非鉄金属鋳物製造業界におけるM&A成功のポイント大公開!


2020年現在、非鉄金属鋳物製造業界のM&Aが増えています。

 

ここでは、非鉄金属鋳物製造業界の市場動向やビジネスモデル、M&Aの買い手側によるデュー・ディリジェンスにおける注意点、企業価値評価(株価算定)で使う数値(マルチプルなど)について説明します。

 

これらから、非鉄金属鋳物製造業界においてM&Aを成功させるためのポイントについて考えてみましょう。

I 非鉄金属鋳物製造業界の概要

【1】非鉄金属鋳物製造業界の市場環境

 

鋳物とは、金属を溶融し、鋳型に流し込んで作った製品をいいます。非鉄金属鋳物製造業とは、鋳鉄や鋼以外の鋳物を製造する事業者のことをいいます。

 

ダイカストの市場規模は、2004年の5,508億円から2018年の6,408億円へ増加しています。

 

しかし、得意先である自動車業界に依存しており、今後は自動車の需要減少が続くことから、国内需要は減少傾向にあるものと考えられます。

 

ダイカスト以外の製品(非鉄金属素形材製造業)の市場規模は、2012年の9,922億円から2016年の1兆353億円に増加しています。

 

非鉄金属鋳物製造業者は、大手自動車部品メーカーの下請け企業の位置づけにあるため、小規模な事業者が圧倒的に多数を占めています。

 

収益性の低下に苦しむとともに、技術を持つ人材の高齢化という物題に直面しています。

【2】非鉄金属鋳物製造業界のビジネスモデル

 

非鉄金属鋳物製造業の製法は、ダイカストと砂型・精密鋳造法に大別されます。

 

自動車向けの非鉄金属鋳物は、ダイカスト製法が採用されています。

 

ダイカストとは、溶融金属を精密な金型に高圧力を加えて圧入することによって、高精度で鋳肌の優れた鋳物を大量生産する製造方法をいいます。

 

得意先が自動車メーカーであることから、工場は自動車メーカーの工場所在地近辺に集中しています。

 

また自動車メーカーがグローバルなコスト競争にさらされていることから、絶えず納入単価の引下げ要求があり、収益性が低下する傾向にあります。

 

これに対して、砂型・精密鋳造法は、少量・高付加価値製品のための製造方法です。

 

日本の非鉄金属鋳造技術は世界トップ水準であるため、高付加価値品の海外輸出が多くなっています。

【3】非鉄金属鋳物製造業界のM&A買い手候補となる主たる上場企業

 

非鉄金属鋳物製造業の事業承継を目的としたM&Aであっても、買い手候補は上場企業や大企業が中心になると考えられます。

 

この業界では、以下のような企業が中心となって、最終需要者である自動車メーカーを頂点としたピラミッドの業界再編を進めていくことが想定されます。

 

ダイカストであれば、リョービ、アーレスティ、それ以外であれば、メッツ、東京ダイカスト、日立金属、虹技、大和重工、中日本鋳工です。

Ⅱ 非鉄金属鋳物製造業界M&Aで売却する売り手のメリット

安定している大手企業にM&Aで非鉄金属鋳物製造業を承継することで、従業員の雇用を維持し、事業のさらなる成長を実現することができます。

 

また、得意先である自動車メーカーは、部品を継続して購入することもできます。

 

また、小規模事業者が単独では難しかった研究開発投資による高付加価値化や新技術開発よって、非鉄金属鋳物製造業の経営効率化を実現することができます。

 

結果として生産性が向上すれば、従業員の給与水準をアップさせることができるでしょう。

 

さらに、買い手企業が大企業であれば、工場の生産規模拡大による生産性向上、大量仕入れによる原材料費の引下げや、人材採用コスト、広告宣伝費、本社経費を削減し、M&Aによるシナジー効果を得ることができます。

 

以上のようなシナジー効果が期待され、買い手候補にとって魅力的な事業であれば、売り手側の経営者は、高い売却価格を実現することができ、引退した後のライフプランを充実したものとすることができます。

Ⅲ 非鉄金属鋳物製造業界M&Aで買収する買い手の注意点

【1】 非鉄金属鋳物製造業の買収デュー・ディリジェンスにおける注意点

 

