法律だけではない!多種分野の知識が要求される合併の実務
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第三者へ売却する方法で事業承継を行うM&A。その手続き方法の一つが合併です。M&Aの「M」ですが、これは会社の合併である「Merger」からつけられています。ある会社が他の会社と一緒になることが合併であると認識している方も多いでしょう。しかし、合併はどのような形で手続きが進められていくのか理解している方は、あまりいないのではないでしょうか。そこで合併の基礎知識、メリットやデメリット、手続きの流れやその留意点などを、実務的な面から解説していきます。
複数の会社を一つにする合併手続きは二通りある
組織再編の実務において、複数の会社を一つにすることが可能です。この実務手続きを合併と言い、吸収合併と新設合併の二種類の方法が存在します。前者は消滅する会社の権利や義務の全部を存続する会社が引き継ぐことによって行う手続きです。たとえば、A社とB社の二社が合併当事会社としましょう。A社が存続してB社が消滅する形で手続きする場合、B社の有している権利や義務のすべてがA社に引き継がれるのです。存続する会社が、消滅する会社を吸収するような形で手続きを行うので、吸収合併と呼ばれています。
後者は、合併当事会社を消滅させて、その権利や義務の全部を新しく設立した会社に承継させる手続きになります。既存の会社ではなく、合併によって設立される会社が消滅する会社の権利を引き継ぐところに吸収合併との違いがあるのです。また、新設合併の場合、一つの実務手続きで三社以上の会社を消滅させることができます。たとえば、A社とB社とC社を消滅させて、D社を設立会社とするといったことも可能です。
資金負担も少なく早期に会社統合可能
組織再編の実務の中でも、合併は早期に会社統合を実現できるのがメリットだと言えるでしょう。この手続きでは、消滅する会社の権利や義務の全部が包括的に存続または新設する会社へ承継されます。したがって、契約関係や財産名義の変更手続きをする必要はありません。また、消滅する会社の従業員の雇い入れに関する個別の手続きもしなくてもよいというメリットもあります。資金調達することなく買収を実現できるメリットも見逃せません。
合併の手続きをする場合、買い手となる会社は消滅する会社の株主へ合併対価を交付します。それを株式とすれば新たな資金は必要ないのです。また、100%親会社が子会社を合併する場合、その対価の交付をしなくてもよいというメリットもあります。それから、対等な関係でM&Aが行われているという印象を与えることも可能です。合併は当事会社が契約を締結して行わなければなりません。契約は当事会社がお互いその内容を了承した後に締結されるのが通常です。そのため、当事会社が対等な立場で合併の手続きが行われていると印象づけられます。また、違う業種を営んでいる会社と合併した場合、新しいノウハウを得られるメリットを受けられるでしょう。
合併によって会社の事業へ悪い影響も
会社が合併をするためには、契約の承認決議など複数の手続きを踏まなければなりません。そのため、合併の手続きをするために、多くの人材が投入されるのです。それにより、本来の業務を行う現場は人手不足に陥ってしまい、通常業務が停滞してしまうデメリットが生じてしまいます。買い手となる会社の株価下落の可能性もデメリットの一つです。買い手会社が買収先の会社の株主へ合併対価として新株を発行してその株式を交付したとしましょう。このときに、当事会社の合併比率によっては、買い手会社の一株の価値が低くなる場合も少なくありません。株の価値の低下はそのまま企業の評価を下げてしまうのでデメリットに当たります。また、合併当事会社同士の取引先が共通していることもあります。このような場合に合併して一つの会社になってしまうと、実質取引数が少なくなってしまうデメリットが出てきてしまうのです。合併によるデメリットは事業に関連性が高いので、その点を把握して手続きを進めなければなりません。
さまざまな分野で存在する合併実務の留意点
合併は手続きを進めていくうえで、法務、会計、税務での留意点があるので、それらを把握しておかなければなりません。法務の面での留意点ですが、合併の効力発生日の理解が重要です。吸収合併の場合、契約書で定めた日付までに手続きが終了すれば、その日に効力が発生します。一方、新設合併の場合は、登記の受付日が効力発生日となっており、吸収合併と異なっています。会計面の留意点として、適用される処理方法が、合併する会社同士の状態によって使い分ける必要があることです。具体的には、合併当事会社が、グループ形成している関連会社同士か、独立した会社同士かによって、会計処理の方法が変わります。税務面では、税制適格に当たるか否かがの判断が大きな留意点です。
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