建設業界の動向およびM&Aについて

目次 [ ]

建設業界の市場動向

国土交通省の建設投資見通し20238月公表)によると、2023年の建設投資額(見込み)は、前年比2.2%増の703,200億円でした。

出所:国土交通省、業界動向リサーチ

2023年の「政府投資」は前年比4.5%増の253,400億円、「民間投資」は1.0%増の449,800億円となっています(いずれも見込み額)。建設投資額は2012年頃から右肩上がりとなり、特に近年では民間の建設投資が増加傾向にあります。

具体的には、首都圏の再開発案件や物流施設の増加、工場の国内回帰などを背景に、国内の建設投資額は拡大傾向にあります。首都圏の再開発は盛んであり、丸の内や大手町、虎ノ門、赤坂、品川、渋谷、新宿など大型のビルや施設が次々に建設されています。

一方、建設資材の高騰によって建設コストは大幅に上昇し、また受注競争の激化によって採算の低い工事の受注が利益を圧迫しています。世界的な資源・物価高の影響を受け、鋼材や石油製品などの建設資材が相次いで値上がりすると共に、大手デベロッパーからの値下げ圧力も強く、受注競争が激化しています。
 

 

業界売上高ランキング(2022-2023年)

建設業の売上高ランキング(1位~10位)は、以下の通りです。

順位

会社名 売上高(億円)
1位 鹿島建設(1812 23,915
2位 大林組(1802 19,838
3位 清水建設(1803 19,338
4位 大成建設(1801 16,427
5位 株式会社竹中工務店 12,511
6位 長谷川コーポレーション(1808 10,272
7位 戸田建設(1806 5,471
8位 五洋建設(1893 5,022
9位 三井住友建設(1821 4,586
10位 熊谷組(1861 4,035

出所:開示資料より
 

 

建設業界のM&A

過去の建設業界のM&A(一部)

年度 買い手 対象企業・事業
2019 不二サッシ(5940 日本防水工業株式会社(東京都:修繕工事業)を子会社化
2019 サーラコーポレーション(2734 株式会社宮下工務店(静岡県)の孫会社化
2019 第一カッター興業(1716 株式会社アシレ(神奈川県:ウォータージェット工法による建設関連事業)を完全子会社化
2020 ナガワ(9663 鳥海建工株式会社(埼玉県:総合建設業)を完全子会社化
2021 東宝ファシリティ-ズ株式会社(総合ビル管理)
東宝(9602)の連結子会社
株式会社シコー(東京都:内装工事)を孫会社化
2022 瀧上工業(5916 東京フラッグ株式会社(鋼構造物工事の現場溶接)を完全子会社化
2022 清水建設(1803 日本道路(1884)を公開買付(TOB)によって連結子会社化
2022 メイホーホールディングス(7369 株式会社安芸建設コンサルタント(広島県)を子会社のメイホーエンジニアリングを通じて孫子会社化
2023 ナカノフドー建設(1827 株式会社トライネットホールディングス(長野県飯田市:建設・不動産業)を子会社化
2023 矢作建設(1870 北和建設株式会社(京都府京都市)を完全子会社化
2024 安江工務店(1439 ガーデン株式会社(京都市:新築注文住宅設計・施工)を完全子会社化

出所:開示資料より

2019年(買い手企業)不二サッシ(5940)(売り手企業)日本防水工業株式会社
不二サッシ(5940)は、ビル用中心のアルミサッシ国内4位です。
日本防水工業株式会社(東京都:売上高28億円)は、ビル・マンションの大規模修繕工事を行っています。
不二サッシは、日本防水工業株式会社とその子会社である日本スプレー工業株式会社(埼玉県:売上高3億円)の発行済株式を取得して子会社化しました。
本M&Aの目的は、フジサッシの窓改修の工事力と、日本防水工業の大規模修繕の工事力を融合させ、外装全てを網羅するトータルリニューアル工事の施工体制を確立する狙いがあります。

