【会社終活】私的整理で残せる財産とは?(後編)


民事再生手続とは

民事再生法に基づく裁判手続きです。

経済的に行き詰まった企業について、現経営者の主導の下(自助努力)、会社債権者等の利害関係者の多数の同意の下に再生計画を策定し、これを遂行することにより、利害関係者の利害を適切に調整しつつ会社の事業の再建を図ります。

民事再生手続きは、無担保債権者の権利のみを制約し(担保権者は自由に権利を行使できます。)、再生計画でカットできるのも無担保債権だけです。

会社更生手続きと比べると、手続きの効力が弱い反面、低廉かつ迅速な中小企業向きの手続きといえます。

そして、中小企業の場合、取締役の辞任は少ないようです。

民事再生法の再生計画は、主に以下のパターンがあります。

 

(1) 自力再建型

本業の将来収益から再生債権を弁済し、自力で再建を図る方法です。

 

(2) プレパッケージ型

民事再生申立前から特定のスポンサーと再生計画について合意しておき、その合意に基づいて再生手続を申し立てて再建を図る方法です。

 

(3) スポンサー型

民事再生申立後にスポンサー企業を選定して条件などを交渉し、再生計画に組み込み、スポンサーに資金援助のもと再建を図る方法です。

 

(4) 清算型

営業譲渡などの手法により、営業の全部または一部を受け皿会社に移管したうえで、旧会社は清算する方法です。

民事再生法では、手続き開始後に、裁判所の許可を得て、営業譲渡を行うことができます。営業譲渡代金が再生債権の弁済財源となります。

 

(5) 再生計画

市場性、収益性、資金繰りの3点が重要です。

 

市場性については、会社が営んでいる事業自体が市場の需要がないものであれば、債権者に多大な犠牲を強いてまで、その事業を維持させる社会的な意味がありません。

会社が有する技術が特殊などの価値がなければなりません。

 

収益性については、債務を減らしてそれを収益から返済して会社を立て直すためには会社に収益が無ければなりません。赤字経営では事業の再生は不可能です。

 

資金繰りについては、民事再生を申し立てると、通常、金融機関は融資しません。

収益性で事業資金を回せられれば問題ありませんが、民事再生の申立て信用が失墜し、そもそも取引が継続するのか、または継続しても現金による支払いなど資金繰りが忙しくなります。

また、税金は減額しませんので、再生後に税金を完済できるかが問題となります。

再生計画案が可決されるためには、2つの要件を両方満たす必要があります。

頭数要件・・・議決権者の過半数の同意

議決数要件・・・議決権者の議決権の総額の2分の1以上の議決権を有する者の同意

 

(6) 民事再生のメリット

□  企業を倒産させることなく事業を継続できます。

□  経営者が退任する必要がありません。

□  弁済期間を最大10年間のばすことができます。

□  債権の総額を減額することができます。

□  弁済禁止の保全処分を得ることにより、資金繰りに余裕ができます。

 

(7) 民事再生のデメリット

□  民事再生した事実が公表されることで社会的信用を失う可能性があります。

□  債務免除益課税が発生します。

□  従業員との対立が起きる可能性があります。

□  民事再生の申立てが棄却されたり、民事再生手続きの途中に再生計画を作成する見込みがないことが明らかになったりした場合、民事再生手続きは廃止され、破産手続きに移行します。(民事再生法250条)

 

 

(8) 手続きの流れ

ⅰ.事前相談

ⅱ.民事再生の申立

ⅲ.保全処分

ⅳ.監督委員の選任等

ⅴ.債権者説明会

ⅵ.再生手続開始の決定

ⅶ.再生債権の届出・調査・確定

ⅷ.債権者集会

ⅸ.再生計画の認可

ⅹ.再生計画の実行

会社更生手続とは

会社の経営と財産の管理・処分は、裁判所から選任された更生管財人がこれを行うことになり、これまでの経営者はすべて退任させられます。

一方、民事再生手続では、会社の経営も財産の管理・処分も、従前の経営者が行うことを原則とし、例外として裁判所から再生管財人が選任されます。

 

(1) 債権の種類ごとの取り扱い

担保付債権、一般の先取特権その他一般の優先権を有する債権 を権利変更の対象とできる点が、民事再生手続と 大きく異なります。


①  無担保一般債権(更生債権)
権利変更の対象


②  担保付債権(更生担保権)
権利変更の対象


③  一般の先取特権その他一般の優先権を有する債権(優先的更生債権)
権利変更の対象


④  共益債権
権利変更の対象外により随時弁済

 

(2) 更生計画

会社更生手続において、更生債権者、更生担保権者、株主など関係人の権利の変更と会社の維持更生のための必要な条項を定めた計画です。

計画案は管財人などが作成し、特別の場合には清算を内容とする計画案も許されます。関係人集会の審理、決議を経て、裁判所の認可により更生計画としての効力を生じます。更生債権者らの権利は計画の定めに従って変更され、従来の権利はその限度において消滅します。計画の遂行には管財人があたります。

更生計画案が可決されるためには、以下の可決要件があります。

更生債権者の組(優先的更生債権を含む)・・・債権総額の2分の1超

更生担保権者の組・・・債権の期限の猶予議決権総額の3分の2以上

債権の免除等議決権総額の4分の3以上

事業の全部の廃止議決権総額の10分の9以上

株主の組・・・議決権総数の過半数

但し、債務超過の場合は、株主には議決権はありません。

 

(3) 会社更生のメリット

□  会社更生手続きは、あらゆる倒産手続きに優先します。

□  ゴーイング・コンサーン・バリューにより企業価値が評価されます。

□  会社法の特則が適用されます。

□  債権届出のない債権は失権します。

□  担保権も租税債権も基本的には会社更生手続きに従います。

 

(4) 会社更生のデメリット

□  経営者の経営権がなくなります。

□  債務者が債務超過のときには、100%減資で株主の権利を消滅させます。

□  手続きが大規模になり、終了まで長期間かかります。

□  予納金が他の倒産手続きに比べて高いです。

□  中小企業ではほとんど可能性はありません。

 

(5) 手続きの流れ

ⅰ.事前相談

ⅱ.会社更生手続開始の申立

ⅲ.保全管理人の選任、保全処分

ⅳ.会社更生手続きの開始決定

ⅴ.更生管財人の選任

ⅵ.更生債権の確定、更生会社の財産の確定、再建のための活動

ⅶ.更生計画案の作成、提出

ⅷ.関係人集会、更生計画案の決議

ⅸ.更生計画案の認可

ⅹ.更生手続きの終結

M&Aの専門家プロフィール 野上智之

株式会社エクステンド

広島県出身、公立大学法人北九州市立大学商学部経営学科卒業。

大手システム会社を経て、教育研修会社での新規部門立上げや西日本責任者としての実践により、収支損益の黒字化と人財育成がなければ、企業は元気にならないという強い信念のもと中小企業に特化した経営コンサルタントに転身。

現在も10社を担当し、各地でセミナーや研修を行っています。

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