターサービスホールディングスは、エレベーターの保守・保全、リニューアルで独立系首位の会社です。

株式会社関東エレベーターシステム(群馬県館林市)は、群馬県内で1,200台以上のエレベーターなどの保守管理をしています。

 

ジャパンエレベーターサービスホールディングは、株式会社関東エレベーターシステムの全株式を取得して完全子会社化しました。

M&Aの目的は、北関東地区での事業基盤強化のためです。

 

ビルメンテナンス業界の課題と今後の展望について

 

国内市場における人手不足

 

国内市場にいては、若年層・マネジメント層の人手不足は、年々深刻化しています。また、若年層やマネジメント層のみならず、パートやアルバイトも含め、業界全体で人手不足に陥っています。

ビルメンテナンス業は労働集約型の産業です。機械よりも人間の労働力への依存度が高いため、「いかにして優秀な人を大量に確保するか」が鍵になります。人手不足に陥ると、新規受注も受けることができなくなります。

 

人手不足を解決するには、外国人の活用、清掃ロボットの活用、警備ロボットの活用の3つの方法があります。

外国人の活用については、外国人技能実習生の受け入れに関心を持つ企業が増加しています。「ビルメンテナンス情報年鑑2020)」によると、「受け入れを積極的に拡大していきたい」「今後も受け入れを継続したい」「受け入れを前提に検討している」という3つの回答の合計は、「本社:29%」「支社・営業所:35.6%」です。前年の2019年調査の「本社:24%、支社:34.5%」より増加しています。

「清掃ロボット」や「警備ロボット」は実証実験が進められていますが、すぐに実用化される状況ではありません。

 

更なる海外展開の加速

 

中国やASEAN諸国などにおいては、今後も建設需要が見込まれています。一方、これらの国々では、まだビルメンテナンスの技術・ノウハウが不足しているところもあります。

また、日本国内では人材不足が深刻ですが、経済成長の段階にある国々では多くの人材を確保することができます。

このようにビルメンテナンスの需要があり、かつ、豊富な労働力がある点を考えると、今後も上位10社を始めとして海外進出は加速すると予想されます。

 

会社売却(M&A)とは

主な2つのM&Aの手法

M&Aを検討している経営者の皆様が覚えておくべき主な手法は、株式譲渡と事業譲渡の2つです。

売り手企業の株主が買い手企業に株式を譲渡する手法が株式譲渡です。売り手企業が買い手企業に事業を譲渡する手法が事業譲渡です。
どちらを選択するかは、売り手企業の意向、買い手企業の考えによって、両者の交渉によって決まります。

会社の借入金、従業員、資産、権利義務関係などの全てを買い手企業へ譲る場合、株式譲渡の手法を選択します。

一方、売り手企業の事業が、製造部門と販売部門のように複数事業に分かれており、製造部門のみを譲渡するような場合、事業譲渡を選択します。

 

以下の設例により、株式譲渡と事業譲渡の2つの方法を比較することにします。

<設例>

X社は、自社ビルの不動産賃貸業と居酒屋事業(5店舗運営:全店舗は賃借)の運営を行っています。株主はオーナー社長のみです。

コロナ禍の影響を受けて、居酒屋事業の業績が悪化したため、X社は居酒屋事業を第三者へ譲渡することにしました。

居酒屋事業を事業譲渡する場合、買い手企業のメリットは、居酒屋事業のみを引継ぐ点になります。ただし、従業員の再雇用、権利義務関係の引継ぎなどの手続が煩雑になるデメリットがあります。一方、売り手企業の簿外債務を引き継ぐリスクはありません。

売り手企業のメリットは、居酒屋事業のみ譲渡できる点、譲渡代金は売り手企業(X社)が受領する点になります。

取引形態 株式譲渡 事業譲渡
譲渡対象 全ての資産と負債 居酒屋事業に係る資産と負債
従業員 そのまま引き継ぐ 一旦、X社を退職、買手企業に再雇用される
契約関係 そのまま引き継ぐ 一旦、店舗賃借契約、水道光熱費等の契約を解約、再度契約を締結
買手からの

譲渡代金

株主(社長)が受領 X社が受領
簿外債務

のリスク

あり なし

 

株式譲渡の場合

メリット デメリット
①    最もシンプルな取引形態であり手続きが簡易

②    原則として従業員との雇用関係、取引先との契約関係、許認可等に影響がなくスムーズな実行が可能

③    株主が個人の場合、所得税・住民税あわせて20.315% の固定税率で分離課税が適用される

①    株主数が多い場合や敵対する株主が存在
する場合は、取りまとめが大変

②    買手にとって不要な資産・負債を引き継ぐ必要があるほか、簿外債務のリスクを遮断できない

 

