『M&Aの流儀』~買手からみた事業継承によるM&A業界の現状~第1話


第1話

「M&Aの流儀」

M&A専門家プロフィール 執筆者 中沢光昭

㈱リヴァイタライゼーション代表、企業再生をメインとした経営コンサルタント

経営者としても含めて破綻会社や業績低迷企業の再建・変革実績を多数持つ。また、高齢化に伴う第三者への事業承継の受け手として保有・運営

東京大学大学院工学系研究科修了

著書に『経営計画はなぜうまくいかないのか?』『会社員が一生モノの“実のある仕事”を創る方法(β版): 事業承継問題を抱える会社を個人で引き継ぐ』『事業承継による、中小企業を売却するときの基本の「き」: 最初で最後の会社の売却を、後悔なきものにするために』(Kindle)などがある。

買い手には何度もあっても、

売り手には1回しかない会社の売買(M&A)

著者は現在、経営コンサルティングを行いながら、事業承継の形で複数の事業会社の株式を譲り受け、オーナーにはそのまま経営を継続してもらっています。

株式会社においては所有と経営が分離されています。

法的に所有している人と、会社を運営するトップは、もちろん一緒でもあっても構いませんが、別であっても運営できるようになっています。

日本では(飲食店業界以外)通例として圧倒的多数の非上場会社においては所有と経営が一体化されています。

上場会社においても(50%に満たなくても相対的な)大株主や創業者が所有と経営が一体で運営されているような風潮がありましたので、

所有しているだけで、経営はしていません」と言われてもピンとこない反応が普通です。

こうして日々、様々な譲渡希望の会社を受け手として見ていると、

 

こうなる前に相談する相手がいなかったんだろうか?」とか

 

この条件だと到底買い手がつかないから、時間だけが過ぎていくんだろう。そうしたら事業承継どころか救済をお願いすることになるんだろうなあ」とか、

 

余計なお世話であることを思うことが多々あります。

 

本題にはいる前に、すこし現在の中小企業M&Aが増加している背景をみていきましょう。

2016年の中小企業白書のデータによれば、大企業は約1.1万者である一方で、中規模企業は約53万者、小規模事業者は約304.8 万者あります。

(下図は、2019年度版中小企業白書より引用)

2020年に帝国データバンクが約95万社を対象に調べたところ、社長の平均年齢は2015年に59.9歳で、前年比で0.2歳上昇しているそうです。

うち売上1億円未満の会社では、70代が22.6%、80歳以上が5.4%と他の規模に比べて高齢の社長が多い傾向にあります。

中小企業の事業承継問題は増加の一途を辿るでしょう。

 

某かの理由によって会社を手放そうと思った際、良い会社であれば選択肢を増やしてより幸せな進路(ともすれば、売却が正解ではないこともあります)に、具合の悪い会社であれば少しでもより良い救いの船に載せつつオーナーの手元に残るようなヒントを提供できるようなコラムを書いていきたいと思います。

売却活動の前にする最初の準備;

本当に売却したいのか、何度も何度も考え直す

モノやサービスを売る場合、根本的に「売りたい」と思っていなければ懸命に営業しても売れないのは当たり前です。

仮に売れたとしても、大きく値引きをさせられたりするでしょう。

事業承継の手段として、売却をすることが本当に自分や社員や家族にとって最良の手段なのか、改めて考えておくことが必要なのは言うまでもありません。

「そんなの当たり前だ」と思われるかもしれませんが、売却活動の途中で判断の軸がブレることはよくあります。

大きくは、

1円でも高く評価してくれる相手に売るのか」

「事業運営上、最も適切である相手に売るのか」

「社員の雇用を守ってくれる相手に売るのか」

「早く手を挙げてくれた(現金を入れてくれる)相手に売るのか」

売却後も自分が経営者として残れること、その場合には経営の独立性が確保される相手に売るのか」

などです。

この軸がブレることを繰り返してしまうと、買い手候補がどんどん少なくなっていってしまいます。

売却を依頼している仲介会社も、一所懸命買い手候補を探してきても従前に聞いていた判断軸と違う尺度で断られてしまうと、「あのオーナーは決められないから」といってそっぽを向き始めてしまいます。

仲介会社は成功報酬によって利益を得る会社が大半ですので、行動効率を重視します。

また、「売却する」と決めたら、それに関することはオーナーの最優先の仕事とすることです。

オーナーは社長であることも多いのでつい、「日々の業務が忙しいから」と言って検討期間がどんどん伸びてしまうことがあります。

メールは早く返事をする、電話は折り返す、ミーティングは早く設定するといったレベルのこともしっかりと進めないと、タイミングや機会を逃してしまうことにつながりかねません。

 

仲介会社も相手も「売る気がないのかな?」と思ってしまいます。それくらい中小企業においては連絡を取ったり確認を取ったりすることに時間がかかるケースが多いです。

 

 どうしても優先させられない時は、社内で口の堅い連絡係を決めて対応することです。

よくM&Aは結婚に例えられたりもしますが、お見合い中に小さなことでも「おや?」と思い始めると、段々と気にもしなかったものがネガティブに気になるようになったり、エスカレートすると「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の状態になってしまいます。

 

 ただ著者が思うに、売却対応の優先順位が低いということは、やはり根本的には心の底から売りたいと思っていないのではないかと捉えています。

その場合、従業員の動揺を招いたり取引先に不要な憶測をさせたりというネガティブな側面もありますので、売却活動は潔くいったん止めるのが適切だとは思います。

 最初はもちろんのこと、最初だけではなく継続的に、何のために売却したいのか、それは誰のためなのかなど、根本的なところでの意志確認を自分自身でしておくことが幸せなM&Aにおいては必須のことです。

中沢 光昭

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著書に『経営計画はなぜうまくいかないのか?』『会社員が一生モノの“実のある仕事”を創る方法(β版): 事業承継問題を抱える会社を個人で引き継ぐ』『事業承継による、中小企業を売却するときの基本の「き」: 最初で最後の会社の売却を、後悔なきものにするために』(Kindle)などがある。

第1話

「M&Aの流儀」

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