調剤薬局業界におけるM&A成功のポイント大公開!


2020年現在、調剤薬局業界のM&Aが増えています。

ここでは、調剤薬局の業界動向、M&Aの売り手側および買い手側メリットについて説明していきます。

また、調剤薬局業界においてM&Aを成功させるためのポイントについてみていきましょう。

I M&Aが増える調剤薬局業界の現状

【1】調剤薬局業界の市場環境

 

日本の調剤薬局の店舗数は約6万店であり、コンビニエンスストアの店舗数よりも多いと言われています。

日本薬剤師会が適正であるとする調剤薬局数2万4千店の2倍を超える数です。

明らかに店舗数は過剰といえます。

近年はドラッグストアが調剤薬局を併設するようになり、競争が激しくなってきました。

 

調剤薬局業界は、大手企業による占有率が低く、小規模事業者が多数存在しています。

大手調剤薬局チェーンの上位10社の市場占有率は、15%程度にすぎません。

上位10社で70%を占めているドラッグストア業界と比べると、調剤薬局業界は、小規模事業者が多すぎると言えます。

 

小規模な調剤薬局がひしめいていることで1店舗当たりに収益性が低くなり、結果として、調剤、OTC薬販売、在宅医療といった薬局本来の機能を果たすことができないのが現状で、ある程度の規模拡大が求められます。

調剤薬局の市場規模は、約7兆円であり、6万店で割り算すると、1店舗当たりの平均年間売上高は、約1億2千万円となります

調剤の粗利率や約25%と言われているため、粗利は3千万円となりますので、これでは、薬剤師を2人雇うので精一杯でしょう。

また、調剤薬局の問題点は、差別化できておらず、どこの調剤薬局に行っても、同じような店構え、同じような接客対応です。

 

処方箋を持つ患者は地域で馴染みの調剤薬局に通うため、独自性や専門性は必要なく、経営の非効率性は、ずっと温存されることになるでしょう。

 

一方の大手調剤薬局チェーン店は、医薬品の大量購入、ICT活用、M&Aによる規模の経済によって、経営の効率化を図っています。

調剤薬局の市場環境が厳しくなっているといわれる中で、大手は増収増益を続けており、調剤薬局の収益性を高める方法は、規模の経済の追求だといわれています。

 

経費の7割を占める医薬品購入費には、ボリューム・ディスカウントがあるため、大量仕入れによって粗利率が向上するからです。

調剤薬局から患者(保険者)への販売価格は薬価基準で決められている一方、調剤薬局が医薬品卸へ支払う仕入価格は自由であるため、仕入価格を下げれば下げるほど、調剤薬局の収益性が高くます。

ここで薬価基準と仕入価格との差額のことを「薬価差」といい、全国平均8%程度の差があると報告されています。

【2】調剤薬局業界の競争激化

 

調剤薬局業界では、小規模事業者と大手チェーンとの収益性の差が大きくなってきています。

小規模事業者は競争に勝つことが難しく、また、薬価切下げ、調剤報酬が伸び悩むことに加え、薬剤師の採用が困難な状況にあります。

この点、大手調剤薬局チェーンは、知名度が高く、処遇や教育制度で優位に立つことができます

 

このため、調剤薬局のオーナーには、引退に伴い、M&Aを検討する方が多く、小規模事業者は、大手にM&Aによって買収される傾向があります。

 

一方、ドラッグストアが調剤薬局に参入する動きは、2009年の改正薬事法施行後から活発化しました。

新たな登録販売者制度によって、コンビニやスーパーなど他業種が医薬品販売に参入しやすくなったからです。

Ⅱ 調剤薬局M&Aで譲渡する売り手のメリット

【1】 M&Aによる創業者利潤の確保と経営者の個人保証の解消

 

M&Aによって獲得する譲渡代金によって、オーナーは老後の生活資金を得ることができます。

また、採用するM&Aスキームが株式譲渡であれば、M&Aによって銀行借入金に対する個人保証を解除してもらうことができます。

 

【2】 M&Aによる従業員の幸せの確保

 

