目次
事業譲渡とは?
事業譲渡とは、会社の事業全体または一部を譲り渡すことを意味します。
「事業」には、その事業を運営するために必要な資産、営業債権、営業債務、取引先、そして従業員との雇用契約などが含まれます。
事業譲渡を選択する例としては、以下の場合があります。
譲渡側に経営権を残したい場合
事業譲渡では、会社全体を売却するわけではありません。
取引主体は会社となりますが、会社が一部の事業を譲渡することになります。そのためオーナー社長は、事業譲渡後も引き続き会社を所有することになります。
譲渡対象は特定の事業になるため、会社の経営権は会社に残ります。
オーナーではなく会社が譲渡対価を受け取りたい場合
取引主体が会社であるため、事業譲渡の対価は会社が受け取ります。その際に譲渡資産の含み益があると課税が生じます。仮にオーナー社長が事業譲渡による対価を受け取るためには、会社から配当や退職金によって、個人で受け取ることになります。
必要な事業だけを引き継ぎたい場合
買手にとっては、事業譲渡は必要なものだけを引き継ぐことになります。
株式譲渡のように包括承継する場合と比べると、簿外債務や偶発債務を引き継ぐリスクを排除することができます。一方、改めて個別に契約を締結するなど、譲渡対象事業の内容によっては手続きが面倒になることがあります。税務上の取り扱いとしては、引き継ぐ対象事業の資産・負債の時価と、支払う対価に差額がある場合は、税務上の「のれん」を計上します。のれんは5年間で均等償却するため、税務上のメリット・デメリットが発生することになります。
事業譲渡のメリットとデメリット
事業譲渡と株式譲渡の違い
事業譲渡は、売手の事業の全、または一部を売買します。一方、株式譲渡は、売手の株式の全てまたは一部を譲渡することです。
事業譲渡と株式譲渡の違い
株式譲渡のメリットとデメリット
以下の設例により、株式譲渡と事業譲渡の2つの方法を比較することにします。
<設例>
X社は、自社ビルの不動産賃貸業とレストラン事業(25店舗:全店舗は賃借)の運営を行っています。株主はオーナー社長のみです。
コロナ禍の影響を受けて、レストラン事業の業績が悪化したため、X社はレストラン事業を第三者へ譲渡することにしました。レストラン事業を事業譲渡する場合、買い手企業のメリットは、レストラン事業のみを引継ぐ点になります。ただし、従業員の再雇用、権利義務関係の引継ぎなどの手続が煩雑になるデメリットがあります。一方、売り手企業の簿外債務を引き継ぐリスクはありません。
売り手企業のメリットは、レストラン事業のみ譲渡できる点、譲渡代金は売り手企業(X社)が受領する点になります。
株式譲渡と事業譲渡との比較
事業譲渡の手続きの流れ
事業譲渡は、会社法上、多くの手続きが定められていないため、比較的自由にスケジュールを決めることができます。
ただし、譲渡する資産、負債、契約関係などを個別移転するため、事業規模や事業内容によっては手続きが面倒であったり、一定の期間を要する場合があります。
事業譲渡契約締結
事業譲渡の手続きでは、譲渡企業と譲受企業が事業譲渡契約を締結します。
売手は事業譲渡については取締役会の決議をする必要があります。その決議後、事業譲渡契約を締結します。
事業譲渡契約書には、譲渡内容、譲渡対価、支払方法、財産の移転手続き、譲渡日、競業避止義務・、契約の引継ぎ、従業員の引継ぎなどを記載します。
買手が事業に紐づく許認可を保有していない場合は、許認可取得に向けた準備をしておく必要もあります。
また、事業譲渡契約には印紙税がかかるため、事業譲渡契約書に買手、売手の双方が収入印紙を貼る必要があります。なお、印紙税額は、譲渡対価の金額(契約金額)によって異なります(最低200円、最高60万円)。
株主総会特別決議
事業譲渡が次のいずれかに該当する場合、譲渡日の前日までに株主総会の特別決議が必要になります。
・売手:事業の全部譲渡、事業の重要な一部の譲渡
・買手:事業の全部の譲受け
ただし、以下の簡易・略式事業譲渡に該当する場合は、株主総会の特別決議を省略することができます。
株式会社経営承継支援は、一社でも多くの企業を廃業危機から救うため、全ての企業様のご相談をお受け致しております。
M&A(株式譲渡、事業譲渡等)に関して着手金無料でご相談可能ですので、お気軽にお問合せくださいませ。