塾業界のM&A動向


塾業界のよくある悩み・ニーズ

少子化に伴い、塾業界全体の市場環境は大変厳しく、生徒数の確保が死活問題となりつつあります。

このような環境化の中、日本政府は、Societt5.0時代に向けて、AI(Airtifical intelligence:人工知能)やIoT(Internet of Things:モノのインターネット化)などの技術を始めとするICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)等を活用する方針を打ち出しています。

特に教育分野では、AIやICTを活用した新しい教育を指すEdTech(Education × Technology)が着目されております。

 

経済産業省も「未来の教室」と呼ばれる国内・世界のEdTechの最新動向等を広く情報発信するためのポータルサイトを開設しています。

 

これまでは、教室で学ぶスタイルや個別指導などが主流でしたが、塾講師が生徒1人1人にかける時間が限られていました。

しかし、アダプティブ・ラーニングにより、生徒の志望校に合わせ、生徒の得意分野や苦手分野、志望校までの実力差異などデータを取ることにより、より精度の高いアドバイスが可能になります。

※ アダプティブ・ラーニング 学習者1人ひとりに最適な学習内容を提供することで、より効率的、効果的な学習を実現する方法。

また、テキストデータ化する従来のOCR(Optical Character Recognition/Reader、オーシーアール、光学的文字認識)技術にAIを組み合わせたAI-OCR技術によって、筆記試験の採用効率化など、塾講師の作業効率の見直しも進んでいくでしょう。

 

 

塾業界における動向・トピックス

塾業界の動向を探るうえで外せないトピックスが「ゆとり教育」です。ゆとり教育では生徒同士の競争をなくし、個性を尊重した学習環境が重視されてきました。しかし、ゆとり教育が廃止されてからは、再び生徒の学力向上が優先されるような教育現場に戻りつつあります。そんな中、多くの保護者は子供たちが学校教育に振り落とされないかという不安を抱えています。
また、2020年度には政府による大学入試改革が行われます。これは、従来のような「知識詰め込み型」の入試から思考力・判断力・総合力を多面的に評価する入試への転換を図るものであり、この新しいタイプの入試問題に対応できるノウハウを持った塾を選ぶべく、保護者の目は大変厳しくなっています。

こうしたニーズに合わせて塾の形も多様化してきました。偏差値を指針としながら有名進学校への合格を目指す進学塾、学校教育のサポートをする学習塾、集団授業よりも個人の学力に合わせた授業ができる個別指導塾など、保護者と生徒にはさまざまな選択肢が与えられています。

一方で、現代の教育システムについていけない旧来型の塾も目立つようになり、生存策として経営権を売却し、M&Aを成立させて再生しようとする塾も現れてきています。

 

 

 

 

塾業界でM&Aをすることのメリット(譲渡側)

塾業界でのM&Aにおいて、譲渡側のメリットとしては、まず指導内容の改善と講師の質向上が挙げられます。現在の塾業界では、優秀な塾講師の価値が上がっており、大手進学塾では厚待遇で講師を引き抜くケースも見られるようになってきました。一方で、小規模な塾では講師を学生アルバイトやパートの主婦に頼っているのが現状であり、しかも彼らは急な理由でいつ辞めてもおかしくない存在です。指導内容には一貫性や継続性が生まれず、高いレベルの指導を望む保護者は最初から子供を有名な塾に入塾させるようになりました。

また、レベルの高い指導に必要な教材費や専属講師の研修費なども捻出できず、経営悪化にも手をこまねくしかない塾は多いのです。

M&Aによって大手に売却が成功すると、明確な指導カリキュラムによって大規模な変革が期待できます。正規雇用の塾講師を配属してもらい、生徒の指導だけでなくアルバイト講師の教育も担ってもらえます。

また、講師の質が高くなり人材が増えれば指導可能な教科も増えるので、保護者の多彩なニーズにも応えられるようになるでしょう。

 

 

 

塾業界でM&Aをすることのメリット(譲受側)

M&Aにおいて譲受側のメリットとしては何よりもまずシェアの拡大です。これまで以上に多くの生徒数を獲得できるので、売上アップが見込めます。また、一から新拠点を設立するのではなく、元々存在していた塾を傘下に収めることができるので、初期投資を格段に節約することができます。アルバイトやパートを募集する期間も省略できるでしょう。

それ以外にも、買収した塾が持っていた独自のノウハウを吸収することができます。一般的に大手の塾ほど指導内容は充実していると思われがちですが、それだけで生徒の学力が向上するとは限りません。学校教育や入試では地域の独自色が強く打ち出されていることもあり、全国の常識から逸脱しているケースにも塾は対応していく必要があります。地元で長年経営されている塾であれば地域の特色も把握しており、そこに大手の指導カリキュラムが加われば授業の充実度はより濃密になります。

M&Aを繰り返すことにより全国の地域性を統計化することもでき、基本となるカリキュラムの内容向上に役立ちます。売上にも教育にもM&Aの恩恵は大きいのです。

 

 

塾業界のM&Aのポイント

塾業界のM&Aにおいては、買収側と売却側の条件をすり合わせることが非常に重要です。たとえば、教育理念に開きがあり過ぎる塾同士が合併しても、経営方針が破綻するリスクがあります。無理に矛盾点を押し通して運営しようとしても、現場のぎこちなさが保護者や生徒に伝わり不信感を招くでしょう。M&Aの話が本格化する前に互いを見極めるか、十分な話し合いを重ねて妥協点を探ることが解決策です。

また、M&Aが成立してもすぐに新体制が浸透するのは困難でしょう。買収側は長期的な視野を持って徐々に経営方針を擦り合わせていく必要があります。あまりにも急激な変革をもたらそうとすれば、生徒の混乱を招いて他の塾へ転入するという最悪の事態を生み出しかねません。変化は段階を踏んで、できることから進めていくのが賢明です。

また、教材の著作権をどうするか、講師の労働条件をどのように変えるかなど繊細な問題もあります。人気講師の配属先も生徒数に影響を与える要素でしょう。塾業界のM&Aでは従業員と生徒、両方の信頼を得られるように配慮することが求められています。

 

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