2019年(買い手企業)サーラコーポレーション(2734)(売り手企業)株式会社宮下工務店
サーラコーポレーションは、注文住宅の建設事業などを展開しています。
株式会社宮下工務店(静岡県:売上高12億円)は、静岡県で注文住宅の建築などを行っています。
サーラコーポレーションは、連結子会社のサーラ住宅株式会社を通して株式会社宮下工務店を孫会社化しました。
本M&Aの目的は、両社の技術と人材の共有によって、静岡県内の事業強化を図る狙いがあります。

2019年(買い手企業)第一カッター興業(1716)(売り手企業)株式会社アシレ
第一カッター興業は、建設業におけるウォータージェット工法やダイヤモンド工法による解体などを行っています。
株式会社アシレ(神奈川県:売上高12億円)は、ウォータージェット工法による建設関連事業を行っています。
第一カッター興業は、株式会社アシレの全株式を取得して完全子会社化しました。
本M&Aの目的は、両社の技術力と人材の共有によって、事業を強化する狙いがあります。

2020年(買い手企業)ナガワ(9663)(売り手企業)鳥海建工株式会社
ナガワは、ユニットハウスの製造・販売・レンタル、システム・モジュール建築の設計・施工、建設機械器具のレンタル・販売、建設資材販売・リフォーム・各種工事などを展開しています。鳥海建工株式会社(埼玉県)は、埼玉県を中心に総合建設業を行っています。ナガワは、鳥海建工株式会社の全株式を取得して完全子会社化しました。
本M&Aの目的は、システム・モジュール事業の体制強化を図る狙いがあります。

2021年(買い手企業)東宝ファシリティ-ズ株式会社(売り手企業)株式会社シコー
東宝ファシリティ-ズ株式会社は東宝(9602)の連結子会社であり、清掃・設備管理・警備・建設などの総合ビル管理を行っています。
株式会社シコー(東京都:売上高5億5,000万円)は、主に商業施設の内装工事を行っています。
東宝は、連結子会社の東宝ファシリティ-ズ株式会社を通して株式会社シコーを孫会社化しました。
本M&Aの目的は、建設事業の業容拡大、両社の技術力・営業力の強化などのシナジーによってグループの企業価値向上を目指すのが狙いです。

2022年(買い手企業)瀧上工業(5916)(売り手企業)東京フラッグ株式会社
瀧上工業(5916)は、橋梁(きょうりょう)・鉄骨、鋼構造物の設計から製作・架設まで一貫した施工を行っています。
東京フラッグ株式会社(東京都:売上高7億円)は、各種鋼構造物工事の現場溶接を行っています。
瀧上工業は、東京フラッグ株式会社の全株式を取得して完全子会社化しました。
本M&Aの目的は、溶接に関する技術を深化させ、中心事業である鋼構造物製造事業の強化を図る狙いがあります。

2022年(買い手企業)清水建設(1803)(売り手企業)日本道路(1884)
清水建設スーパーゼネコン5社の1社であり、総合建設企業です。
日本道路(1884)は、建築事業・土木事業を中心に、不動産開発事業、エンジニアリング事業など幅広い事業を展開しています。
清水建設は、日本道路株式会社を公開買付(TOB)によって連結子会社化しました。
本M&Aの目的は、清水建設グループと日本道路グループとの協働による受注拡大、両社の顧客網・技術・拠点網を活用した事業競争力の強化、研究開発体制の合理化などにより、さらなる成長・発展を図る狙いがあります。

2022年(買い手企業)メイホーホールディングス(7369)(売り手企業)株式会社安芸建設コンサルタント
メイホーホールディングス(7369)は、グループ各社で建設コンサルタント、建設、人材派遣介護の4事業を展開しています。
株式会社安芸建設コンサルタント(広島県:売上高6億4,000万円)は、建設コンサルタント業や測量業を行っています。
メイホーホールディングスは、株式会社安芸建設コンサルタントを子会社のメイホーエンジニアリングを通じて孫子会社化しました。
本M&Aの目的は、メイホーエンジニアリングをはじめとする建設コンサルタント6社と安芸建設コンサルタントが、互いの強みを融合することにより、単なるスケールメリットだけでなく、新しいシナジーを生み出すことを狙いとしています。