事業譲渡の場合

メリット デメリット
①    承継する資産・負債を取捨選択できる

②簿外債務を引継ぐリスクを回避できる

①    譲渡対象となる資産・負債および契約に

ついて個別 の移転手続きが必要(組織再編行為では、対象会社(又は事業)の権利義務が包括承継される)

②    従業員の雇用契約も個別承継が必要

引継対象資産・負債は時価で受け入れ、譲渡損益、 消費税が課税される

③    簡易事業譲渡・譲受けに該当する場合を除き、株主 総会の特別決議が必要

 

会社を売却する手順・流れ、方法

M&Aの手順・流れ

①プロセス開始当初にご依頼する資料やお伺いする情報がスムーズにご提供戴けると、その後のプロセスが円滑に進行します。

②予備的企業価値評価は、当社専門家(会計士/税理士)監修のもと実施。この段階で、譲渡価格や条件等の内容を概ね決定します。

③買手候補企業との間で大枠の条件が固まったら基本合意書(法的拘束力無し)を締結します。この段階より1対1の交渉(独占交渉)が始まります。

④基本合意と買収監査結果で差異があった項目を中心に調整し、詳細事項を決定。M&A実施後の体制等も、この段階ですり合わせます。

 

会社を売却する理由・目的

M&Aとは、「Mergers and Acquisitions」の略語であり、日本語にすると「合併と買収」になります。

一般的なM&Aの目的は、売り手としては、事業承継(第三者への)、選択と集中(事業再編、ノンコア事業の売却)、Exit(投資ファンド)などの目的があります。

一方、買い手としては、規模の拡大(売上増加)、上流、下流への事業領域拡大(例えば、食品卸が食品メーカーを買収)、新規事業への進出(時間を買う)などがあります。

買い手の目的 売り手の目的
一般的なM&A ・規模の拡大

・上流、下流への事業領域拡大

・新規事業への進出

・オーナー系  事業承継

・事業会社    選択と集中

・ファンド等  Exit、換金化

買い手は、M&Aによる相乗効果(=シナジー)を享受することにより、競合他社に対する優位性を確保することができます。

後継者不在に悩む中小企業は、一般に60万社以上あると言われており、弊社にご相談をいただく売り手の売却理由の多くは、上記の事業承継ニーズになります。

 

M&Aにより会社を売却するメリット

オーナーのメリット(株式譲渡の場合)

①オーナー・その他株主のキャピタルゲイン(資本利得)の実現

オーナー一族はリタイアに際して現金収入が発生し、ハッピーリタイアすることができますその他株主も、同様に未上場株式を現金に換金できます

②相続税対策

流動性のない未上場株式を現金化することにより、遺産分割が容易になります

③オーナー一族の個人保証からの解放

買い手企業が保証(債務保証、不動産等の担保提供)を肩代わりするため、オーナー一族の経済的負担が解消されます

※親族内承継または従業員承継の場合、オーナー一族の個人保証を継続せざるを得ない
場合があります

会社のメリット

①事業の継続を確保、会社成長の可能性があります

②買い手企業の傘下に入ることにより、事業継続と安定性を確保できます

③買い手企業とのシナジー、将来の会社成長の可能性に期待できます

④従業員雇用の継続、安定を図ることができます

会社を売却するデメリット

 

・買い手企業が見つからないリスク

会社を売却すると決断してもすぐに買手企業が見つかるとは限りません。

M&Aにはそれなりのコストがかかるので、買い手企業にとっては、それなりのメリットがなければM&Aを実行しません。

コロナ禍においては、M&Aを検討する企業数が減っており、かつ投資目線も厳しくなっています。

 

つまり、「コストをかけてもM&Aを行う」と買い手企業が思うような魅力がある会社(売り手企業)でない限り、なかなか買手企業が現れないと考えるのが良いでしょう。

 

M&A市場においては、一般に「将来的に売り手企業がどの程度の収益を上げる力があるか」で売り手企業は評価されます。したがって、収益面では黒字にすること、過度な借入金(例えば、売上高を超える、あるいは同じ金額の借入金)は避けるべきです。

・M&A後における従業員の待遇面の不安

 

M&A後における従業員の労働条件や解雇の規則については、買い手企業によって変更をされないように最終契約書に記載しておく必要があります。

最終契約書での取り決めがない場合、M&A前より悪い労働条件で働かされたり、簡単に解雇されたりする可能性があるためです。

M&Aを実行する場合、確認する事項は個別案件ごとに異なり、また多岐にわたります。この確認をおろそかにせず、売り手企業と買い手企業のお互いがM&Aのメリットを享受できるように交渉を進めることが重要です。

