【転廃業型M&A】窮地に陥った中小企業がとるべき策とは


M&A仲介会社に相談に行ったけれど、会社の状況が厳しいという理由で断られた。

このような経験をした経営者もいるのではないでしょうか。

現実的には、会社の状況が厳しい場合は、「黄色信号」が点滅しており、早期に対策が必要です。

どのような対策を進めていくべきか解説していきます。

現在の状況について該当する項目にチェックしてみましょう。

 

🔲 長期間に亘り、収益性(事業性)に問題がある

🔲  高齢になり体力・健康面で不安がある

🔲  自力での事業継続意欲が減衰している

🔲  現状の財務状態のままでの承継に、後継者候補にその意思がない

🔲  将来2年~3年の数年間リスケジュールを経ても事業改善が見込まれない状態である

🔲  早晩、資金繰りに致命的な問題が起こり、破産の可能性が高い

🔲  破産手続の回避が、金融機関の「経済的合理性」の観点からも望ましい

🔲  何らかの形での再チャレンジを望んでいる

チェックリストの後半にある4項目にチェックがある場合は、迅速に対応していかなければなりません。

最後に残されたGood事業(資産)のみをスポンサーへ譲渡し、債務整理を行うことが必要であり、コンサルタントと相談することが必要です。

このような状況になると、債権者である金融機関とも調整を進めていく必要があります。

 

債務者経営者(社長)のニーズ

 ① 破産の回避

 ② 保証債務については経営者保証ガイドライン(GL)を利用して、破産より多くの残存資産を確保したい

 ③ 債務者の経営者は将来に向けて再チャレンジをしたい

 

金融機関の想定するニーズ

 ① Good事業の事業価値を生かすことができるか、破産と比較して経済合理性が認められること

 ② 事業承継先(スポンサー)を自らの取引先等から選定し、その会社へ経営資源(設備、人材、顧客との関係など)を移転させることにより、強靱な取引先を作り出すことが可能であること

 ③ 他の取引先の連鎖倒産が回避される、雇用承継により地域の雇用が維持されること

 ④ 第二会社方式で処理をする場合に、事業譲渡/会社分割が適正な対価で行われたかどうかを客観的に確認すること

 ⑤ 重要業績評価指標としての「持続可能性に懸念がある企業の抜本的事業再生や早期転廃業等円滑な新陳代謝の促進」を実践すること

 

その他ニーズ

 ① 地域有力企業が事業承継の受け皿になることにより、人材不足の解消など、既存の経営資源の有効活用を図ることができるため、より強靱な企業を創出することになり、地域の活性化に資すること

 

 

転廃型M&Aを成功させるための3つのポイントです。

① 経済合理性があるか

② 再チャレンジする意欲があるか

③ ロールアップのニーズがあるか

 

転廃業型M&Aのニーズがマクロ的視点からみていきましょう。

事業再生・転業等が必要な事業者が約5~6万社あり、そのなかには、私的・法的整理や廃業する企業があります。

ただし、そのどちらにも単純にマッチしない企業があり、どのような方法があるかみていきます。

 

毀損が進んだ中小企業を対象とする事業承継は従来の制度に不向き?

転廃業を検討する企業は、通常、Good事業とBad事業にわけられます。

企業の中を整理して、価値が毀損している箇所を取り除き、収益が見込まれる箇所をみつけていきますが、中小企業の場合、そこだけ切り取ると規模が小さくなるため、コストに見合わないという課題が出てきます。

 

民事再生

  × Good事業の規模が小さいためコストに見合わない

 △ 仕入先・顧客からの取引停止、風評被害が発生し事業の毀損の程度が大きいことがある

 

破産(事業譲渡型)

 × 「破産」という言葉に対して、代表者の心理的抵抗が非常に強い

 × 債権者申立は非現実的

 × 事業の毀損の程度が大きい

 △ 判断を破産管財人や裁判官に委ねるため予測可能性が立ちにくい

 

中小企業再生支援協議会

 

 △ 二次対応まで進むか不透明であり時間の空転リスクがある

 ×   事業価値を評価するまでもない小規模案件には不向き

 

事業再生ADR

 × Good事業の規模が小さいためコストに見合わない

 

REVICの通常再生支援

 × Good事業の規模が小さいためコストに見合わない

REVICの特定支援制度とは何か?