2023年(買い手企業)ナカノフドー建設(1827)(売り手企業)株式会社トライネットホールディングス
ナカノフドー建設は、建築事業を主力としており、総合建設業の事業強化を目標としています。
株式会社トライネットホールディングス(長野県飯田市)は、建設会社や不動産会社など5社を傘下に持っています。
ナカノフドー建設は、トライネットホールディングスの株式99.79%を取得し、子会社化しました。
本M&Aの目的は、重要な事業戦略である土木事業の拡大を図ることです。

2023年(買い手企業)矢作建設(1870)(売り手企業)北和建設株式会社、東急不動産HD(3289)グループ
矢作建設(1870)は、建設事業、不動産事業などを展開する総合建設会社です。
北和建設株式会社(京都府京都市)は、関西エリアを中心に主にマンション工事を行っています。その他、ホテル・福祉施設などの建築工事も行っています。
矢作建設は、北和建設の全株式を取得して完全子会社化しました。
本M&Aの目的は、事業エリアを東海圏から関西圏へ拡大する狙いがあります。

2024年(買い手企業)安江工務店(1439)(売り手企業)ガーデン株式会社(京都市:新築注文住宅設計・施工)
安江工務店(1439)は、リフォーム・新築・不動産の3つの事業を営む地域密着型の総合住宅会社です。
新築注文住宅設計・施工のガーデンのガーデン株式会社(京都市:売上高約6億)は、京都の狭小地や寒暖差のある気候風土に合わせた住宅に通じています。
安江工務店は、ガーデンの全株式を取得して完全子会社化しました。
安江工務店は、地域密着で事業展開する各地の地場工務店などとの連携を進めており、本M&Aもその一環です。
 

 

建設業界の課題と今後について

建設業界の深刻な課題として、人手不足を挙げることができます。建設現場で働く技能労働者は1997年ごろをピークに減少傾向にあります。若年人口の減少と高齢化による担い手不足が原因となり、今後はさらに人手不足が進むと予測されます。


出所:総務省統計局、業界動向リサーチ

併せて、施工管理担当者など管理担当の人材も減少しており、人への依存度が高い建設業界にとっては深刻な問題となっている。

近年の建設資材の高騰も建設業界にとっては大きな課題となっている。この数年、世界的な資源・エネルギー価格の上昇の影響を受けて、鋼材や石油製品、木材などの建設資材が高騰している。建設コストの上昇は、企業の収益性を低下させると共に、成長を阻害する要因となる。
 

 

M&Aするメリットとデメリット

【1】主な2つのM&Aの手法

M&Aを検討している経営者の皆様が覚えておくべき主な手法は、株式譲渡と事業譲渡の2つです。
売り手企業の株主が買い手企業に株式を譲渡する手法が株式譲渡です。売り手企業が買い手企業に事業を譲渡する手法が事業譲渡です。
どちらを選択するかは、売り手企業の意向、買い手企業の考えによって、両者の交渉によって決まります。
会社の借入金、従業員、資産、権利義務関係などの全てを買い手企業へ譲る場合、株式譲渡の手法を選択します。
一方、売り手企業の事業が、製造部門と販売部門のように複数事業に分かれており、製造部門のみを譲渡するような場合、事業譲渡を選択します。
以下の設例により、株式譲渡と事業譲渡の2つの方法を比較することにします。

<設例>
X社は、自社ビルの不動産賃貸業とレストラン事業(25店舗:全店舗は賃借)の運営を行っています。株主はオーナー社長のみです。 コロナ禍の影響を受けて、レストラン事業の業績が悪化したため、X社はレストラン事業を第三者へ譲渡することにしました。
レストラン事業を事業譲渡する場合、買い手企業のメリットは、レストラン事業のみを引継ぐ点になります。ただし、従業員の再雇用、権利義務関係の引継ぎなどの手続が煩雑になるデメリットがあります。一方、売り手企業の簿外債務を引き継ぐリスクはありません。売り手企業のメリットは、レストラン事業のみ譲渡できる点、譲渡代金は売り手企業(X社)が受領する点になります。