安定している大手企業にM&Aで調剤薬局を承継してもらうことで、従業員の雇用を維持し、調剤薬局の事業のさらなる成長を実現することができます。

また、地域の患者は、長年親しんだ店舗の利用を継続することもできることに加え、処方元病院も関係を継続することができます。

 

【3】 M&Aによる事業成長の実現

 

小規模事業者が単独では難しかった経営効率化を実現することができます。

医薬品仕入価格の引下げや、薬剤師の採用、情報システム導入による作業効率化など、調剤薬局の収益性を高めることができます。

Ⅲ 調剤薬局M&Aで買収する買い手のメリット

【1】 M&Aによる新規出店コストの節約

 

現在、調剤薬局の市場は飽和状態にあり、病院に近い好立地での新規の出店は難しい状況です。

そこで、自ら新規出店する代わりに、既存の調剤薬局を買収すれば、従来からある処方元医療機関との関係性を引き継ぐことができ、好立地の店舗を取得することができます。

株式譲渡で法人を取得すれば、調剤薬局開設のための許認可の手続きを省略することもできます。

 

【2】 M&Aによる人材確保

 

調剤薬局の増加に伴って、薬剤師が不足してきており、優秀な薬剤師の確保は難しい。

そこで、既に運営されている調剤店舗をM&Aによって買収すれば、薬剤師を一気に獲得することができます。

これによって、設備投資や人材採用コストを節約することができるでしょう。

Ⅳ 調剤薬局M&Aを成功させるポイント

【1】 M&A前に経営管理体制を整備しておくこと

 

調剤薬局のM&Aの場合、事前に経営管理体制を整備しておくこと、特に人事労務管理がポイントとなります。

残業代の未払いなどの問題があれば、必ず事前に解消しておくとよいでしょう。

調剤薬局のような店舗営業のM&Aでは、労務管理の不備が問題となるケースが多く見られるため、要注意です。

 

【2】 M&A後にオーナーが引退しても機能する組織づくり

 

近年、調剤薬局のM&A事例では、大手企業が個人事業の調剤薬局1店舗または数店舗を買収するケースが多く見られます。

その場合、大手企業は対象店舗の新たな店長として自社の人材を送り込むことになります。

しかし、大手企業側も店長人材が育っていないことがよくあります。

最悪の場合には、現場のことを良く分かっていない新店長と、既存のスタッフの間で軋轢が生じ、組織に混乱を巻き起こすこともあります。

そのため、オーナーが引退した後でも、店舗のナンバー2のような存在がスタッフをまとめることができる体制を構築しておく必要があるでしょう。

 

【3】 M&Aにおける医薬品在庫の実地棚卸の重要性

 

在庫棚卸しは、調剤薬局M&Aにおいて、譲渡価格に大きく影響するものです。

棚卸資産は、数量を正確に把握し、適正な単価を乗じて、正確に計上されていなければなりません。

しかし、実際には、在庫棚卸しができていない調剤薬局が非常に多いのが実情です。

一般的な調剤薬局の在庫は、1店舗当たり500~3,000万円ほどあり、譲渡価格の20~30%を占める大きな資産のため、在庫棚卸しを行っていない場合、譲渡価格が数百万円単位で減額されることがあります。

M&Aを行う前に、在庫棚卸しは必ず実施しておくことをおすすめします。

M&Aを検討する前に、何を準備し対応すべきかお悩みの方は一度、ご相談ください。

M&A専門家プロフィール 執筆者 村上 章

事業承継コンサルティング株式会社。中小企業診断士。

事業承継コンサルティング株式会社は、中小企業診断士・公認会計士が中小企業の事業承継・M&Aを支援する経営コンサルティング会社です。日本を代表する大企業のお客様からご依頼を受け、サプライチェーンにある取引先(下請け業者・販売店・フランチャイズ)の事業承継・M&Aを推進しております。M&A実行後の資産運用や相続税対策まで直接サポートいたしますので(宅地建物取引業・金融商品仲介業)、引退を考える中小企業オーナー個人のお客様にとって必要なサービスをすべて提供しています。

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