スーパーマーケット業界におけるM&A成功ポイント大公開!


近年、スーパーマーケット業界のM&Aが増えています。ここでは、スーパーマーケット業界の市場動向やビジネスモデル、M&Aの買い手側によるデュー・ディリジェンスにおける注意点、企業価値評価(株価算定)で使う数値(マルチプルなど)について説明します。これらから、スーパーマーケット業界においてM&Aを成功させるためのポイントについて考えてみましょう。

 

I     M&Aを考えるスーパーマーケット業界の概要

 

【1】 スーパーマーケット業界の市場環境

スーパーマーケット業は、食料品を中心に(50%以上)日用雑貨や衣料品などの家庭用品を小売りする売場面積1,500㎡以上の事業者のことをいいます。食料品・日用雑貨に加えて、医薬品、化粧品、衣料品、インテリアなどを取り扱う総合スーパーと食料品販売を専門とする食品スーパーに大別されます。

2000年までに大量出店されたことから過剰店舗の状態に陥り、多くのスーパーマーケットが破綻や閉鎖に追い込まれ、M&Aの業界再編が一気に進むことになりました。

日本チェーンストア協会によれば、スーパーマーケット全店売上高の合計は、2015年の13兆2千億円から、2018年の13兆円へ減少しており、今後も減少が続くと見込まれています。一方、業界3団体によれば、食品スーパー全店売上高の合計は、2015年から2018年にかけて約11兆円で横ばいに推移しています。

 

【2】 スーパーマーケット業界のビジネスモデル

スーパーマーケット業のビジネスモデルは、生鮮食品であれば、卸売業者から継続的に大量に仕入れ、それを消費者へ販売するというものです。近年は、生産者から直接仕入れる取引も増加しています。

大手のイオン、イトーヨーカドーに対抗しようとするスーパーマーケット各社は、CGCジャパン、ニチリウ、コプロといった仕入れ・商品開発の共同組織を形成し、購買力の強化を図っています。

生鮮食品は仕入れたものをパッケージングする必要がありますが、プロセスセンターでの集中加工、店内での加工、外注加工、いずれかによって加工が行われます。加工技術も重要な差別化要因となるでしょう。

 

【3】 スーパーマーケット業界M&Aで買い手候補となる企業

スーパーマーケット業の事業承継を目的としたM&Aであっても、買い手候補は上場企業や大企業が中心になると考えられます。この業界では、以下のような上場企業が中心となって業界再編を進めていくことが想定されます。

アークス、バローホールディングス、ライフコーポレーション、平和堂、オーシャンシステム、JMホールディングス、アルビス、ダイイチ、リテールパートナーズ、いなげや、オークワ、アクシアルリテイリング、ベルク、ヤオコー、ハローズ、大黒天物産、マミーマート、関西スーパーマーケット、パン・パシフィック・インターナショナル・ホールディングスです。

 

II  スーパーマーケット業界M&Aで売却する売り手のメリット

 

安定している大手企業にM&Aでスーパーマーケットを承継することで、従業員の雇用を維持し、事業のさらなる成長を実現することができます。また、地域の消費者は、お気に入りの店舗での買い物を継続できることに加え、卸売業者などの仕入先との関係を継続することができます。

また、小規模事業者が単独では難しかったIT投資(EC取引、キャッシュレス決済、トレーサビリティ管理)によるデジタル化の推進よって、スーパーマーケット業の経営効率化を実現することができます。結果として生産性が向上すれば、従業員の給与水準をアップさせることができるでしょう。

さらに、買い手企業が大企業であれば、店舗規模の拡大による生産性向上、商品開発の効率化、大量調達による原材料費の引下げや、人材採用コスト、広告宣伝費、流通コスト、本社経費を削減し、M&Aによるシナジー効果を得ることができます。

以上のようなシナジー効果が期待され、買い手候補にとって魅力的な事業であれば、売り手側の経営者は、高い売却価格を実現することができ、引退した後のライフプランを充実したものとすることができます。

 

III    スーパーマーケット業界M&Aで買収する買い手の注意点

 