非鉄金属鋳物製造業は、生産設備と工場いう有形固定資産を抱えなければいけません。生産設備は、ダイカストマシン、金型、油圧装置とその制御装置です。

 

それゆえ、生産設備が新製品に対応しているか、老朽化していないかを確かめることが必要となります。特に、金型が適切に保管されているか、現物を実査しなければいけません。

 

また、特許権などの知的財産権を所有している場合、その権利が侵害されていないか、適法に承継することができるか確認することが不可欠です。

 

非鉄金属鋳物製造業の事業性を評価する場合の注意点として、生産設備への投資です。継続的に更新投資が必要となるため、適切に修繕や買換えが行われているか、確かめる必要があります。

 

また、人手不足への対応として外国人研修生を受け入れているケースが多いので、在留資格取得など法令遵守が図られているかを確かめる必要があります。

 

【2】 非鉄金属鋳物製造業の買収で承継すべき経営資源

 

特許権などの法的な知的財産権はもちろん、技術力・研究開発力・品質管理能力といった無形資産が基本となる経営資源です。

 

特に、日本の技術ノウハウは、ドイツと並んで世界トップ水準にあります。これらの技術力を持つ職人を承継しなければいけません。

 

無形資産は、事業承継によって喪失されることが多いため、非鉄金属鋳物製造業のM&Aを行う場合は、工場の技術者の引継ぎに時間と労力をかけるなど、無形資産と製造現場における人材の承継を丁寧に行うことが重要でしょう。

 

【3】 非鉄金属鋳物製造業のM&Aで買収するときの企業価値評価(株価算定)

 

非鉄金属鋳物製造業のM&Aにおける企業価値評価(株価算定)を行う際に活用することができる数値は、以下の通りとなっています。

 

まず、TKC経営指標(2018年度)によれば、非鉄金属ダイカストの収益性について、売上高成長率は約10.2%です。また、粗利率は16.5%、営業利益率は4.3%となっています。

 

生産性について、1人当たり売上高は1,932万円、1人当たり人件費は484万円となっています。また、ダイカスト以外の非鉄金属鋳物製造業の収益性について、売上高成長率は約24.7%(異常値の可能性あり)です。また、粗利率は17.8%、営業利益率は1.9%となっています。生産性について、1人当たり売上高は1,916万円、1人当たり人件費は485万円となっています。

 

次に、2020年8月現在の開示情報および市場株価によれば、非鉄金属鋳物製造業のマルチプル(倍率)について、PBR倍率は0.4~0.6倍、PER倍率は10~15倍、EBITDA/企業価値倍率は5~8倍となっています。

 

さらに、筆者が推計する株主資本コストは、安定した老舗企業であれば7%、急成長の新興企業であれば13%が妥当であると考えます。

 

これは、この類似上場企業のROICが5%前後であることを考慮しつつ、類似上場企業のベータ値が0.8~1.1であること、ヒストリカル・マーケット・リスク・プレミアム(1950年代~2020年)が7%~9%であることを前提にして、小規模リスク・プレミアムを加算して推計しています。

 

なお、類似上場企業比較法で採用すべき上場企業として、ダイカストではリョービ(5851)、アーレスティ(5852)、それ以外であれば、虹技(5603)、大和重工(5610)、中日本鋳工(6439)が挙げられます。

M&Aを検討する前に、何を準備し対応すべきかお悩みの方は一度、ご相談ください。

M&A専門家プロフィール 執筆者 村上 章

事業承継コンサルティング株式会社。中小企業診断士。

事業承継コンサルティング株式会社は、中小企業診断士・公認会計士が中小企業の事業承継・M&Aを支援する経営コンサルティング会社です。日本を代表する大企業のお客様からご依頼を受け、サプライチェーンにある取引先(下請け業者・販売店・フランチャイズ)の事業承継・M&Aを推進しております。M&A実行後の資産運用や相続税対策まで直接サポートいたしますので(宅地建物取引業・金融商品仲介業)、引退を考える中小企業オーナー個人のお客様にとって必要なサービスをすべて提供しています。

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