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M&Aで失敗しないための適切なリスク分析
事業の多角化や新規事業の立ち上げなど、さまざまな場面でM&Aは有効な手段です。ただし、対象企業が表面化していない負債を抱えている場合など、そのリスクを引き受けてしまうこともあります。そのため、M&Aにおいてはリスク分析が非常に重要となります。
M&Aにおける想定リスクは、買い手企業と売り手企業それぞれに存在しています。一般的にお金を支払う買い手企業のほうがリスクは大きいと考えられているため、売り手企業が抱えているリスクについて重点的に見ることにします。
リスク分析の重要性
買収の対象となる企業をいくつか選んだなら、買収対象企業と秘密保持契約(NDA)を締結して実際に交渉し、情報を収集していきます。買収対象企業と接触する方法としては、仲介会社や金融機関を利用する方法、役員・社員間の人脈を活用する方法などがあります。いずれの方法を利用するにしても、適格に初期分析を行い、統合計画の策定などを行う必要があります。
一方、買い手企業も同様に、初期分析を行い、M&Aにおける手法を決める必要があります。リスク分析とは、初期分析・デュー・デリジェンスの一環で、M&Aが失敗するリスクを軽減することにつながるものです。
リスク分析を行う際には、あらかじめいくつかの項目を洗い出し、チェックリストを作成しておくことが大切です。もっとも、想定されるリスクは業種ごとに異なっており、また同じ業種でも企業によって違います。M&Aにおいてリスクが上昇する主な要因は、短い検討時間・不十分な検討体制にあると考えられています。
多方面にわたるターゲット企業に想定されるリスク項目
買収対象企業の抱えているリスクは、財務、営業基盤、人事、技術・知財などさまざまな面に及んでいます。
たとえば、買収対象企業の業績が低迷・急激に悪化している場合、そもそも企業として継続できない可能性があります。資金繰りが悪化している場合にも承継した途端、赤字になることがありえます。一見、親会社の経営が上手くいっている場合でも、子会社や関連会社を含めると、赤字である可能性があるため、慎重な調査を行う必要があります。
また、過去に合併や分社などの組織再編を行っている場合、組織再編前のデータがそのまま当てはまらないことがあります。さらに、大口取引先との関係性は必要なチェックポイントです。大口取引先に貸し倒れが発生したり、取引停止になるとと、M&A後に大きな影響が生じます。良好な関係を継続できるかについて確認することが重要です。
大量の在庫が残っている場合、採算が悪いと判断できますが、M&Aの直前に在庫が大幅に増減している場合も注意します。直近の決算期末の残高だけでなく、過去3年間のデータに目も調べます。急激に在庫が増加している場合、その原因を確認します。製品クレームで在庫の処分が困難になっている場合、経営自体が継続できない可能性があります。あるいは、工場での環境汚染リスクがあるため製造量が減少している場合は、法的な問題が発生するリスクがあります。係争中の事案がある場合は、どのような経緯で訴訟が提起されたのか、訴訟の結末はどのようになるかを確認します。不動産に多額の含み損益があると買い取り金額に影響するため、重要な不動産については不動産鑑定士に依頼して、鑑定評価を得るのがよいです。また、設備投資の現状を把握して、買収後の設備の入れ替えの必要性を判断します。
これに対して、売り手企業は、株主が最大限の利益を得られるように、その企業を買い叩かれてしまわないように注意すべきです。場合によっては忠実義務違反・善管注意義務違反となることもあるので、気を付けてください。
創業者や株主、取引先、従業員との関係性も要チェック
M&A後にいろいろなリスクが顕在化するおそれもあるので、創業者や株主、取引先、従業員、労働組合に関するリスク分析も大切です。オーナー一族と継続的な取引関係があると、不透明な取引がなされている蓋然性が高いため、関係を清算することが重要です。また、株主が分散していたり株主間の関係が良好でない場合、スムーズにM&Aを行えない可能性があるため、M&Aの実施可能性についてリスク分析が必要です。
取引先との関係では重要な契約に「チェンジ・オブ・コントロール条項」が存在するかを確認します。この条項の内容によっては、M&Aで経営権が移転した場合、事業の根幹となる技術を使えなくなる可能性などがあります。さらに過去のリストラの有無・経緯や労働組合との関係性から将来、法的紛争に発展する可能性も把握します。
どのような点でリスクが高いのかを念頭に置きながら、十分な時間をかけたリスク分析が重要になります。
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