株式譲渡のメリット・デメリット

事業譲渡のメリット・デメリット

【2】M&Aの手順・流れ

①プロセス開始当初にご依頼する資料やお伺いする情報がスムーズにご提供戴けると、その後のプロセスが円滑に進行します。
②予備的企業価値評価は、当社専門家(会計士/税理士)監修のもと実施。この段階で、譲渡価格や条件等の内容を概ね決定します。
③買手候補企業との間で大枠の条件が固まったら基本合意書(法的拘束力無し)を締結します。この段階より1対1の交渉(独占交渉)が始まります。
④基本合意と買収監査結果で差異があった項目を中心に調整し、詳細事項を決定。M&A実施後の体制等も、この段階ですり合わせます。

【3】会社を売却する理由・目的

M&Aとは、「Mergers and Acquisitions」の略語であり、日本語にすると「合併と買収」になります。

一般的なM&Aの目的は、売り手としては、事業承継(第三者への)、選択と集中(事業再編、ノンコア事業の売却)、Exit(投資ファンド)などの目的があります。

一方、買い手としては、規模の拡大(売上増加)、上流、下流への事業領域拡大(例えば、食品卸が食品メーカーを買収)、新規事業への進出(時間を買う)などがあります。

買い手は、M&Aによる相乗効果(=シナジー)を享受することにより、競合他社に対する優位性を確保することができます。

後継者不在に悩む中小企業は、一般に60万社以上あると言われており、弊社にご相談をいただく売り手の売却理由の多くは、上記の事業承継ニーズになります。

【4】M&Aにより会社を売却するメリット

オーナーのメリット(株式譲渡の場合)
①オーナー・その他株主のキャピタルゲイン(資本利得)の実現
オーナー一族はリタイアに際して現金収入が発生し、ハッピーリタイアすることができますその他株主も、同様に未上場株式を現金に換金できます

②相続税対策
流動性のない未上場株式を現金化することにより、遺産分割が容易になります

③オーナー一族の個人保証からの解放
買い手企業が保証(債務保証、不動産等の担保提供)を肩代わりするため、オーナー一族の経済的負担が解消されます※親族内承継または従業員承継の場合、オーナー一族の個人保証を継続せざるを得ない場合があります

会社のメリット
①事業の継続を確保、会社成長の可能性があります
②買い手企業の傘下に入ることにより、事業継続と安定性を確保できます
③買い手企業とのシナジー、将来の会社成長の可能性に期待できます
④従業員雇用の継続、安定を図ることができます

【5】会社を売却するデメリット

・買い手企業が見つからないリスク
会社を売却すると決断してもすぐに買手企業が見つかるとは限りません。
M&Aにはそれなりのコストがかかるので、買い手企業にとっては、それなりのメリットがなければM&Aを実行しません。コロナ禍においては、M&Aを検討する企業数が減っており、かつ投資目線も厳しくなっています。つまり、「コストをかけてもM&Aを行う」と買い手企業が思うような魅力がある会社(売り手企業)でない限り、なかなか買手企業が現れないと考えるのが良いでしょう。M&A市場においては、一般に「将来的に売り手企業がどの程度の収益を上げる力があるか」で売り手企業は評価されます。したがって、収益面では黒字にすること、過度な借入金(例えば、売上高を超える、あるいは同じ金額の借入金)は避けるべきです。

・M&A後における従業員の待遇面の不安
M&A後における従業員の労働条件や解雇の規則については、買い手企業によって変更をされないように最終契約書に記載しておく必要があります。最終契約書での取り決めがない場合、M&A前より悪い労働条件で働かされたり、簡単に解雇されたりする可能性があるためです。M&Aを実行する場合、確認する事項は個別案件ごとに異なり、また多岐にわたります。この確認をおろそかにせず、売り手企業と買い手企業のお互いがM&Aのメリットを享受できるように交渉を進めることが重要です。
 