【1】 スーパーマーケット業の買収デュー・ディリジェンスにおける注意点

スーパーマーケット業の事業性を評価する場合の注意点として、生鮮食品の鮮度管理・ロス管理があります。これが商品の粗利率に大きな影響を与えますので、効率的な運営が行われているかどうか調査することが必要となります。

食品衛生法のHACCPに基づく衛生管理も必ずチェックしましょう。

近年では、トレーサビリティのシステム導入によって食の安全が図られているか、キャッシュレス決済システムを使用しているか、セルフレジを導入しているか、ネット販売などEC取引を増やしているかどうかが、競争優位を得るためのポイントとなるようです。

 

【2】 スーパーマーケット業の買収で承継すべき経営資源

店舗の立地条件が基本となる経営資源です。店舗への道路アクセスや人の流れに問題ないか確かめることが必要です。競合が同一商圏内に新規出店してこないか、商圏分析を行っておかなければいけません。

また、人材不足が問題となっていることから、パート・アルバイトを含む従業員は重要な経営資源となります。

さらに、建物・什器備品などの有形固定資産も重要な経営資源となります。業務用冷凍冷蔵庫、プリパッケージング機器、ショーケースなどの設備機器は、必ず実査しましょう。また、店舗内を査閲し、陳列商品のボリューム、店内のレイアウト、稼働レジ台数を確かめておくことが不可欠です。

 

【3】 スーパーマーケット業のM&Aで買収するときの企業価値評価(株価算定)

スーパーマーケット業のM&Aにおける企業価値評価(株価算定)を行う際に活用することができる数値は、以下の通りとなっています。

まず、TKC経営指標(2018年度)によれば、スーパーマーケット業の収益性について、売上高成長率は約▲1.2%です。また、粗利率は26.2%、営業利益率は概ねゼロ%(赤字)となっています。生産性について、1人当たり売上高は1,817万円、1人当たり人件費は242万円となっています。

次に、2020年8月現在の開示情報および市場株価によれば、スーパーマーケット業のマルチプル(倍率)について、PBR倍率は1.5~2.0倍、PER倍率は15~20倍、EBITDA/企業価値倍率は6~12倍となっています。

さらに、筆者が推計する株主資本コストは、安定した老舗企業であれば6%、急成長の新興企業であれば9%が妥当であると考えます。これは、この類似上場企業のROICが7%前後であることを考慮しつつ、類似上場企業のベータ値が0.5~0.7であること、ヒストリカル・マーケット・リスク・プレミアム(1950年代~2020年)が7%~9%であることを前提にして、小規模リスク・プレミアムを加算して推計しています。

なお、類似上場企業比較法で採用すべき上場企業として、アークス(9948)、平和堂(8276)、ライフコーポレーション(8194)、ヤオコー(8279)、ベルク(9974)、大黒天物産(2791)、ハローズ(2742)、オーシャンシステム(3096)、JMホールディングス(3539)、アルビス(7475)、ダイイチ(7643)、リテールパートナーズ(8167)、エコス(7520)、いなげや(8182)、オークワ(8217)、フジ(8278)、アクシアルリテイリング(8255)、マミーマート(9823)、関西スーパーマーケット(9919)、バローホールディングス(9956)、ヤマザワ(9993)、北雄ラッキー(2747)が挙げられます。

なお、イズミ、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス、マックスバリュ西日本、マックスバリュ東海、イオン北海道、マックスバリュ東北、イオン九州などイオンのグループ各社、セブン&アイ・ホールディングスは、規模が大きすぎるため、非上場の中小企業の比較対象からは除外すべきでしょう。

M&A専門家プロフィール 執筆者 村上 章

事業承継コンサルティング株式会社。中小企業診断士。

事業承継コンサルティング株式会社は、中小企業診断士・公認会計士が事業承継・M&Aを支援する経営コンサルティング会社です。日本を代表する大企業のお客様からご依頼を受け、サプライチェーンにある取引先(下請け業者・販売店・フランチャイズ)の事業承継・M&Aを支援しております。M&A実行後の資産運用や相続税対策まで直接サポートいたしますので(宅地建物取引業・金融商品仲介業)、引退を考える中小企業オーナー個人のお客様が抱えるすべてのお悩みを一括して解決させていただきます。

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