会社を売却する際の株価の考え方

 

株価(株式価値)の算定方法として一般的に用いられる手法は、修正純資産法、類似会社比較法(マルチプル法)、DCF法です。

 

修正純資産法

評価対象会社(売手)の貸借対照表に計上されている全ての資産・負債を時価評価した後の純資産額に営業権を加算(注)して企業価値を算定する方法です。この方法は、企業の静的な価値を判定するのに適しています。未上場会社のM&Aで利用されることが多い方法です。

(注)黒字の場合、営業権として修正後営業利益の3年分程度の金額を加算します。一方、赤字(営業損失)の場合、営業権はつきません。社歴〇〇年の老舗企業、あるいは△△△ブランドで有名などの要素は、営業権として評価されません。

 

類似会社比較法(マルチプル法)

業種、企業規模等の類似する上場会社の一定の財務数値に対する企業価値の倍率を測定し、評価対象会社(売手)の財務数値に当該倍率を乗じることで企業価値を算定する方法です。

上場会社、未上場会社のM&Aにおいて利用されている方法です。

 

なお、未上場の中小企業・小規模企業のM&Aの株価算定においては、会社規模(売上)が小さい、ニッチ業種であるなどの理由により、上場会社の中から類似会社を選定することが難しい場合があります。

 

DCF法

事業活動から得られると予測される将来キャッシュ・フローの総額を現在価値に割り引いた金額を企業価値として評価する方法です。将来キャッシュ・フローの予測に企業価値が大きく左右される方法です。上場会社のM&Aにおいては、一般的に利用されることが多いです。

なお、DCF法を用いる場合、将来キャッシュ・フロー算出の基礎となる評価対象会社(売手)の事業計画が必要となります。また、当該事業計画の客観性、妥当性、実現性等が重要になります。

 

考慮すべき事項

 

評価対象会社(売手)が、企業のライフサイクル(イメージ図)において、創業期、成長期、成熟期、衰退期のいずれの段階に該当するかを判断します。

併せて、評価対象会社の継続性の疑義の有無、知的財産等に基づく超過収益力に依存する収益構造であるか、類似上場会社のない新規ビジネス、或いはニッチ業種に該当するかなどを判断する必要があります。

 

企業のライフサイクル(イメージ図)     

以上の考慮すべき事項を確認した後、評価対象会社(売手)に適切な株価(株式価値)の算定方法を選択します。複数の算定方法を選択できる場合は、それぞれの算定方法の結果を比較検討するのがよいでしょう。

 

株価(株式価値)の算定方法の選択

考慮すべき事項 想定ケース 企業評価手法
修正

純資産法

マルチ

プル法

DCF法

評価対象会社の

ライフステージ

創業期

成長期

成熟期

衰退期

会社の継続性

疑義なし

疑義あり

知的財産等に基づく

超過収益力

知的財産等の無形資産が価値の主たる源泉
類似上場会社のない
新規ビジネス
他に例のない      新規ビジネス

ニッチ業種

 

〇:採用が適していると考えられる   △:場合によっては採用することが想定される

 

以上、中小企業のM&Aにおける株価(株式価値)の算定方法、考慮すべき事項を簡単に紹介しました。

現在、または将来、後継者問題などを理由に会社譲渡を考えている中小企業の社長様、是非、弊社にご相談ください。

会社の株価(譲渡金額)を決めるのは、社長様ご自身です。弊社試算の株価と比較して、納得できる譲渡金額を決める際の参考にして頂ければと思います。

 

会社を売却する場合に係る税金

 

中小M&Aの方法のうち、最も多く用いられる株式譲渡の場合において、会社売却に係る税金をどのように考えるかを一緒に見てみることにします。

会社の株主が個人である場合、所得税・住民税あわせて20.315% の固定税率で分離課税が適用されます。

以下の設例を用いて、会社を売却した場合、株主の税金をどのように計算するかを説明します。

<設例>

会社株主は、社長のみの一人株主とします。
株式の出資額10,000千円、株式譲渡代金100,000千円、売り手(個人株主)のM&A手数料5,500千円 (消費税込み)とします。

 

株式の売却益(注)は、株式譲渡代金から株式の出資額を差し引いた、90,000千円(=100,000千円−10,000千円)となります。

(注)キャピタル・ゲイン(資本利得)

 

個人株主の場合、株式の売却益は分離課税の対象となり、税率は20.315%(注)が適用されます。

また、M&A手数料(消費税込み)は、売却益から費用として差し引くことができます。

よって、個人株主が負担する税金は、以下のように計算することができます。

 