事業再生と地域活性化を支援する株式会社地域経済活性化支援機構(REVIC)が、金融機関等から経営者保証の付いた貸付債権等を買い取り、事業者(主債務者)の債務整理を行うと同時に、経営者の保証債務について経営者保証GLに従った整理手続きを行うことできます。

平成26年10月に開始した制度であり、経営者保証GLの適用を通じて経営者の再チャレンジを促進します。

 

REVIC特定支援制度の特徴とは?

 

① 事業者、代表者等の保証人、金融機関(非メインでも可)3者連名で申込が必要

② 弁済計画は、原則、現存資産による(将来計画収益による弁済計画は原則不可)

③ 少なくとも金融機関1行からの債権買取が必要

④ 資産等の査定は簡易的

⑤ 「特定支援決定基準」には数値基準なし

⑥ 比較的低廉な手続きコスト

 

具体的には、廃業する場合は、ソフトランディングに廃業手続きを進めることにより、破産よりも経済合理性があるかたちで閉じていきます。

もしくは、スポンサーの存在を前提として第二会社方式で事業を承継させ、債務者は清算します。

このいずれかのケースにおいても、REVICが弁済計画を検証したうえで、金融調整をおこないます。

 

 

新しい特定調停手続きの運用とは?

新しい特定調停手続きの運用は、主に中規模以下の中小企業の事業再生を支援するため、日弁連、最高裁、中小企業庁が、特定調停制度を活用する新たなスキームを策定し、平成25年12月から運用が開始されました。

運用手続きについて特徴をみていきます。

① 中小規模以下の事業者が対象:年商20億円以下、負債10億円以下を想定

② 事前調整型:弁護士などが事前デューディリジェンス、経営改善計画策定、申立前に金融機関調整(原則)

③ 裁判所が関与:関与地方裁判所本庁に並置された簡易裁判所に申立て

④ 比較的短期間で処理:数回の調停期日により終結(申立~成立まで2か月程度)

⑤ 信用保証協会による債務免除(求償権放棄):一定の要件のもとで可能

⑥ 弁護士等の専門家費用の軽減:経営改善支援センター事業(補助金)利用可能

⑦ いわゆる17条決定(*)の活用が可能:積極的賛成を得られないケースに有用

(*)17条決定:対象債権者の同意が得られない場合に、一定の要件の下で裁判所が当事者の合意に代わるものとして、権利の確認や支払条件等の調停条項を示す決定。

この決定告知から2週間以内に債権者からの異議がなければ、この調停条項に裁判所の和解と同一の効力が生じ、当事者を法的に拘束する制度。

 

具体的な活用方法については、抜本的な自主再生を実施するか、廃業または第三者への承継等の抜本的なM&Aによる再生です。

 

現場では何が起きているのか?早期事業承継に立ちはだかる利害関係者とのジレンマ

事業再生に求められるアドバイザーの役割とは?

転廃業型M&Aを検討する前の最終確認ポイント

🔲 資金繰りのショートが近い場合

準備を含めて最低3か月~4か月必要ですので、その間に資金破綻を起こさないこと

 

🔲 公租公課の滞納、給与遅配、一般債務が重い場合

優先債権および非金融債権は全部弁済するため、経済合理性が満たされない

 

🔲 金融機関との間で深刻な争いがある場合

あくまでも金融機関全行の同意を条件としている

 

🔲 制度融資を利用している場合

条例がない県および市町村の制度融資がある場合は、第二会社方式のみ〇

 

🔲 直前に経営者保証人が不適切な資産移転などをしている場合

経営者保証GL適用の前提を欠く

 

🔲 個人事業者の場合

個人事業の保証人の債務免除益課税問題 cf)資力喪失条項

 

 

コンサルタントに相談する前に

最後に、事業再生はスピードが求められますので、事前に以下の説明ができるように資料の準備や状況を把握したうえでコンサルタントにご相談ください。

🔲 業種

🔲 売上高

🔲 損益状況

🔲 負債額

🔲 金融債務の額と金融機関の顔ぶれ

🔲 優先債権(公租公課・労働債務)の支払状況

🔲 担保の設定状況

🔲 保証の状況

🔲 資金繰り

🔲 金融機関との交渉状況

🔲 経営者の状況(自宅、年齢など)

 

 

M&Aの専門家プロフィール 野上智之

株式会社エクステンド

広島県出身、公立大学法人北九州市立大学商学部経営学科卒業。

大手システム会社を経て、教育研修会社での新規部門立上げや西日本責任者としての実践により、収支損益の黒字化と人財育成がなければ、企業は元気にならないという強い信念のもと中小企業に特化した経営コンサルタントに転身。

現在も10社を担当し、各地でセミナーや研修を行っています。

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