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『M&Aの流儀』~理想的なM&A仲介会社を探す~第7話
M&A仲介会社の成り立ち
M&A仲介会社には様々なタイプがあります。
恐らくは最も多いのが、元々大手のM&A仲介会社にいたり証券会社の投資銀行部門(フィナンシャルアドバイザリー部門)にいた方々が独立したタイプです。
ほかは、いわゆる地元で税務顧問を幅広くやっているうちに事業承継の相談を受けてM&Aのニーズがあると感じて事業領域を拡大したタイプです。
おおよそ地方の中核都市にはそれぞれ何社ずつか、少し大きく仲介業務を扱っている税理士事務所があります。
税理士事務所にしても広がっていくニーズを拾わない手はありませんので、こうした会社は今後増えていくものと思われます。
幅広い機会を探ろうと思った場合には前者の方が全国的なネットワークを広く持っていることが多いために、機会も多く作れる印象があります。
一方で後者の方は、じっくりと「本当はどうしたいんですか? 売却以外の手段もあるのではないですか?」ということから相談に乗ってくれるようなところもあります。
ただし売却先を幅広く探すということについては前者よりも力が弱いかもしれません。
どっちが良いのかは、好みの問題でもあるのかとは思います。
現在規模が大きくなっているのはまた異なったタイプで、営業マンが集まって、不動産取引を成立させるかの如くマッチングの機会を圧倒的に頻度高く作る中でマッチング数を増やしていくタイプです。
ものすごい速さで取引を決めていく、しかも高く売買されるように豊富な選択肢を獲得しに行くということに長けているため、手数料も少し高くなっています。
働く営業マンの報酬も成功報酬に紐づいているため、個人差がものすごく、社内での競争意識も高いようです。
各社それぞれカラーがあり、個性の違いというだけであって、どこが良い悪いということでもありません。
ただ、自社に合っているかどうかということはあると思いますので、そこは色々と感じてみることが良いとは思います。
M&A仲介手数料の相場観
M&A仲介会社は成功報酬のみで請け負うのが現在の主流です。
ですので「まずは月額いくらで~」と言ってくるところがあったら、慎重に話を聞いた方がいいとは思います。
よほど結果に自信があるのか、あるいは、M&Aの情報はあまり広くは知られていないのをいいことに「取れるところから安定的にたくさん取ってやろう」と考えているのかどちらかに思います。
前者なら良いですが、後者なら他の人の話も聞いた方が良いでしょう。
成功報酬は売買金額に応じて「レーマン方式」と呼ばれる金額帯に応じて段階的に定められた料率で設定されているのが一般的ですが、その前段として最低基準額が決められています。
例えば手数料率5%とうたっていても、買い手は、2億円の売買に対して1,000万円ではなく、「最低額」が2,000万円であれば、売買に2億円、仲介手数料に2,000万円と、総額2億2,000万円かかることになります。
大手の中小企業のM&A仲介会社は、株式の売買にかかる価格はこの最低保証額が2,000万円くらいにかかります。
店舗1つを2000万円で買っていた会社が、仲介会社に手数料2,000万円払っていた例も見たことがあります。
取引金額が1億円未満の小規模M&Aの世界
ところが最近は、仲介会社が増えてきたこともあって競争原理が働き、株の譲渡金額が1億円未満の世界では1000万円、安ければ500万円という水準になってきています。
さらには、1人会社で良心的な人であれば150-250万円でやってくれるようなところもあります。
おかげで最低2,000万円でやっていた会社も、交渉すれば下がるようになってきたという噂もあります(噂だけで、目の当たりにしたことはありません)。
もちろん取引額が2億円や3億円となっていくと大きくはなっていきますが、あくまでも低額レンジ内での目安です。
金額が安いほど、「安かろう悪かろう」なのかと言えば、決してそんなことはありません。
ただ、最低成功報酬額が500万円未満のM&A仲介会社が対象にするのは、例えば法人と言っても個人商店のような形態であって、あんまり緻密なデューデリジェンス(資産査定)や交渉を想定していません。
扱う会社や事業もわかりやすい会社が多いです。交渉期間も短く、やり取りも簡素で、数をこなしていく流れです。