 

会社を売却する際の株価の考え方

株価(株式価値)の算定方法として一般的に用いられる手法は、修正純資産法、類似会社比較法(マルチプル法)、DCF法です。

【1】修正純資産法

評価対象会社(売手)の貸借対照表に計上されている全ての資産・負債を時価評価した後の純資産額に営業権を加算して企業価値を算定する方法です。この方法は、企業の静的な価値を判定するのに適しています。未上場会社のM&Aで利用されることが多い方法です。
(注)黒字の場合、営業権として修正後営業利益の3年分程度の金額を加算します。一方、赤字(営業損失)の場合、営業権はつきません。社歴〇〇年の老舗企業、あるいは△△△ブランドで有名などの要素は、営業権として評価されません。

【2】類似会社比較法(マルチプル法)

業種、企業規模等の類似する上場会社の一定の財務数値に対する企業価値の倍率を測定し、評価対象会社(売手)の財務数値に当該倍率を乗じることで企業価値を算定する方法です。
上場会社、未上場会社のM&Aにおいて利用されている方法です。

なお、未上場の中小企業・小規模企業のM&Aの株価算定においては、会社規模(売上)が小さい、ニッチ業種であるなどの理由により、上場会社の中から類似会社を選定することが難しい場合があります。

【3】DCF法

事業活動から得られると予測される将来キャッシュ・フローの総額を現在価値に割り引いた金額を企業価値として評価する方法です。将来キャッシュ・フローの予測に企業価値が大きく左右される方法です。上場会社のM&Aにおいては、一般的に利用されることが多いです。
なお、DCF法を用いる場合、将来キャッシュ・フロー算出の基礎となる評価対象会社(売手)の事業計画が必要となります。また、当該事業計画の客観性、妥当性、実現性等が重要になります。

【4】考慮すべき事項

評価対象会社(売手)が、企業のライフサイクル(イメージ図)において、創業期、成長期、成熟期、衰退期のいずれの段階に該当するかを判断します。
併せて、評価対象会社の継続性の疑義の有無、知的財産等に基づく超過収益力に依存する収益構造であるか、類似上場会社のない新規ビジネス、或いはニッチ業種に該当するかなどを判断する必要があります。

企業のライフサイクル(イメージ図)

以上の考慮すべき事項を確認した後、評価対象会社(売手)に適切な株価(株式価値)の算定方法を選択します。複数の算定方法を選択できる場合は、それぞれの算定方法の結果を比較検討するのがよいでしょう。

【5】株価(株式価値)の算定方法の選択

 

〇:採用が適していると考えられる   △:場合によっては採用することが想定される

以上、中小企業のM&Aにおける株価(株式価値)の算定方法、考慮すべき事項を簡単に紹介しました。
現在、または将来、後継者問題などを理由に会社譲渡を考えている中小企業の社長様、是非、弊社にご相談ください。
会社の株価(譲渡金額)を決めるのは、社長様ご自身です。弊社試算の株価と比較して、納得できる譲渡金額を決める際の参考にして頂ければと思います。

【6】会社を売却する場合に係る税金

中小M&Aの方法のうち、最も多く用いられる株式譲渡の場合において、会社売却に係る税金をどのように考えるかを一緒に見てみることにします。会社の株主が個人である場合、所得税・住民税あわせて20.315% の固定税率で分離課税が適用されます。以下の設例を用いて、会社を売却した場合、株主の税金をどのように計算するかを説明します。

<設例>
会社株主は、社長のみの一人株主とします。
株式の出資額10,000千円、株式譲渡代金100,000千円、売り手(個人株主)のM&A手数料5,500千円 (消費税込み)とします。

株式の売却益(注)は、株式譲渡代金から株式の出資額を差し引いた、90,000千円(=100,000千円−10,000千円)となります。
(注)キャピタル・ゲイン(資本利得)