(90,000千円−5,500千円)×20.315%(注)=17,166千円

(注)所得税及び復興特別所得税(15.315%)+住民税(5%)

 

会社を売却するタイミングを考える場合のポイント

会社を売却するためのポイントは3つあります。

ポイント① 引退の時期を決める。

「この事業が上手くいったあとで」といった条件付きの不明確な時期の決め方ではなく、できれば年月を確定することをおすすめします。

時期を決めることで、実現するための強い決意が生まれます。

経営状態がよいタイミングで売却すると高い株価で売却でき有利ですが「企業価値が上がったら売却してリタイアしよう」という決め方だとなかなか踏ん切りがつかず、ハッピーリタイアの実現は難しくなるでしょう。

 

ポイント② 売却前に次の経営者がやりやすいように経営環境を整えておくことです。

後顧の憂いなくリタイアするためには、経営者の頭の中にある重要な項目を整理しておくことが重要です。

特に、従業員の対するケアがポイントであり、各従業員の性格等を、事業引継ぎの際に伝えておかなければ、その後の組織運営に支障が出ます。

 

③ 良いフィナンシャル・アドバイザー(注)を見つける。

会社を売却する際には、専門的知識が必要となり、M&Aの専門家のサポートが必要となります。
中小M&Aの実績が十分にあり、業界での評判の良いM&A仲介会社を選ぶとよいでしょう。

どのM&A仲介会社も初期相談は、無料で対応しています。複数社と面談して、相性の良さそうな会社を選択するのも一つの方法です。

(注)フィナンシャル・アドバイザーの役割は、クライアント(売り手、買い手)が目指す戦略実現のために、最適なM&A手法を企画 立案し、その執行を全面的にサポートすることです。

アドバイザリー会社のタイプとしては、金融機関系、会計会社系、ブティック系の3つに大別することができます。

会社を売却する際の注意点

経営者の健康問題

事業の内容に関係なく会社売却の理由と考えられるのは、経営者の健康問題です。

持病を抱えている人、年を取って体力に不安を持つ人など、会社の存続に不安を覚えて、弊社にご相談される場合がよくあります。

 

あるオーナー社長は、弊社にM&Aの相談をされましたがすぐに会社を売却せず、そのまま経営を続けられました。その2年後、オーナー社長が「M&Aを検討したい」と決断されました。

 

その2年間、オーナー社長は、定期的に通院したり、または入院したりと体調が良くなく、営業活動を十分に行うことができなかったため、売上高が減少しました。

その結果、利益率が下がり、会社の価値自体が棄損したため、株価算定の結果も2年前よりも30%減少となりました。

オーナー社長の場合、健康問題を理由として業績が下がることがありますので、その前にM&Aを決断することが重要です。

 

業界再編が加速している業種

2020年3月以降、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、各業界において業界再編が加速しています。この業界再編の流れを把握して競合他社よりも先に行動しなければ、M&Aのタイミングを逃すのみならず、M&Aできずに廃業に追い込まれることもあります。

 

事業再編が進むにはさまざまな理由があります。

例えば、人口の減少があります。

人口が減少すれば、従来のように売上を上げることは難しくなります。

或いは同地域に複数業者が乱立して、市場が供給過多の状態となっている場合も同様のことが言えます。

この様な場合、同業他社と経営統合を図ることで経営の安定を図り、生き残り戦略を選択する方法が考えられます。

 

弊社M&Aコンサルティングサービスのご案内

弊社のM&Aコンサルティングのご案内です。特徴は3点あります。

一つ目は、プロフェッショナルによるM&Aサポートです。
M&Aの専門性を持つ、経験豊かなコンサルタントが、皆様にきめ細かなサービスを提供させていただきます。実際に成約したお客様、皆様からご満足いただいております。

二つ目は、完全成功報酬の手数料体系です。
当社は、1社でも多くの中小企業のM&A支援を行うために、リーズナブルな手数料体系を採用しています。着手金、月額費用などはいただかず、成功報酬のみの完全成功報酬制を採用しています。

三つ目は、多くの成約実績です。
業種、規模、エリアを問わず、多くの成約実績がございます。
高い専門性を持ったM&Aコンサルタントが、ご満足いただけるサービスを提供させていただきます。

 

中小企業のM&Aは、個々の案件ごとに手作り、言わばオーダーメイドであり、これが公式というものはありません。この記事を読まれた会社経営者の方でM&Aをお考えになる場合は、中小企業のM&A仲介会社である弊社に是非ご相談ください。