最低報酬額が500万円や1000万円という規模の仲介会社は売上で言えば一桁億円前後のそこそこ規模がある会社を対象にして、じっくり交渉・検討期間をおいて案件成立とともに手数料を手にするという流れです。
著者が聞いた小規模事業者のレアな例では、交渉の最終段階で対象会社の業績が大きく下がってきていたことが発覚し、買い手が譲渡単価を大きく下げようとしたことがありました。
ところがその時に「諸々事情があり、もうこれ以上売り手に下げさせられない」「だけど取引は成立させたい」という理由で、仲介会社から手数料の減額を申し出てたようなこともありました。
ヒトだけのビジネスですので、やろうと思えば価格調整の自由度はとても高い世界になっています。
ただし、一時的な仲介会社の手数料減額要請に惑わされることなく、対象会社の業績が大きく下がった事実を受け止め、引き続きM&Aを実行するか検討することが重要です。
公的機関にも聞いてみる
では具体的にどうやって仲介会社を探せばいいのかと言えば、ありきたりではありますが経営者の仲間から情報を集めることがまず一番でしょう。
さりとて、「そんなこと聞いた日には、あることないこと噂が出回って取引に支障が出そうだ」という心配もあるかと思います。
そうした状況で見逃せないのが、公的機関です。
「中小企業の事業承継問題は国レベルでの問題なのに、仲介手数料のハードル、高すぎないか?」と思ったと思います。
そこで、経済産業省の主導で、各都道府県の商工会議所等には「事業引継ぎ支援センター」があります。
そこにいったん相談することをお勧めします。
良くも悪くも利益を追求する機関ではありませんし相談も無料なので、諸々について納得がいかないまま拙速に進められるようなことはないでしょう。
事業承継の社会問題化を受けて2011年に発足し、しばらくは利用が進まなかったようですが、徐々に成立件数も伸びてきて、今や中小企業の譲渡において存在感は年々大きくなってきているように著者は感じます。
恐らく全国で最も機会が多いであろう東京でも、成約したのは初期の3年間(平成24-26年)で43件と公表されています。
相談件数はほぼ同期間に1500件程度あったことを考えると一定の機能を果たしているように見えますが、東京都の法人数が約26万社(平成24年)であることを考えると、本来もっと機会はあったと思います。
ところが平成30年の実績は、相談件数が11477社、引継ぎ件数(成約件数)は923件となって、ともに対前年で30%以上増えてます。
かなりのハイペースで伸びていると言えましょう。
売却相談が来たら積極的に買い手を探すというわけではなく、あらかじめ買い手候補が「こんな会社が出てきたら連絡ください」といったように登録しておき、それに合致した売却希望会社が現れたら連絡をくれるということになっていると、買い手候補として著者は聞いたことがあります。
手数料がかからないということはありがたいですが、売り手も買い手も、いつ案件が出てくるかは全く分からない状態で待つことになり、時間がかかることは覚悟した方が良いでしょう。
また、当事者の弁ではなく勝手な著者の想像ですが、M&Aの買い手は「まっとうな」事業会社のほうが望ましいと考えている節がありました。
つまり、パン屋が買いたいとパン屋が来るのならばちゃんと対応しますが、パンに関心が強い法人や個人では優先順位は落ちてしまうということです。
ただしこの姿勢も、少し変わってきているようです。
著者自身の例で言えば、著者自身はその業界経験はないものの希望だけ伝えていた業種があるのですが、「ひょっとしたら関心がありますか?」という相談が来たことがあります。
せっかくの大規模な公的機関なので可能性は大きいはずですし、今後はどんどん活動の幅を広げていくのかもしれません。
ネットでの検索や、ダイレクトメールが届いていたという理由で仲介会社を選ぶオーナーもたくさんいるとは思います。
もちろん広告を打てるだけの体力がある時点で実績と信用のある仲介会社であるとは思いますが、やはり担当者による当たり外れもありますし、いったん一通りの話を聞いて動いておくという練習をしておく分には損はないとは思います。
手前味噌ではありますが、著者は仲介業務はやっておりませんが、今まで規模問わず数多の仲介会社と接してきたので、なんなりとご相談いただければ、できる限りのご協力はさせていただきます。
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