個人株主の場合、株式の売却益は分離課税の対象となり、税率は20.315%(注)が適用されます。
また、M&A手数料(消費税込み)は、売却益から費用として差し引くことができます。
よって、個人株主が負担する税金は、以下のように計算することができます。
(90,000千円−5,500千円)×20.315%(注)=17,166千円
(注)所得税及び復興特別所得税(15.315%)+住民税(5%)

【7】会社を売却するタイミングを考える場合のポイント

会社を売却するためのポイントは3つあります。
ポイント① 引退の時期を決める。
「この事業が上手くいったあとで」といった条件付きの不明確な時期の決め方ではなく、できれば年月を確定することをおすすめします。時期を決めることで、実現するための強い決意が生まれます。
経営状態がよいタイミングで売却すると高い株価で売却でき有利ですが「企業価値が上がったら売却してリタイアしよう」という決め方だとなかなか踏ん切りがつかず、ハッピーリタイアの実現は難しくなるでしょう。

ポイント② 売却前に次の経営者がやりやすいように経営環境を整えておくことです。
後顧の憂いなくリタイアするためには、経営者の頭の中にある重要な項目を整理しておくことが重要です。
特に、従業員の対するケアがポイントであり、各従業員の性格等を、事業引継ぎの際に伝えておかなければ、その後の組織運営に支障が出ます。

ポイント③良いフィナンシャル・アドバイザーを見つける。
会社を売却する際には、専門的知識が必要となり、M&Aの専門家のサポートが必要となります。
中小M&Aの実績が十分にあり、業界での評判の良いM&A仲介会社を選ぶとよいでしょう。
どのM&A仲介会社も初期相談は、無料で対応しています。複数社と面談して、相性の良さそうな会社を選択するのも一つの方法です。
(注)フィナンシャル・アドバイザーの役割は、クライアント(売り手、買い手)が目指す戦略実現のために、最適なM&A手法を企画 立案し、その執行を全面的にサポートすることです。アドバイザリー会社のタイプとしては、金融機関系、会計会社系、ブティッ系の3つに大別することができます。

【8】会社を売却する際の注意点

経営者の健康問題
事業の内容に関係なく会社売却の理由と考えられるのは、経営者の健康問題です。
持病を抱えている人、年を取って体力に不安を持つ人など、会社の存続に不安を覚えて、弊社にご相談される場合がよくあります。

あるオーナー社長は、弊社にM&Aの相談をされましたがすぐに会社を売却せず、そのまま経営を続けられました。その2年後、オーナー社長が「M&Aを検討したい」と決断されました。

その2年間、オーナー社長は、定期的に通院したり、または入院したりと体調が良くなく、営業活動を十分に行うことができなかったため、売上高が減少しました。
その結果、利益率が下がり、会社の価値自体が棄損したため、株価算定の結果も2年前よりも30%減少となりました。

オーナー社長の場合、健康問題を理由として業績が下がることがありますので、その前にM&Aを決断することが重要です。

業界再編が加速している業種
2020年3月以降、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、各業界において業界再編が加速しています。この業界再編の流れを把握して競合他社よりも先に行動しなければ、M&Aのタイミングを逃すのみならず、M&Aできずに廃業に追い込まれることもあります。

事業再編が進むにはさまざまな理由があります。

例えば、人口の減少があります。
人口が減少すれば、従来のように売上を上げることは難しくなります。
或いは同地域に複数業者が乱立して、市場が供給過多の状態となっている場合も同様のことが言えます。
この様な場合、同業他社と経営統合を図ることで経営の安定を図り、生き残り戦略を選択する方法が考えられます。

株式会社経営承継支援は、一社でも多くの企業を廃業危機から救うため、全ての企業様のご相談をお受け致しております。
M&A(株式譲渡、事業譲渡等)に関して着手金無料でご相談可能ですので、お気軽にお問合せくださいませ。

無料お問い合せ【秘密厳守】
この記事をシェアする

新着記事

1分で会社を簡単査定